にょんギツネ
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- 自己紹介 日々読書や執筆、お絵描、文字の観察などを愉しんでおる寶曆6年生まれの仙人見習いな267歳幼狐なのじゃ!18禁要素注意じゃよ? ヘッダーは @une_back に依頼したのじゃ。褒めて質問お題箱を兼ねた投書箱 → http://marshmallow-qa.com/nyol2novel
2019年03月31日(日)
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tetさん(@tetshiki)の子のTSロリ天使ちゃん描かせて頂きました!
あああああ必死に頼み込まれて脇見せちゃって恥ずかしがってるロリ天使ちゃん可愛い!!可愛すぎるぉぉぉぉ!!!!prprしたい!! とっ捕まえて体の隅から隅までprprしたいい!!!
#よその子
#絵描きさんと繋がりたい pic.twitter.com/hpMmqLNoNo
タグ: よその子 絵描きさんと繋がりたい
posted at 13:52:02
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2019年03月30日(土)
けれども背嚢から本を取り出して頁をめくると、そこには選ばれた子供の手によって描かれた絵と文が、あるはずのない、あるいはあるかもしれない景色と生きものの存在を伝えていた。
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posted at 23:38:54
選ばれた子供の弟、でもなかった少年は、こっそりと出て行った。
館が遠ざかり、潮騒が聞こえてきたところで、振り返ってあたりを見回した。
やはり翼のある猫も、青い花をつけた男も、赤い花の咲く島も、まったく見えも聞こえも嗅げもしなかった。
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posted at 23:37:22
子供がたたみかけると、大人は口ごもった。
「アマヤ様が悲しまれる」
「かなしいことはあります」
「…私はニウノ様にも、アマヤ様にも嘆いてほしくない…私があの時アマヤ様を強くおひきとめしていれば…」
「かなしいことはあります。いつでも」
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posted at 23:32:57
「何を…」
「金貨とか宝石とか、たくさんきてました」
「アマヤ様のもとには幸運がもたらされる。しかし当家のもといはあくまで」
「執事さんがやればいいと思います」
「…私はただの使用人です」
「アマヤさんはそう思ってないです」
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posted at 23:31:02
「アマヤさんは、やるきになったらだいじょうぶです」
「知っています。あの方は一目みるだけでどんな書つけも覚えてしまう…ですすが、やる気になどならない」
「はあ」
「誰かがしなければならない仕事です」
「執事さん」
少年が振り返った。
「しなくてもいいと思います」
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posted at 23:29:19
そのまま昔、腹を空かせた仲間のために院の厨房から芋を盗んできた時のような忍び足で屋敷の廊下を歩き、館の裏手へ出る。
「塩の取引はどうなさいます」
扉をくぐろうとしたところで執事が声をかける。
「はあ」
「アマヤ様はああした俗世のことに興味はお持ちにならない」
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posted at 23:27:50
小柄な夫、ではないみなしごは、伴侶ではない娘の寝顔をながめてあくびをしてから、目をこすって、そっと寝台を離れた。
執務室へ戻ると、署名をしてから、遠出のしたくをする。
修道院から持ってきた背嚢をひっぱりだし、本を一冊入れる。
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posted at 23:25:41
そのまま掛布をかけて、枕をあてがい、寝かしつける。
「おやすみなさい」
「ええ…まだ…ツチトさんより先に寝たら…」
「おやすみなさい」
修道院で自分より小さな子にしていたようにあやす。
「おやすみ…なさい…またあした」
「おやすみなさい」
大柄な奥方の寝つきはよい。
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posted at 23:23:52
ニウノは急にツチトから離れた。
顔色がくもっている。
「ツチトさん」
「はあ」
「…なんか…私…すごく…だめです…」
「だめ?」
「すごく楽しいのに…苦しくて…なんか…どこかでまちがえたみたいな…」
「まちがえた?」
「釦(ボタン)をかけちがえた…気がします」
「はあ」
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posted at 23:21:39
二人はしばらく画帳をのぞきこんだ。
