樺太労働局
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- 自己紹介 「やせっぽちのG」
2010年11月29日(月)
そして私は父の真似をした。真似をしたつもりだったけれど、たぶんあれは唇を押し付けただけのキスにもならない幼稚で稚拙な衝動だったと思う。でも、だから、私のファーストキスの相手はまだ二十歳前半の、若すぎるくらいわかかった未来の義母たったのだ。(了)
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posted at 00:15:46
やがて立ち止まった私に夕夏さんは困ったように眉根をよせて、朝子ちゃんどうしたの、夏バテ?ポカリ飲む?首を横に振った。えっと、それじゃあ……。そのころにはもう身長が殆ど伸びきっていた私は爪先立ちになるだけでよかった。薄く化粧をした、笑うと花のように綻ぶ顔がすぐ目の前にあった。
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posted at 00:14:03
残暑の厳しいその日、夕夏さんは遅れてもいなかったのに息を切らして現れた。もう最上級生だった私はそれがひどく恥ずかしくて、わざと口をつぐんで歩いていた。それを気にもしていないみたいに夕夏さんが父のことを話していたのも覚えている。話が進むに連れて機嫌が悪くなっていった自分のことも。
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posted at 00:11:22
実の母が亡くなったのは物心がつく前だったから、小学生の私にとって父の恋人だった夕夏さんは物語の中のように鬱陶しい存在ではなかった。夕夏さんが家に来るとデパ地下のケーキが食べられるので嬉しかったし、小学校の防災訓練で、忙しい父に代わって私を迎えに来てくれたのはいつも夕夏さんだった。
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posted at 00:05:38
「いや、あれはカウントされないでしょ。されるとしたら私の初キスは母親だよ」「……あさちゃんちょっとは空気読めー。そういうことじゃないでしょそういうことじゃ!」「話振ってきたのはそっちでしょうが」言い返しながら私は考えていた。若すぎる母親役、お父さんのお嫁さんのことを。
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posted at 00:01:30