にょんギツネ
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- 自己紹介 日々読書や執筆、お絵描、文字の観察などを愉しんでおる寶曆6年生まれの仙人見習いな267歳幼狐なのじゃ!18禁要素注意じゃよ? ヘッダーは @une_back に依頼したのじゃ。褒めて質問お題箱を兼ねた投書箱 → http://marshmallow-qa.com/nyol2novel
2019年01月21日(月)
お前これは寝るって意味だろ!?!?そうじゃねぇのかよ!!オイ!
寝るってはっきり書かないと理解できねーのかァ!?オメーはよォ!!オメーはよォ!! twitter.com/KEMOMIMIKOKO/s...
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posted at 23:24:19
俺が人生での中で感謝してるのは小さいうちにやばいやつと触れ合えたこと。
それで善悪の判断がついた。
まずは人にやさしくする、否定から入らない事、相手を理解しようとすること。
これだけでほんと人生楽。
まぁ出来れば関わり合いたくないけどね。
今頃出会ってたら頭おかしなるでほんま。
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posted at 22:26:00
みんなのうたの昔の歌で、カメレオンがお月様を食べようと頑張って舌を伸ばすんだけど届くはずないから食べられない…みたいな曲があって、子供の頃聴いた時はそれがすごく悲しくていたたまれない気持ちになってた事を思い出した…無理だからもう止めようよ別の食べ物食べようよ…みたいな…
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posted at 22:21:14
木に登ってオンコの実をむしゃむしゃしてます。※食べ過ぎると便秘になっちゃうので、与えないように! #北きつね牧場 #キタキツネ pic.twitter.com/7ylQYgoqbq
posted at 22:17:33
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@nyol2novel そう。でもそこに至る過程で、店員に勧められて断れずにちょっとサイズの小さめのワイヤーブラを買わされてしまう経験も必要なのです。そしてくい込みが痛痒くて赤くなってるのを風呂場で見つけてため息をつく紙月もまたいいのです。
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posted at 21:26:13
@nyol2novel @N_5u6i シルマジは全年齢向け故、そのような展開は御法度にて……。
ベルトで圧迫されたりカバンの紐の跡がついたりした肌がお湯でピリピリするので、なんか触られてるみたいで声を殺しちゃう紙月の話しました?
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posted at 21:13:18
小説を書くときはどうしてもその情景を細かく頭に浮かべてしまうのだけど、そこにあるものの1割も文字に落とせないし、物語における重要性で言ったら1%もいらない事だってあるのだ。
でも私の技量では書いてみないことにはその要否が分からない。全くもってさじ加減と言うものが身に付かない。
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posted at 20:58:58
ァンジャル_CF #名前の最初の二文字を消すと存在感薄くなる
posted at 20:58:21
とびらの@ずたぼろ6巻8月発売!! @tobiranoizumi
よし、私立霞ヶ丘高校(男子校)の夏の衣装はこれでいこう pic.twitter.com/hySv6be7iR
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posted at 20:56:59
とねり@かっこいいノクターンノベルズ @toneri2424
とねりがみんなに隠していること
『 実 は 乳 首 が メ ッ チ ャ 感 じ る 』
#あなたが周りに隠していること
shindanmaker.com/859714
?!
タグ: あなたが周りに隠していること
posted at 20:56:10
とねり@かっこいいノクターンノベルズ @toneri2424
とねりさんはRTした人について
①呼び方
②好感度(10段階)
③属性で表すと何属性か
④リアル(オフ)で望む関係
⑤良い所
⑥動物で例えると何か
…を書きましょう。
shindanmaker.com/566261
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posted at 20:43:55
さーて、明日のゴスリリは?