「島には画帳をもっていけなかったので、戻ってきてから記憶をたよりに描いたんですけど、お兄様はちゃんとできてるって。でもここは直してもらいました。お尻の青と銀の縞模様のところです」
「しましまですね」
「はい。しましま」
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posted at 23:19:25
「はあ」
「お兄様の唄に合わせて宙で踊って…そうしたらお兄様は私もやってごらんて言うから、試したんですけど、蜂はみんな逃げてしまって…やっぱり下手だとだめですね」
「練習すればだいじょうぶ」
「そうでしょうか…そうだ、素描があります…見てください」
「はあ」
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posted at 23:17:51
月がのぼってから、寝室で妻は夫にいつものように、いやいつもより勢いよくおしゃべりをした。
「私、行ったんです!島に!燃えるような花の咲いている島に!遠くに見えるだけで、たどりつけるなんて思わなくて、でもお兄様と一緒に泳いだら、本当にあった。あそこには針のない蜂がいて」
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posted at 23:16:19
ツチトはまばたきした。アマヤはじっと聞き入ってから二通目をとりあげる。
「司祭の前での誓いって、とりけしてしまえるんだね」
「…婚姻無効の宣言が、わざわざ当家に出されるとは…いったい…」
「僕は、ニウノと結婚できるんだね」
「それは…はい。いささかうるさく言うものもおりましょうが」
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posted at 23:11:07
あまりにもってまわった難しい表現で、しかも二通目は古典語でしるしてあったため、少年は兄と執事が帰って来るのを待って解読を頼んだ。
「…これはつまり…ツチト様は…遠縁ですらなく、血筋はまったく当家と無関係ということです」
「はあ」
「先代は、修道院の謀りにあったようです」
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posted at 23:08:51
二通目には、一通目を踏まえ、ツチトとニウノの婚姻無効を宣言する教会の手紙だった。本来であれば君侯が、王妃や王妃を追放するために万金を積んで手に入れるものだった。
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posted at 23:06:39
一通目から読むと、宮廷おかかえの系図学者による小難しい文書で本来であれば郷紳には縁のない内容だったが煎じ詰めると、ツチトとアマヤにはいかなる意味での血縁もない、というもの。
要するにツチトには当主としての資格がそもそも存在しないという証明だった。
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posted at 23:04:34
商人や職人のまったく意味の解らないやりとりにじっと聞いて、怒鳴りつけと愛と、さらに大人からさしだされる酒杯を断りそこねて即座にひっくり返り、荷物になって戻ってくると、書簡が二通届いていた。一通目は蝋で王の封印、二通目には聖(ひじり)の封印が施してあった。
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posted at 23:02:47
夫は妻に上目遣いをしながら述べる。
「だいじょうぶです」
「解らないんです…本当に…だって…同じものが見えたり、聞こえたりする人…ほかに…あそこに集まった人たちだって、そんなにはっきり、いつも感じる訳じゃないって…私やお兄様は特別だって」
「はあ」
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posted at 22:58:05
おとめは、遠出のしたくを終えた少年に尋ねる。
「ツチトさん…アマヤさんが、一緒にお散歩をしませんかって…浜辺を」
「はあ」
「私、断りました」
「はあ…あの」
「はい!」
「執事さんとかとも、一緒にいけばいいと思います」
「え、あ、でも」
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posted at 22:55:03
屋敷の主と兄と奥方と、使用人だけになった。
しばらくすると、ひまをもらっていた召使が戻ってきた。
待ちに待った選ばれた子供の帰還を聞きつけ、あちこちの奉公先から出戻ってきたのだ。
「僕は後は継がないよ」
黒髪の若者が説き聞かせても、皆はすべてが昔通りになると信じているようだった。
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posted at 22:49:53
水晶の杖を携えた壮年だけは何も置いていかなかった。
「お二人さん。わがはいの贈り物はあとから届くだろう。心して待つがいい」
「それは何?」
「見えるもの、聞こえるものすべてが集った訳ではない。我等の友は意外なところにもいるのだ。アマヤ」
若者に目配せすると最後の客は颯爽と去った。
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posted at 22:47:29
