蕎麦 @minadzki@bbbdn.jp
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2014年01月21日(火)
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きっと明日の朝になれば姉ちゃんは帰ってくるだろう。そして、今日の祭りが嘘だったみたいに普通の毎日が始まるんだ。姉ちゃんは誰にも何も言わずに、また歯を磨き続けるんだろう。
「姉ちゃん……」
気が付くと僕はまた泣いていて、姉ちゃんの歯ブラシを噛み締めていた。
-fin-
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posted at 23:07:14
ドロドロの顔を洗いたくて洗面所まで来た。コップに入った姉ちゃんの歯ブラシが目に入った。姉ちゃんの歯ブラシを手に取ってみると毛先がボロボロで、なんとなく分かっちゃったんだ。
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posted at 23:06:43
気が付くと僕は家に帰っていた。土間に倒れこんだ。涙はもう出ないけど、まだ何も考えられなかった。身体中ボロボロだ。痛い。姉ちゃん、ごめん。ごめん、姉ちゃん。怖かった、怖かった。ごめん、姉ちゃん、ごめん。
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posted at 23:06:29
まるでバッタを食べるカマキリみたいな……何かをしていた。何をしてるのかはぜんぜん分からなかったけどすごく気分が悪くて、怖くて、逃げ出したくて、引き戸の前から離れようとした時僕は見てしまった。
鬼たちの真ん中にあった白い何かは、真っ白な着物を着た姉ちゃんだったんだ。
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posted at 23:05:48
賽銭箱の奥の、入り口の引き戸の隙間からそっと覗いたオヤシロの中には……鬼がいたんだ。何人かの鬼が、白い何かに群がっている……。白い何かに覆いかぶさってうめき声をあげながら、入れ替わり立ち替わり何かをしている鬼たち。
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posted at 23:05:34
オヤシロの中なんて絶対に見ないほうがよかった。田んぼの方まで来て草むらに足が引っかかって転んだ。どんどん涙が出る。分からない気持ちが胸に広がる。「……姉ちゃん！姉ちゃん姉ちゃん！姉ちゃん！！！」
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posted at 23:05:20
姉ちゃんは？父ちゃん母ちゃんは？村のみんなは？僕は脱げかけのハッピをもう一度着直して帯を結んで、集会所を飛び出したんだ。まだ少しフラフラする。暗くて怖くて心細くて早く家に帰ろうと思った時に、森の奥の方にぼんやりと灯りが見えた。オヤシロの方だ……。
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……起きた。みんなが騒いでたはずの集会所には誰もいなかった。僕はその時、初めてお祭りの日の夕暮れを見たんだ。ごちそうの皿やオミキの入れ物があたり一面に散らばったままがらんとした集会所はなんだかすごく怖かった。
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posted at 23:04:18
いつもは浮かれて村のおっちゃんおばちゃん達にすすめられて飲んでたオミキも、今年は飲むフリをしてわざと少しづつハッピや畳にこぼしてた。もう一度ホンジンさんに姉ちゃんの事をお願いに行きたかったから。でもやっぱりなんだかだんだん眠くなっちゃった……。
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桜が散ったらまた田植え前、春のホンジンさんだ。
去年の秋のホンジンさんまで……姉ちゃんの元気がなくなる前まではお祭りがすごく楽しみだったけど、今年は太鼓や笛の踊りを見ても、たくさんのごちそうを見てもなんだかつまらなかった。
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posted at 23:03:20
母ちゃんも「やめなさい」と、晩ご飯を作りながら後姿で叱ってきて僕は自分の部屋に逃げ帰って、畳の真ん中に寝転んだんだ。姉ちゃんがますます遠くにいっちゃったような気がして、いつの間にか泣いちゃってた。
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posted at 23:02:34
なんで楽しいお祭の後に姉ちゃんの元気が無くなったのかは分からない。僕はそんな姉ちゃんに元気になって欲しくて、秋祭りが終わったばかりの頃はまたバカ！とかブス！とかたくさん悪口を言ったりもしたけど、姉ちゃんは寂しそうに笑っているだけ。
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posted at 23:02:16
もともとよく歯を磨く姉ちゃんだったけど、時間に関係なく洗面所にこもる事が多くなったし、夜中におしっこで目が覚めた時なんかに、うつむいて、必死で歯を磨く姉ちゃんを見掛けたりもした。
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posted at 23:01:57
僕はたくさんごちそうが食べられるからお祭りは大好きだったけど、ごちそうの時みんなに、僕や姉ちゃんにもオミキが配られて、それを飲んだらいつのまにか寝ちゃうんだ。お祭りはいつも最初から最後まで楽しくて、でも気がついたら自分の布団で目が覚めるんだ。昨日のお祭りがまるで嘘だったみたいに。
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posted at 23:01:21
父ちゃん達はオヤシロの前で太鼓叩いて笛吹いて、母ちゃん達はオヤシロから少し離れた集会所でたくさんすっごいごちそうを作るんだ。そうやって神様が降りてくるのを待つんだって。
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posted at 23:01:05
すっかり大人しくなった姉ちゃんだけど、去年の秋のホンジンさんから目に見えて元気が無くなった。
ホンジンさんはこの村のいちばん奥のおっきな森にいる神様で、毎年田植えの前と稲刈りの後にはみんなでホンジンさんのオヤシロに集まってお祭りをする。
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posted at 23:00:49