中身のない釣りの話だけで一話使い切った第九話。
続く第十話はまたしてもお風呂回。
お風呂回のある物語は人気が出るとばっちゃか言ってたから、何度でも繰り返す、このお風呂回を。
次回、異界転生譚ゴースト・アンド・リリィ
第十三章第十話「鉄砲百合と二人湯」
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posted at 20:35:45
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【 メンテナンスのお知らせ】
長串望に以下の不具合が見つかりました。
●カード合成のバグ
●末端の冷え
●集中力がない
メンテナンス実施時間は
本日0:20〜2:50です。
お詫びに爪切り9個を配布します。
#メンテナンスのお知らせ
shindanmaker.com/860026
末端の冷えは真面目に冬場辛い。
タグ: メンテナンスのお知らせ
posted at 19:37:08
@Kaiser_ritsuko @VHHHHKG 私の姓を聞いて「先祖は奈良か大分の出身?いや、その読み方だと奈良じゃないな。大分?」とズバッと聞いて来た神戸大学の教授さん、学部学科は何だったかなぁ…? 確か、ピアノ講師のせんせのご亭主でした。
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posted at 18:40:44
最近、フォローされると「何故?」と身構えてしまうところがある。こちらが知っている相手からフォローされると深淵が見つめ返してきたようなドキ♡ドキだし、知らない人だとどうして自分をとワク☆ワクするし、あとなんかたまに謎の動物まとめ系アカウントにフォローと解除を繰り返される。
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posted at 18:38:08
@nyol2novel ちなみに余談だけどビックバンが起こってからたったの135億年しか経ってないけど、宇宙膨張の関係で観測可能な宇宙は465億光年。“その先”は観測できないけどもしかしたら観測不可能な宇宙は別法則に支配されてるとか観測可能の何億倍もあるとかいう可能性まであるらしく、わけわかめで頭破裂しそう
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posted at 17:57:21
先生は教室が静まるのを待ち、
「皆さんは民俗学なんて得体の知れない、役に立たない学問だと思ってるかもしれないけど、こういう事ができるのが民俗学という学問です。
これから1年間、よろしくお願いします」
と微笑んだ。
未だにこれは最高の自己紹介であり最高の授業の始め方だったと思っている。
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posted at 17:33:27
すると先生は黒板にサラサラと略図を描き、
「君んち、大体こんな感じでしょ?
まず家の北西に防風林、その手前に家神様の祠、これは多分お稲荷さんかな、そしてその反対、南東の方角にひょっとしたら馬頭観音を祀った碑があるかも。
違う?」
と。
完璧だった。
教室は激しくざわついた。
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posted at 17:30:38
@nyol2novel 時速1光年じゃ銀河間鈍行列車どころか恒星間鈍行にもなれない恐怖(太陽系最近の恒星はケンタウルス座α星の4.2光年)
宇宙は広いなぁ……
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posted at 17:25:30
@nyol2novel 食性も好みも違う哺乳人類、ケイ素生物、アストラル体、電子生命体たちが、銀河間鈍行列車に乗って格安卒業旅行に出向き、行き当たりばったりに現地の飯を食っては為にならないレビューをたれるスペースオペラですね。
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posted at 17:01:37
米の問題に関してはゴスリリでもちょっと触れたことがある。南部でのことだ。リリオは好み、トルンペートはいまいち。そしてこの米は「輸入品」であり、南部で栽培され、常食されているものとも違う。
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posted at 16:45:18
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艦これ鹿島のつもりで作ってたらポーラになった……
Picrewの「強い女メーカー」でつくったよ! picrew.me/share?cd=OkHcp... #Picrew #強い女メーカー
posted at 13:45:40
好きな人に感想等を送る時の「これからもすごく楽しみにしてます。でも決して急かそうというつもりではなくご自分のペースで無理なく楽しみながら創作してほしいです。どうか健康に気をつけて毎日幸せでいてください」という気持ちを失礼のないようにかつ簡潔に伝えるの難しいからそういう言葉が欲しい
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posted at 12:36:46
