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りか @greenhouse_rika

11年8月3日

夕食と共に出てきた食パンは、驚くほど美味かった。
「美味しい？」
「すっげぇ、美味い」
「どんどん食べてね」
それだけで託生の機嫌は直ったが、心中複雑な気分になったのは言うまでもない。
喧嘩は翌日まで長引かせない。
心に誓った教訓だった。

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posted at 15:04:21

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

辛子が入っていようが、わさびが入っていようが、この際なんでも食べましょう。これで、託生の機嫌が直るなら。

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posted at 15:04:02

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

ほんの少しトーンの下がった託生の声に、恐る恐る託生を見ると、楽しそうな口調とは裏腹に目が笑っていない。
これで食べないと言えば、自分がどうなるのか、簡単に予想できてしまうのが哀しい。
「……はい。食べさせていただきます」

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posted at 15:03:18

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

「パン作ってたんだよ。発酵はシェフがやってくれるって言うから、任せてきちゃった」
「ふぅん、そうか」
あっさりと答える託生に、がっくり肩を落としたくなった。やっぱり、パンを作っていたのは現実だったのか。
「あとで、ギイ、食べる？……食べるよね？」
ゾクリ。

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posted at 15:03:00

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

「お帰り、今日は早かったんだね」
にっこり。
託生の可愛い笑顔に、「あれは夢だったんだ。夢に違いない」と、オレの願望が見て見ぬふりをしたがった。
「なにしてたんだ？」
託生の汚れた頬を指ではらい、一応聞いてみる。

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posted at 15:02:40

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

投げつけるような音が止み、二言三言ボソボソと声が聞こえたあと、唐突に扉が開き、中から託生が出てきた。
「あれ、ギイ？」
さっぱりとした顔をして、頬に白く粉をつけ、キョトンとオレを見上げる。さっきまでの絶叫がまるで夢だったかのような、さわやかさ。
「あ…あぁ、ただいま」

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posted at 15:02:21

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

確かに昨晩喧嘩して、託生の文句を聞きもせずバスルームに行ったものだから、託生の怒りが未消化なのはわかるけど。だからって、託生………。
目頭が熱くなっているのは、気のせいではないみたいだ。
そこにどのくらい、いたのだろうか。

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posted at 15:01:50

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

ドアノブを手にしたまま、思わず扉に頭を打ち付けた。執事の不憫そうにオレを見る視線が、背中に突き刺さる。
「………託生は、何を作っていたんだっけ？」
「パンです」
そうだった。パンだった。
中から、ドッタンバッタン、オレへの文句と共に大きな音がするのは、単純に種を捏ねてるだけか。

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posted at 15:01:30

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

キッチンに近づくにつれ、ドンドンと何かを叩きつけているような、乱暴な音が大きくなってきた。
そして。
「ギイのばかーーーーーーっ！！」
扉を開ける寸前、中から聞こえてきた託生の絶叫。
「ペテン師！我侭男！自己中！それからそれから……エロ魔人！！」
………ゴン。

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posted at 15:01:02

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

問いかけてもお互い顔を見合わせながら、ふるふると首を振る様子に疑問を浮かべつつ、
「オレが行ってはいけないわけじゃないんだな？」
「はい……」
確認を取り、キッチンに足を向けた。
うん？なにか、音がする？

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posted at 15:00:11

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

視線をそらして執事が言葉を濁す。
首を傾げつつ、
「ちょっと覗いてくる」
「あ、義一様！おやめになった方が……」
方向を転換しキッチンに向かおうとしたオレに、慌てて執事共々メイド数人が焦った顔をして止めた。
「……なにか、あるのか？」

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posted at 14:59:49

りか @greenhouse_rika

11年8月3日

「お帰りなさいませ、義一様」
「あぁ、託生は？」
上着を渡しネクタイを緩めながら問いかけたオレに、
「キッチンにおられます」
複雑な顔をして執事が答えた。
「キッチン？珍しいな。何か、作ってるのか？」
「はぁ、パンです」
「パン？なんで、急に」
「それは存じませんが……」

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posted at 14:59:17