ますます僕は悔しくなって、バカ！とかブス！とかたくさん悪口を言ったけど姉ちゃんは笑っているだけ。後ろから母ちゃんにとびっきりのゲンコツ食らって自分の部屋に逃げ帰って、押し入れの中で泣いてたんだ。ゲンコツも痛かったけど、姉ちゃんが遊んでくれなくなったのが悲しかった。
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posted at 23:00:36
でも姉ちゃんが中学に上がってからはめっきりかくれんぼもしてくれなくなった。僕はいちばんの遊び相手がいなくなって我慢できなくて色々からかってみたりもしたけど、それでも姉ちゃんは少し笑って「だめだよ」なんて言うんだ。
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「姉の歯ブラシを噛んだ日」
姉ちゃんがバスで街の中学へ通うようになってから二回目の桜が咲いた。僕は今年から桜の季節が大嫌いだった。
去年の桜の季節まで、学校が終わると夏は毎日川遊び。冬は真っ白な息を吐きながら鬼ごっこ。子供の少ないこの村で姉ちゃんはいちばんの遊び相手だった。
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posted at 23:00:01
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古畑「おや～？この部屋晒し画像、どうも本人が写り込んでるみたいですねえ」 私「えっ、う、嘘っ！？」 古畑「んっふっふ～、冗談です～。それにしても不思議な方だ～、かわいい女の子のはずなのに随分慌てなさるんですね～」 私「し、知り合いに見られたら、困るじゃないですか（コイツ……！）」
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posted at 20:24:23
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コアファンの「にわかマジ勘弁！」みたいなコメント見て、「あ、この子可愛いっすね。何カットかやらせてください」って何度か仕事したことある僕らはどうしたらいいの…ってなった
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posted at 01:15:11
それと洗面所に初めて見る歯ブラシ入りのコップがあって、気持ち悪いって思うかもしれないけど 僕はなんだか無性にそうしたくなったから、ピンクの歯ブラシを、奥歯でギュッと噛んでやった。
うちの歯磨き粉の味じゃない、優しいミントの味がした。
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posted at 00:59:15
そのあとのことは、あんまり覚えてない。 いつの間にかベッドで寝てて、六尺花火のでっかい音で起きて、 パラパラ花火の音を聞きながらお風呂に入って、歯を磨いたくらい。
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posted at 00:58:40
「たっくんもお姉ちゃんたちと花火大会来る？ 毎年楽しみに」「いい」
ご飯が終わってすぐ、お姉ちゃんは花火大会に行こうとしたけど、僕は行く気になれなかった。
というか、邪魔できない。あんなにかっこよくてお似合いのカップルの間に、未だにクラスの女の子と話せないような僕が、入れない。
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posted at 00:57:59
その日のご飯はいつもより豪華で、いつもよりお母さんの「オホホホ」が多くて、いつもよりお父さんが無口で、
いつもより、なんか、姉ちゃんのほっぺが、赤かった。
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posted at 00:57:12
って、じいちゃんが言ってた。嘘だ、そんなことない。
でも、じいちゃんの言ってたことは本当だった。
花火大会のある夏の日、姉ちゃんが彼氏を連れて戻ってきた。モデルさんみたいに体が細くて、髪の毛が茶色で、でも腕の筋肉はすごくて、浴衣がすっごく似合ってる人だった。
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posted at 00:56:24
元々口数が少なかった僕はすぐ言い返せなくて、姉ちゃんにも、自分自身にもむかっ腹が立って、こう言ってやった。
「うるさい」
5
姉ちゃんがあまり家に帰らなくなった。
フェリー会社が潰れそうになって定期船の値段が上がったのもあるけど、 外に恋人ができると女は帰らなくなる
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posted at 00:55:36
たっくん、たっくん、たっくん……中学の時はニキビ面で引っ込み思案だった姉ちゃんも、 高校に上がったら急に大人っぽくなって、友達もたくさんできた。
それだけ時が経ったのに、姉ちゃんはまだ僕を子どもあつかいしてくる。
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posted at 00:54:46
ただ少し、平日に会えなくなるだけで、ただ少し、姉ちゃんが他人っぽくなるだけだ。
4
「たっくん、中学の授業むずかしくない？」「たっくん、お弁当のたくあん残してない？」「たっくん、女の子と仲良くできてる？」
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posted at 00:54:10
腕を噛んだことだってある。
でもそんな幼いくせも、中学の制服を着るころにはすっかり消え失せ、少しずつ大人に近づいていった。
3
3つ上の姉が島を出る。と言っても、ずっと帰ってこないわけじゃない。
土日は朝イチの定期船で帰ってくるんだから、大したことじゃない。
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posted at 00:53:06
その母さんに叱られている僕を僕はまるで他人事のように俯瞰しながら、 僕は「どうしてこうなってしまったのだろう」とぼんやり考えていた。
2
人の話を聞かないくせは今でも治っていないけど、何かを噛むくせは治った。
爪、くちびる、えんぴつ、髪の毛……クラスのムカつく奴の
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posted at 00:52:25
姉の歯ブラシを噛んだ日 uwafiiのはなし
1
「たっくんがまた私の鉛筆噛んだぁ～！」
持ち手に小さな歯型が刻まれたえんぴつを手に、姉ちゃんが泣いている。
またか、と言わんばかりにあきれた顔をしながら僕を叱りつける母さんと、
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posted at 00:51:45