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「いや私が、手ぬるかったのだな」
炎は蛇のようにうねって伸び、座席の反対側に立てかけた長剣の銀の鍔に巻き付いて、手元へ引き寄せる。熱された鍔元からは隠れていた紋章が浮き上がっていた。
カシナンサ男爵家の印が。
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posted at 03:49:33
◆◆◆◆
教会を離れて、黒馬が引く馬車に収まった青年は、冷え始めた大気に乗って届く鐘に聞き入りながら、尖った耳にかかる金髪をかきあげて、皮肉な笑みを浮かべた。
「靴屋か…面倒なことだ…」
指を立てると、蒼い炎が灯る。正真正銘のエルフの魔法の力だった。
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posted at 03:45:15
"あの靴屋のトムを気にかけてあげて"
「は…」
"どういう訳か、あの靴屋は…つながっている気がする…エルウィンデルに"
「姫様、まだそのような」
"お願い"
「…承知いたしました」
主従が密やかな会話を交わすうちにも、聖堂と一続きになった鐘楼からは時を告げる音が響き渡る。
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posted at 03:41:06
「姫様。何か気がかりなことでも」
身振り手振りで返事がある。
"うかつだったかもしれない"
「先方に対しては十分に慎重でいらしたかと」
"靴がうれしくて、皆に見せびらかしてしまった"
「それしき」
"悪い予感がする…靴屋のトムに禍を招いてしまった気がする"
「…まさか」
"イデラ、どうか"
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posted at 03:38:55
穏やかに拒む仕草が続く。
「おや、意地悪をされるのですね。ますます興味が出てきましたよ」
伯爵家の二の姫はかすかに眉に皺をよせたが、すぐに解いた。
とがった耳に金髪碧眼白膚の若君は、鷹揚な面持ちのまま辞儀をする。
「次に会う時はきっとあなたと揃いの靴を履いてみせますとも」
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posted at 03:34:12
「確かに…ただ私には似合わないでしょうね。いささかわざとらしくなりすぎる…エルフの履くような靴、と評判のものを…」
ハイウーンは穏やかに髪をゆすった。青年はいっそう相好を崩す。
「そう…私にもご紹介いただけませんか。その靴屋を」
令嬢は漆黒の瞳で、縁談の相手を眺めやった。
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posted at 03:32:04
◆◆◆◆
「美しい靴ですね…あなたにとても似合います」
エルフの血を引く公達が、黒髪の貴婦人に語り掛ける。
手振りで礼を言う女に、男は微笑んだ。
「ええ、最近はやりの職人のものだとか…しかし、あなたのような身分の方までつけているとは…」
また無言の答えがある。
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posted at 03:28:41
斑が入った灰色の双眸を、侍女は覗き込もうと身をかがめて、はっとして突き放し、遠ざかった。
「…私も姫様にあてられたな」
「あのう…このことは…」
「分かっている。これは私とお前だけの秘密だ…姫様にも明かさぬ…心得ている…代わりに」
「はい」
「次の蜜湯には茉莉花を利かせてくれ」
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posted at 03:20:36
「お前に悪事が企めぬのはしばらく観察していて分かった」
「…はうう」
「だが…やはり腑に落ちぬ…子供にあのような熟練の技が…それに…」
イデラは剣胼胝のある指を伸ばし、トムのとがった顎をつかんで上向かせ、覗き込む。
「やはりエルフが化けているのか?」
「え??」
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posted at 03:18:19
「だめ!」
トムが叫ぶ。イデラは首をかしげる。
幼い靴屋には見え、伯爵令嬢の側仕えには見えない小人が、針や鋏を手に今しも飛び掛かろうとしていた。
「…色々、あの、あって、でも、ハイウーンさんと、イデラさんに、わるいことは、おきない、から」
貧乏ゆすりする少年に、侍女は溜息を吐く。
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posted at 03:16:25
イデラの腕がすばやくのびて、つけひげをむしりとった。
「!!?」
さらに後ろにまわって、詰め物を抜き取る。
「なにする!!ですじゃ!」
「…美貌の若者が出てくる、とはならんか」
「はうう」
「子供とはな」
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posted at 03:13:00
「女王のお気に入りで、えっと…あいじ…ん?…で足がはやかったですじゃ」
「ふむ」
