りか @greenhouse_rika

13年1月24日

ニヤリと笑って赤池さんは託生さんの側に歩いていかれました。
やはり副社長のことを言っているのでしょうか。
今日の報告書と一緒に赤池さんのことも書いておかねば。

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posted at 15:46:35

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

「本当にあいつは頑固だから。終わったのなら、さっさと姿を現せって付け加えておいてください」
「赤池さん………」
「ＮＹにいる、貴方のボスにですよ。言えばわかります」

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posted at 15:46:24

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

「貴方のボスに伝えてください。逃げても無駄だぞって」
「あの、ボスって………」
この事務所がＦグループと繋がっていることは一切表には出していない。ましてや、副社長が関わっていることなどスタッフ以外誰も知らないのに、赤池さんはどなたのことを言っているのだろうか。

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posted at 15:46:08

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

もう、他のお客様もいらっしゃらないだろうとロビーに移動した託生さんを、ご友人たちが取り囲みました。
皆さん、ご自分のことのように喜んで、あっという間に託生さんの両腕が花に埋もれた姿を見て、苦笑しつつ花を受け取り控え室に向かおうとした私に、赤池さんが声をかけてきました。

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posted at 15:45:54

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

話をお聞きすると、託生さんの高校時代の友人だそうで、赤池さん以外にも何人もの方がこのコンサートに聴きにきてくださっていて、しかし全員で控え室に来るのは邪魔だろうと、代表で佐智さんと訪れてくれたそうです。。

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posted at 15:44:04

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

そしてアンコールが終わり控え室に戻った託生さんの下へ、佐智さんが花束を持って駆けつけてくれた後ろに、一人の男性がいました。
「赤池君！」
「よう、葉山。デビュー、おめでとう」

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posted at 15:43:46

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

この日を迎えるにあたり、託生さんが血の滲むような努力を重ねていたことを知っているスタッフ一堂は、コンサートの大成功の裏で目を潤ませつつ、より一層バイオリニスト葉山託生の名を広めることを心に誓ったのです。

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posted at 15:43:31

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

クラシック業界に新風を巻き起こすという触れ込みと留学時代の賞の数々がメディアによって紹介され、佐智さんはもちろん、音楽関係者を招待した託生さんのデビューコンサートは、華々しい晴れの日となりました。

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posted at 15:43:18

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

それが託生さんの代表作となる『恋シリーズ』の始まり。
女性の感性というのは、我々男には、よくわからないものですが、託生さんの曲とタイトルがミスマッチなものは一つもありません。

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posted at 11:29:20

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

そうして託生さんが作られた曲については女性スタッフが中心となって企画がなされ、『恋』と関連性のあるタイトルをつけられることが決まった。

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posted at 11:29:11

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

いつものように穏やかに笑い、
「………いえ、イメージはないので適当にお願いします」
と、頭を下げられた。
「じゃあ、曲のイメージでつけさせていただきますね」
「はい」

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posted at 11:28:49

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

あんなにも印象的な曲なのだから、なにかしらイメージを思い浮かべながらでないと、作れないような気もするのですが、その辺りは素人の私に考えが及びません。
スタッフの問いかけに小首を傾げた託生さんの表情が、ほんのすこし苦く曇ったように感じたものの、それは私の気のせいだったようです。

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posted at 11:28:30

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

タイトルがない？
「ぼく、ネーミングセンスないんで、作った順に番号を振っているだけで……」
確かに、楽譜には数字が書いてますが、これがタイトル代わりってことですか？
「じゃあ、作っているときに浮かべていたイメージを教えていただければ……」
「イメージですか？」

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posted at 11:28:14

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

頬をかきつつ「すみません」と頭を下げたスタッフに、そういえば私も聞いていなかったと思い出しました。
曲の印象があまりにも衝撃的で、タイトルを忘れてました。
全員の視線を受け、
「あの………」
託生さんが口ごもった。
「タイトルはないので、それでお願いします」
「は？」

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posted at 11:27:59

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

「はい？」
「タイトルを聞いていくのを忘れてしまって、自分勝手なイメージで『始まりのとき』と言ってしまったんですが、託生さん、タイトル教えていただけますか？すぐに相手方に訂正しますので」

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posted at 11:27:45

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

にっこり笑った佐智さんの笑顔に、交渉専門のスタッフが大きく頷いたと思ったら、そのまま録音したＭＤを持って事務所を出て行き、数時間後。
「番組のテーマソングに決まりました～♪」
と、意気揚々と帰ってきた。
事務所内、拍手喝采。さすが、マネージメントのプロ。
「ただですね」

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posted at 11:27:27

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

そうして、佐智さんの勢いに押されるがまま、指示された数曲を弾かれた託生さんの曲に、スタッフ一同深い溜息を吐いた。
なんと奥深く、優しさに包み込まれた曲なんでしょう。胸に突き刺さるような切なさまで感じます。
「どうですか？」
「これは………」

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posted at 11:27:13

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

あたふたと胸の前で両手を振り謙遜されているようだが、この佐智さんの様子だと、全ての楽譜に目を通し、そしてなにかしらの考えを持って事務所に持ち込んだのであろうことがわかります。
「一度、聴いてみてくれませんか、託生くんの曲。ね、託生くん、弾いてみて？」

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posted at 11:26:57

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

託生さんのマネージャーを一年近くやっていたのに、作曲されるなんて全く知りませんでした。
「ででででも、ただの暇つぶしの趣味なんで………」

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posted at 11:26:42

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

重そうなバッグから取り出し、スタッフルームのデスクの上に広げたのは、膨大な数の手書きの楽譜だった。
「あの、これは………」
「託生くんが作曲したものです」
「え……託生さん、作曲もされてたんですか？」

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posted at 11:26:17

りか @greenhouse_rika

13年1月24日

佐智さんが託生さんのマンションに遊びに行かれた翌日。
「託生くんの部屋で、いいものを見つけたんですよ」
満面の笑顔で事務所に入ってこられた佐智さんの背後には、おろおろとした託生さんの姿が。
「これ、見てください」

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posted at 11:26:02