夜が明けると、客達は引き上げていった。
それぞれニウノとアマヤに心からの挨拶をして。
金貨や宝石や、磁器や絹の手巾といった不思議な贈り物を残して。
「結婚式には呼んでくれ」
「なるたけ早く」
「大蝙蝠の競飛会が始まる前にな」
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posted at 22:45:42
ニウノが眠りにつくのを見届けてから、ツチトは執務室に戻り、もう一度目をこすってから、文書に署名をし始めた。けれども途中で羽筆はうまく動かなくなってしまった。
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posted at 22:43:20
恥ずかしげにおとめは述べる。
「すごく…参考にしてしまいました」
「はあ」
「お兄様は…ツチトさんには似ていませんね」
「はあ」
「とても、きれいな人です」
「はあ」
「お屋敷の皆さんが言っていた通りの人」
「はあ」
「会わせてくれてありがとう」
「はあ、あの、はい」
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posted at 22:42:01
しょげたようすで寝室にむかう大柄な妻の、裸足の歩みのうしろから少し距離をあけて、小柄な夫はついてゆく。
「馬も犬も、画材も楽器も、みんなお兄様のものだったのですよね」
「はあ」
「あの部屋にいくつも描きつけや、走り書きの楽譜がありました。私、ツチトさんに言われて本をまとめる時」
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posted at 22:39:35
屋敷の当主は一同に向き直った。
「みなさん、きょうはもう寝てください。兄とのことはちゃんとします」
客達はけげんそうだったが、黒髪の若者がうなずくと納得したようだった。
「おやすみツチト」
「おやすみなさいアマヤさん」
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posted at 22:37:03
少年はじっと考えてから、年嵩の娘のそばによった。
「ニウノさん」
「は、はい!」
「こんな風になると思わなかった。ごめんなさい」
「私も…嫁いでから楽しいことばかりで、難しいことは何も…」
「どうしたらいいか、すこし考えます。ちょっと待ってください」
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posted at 22:34:19
アマヤは困ったように首をかしげ、ツチトをふりかえった。
「ねえ僕はニウノと一緒に暮らしたい…同じものを見て同じものを聞いて」
「ぼくもです」
弟は返事をすると、兄はまばたきした。
「お前は、見えないし、聞こえない」
「本があります」
「でもそれは同じものではないんだ」
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posted at 22:30:45
執事が咳き込むようにして割って入る。
「ほかの方々が何をおっしゃろうとも、司祭の前で誓った婚姻は神聖なものです。破れはしません。アマヤ様それだけは」
「…でも、僕はニウノとずっと一緒にいたい」
「あったばかりではありませんか」
「それでもそう思うんだ」
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posted at 22:26:09
少年はうなずいた。
「そうです」
「ありがとう…おかげで僕はニウノに会えた」
「アマヤさんのためじゃありません」
「そう?」
「ニウノさんのためです」
「ああ…そうなんだね」
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posted at 22:24:24
兄は、蛇の指輪をはめた義妹の手の甲に軽く口づけしてから、軽やかに弟に歩み寄り、語り掛けた。
「ツチト。ひさしぶりだね」
「はあ」
「今ふっと解ったんだ。君が、僕に言ったこと。見たものを絵と文にすればいいって」
「はあ」
「きっとニウノが本を作ったのは君のおかげなんだ」
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posted at 22:22:33
ニウノは、アマヤの新月の夜のような双眸を見つめ、溺れそうになり、もぎはなすと、あたりをうかがい、庭の隅にじっとおとなしく立っている夫を捕えた。
「ツチトさん!」
「はあ」
「…私…あの…どうしよう…」
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posted at 22:20:02
若者とおとめの背をそれぞれ男女が押して天幕の前の空き地に押しやる。
「さあさあ!くだらぬ教会の決まり事なんぞ!」
「<見えるもの>、<聞こえるもの>、<嗅げるもの>にかかわりあるものか!」
「運命の糸を結び合わせ」
「幸福の泉の清い水を汲め!」
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posted at 22:18:23
「しんきくさいぞ王子」
「せっかくのお姫様との出会いが台無しじゃないか」
「そうとも。木々の精も風の霊も、火の鬼も皆心配している」
客達が鳴りものを手に囲んではやす。