「女王の言葉を、誰よりも早く遠くに届けるために、小人に七里を一歩で駆け抜ける魔法の靴を…作らせたですじゃ…」
「それで」
「けれども、小人達は、しはらいに女王の髪を求めたですじゃ」
「髪だと」
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posted at 03:10:10
「何と書いてある」
「たぶん…エルウィンデルの七里靴の書という、ですじゃ」
「ではそれだ。姫様はエルウィンデルという名にとりつかれている」
「…エルウィンデルは」
封印を解き読み始めてしまうトム。
「エルウィンデルは…妖精の女王の飛脚の名前ですじゃ」
「飛脚?」
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posted at 03:08:18
イデラはトムに何かもっと話しかけてまた台詞をとぎらせた。
「その…姫様からお前によろしくと。会いに行けずすまないと」
「ありがとう、ですじゃ」
「それと、これは姫様からの贈り物だ」
「え、すごいですじゃ」
本だった。革の装幀を施した本。
「何の革か分かるか」
「…一角獣…」
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posted at 03:05:12
特にいい考えは出なかったので、少年はそのまま眠りにつき、ハイウーンとイデラの礼拝用の靴作りにとりかかった。
小人達が手伝うと、靴は三日で仕上がった。
令嬢の命で受け取りに来た侍女は試すすがめつして言った。
「見事だ。魔法のようだな。お前がエルフだとしても信じる」
「えへへ」
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posted at 02:58:59
トムは貧乏ゆすりをする。
「親方を…ころした…犯人」
「かもしれないぞ」
「確かめてみるか」
「やつの足型は」
「靴づくり手伝ったお前も覚えてるだろうが」
「顔は隠せても」
「足型は変えられない」
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posted at 02:55:37
旋風のように去って行った侍女を、靴屋はぽかんとして見送った。
客がいなくなると、すかさず小人達が集まってくる。
「ありゃあ、死ぬ間際でも俺達は見えない類だな」
「それはそうと、聞いたか」
「妖精の血を引くような男だとよ」
「面白いじゃねえか」
「匂うぜ」
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posted at 02:53:26
職人がずっと貧乏ゆすりをしているのに気づいて、男装の侍女は立ち上がった。
「くだらぬ話を長々と済まなかったな」
「とんでもない、ですじゃ」
「トム…お前、妻はないのか」
「つま?」
「立ち入ったことを聞いたな。さらばだ」
「はいですじゃ?」
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posted at 02:51:07
「私も尼上がりでおかしな話だが、どこか信用ならぬ…そもそもかの家の当家とは政の上での争いがあったのだ。向こうは隣国との好戦派で、姫様のお父上は和平派…それを…後を継がれた姫様の兄上は弱腰で…融和の機会などと」
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posted at 02:49:45
「だがあの通り、姫様は声が出ぬ…それが…両家の障りになっている」
「ですじゃあ…」
「なんださっきから」
「な、なんでもないですじゃ」
「まあお前などにする打ち明け話ではなかったか」
「ですじゃ…」
「本音を言えば姫様の縁談には反対だ。大司教の甥で一時は騎士修道会の僧であったらしいが」
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posted at 02:48:01
「よかった、ですじゃ」
「エルフが履くような、という評判だがその通りだな。私も足が軽い。皆そういうらしいが…姫様はエルフがお好きでな」
「ですじゃ…」
「…その姫様に縁談がある」
「ですじゃ」
「相手はエルフの血を引くと噂のある容姿の若君でな」
「ですじゃ!?」
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posted at 02:46:05
侍女は腕組みをする。
「私はこの通り、騎士修道会の尼あがりで、女らしいことはあまり分からない」
「ですじゃ?」
「姫様は御父上を亡くされて落ち込んでおいででな…お会いした当初から、どこか沈みがちではあったが…」
「ですじゃ…」
「だがお前の靴を得てからはずいぶん明るくなられた」
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posted at 02:44:21
「都の茶屋かここは」
「おきらい、ですじゃ?」
「いや。よいが」
「えへへ」
イデラがぎろっとにらむと、トムはあとずさった。
「ごめんなさい、ですじゃ」
「いちいちびくびくするな。いい年をして貫禄のない」
「はい…ですじゃ…」
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posted at 02:42:16
「私も気に入った」
「うれしい、ですじゃ」
