りか @greenhouse_rika

11年3月27日

ビクビクしている託生の腕を掴み、足早に寮の階段を下りる。
「どこ、行くんだよ」
これからどんな無理難題を仕掛けられるのか、できるのなら行きたくないとの感情が見え隠れする。それでもついてくるのは、自分が不利だと悟っているからだ。

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posted at 12:00:53

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

「食堂?」
そう。余りにも振り回されて、さすがに腹が減った。しかも、こんな時間だし。
一応、人が少ない一角のテーブルを選びトレイを置く。
「いただきます」
託生が味噌汁を一口飲んで、喉元を通り過ぎたのを確認し、
「託生、あーんって食べさせて」
嫌がる事を承知で要求した。

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posted at 12:02:33

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

とたん託生の手から箸が転げ落ち、あんぐりと口を開けたまま頬が赤く染まってくる。
「ギイ……今、なんて?」
「あーんって、食べさせてくれ」
「バッ…!なに、考えてんだよ?!」
周囲を気にしてか、小声で噛みつく。

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posted at 12:04:44

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

「これだけ振り回されたからには、それなりの代償があってもいいだろ?」
「だからって、ここ食堂!」
食べさせてもらうのに、食堂以外どこがあると?
「じゃ、反対に、オレがあーんって食べさせてやろうか?」
「ヤダよ!」

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posted at 12:06:09

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

間髪入れずに否定して、でも、振り回した自覚があるのか上目遣いにオレを見る。
「他のじゃダメ?」
……毎回思うが、この角度を計算していない所が不思議だ。許してやりたい気分になる。
いやいや、それじゃ、オレが振り回され損だ。
「オレは別にいいけど、じゃあ、何を要求し・よ・う・か・な」

タグ： ギイ

posted at 12:07:51

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

ゆっくり区切ってニヤリと笑えば、
「いい、考えなくていいってば!」
何を想像したのか託生は全力で阻止した。
どんな想像をしたのかは難くないが、オレはどちらでも万々歳だ。それなりの報酬をもらって当然。

タグ： ギイ

posted at 12:09:06

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

「どうする?」
オレの言葉に、託生は、
「うーーーっ」
と小さく唸り、自分の皿の上のコロッケに怒りを込めて箸をぶすりと突き刺し、
「あーんっ!」
やけくそにずいっとオレの口の前に差し出した。
「……託生、大きくないか?」
「……あーん」
いじめすぎたか、涙で潤んだ目が座っている。

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posted at 12:10:53

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

いいかげん、弱いよなぁ、オレ。
差し出されたコロッケを一口かじって、託生の腕を押しやる。
「ごちそうさん」
あっさりと引いたオレに拍子抜けしたのか、キョトンとして、
「それだけでいいの?」
コロッケに箸を突き刺したまま聞いてくる。

タグ： ギイ

posted at 12:12:39

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

「もう一口、あーん、してくれるって?」
ぶんぶん首を横に振って慌てて食べだした託生を笑い、オレも空腹を訴えている胃袋を静めるために、大人しく箸を取った。

タグ： ギイ

posted at 12:14:44

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

残りはベッドの上で請求させてもらうとして、実はそれほど怒っていなかったりする。それどころか、託生が遠慮なくオレを振り回した事に、感動すらしていた。

タグ： ギイ

posted at 12:16:34

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

同時にこれから先も託生には勝てないだろうなと、身を持って悟ったのは成り行きとは言え、あまり気付きたくなかった事実である。
惚れた方が負け。古人の言う事は間違いなかった。

タグ： ギイ

posted at 12:17:43

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

「ほら」
差し出された徳利に、仕方なく猪口を手に取った。
有無を言わさず連れ込まれたのは、ちょっと古い小料理屋。
「やっぱり冬は熱燗に限るな」
一気に飲み干して手酌しようとしているのを見て、慌ててお酒を注いだ。

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posted at 21:13:57

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

「似合わないですね」
「何が?」
「何もかも」
このお店も、ぼくが隣に座っているのも。
「そうか?オレが和食が好きなのは知ってるだろ?」
心外だと言うように片眉を上げ、「飲め」とぼくに目で勧めてくる。

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posted at 21:15:00

りか @greenhouse_rika

11年3月27日

「それで、お話というのは何でしょう、副社長?」
連日残業続きで、やっと今日は早く帰れると思ったのに、
「晩飯付き合え」
どこから出現したのか、さっさとぼくの腕を取り送迎の車に押し込まれた。
「とりあえず、オレと託生のこれからについて…かな?」
……この男、殴っていいですか?

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posted at 21:16:37