「さあ、花嫁をほうっておくな」
「抱きしめて接吻しろ」
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posted at 22:16:02
「私だけではありません…この屋敷のものは皆、若様のお戻りを信じて…今日まで耐えて…」
「ごめん」
アマヤが頬に手を触れると、とうとう厳めしい執事の顔が歪み、涙に崩れた。
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posted at 22:13:57
ニウノははっとして手を引いた。
「え!あの…あ、あれ?外れない」
「はずさなくていいよ。それは君のだから」
アマヤはほほえむ。
「だめです…だいたい、こんなきれいなもの私には似合いませんし…あの…」
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posted at 22:05:22
人々をゆっくりと掻き分けて、若者は編み椅子に座ったまま目を丸くしているおとめのそばへ歩いていった。
「はじめまして。君があの本を描いたんだね」
「はい!おはずかしいです」
「僕はアマヤ。ずっと会いたかった」
「私、ニウノって言います。あ、アマヤ…?もしかして」
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posted at 22:01:22
喜びの気配は屋敷の庭で泡のようにふくらみ、はちきれんばかりだった。
「ひどい人」
「私達を置いていくなんて」
双子の舞手が左右から頬へ口づけようとするのを、美貌の若者は笑ってかがんでかわすと、姉妹は互いに接吻してしまう。
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posted at 21:58:50
「ただいま…」
アマヤだった。しばらく会わないうちに、ますます背が伸びて、黒髪は肩よりも長くなり、瞳の色は深さを増したようだった。旅装束だが、疲れも汚れもなく、ただみずみずしい清らかさをまとっている。
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posted at 21:55:14
語り部がそう制するのへ、不意に影絵を作る光の源になている篝を遮るようにほっそりした影がよぎる。
たちまち執事のそばにいた犬がはねおきて駆けてゆく。
すると相手はかがんで四つ足の毛むくじゃらを抱きしめた。
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posted at 21:53:55
「王子様はどこにいるの」
子供が尋ねる。ツチトとは特に仲のよくない厩番の息子だ。
「お姫様のところにいったの?ふたりは結婚したの?」
「これから、それはこれからだ」
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posted at 21:52:22
「さらりと言ってのけた。この指輪は我が花嫁となる人への贈り物にふさわしい…とね。確かに無数の蛇がからみあう浮彫は見事な細工。しかし魔法の源を奪われた蛇の怒るまいことか…」
長髭の壮年が楽しげに話すのに合わせ、影絵はさらにいきいきと躍る。
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posted at 21:44:12
夜も更けて眠りから覚めると、まだ音楽が続いている。
目をこすってから、庭へ歩いてゆくと、使用人も客も皆あちこちに座っては、天幕にうつる影絵芝居を鑑賞していた。
「そのとき、王子は高くとびあがり、大蛇の牙にはまった金の輪をもぎとったのよ!」
多彩な紙人形の動きに合わせて語りが入る。
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posted at 21:41:54
少年は執務室に戻ると、たまっていた文書に署名をしたあと、召使が忙しく掃除が行き届いてない部屋のほこりを手ずから拭きとった。
小さな体は力尽きたように床に倒れてしばらく動かなくなったが、誰もようすを見にこず気づかなかった。
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posted at 21:38:33
少年は考えてから、庭の天幕を指さした。
「あれみたいのを作ればいいと思います」
「あのような怪しげなものをですか」
「兄なら好きだと思います」
「…しかし作り方も解りませんぞ」
「あそこにいる人達に聞けばだいじょうぶです」
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posted at 21:37:04
特筆すべきことといえば行きと帰りでまた船酔いをして吐いただけだ。
例え銀の羽をもつ飛び魚がそばを群をなして通り過ぎても、選ばれた子供ではないツチトには何も解らなかった。解るのは働くもの皆いつも何かに苦しみ、怒って、難しいあれそれを吐き出す相手を探しているというだけだった。
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posted at 21:32:32
一方でちびの当主はただ勤めを果たした。