「別の靴も作ってほしい。礼拝用の」
「わかりました、ですじゃ。イデラさんのも、作ります、ですじゃ」
「私のは…ううむ…頼もう」
侍女は応接用の椅子にどかりと座り込んでまた蟻蜜の湯をすする。いつの間にか薄荷の味が加えてある。
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posted at 02:40:55
ハイウーンが裏通りの靴屋まで来るのは容易ではなかったが、侍女の方はしょっちゅう姿を見せるようになった。いつも男装で、これみよがしに剣を帯びてだったが。
「一応名乗って置く。イデラだ」
「トムですじゃ」
「知っている。姫様はお前の作った靴をいたく気に入った」
「うれしい、ですじゃ」
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posted at 02:39:16
「いつでも、どうぞ、ですじゃ!」
トムが元気よく答えると、侍女はまたなぜか赤くなって、咳ばらいをする。
「では今日はここまでだ。邪魔をしたな」
「とんでもありません、ですじゃ」
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posted at 02:37:09
「し、知らなかった、ですのじゃ」
「知らなかったではない。まるで子供のような、お前は」
侍女はちびの靴屋に詰めよろうとし、令嬢の一瞥を受けて立ち止まる。
「申し訳ありません」
丈高い伯爵家の娘は、じっと職人のつけ髭を見つめた。
「また来てもいいでしょうか」
と手振りで尋ねてくる。
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posted at 02:36:15
小人達が楽しそうに珍客を見守っている。
巻物の一つをハイウーンは手に取って広げる。
「エルフ語…?職人、なぜお前がエルフ語の書物を持っている。平民がこのような知識に触れるのは、ことによっては法を犯すのだぞ」
「え、ええ?」
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posted at 02:34:04
「…よく分かった。姫様はほかにも見て回りたいとおっしゃっている」
「狭いけど、どうぞ、ですじゃ」
ハイウーンはあれこれに手を伸ばしては取り上げ、しげしげと観察している。侍女はそばを離れない。二人とも猫のようにしなやかな足取り。
あちこちから忍び笑いが聞こえて、トムはぎくり。
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posted at 02:32:08
差し出す本を、侍女と令嬢は同時に受け取ろうとしてあわてて従者が主人に譲る。トム爺はいちいち指さして説明する。
「これは鰐の皮ですじゃ。南の国の怪物ですじゃ。見たことないですじゃ。でもきっときれいないきものだと、思うですじゃ。それからこれは」
三人は見本の冊子を覗き込む。
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posted at 02:30:27
トム爺はつけひげを直しつつ、せむし用のつめものの位置を整えながら、わざとよたついて先へ立つ。
「火事があって…焼けてしまったですじゃ…でもちょっとずつ、直してるですじゃ」
「ふむ。外の通りに比べるとお前の住処は清潔だな…」
「どうぞ、ですじゃ!」
色々な革の見本をまとめた冊子。
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posted at 02:28:35
慌てて応接の椅子に座らせるトム。蟻蜜を砕いてお湯に溶かして出す。
「甘い…」
ハイウーン姫も手振りでおいしいと伝えてくる。
「職人。お前は何者だ…こんなものは…下町の職人の家で出るものではない」
「たまたま、ですじゃ」
「それにお前の身ごなし、せむしの年寄りにしては妙に」
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posted at 02:25:30
ところがそのハイウーン姫と侍女は御しのびで工房までやってきたのだ。
「いらっしゃいませ、ですじゃ…?はれ?!」
「しっ、声が大きい。仕事の進捗を確かめにきたのだ」
「はえ…ですじゃ」
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posted at 02:23:57
トムはぼんやりできかけの靴を見つめた。
「ハイウーン姫…僕、知ってる」
「お前がうんと小さい頃の許婚だろ。むにゃむにゃ寝言でも呼んでた」
「え!そうだった?」
「そうだったぞ」
「むむう…」
「こいついっちょまえに照れてやがる」
「色餓鬼だ!」
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posted at 02:22:59
将来は七里靴を作れる職人に育つかもしれない、となると、小人達の態度もあれこれ優しい。
「…うまくできてる、と思う」
「できてる」
「いいできだ」
「妖精の匂いとは違うが、魔法を感じる」
「ああ、お前の技と心がこもってるぞ。いつもより強く」
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posted at 02:21:31
トムは黙々と仕事をした。
