りか @greenhouse_rika

11年9月30日

子犬のような心細そうな目をして、ぼくを伺っているギイを見ると、許してあげないといけない気がする。
もう、仕方ないなぁ。
「今回だけだよ」
本を閉じ立ち上がって手を伸ばすと、ホッとしたような表情をしてギイはぼくの手を握った。
雲の切れ目から覗いた月が、こっそりとぼく達を見ていた。

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posted at 09:56:26

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

「オレだけのだよ。誰にも触らせたくないんだ。たとえ、それが不慮の事故であっても。でも、それが嫌でオレから離れるというのなら自重する」
「自重って……」
自重とか遠慮とか、ギイに全然似合わないことを言われても。

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posted at 09:56:08

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

何をバカなことをと、顔を上げたぼくに、嬉しそうにふんわり笑い、
「あるよ。オレだけの星」
言ってぼくの頬を親指で撫で、その意味するところを理解して、そっぽを向いた。頬が熱い。

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posted at 09:55:48

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

「託生が戻るなら、オレも帰る」
「ぼくは、もう少しここで本を読んでるから、先に帰れよ」
まだぼくは怒っているんだ。
皆の興味津々な顔。あんな恥ずかしい思いは、もうたくさんだ。
「だったら、託生が本を読み終わるまで、星を見てる」
「なに言って。こんな曇り空に星なんてないじゃないか」

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posted at 09:55:24

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

もちろん、ぼくの言い分も文句も無視だ。暴れに暴れて保健室の前で下ろされたと同時に、ギイを殴り飛ばし逃げ出した。
それから、ぼくはギイと会っていない。
「もう9時だぞ。あと1時間で消灯だ」
「だったら、ギイ戻れば？」

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posted at 09:54:57

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

足を引っ掛けころびそうになったぼくを、たまたまその場にいた友人が咄嗟にぼくを支えた。
そう。”支えた”だけだ。それを”抱きしめた”と判断したギイが、
「捻挫しているかもしれん」
と、誰にも何も言わせずぼくを抱き上げ、見せつけるように保健室に運んだ。

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posted at 09:54:29

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

普段のぼくなら、こんな夜に近づくことなんてしないだろう。けれども、ギイに見つかるのを少しでも長引かせたくて、ここを選んだ。
ギシリとベンチが音を立ててきしんでも顔を上げないぼくに、ギイは溜息を吐く。
「ぼくは謝らないからね」
「あぁ、オレも謝らないけどな」

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posted at 09:53:53

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

土を踏む足音に気付いてはいたけれど、ぼくは顔を上げなかった。その足音で誰だかわかっていたから。
「怖がりの託生が、ここにいるとは思わなかった」
外灯に照らされた中庭のベンチ。

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posted at 09:53:34

りか @greenhouse_rika

11年9月30日

greenhouse_rikaさんは、「夜のベンチ」で登場人物が「離れる」、「本」という単語を使ったお話を考えて下さい。 t.co/O5QKZNtX #rendai
ってことなんで、久しぶりにいきます。

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posted at 09:53:12