そちらは華やかさはなかった。例えば離れ島にある貝筏の残骸の片づけを検分してきたところで、筏作り達が声を荒らげ、漁夫とやりあうのをただ座って半日も聞き、大人達が求める費えを何とかすると約束をし引き上げた。
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posted at 21:30:39
庭には真白い天幕が立ち、犬はよそからきた猫や狐や亀とふざけ戯れた。
奥方をとられた使用人達はやや面白くなかったが、客がいずれもなつかしいアマヤと似たたたずまいをさせていたので、そうそっけなくもできなかった。
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posted at 21:27:01
屋敷が蓄えているありきたりな麦や芋や酢漬けの蕪や、油漬けの魚から、奇想天外な料理を作り、長らく樽を開けることもなかった葡萄酒に遠い地の香料を利かせ、色とりどりの煙や花火で飾る。
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posted at 21:24:47
「見えて、聞こえて、嗅げて、話ができて…ああなんでもありだ」
「まるでお伽噺のお姫様みたいだ」
「あとは王子様を待つばかりだ」
奥方はどぎまぎしながらも、嬉しげに集まってくる奇人変人をもてなした。皆は長年の友達のように打ち解けて、音楽と幻燈と物語とがあふれた。
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posted at 21:22:51
客はひとりでは済まなかった。
続いて双子の舞手がやってきた。
黒髪黒目に黄みがかった肌をしたさすらいの民。
年齢は定かではないが人をそらさぬ風情がある。
「あそこに書き込んである魚の唄、<聞こえる>んだね?」
「すごい。あんなに細かに聴き取るなんて。私達にもできないよ」
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posted at 21:18:57
「あなたがあの本を描かれたひとだ」
「え?あ?はい?」
ニウノがびっくりしていると、客はひざまずく。
「突然驚かせて申し訳ない。どうもまだるっこしい礼儀作法が苦手でな。わがはいはあの本を見てきたのだ。あなたも、<見える>のでしょう?」
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posted at 21:16:29
季節が巡るころ、屋敷に客がやってきた。
長髭の壮年で、腰には水晶でできた杖を帯びていた。
「しばらく宿を貸してはいただけないだろうか」
「はあ。どうぞ」
相手は、迎えたちびの当主をけげんそうに見やったが、やがて庭をはだしで犬を連れて散策している奥方をとらえて、ぱっと破顔した。
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posted at 21:14:52
中原 鼎(皇室・王室ライター) @NAKAHARA_Kanae
バイエルン公を擁立してのバイエルン王国独立はともかく、ヴィッテルスバッハ家を担いでのバイエルンとオーストリアとの合邦は絶望的に無理がある
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posted at 21:06:25
たいまいをはたいた本ができあがると、寄付していた修道院と、版元の願いで都の見本屋に並んだ。
修道院で読んだ子供は不思議がるか、面白がったようだった。
見本屋で目にした好事家が増刷を求めた。
ニウノの絵にも文にも人を引き付ける何かがあった。
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posted at 21:04:08
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posted at xx:xx:xx
「今はツチトさんが…その…いるし」
「はあ。ええと、ええと…」
「あ、もちろんお兄様に会えるのはうれしいです!」
「はあ」
夫は妻の手を握ったまま、しばらく考えをめぐらせたあと、よく解らなくなってまた眠りに落ちた。
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posted at 20:35:34
少年はちょっと静止してから、また語句をつむいだ。
「ええと犬とか…馬とか…あと…色んな…でも、兄はいつも楽しそうで、でもやっぱりさびしかったみたいで…だから」
「私も、実家にいたときは…さびしかったですけど、でも…」
娘は頬を染める。
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posted at 20:33:22
手を握ってくる年嵩の妻に、年下の夫はおずおずと握りかえした。
「はあ…だいじょうぶです。あとちょっとで、本ができて、それで兄が読んで、もどってきたら、きっとニウノさん、さびしくないです」
「私、今もさびしくはないですけど」
「はあ」
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posted at 20:31:08
修道院で下働きをしていた時もめったにしなかったのに、うたた寝をしてしまうことがあった。
目覚めると、上着が肩にかかっている。そばに大柄な奥方がはべっていた。
「がんばりすぎないでください」
「はあ」
「あの、心配です…ツチトさんは…しっかりしていますけど…でも」
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posted at 20:28:24
本来の勤めに加えて出版まわりで忙しくなったが、少年はうまずたゆまず難しい文書を読み、内容の半分も飲み込めぬまま質問しては署名をし、あちこちに出かけては大人の話を黙って聞き、挨拶をして帰ってきた。
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posted at 20:26:20
いささか傾いたとはいえ、郷紳の家は富裕だったので、不思議ないきものの絵や文をまとめた版画本を作る話はとんとんびょうしに進んだ。
「アマヤ様のためだ。あの方が本を目にすればきっと戻ってきて下さる」
そういう執事の話に使用人も協力を惜しまなかった。
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posted at 20:24:59
少年は緊張したようすで話す。
「きっと…うれしい、ですよね?」
「…解りました…」
「銅で版画をつくるやつ…とかで、本をいくつも、作ってそれで」
「はからいましょう」
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posted at 20:22:30
夫は何晩もかけて妻を説得すると、今度は執事に相談した。
「よいお考えとは思えません。異端の疑いを招くかもしれません」
「修道院に助けてもらいます。寄付をしている」
「しかし」
ツチトはまっすぐに使用人の男を向いた。
「兄が見たら、きっともどってきます」
「…っ」
「そうしたら」
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posted at 20:20:27
「…これを…本にしたら」
「本?」
「修道院とかにある」
「ああ、そうですね…でも」
「そうしたら、ニウノさんや…兄のアマヤみたいなひとが…ほかにもいたら、なかまがいるってわかって、うれしいって、なる、かもしれないと思います」
珍しく多弁に話すツチトに、ニウノは見入った。
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posted at 20:15:40
「本当にここに嫁いでよかったです」
首に抱きついてくる年嵩の妻に、幼い夫はしばらく硬直してから、おずおずと短い腕を回そうとしてうまくゆかない。
「はあ…あの…できたら…してほしいことが」
「なんなりと!」
「ニウノさんが見たもの、絵や文にしてほしいです」
「はい?」
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posted at 20:08:55
「都だと思いますけど、便りがなくて」
「そうなんですか…」
がっかりしたようすのニウノに、ツチトは話す。
「きっと会えます」
「いえ…私と同じような人がほかにもいるって…解っただけでうれしいです…」
「会えます」
「はい…あの…」
「はあ」
「ツチトさん。ありがとう」
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posted at 20:06:44
少年は訥々と説明をした。
「兄のアマヤは見えました。翼のある猫とか、青い花をみにつけた背の高い男の人とか、赤い花が咲く島とか」
「ほんとうに!?じゃあ雲からおりてくるお魚や…あの蛙にのった小さな騎士も?」
「…それは知らないですけど」
「お兄様はどこにいらっしゃるんですか?」
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posted at 20:04:37
「それとあの…うぷぷ…あ、なんでもありません」
「なんですか」
「すいません…」
あわてて顔をそむけるニウノを、ツチトはじっとうかがってから、眼差しの先を追った。
「はねのある…猫ですか」
「えっ!?見えるんですか!?ツチトさんにも」
「見えないですけど」
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posted at 20:01:44
幼い夫は相槌を打ちながらひとつひとつ受け取って、あれこれ退屈な意見を述べる。するとまた年嵩の妻は嬉しそうに喋りつづけた。
犬が掘り出したやたら大きな芋の話、馬が泥浴びをしてはねを飛ばして顔がべとべとになってしまった話、尽きることがない。
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posted at 19:59:24
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posted at xx:xx:xx
一方で、少年は黙々と勤めを果たしていた。
娘のほがらかな歌声も笑い声にも、ほかと違っていっこうに感じ入ったようすはなかった。
「ツチトさん。花輪をつくりました。すごく良い香りです」
「はあ。ありがとうございます」
「塩田の人がくれた、宝石みたいな塩の塊です!」
「きれいですね」
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posted at 19:57:18
屋敷は再び明るさを取り戻しつつあった。
誰もがよそものの当主をうとむかわりに、よそものの奥方を慕った。
ただ執事だけは腕組みをしつつ独りごちた。
「ご先代は…きっと…ニウノ様を…ああ…アマヤ様、なぜ出てゆかれたのです…」
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posted at 19:54:56
ニウノがそれぞれを訪れ、幸せそうに過ごしていると、だんだんと召使、使用人もそれとなく奥方に耳打ちするようになった。
水遊びに心地よいせせらぎ、霧がたなびき甘い草の実が成る丘、黄金の穂波が揺れる麦畑。
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posted at 19:52:45
「大好きです!…でも…こんな…はしたなくて」
「じゃあ…使ってください…あと…」
幼い夫は、年嵩の妻にさまざまなことを教えた。屋敷の裏に広がる薪とりの森に入る散歩道、朝日の美しい磯辺、小鳥の集まる草原。
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posted at 19:49:31
「ありがとう…ここに嫁ぐまで…こんなことができるなんて思ってもみなくて…実家では…怒られてばっかりで」
「ええと…ほかにしてもらいたいことも沢山あるんですが」
「なんなりと!」
ツチトはニウノを兄の部屋に案内し、楽器や絵筆を見せた。
「こういうの…使えますか?」
「は、はい」
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posted at 19:47:39
当主が厩や犬舎に近づくだけで不機嫌になったというのに、新妻にはひとめでなついた。
「こら…こらだめ!怒られますから…」
くすくす笑いながら、じゃれついてくるいきものを叱っているところへ幼い夫が通りがかる。ようすを見に来たのだ。
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posted at 19:43:14
ニウノは許しを得ると、だんだん大胆になって歌ったり笑ったりしながら、踊るような足取りで屋敷を飛び回り、あれこれに鼻をつっこんで回った。
はじめ唖然とした召使は、やがて不思議とおかしな奥方を慕うようになった。誰かを思い出したのかもしれない。
犬や馬はもっと正直だった。
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posted at 19:41:19
少年はちょっと口をつぐんだままでいてから、告げた。
「あの、笑ったり、歌ったり、どうぞ」
「え?でも…はしたなくて…」
「はあ。だいじょうぶです」
「いいんですか…だって」
「だいじょうぶです」
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posted at 19:39:54
花嫁はけれど花婿とは違った。
姿形は地味でも、ふるまいは風変りだった。
ときどき靴を履くのを忘れて裸足で外を歩き、突然笑いだしたり、歌いだしたりしては、あわてて口を抑えて黙り込む。
「ごめんなさい…」
いつもおかしな真似をしたあとではしょげかえって謝る。
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posted at 19:38:27
ツチトの返事にニウノという名の新妻は、そばかすだらけの顔を赤らめた。
「私、どうやっても礼儀作法がちゃんとできなくて…いつもぼんやりして…でも、ちゃんとやります」
「はあ。よろしくお願いします」
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posted at 19:36:08
花嫁は、大柄な娘だった。
頑丈そうで、器量はやはり目立たない。いかにもツチトにおにあいだ。
早くして妻をなくした先代らしい相手選びだったかもしれない。
「あのう…同い年と聞いていましたけど」
「はあ」
「いえ、すいません…よろしくお願いします」
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posted at 19:34:29
「養子をとるのはどうですか?」
「ご結婚の方が望ましいかと」
「はあ」
少年はめずらしくためらった。相手の単純な性格を読み切っている執事は素早く口添えした。
「お勤めのひとつとお考えになっては」
「……解りました」
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posted at 19:29:33
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ちなみに羊毛紙の山から、先代がちゃんと修道院に寄付をした旨の契約書を突き止めてあった。難しい言葉が沢山並んでいたが、要するに食べものやら薬やら、石板やら鉄筆やらを買う金を出すという話になっていた。署名もある。だからそれでよかった。
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posted at 19:22:30
兄は戻らなかった。
風のうわさに都で黒髪に黒目の若者が、王の命を救ったとか、老占星術師の謎を解いたとかいった物語が伝わってきた。
「アマヤ様に違いない」
執事は微笑んだが、血のつながらない弟の方にわざわざ教えはしなかった。
よそものの当主に、相変わらず使用人から親しみはなかった。
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posted at 19:14:11
豚足嫌いなころうまるくんに見せつける為に豚足を注文したぼくと
トマト嫌いなぼくに見せつける為にトマトを注文するころうまるくんと
なんでお前らが飲み会で同席しているのかわからないという冷静なツッコミ
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posted at 19:13:16
塩の取引はますます傾き、さらに多くの使用人が去って行った。
塩田や貝筏は、もっと勢いのある新興の豪商に鞍替えしつつあった。
ツチトは相変わらず苦労しながら話を聞き、文書を読み、署名をし、船に乗って酔って吐き、塩焼き小屋で寝ては風邪を引き、ぱっとしない日々を送っていた。
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posted at 19:11:27
よーし!よその子描くぞぉ!って下描きして気づいたら指にトンボを乗せるベトナム人が出来上がりました✍️😥 pic.twitter.com/G8ukWt29YI
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いくらかまた時が過ぎた。
ツチトも多少背は伸びたが、修道院の食事のせいかもともとやや貧相だったため、アマヤのようなすらりとした姿態とは到底比べようもなかった。
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posted at 19:08:11
「アマヤ様は塩に光があたった煌めきだけで、どこの浜でとれたのか、だれが作ったのかまで当てたがな」
「はあ…」
「そういうの、ご当主様は悔しくないのかい?」
「別に…」
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posted at 19:05:54
無難に何でもこなすだけだ。
蔵に連れてゆかれ、扱う品の味を試させられても、たいしたしくじりはしなかった。
薄紅い塩、薄緑の塩、ざらついた塩、こまかな塩。
ひとつひとつ舐めては、料理に使うのか、施療に使うのかを教わる。
「ええとこれは…魚料理?」
「革をしめる用だ」
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posted at 19:04:37
「屋敷が傾いては、アマヤ様が悲しむかもしれません」
「はあ」
「ツチト様には何卒、屋敷を盛り立てていただきたいのです」
「解りました」
兄のためにと言われて、弟は特に不平はなかった。
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posted at 19:03:00
代替わりしてから塩の商いはいささか陰った。
何が悪いというのではないが、以前に比べ取引に滞りやしくじりが重なるようになった。
選ばれた子供が去る際に、幸運も一緒に連れて行ってしまったかのようだった。だが幼い当主はひたすら文書を読み、尋ね、署名し、あまりはかのゆかない習い事をした。
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アマヤにとって遊び場であり、笑いと喜びの咲き誇る地だった屋敷と浜辺は、ツチトにとってはただひたすら勤めを果たすだけの巷に過ぎなかった。修道院と同じだった。
地味で退屈な少年はそれでも時々、いとまがあると、赤い花が燃えるようにぎっしりついた島だとか、翼の生えた猫だとか
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posted at 18:55:07
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物語にはよく「選ばれた子供」が登場する。
鳥や獣と言葉を通じ合わせたり、ほかの人間には見えない何かを見たり、予言が運命を告げたり、きわだって美しかったり、音楽や絵画あるいは武芸や学問にたぐいまれな天稟を備えていたり。
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posted at 17:26:14
【チイ】
区内の電力事情を好転させるメガソーラー計画だが、
“予定地そのもの”が立ち上がり、動き出した為に頓挫した。
―――「荒地活用計画の顛末」より pic.twitter.com/jeLj3Gl2fF
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posted at 17:01:57
狐嫁入りパーカー作れたらカワイイだろうけど、フードをふわっと立たせるのが難しそう。
やっぱ3Dモデルで作るのが妥当かなあ twitter.com/ayabemiso/stat...
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