酒場で肉団子と野菜くずの汁物を平らげ、作業台に向かい、そのまま眠り込む。寝ているあいだに小人達が手伝い、ついでに身だしなみも整えてやる。
「まったく、じじいみたいに手がかかるようになってきたな」
「だがお前はまだ餓鬼なんだ」
「無理したら死んじまうぞ」
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posted at 02:19:28
なんだかんだ二人分の注文をもらって帰った。
「女の靴か。妖精の履くような靴だと」
「七里靴の練習台になるな」
「やってみろトム」
「分かりました、ですじゃ」
「その喋り方は工房ではやめろ」
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posted at 02:17:49
ハイウーン姫はまた話しかけると、侍女がますます慌てふためく。
「いえ、そのような」
「おつきの方の靴も、ですじゃ?」
「忘れよ靴屋」
「採寸させてくだされば、いっしょに作ります、ですじゃ」
「よいから!」
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posted at 02:16:04
激しい手振り。
「ハイウーン…あ!思い出し…てない、ですじゃ」
「姫様!」
侍女が慌てて割って入る。
「今聞いたことは忘れよ。靴屋」
「はい、ですじゃ」
「…お前、何者だ」
「靴屋のトム、ですじゃ」
「ふうむ」
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posted at 02:14:31
貴婦人は見下ろし、急に足をひっこめる。
「あ、ごめんなさい、ですじゃ?」
また手振りをする。靴屋は一生懸命読み取って答える。
「名前ですじゃ?トムですじゃ」
また手振り。
「エルウィンデル…どこかで聞いたことがある気が済ますじゃ。でもちゃんとは思い出せませんですじゃ」
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posted at 02:11:46
「お前、手振りの言葉が分かるのか」
侍女が驚いたように尋ねる。トム爺は首を傾げた。
「そういえば…ちょっと、わかります、ですじゃ」
「町の職人にしては博学な…よい。姫様は喜ばれる」
脚に革手袋をはめた指で触れ、測りの道具を出し爪先から踵、親指の付け根から小指の付け根までを調べる。
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posted at 02:09:33
靴屋は貴婦人に向き直り一瞬凝然とする。
流れる闇夜の滝のような黒髪と暗い瞳。雪のように白い肌。しかし体つきは深窓の令嬢というものではない。男より丈高く、腕も足も引き締まって力強い。
「…どうも、ですじゃ」
姫君は静かに身振り手振りをする。
「いいえ、はじめまして、ですじゃ」
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posted at 02:07:05
トム爺はつけ髭の奥から瞳をきらきらさせて、真剣に侍女を向いて耳を傾ける。
侍女はどういう訳か、ちょっと顔を赤らめて、一瞬口をつぐむ。
「まじめな職人と聞いている。励め」
「がんばります、ですじゃ…失礼しします、ですじゃ。足の採寸をします、ですじゃ」
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posted at 02:04:55
部屋に入ると、美しい貴婦人がひとり。そばに侍女が控えている。
「苦しゅうない」
「ははあ、ですじゃ」
「靴屋。姫様が求めているのは"エルフが履くような靴"だ。街歩きでも野歩きでも、馬にまたがっても、宮中にあがっても、みめよく、軽やかで、動きやすい靴だ。しかも気品を損なわず…」
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posted at 02:02:59
「それと、お前読み書きはできるか」
「ちょっとだけ、ですじゃ」
「ならばよい。お前に会う方は直接話はされない。付添が離すが、筆談を求められる場合もある。分かるか」
「たぶん、わかり、ます、ですじゃ」
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posted at 02:00:48
濠も囲壁もなくとも、まるで砦のようにいかめしくものものしい。各家の衛兵も少数ながらいて、鎧兜に槍や弩で油断なく守りを固めている。
トム爺は通用口から入って、採寸のために貴族の私室まで上がる。
「これから会うのは大変に身分の高い方だ。粗相のないように」
「気をつけます、ですじゃ」
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posted at 01:59:31
トム爺の評判はますます広がり、とうとう子爵家や伯爵家までが呼びつけるようになった。上街には各地に領土を持つ貴族の別邸が構えられており、都に向かう際の旅籠がわり、あるいはさまざまな用事で滞在する際の根城として使っているので、そこへ行く。
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posted at 01:56:13
少年は夜には小人達が盗んでくる本を読んだ。多くは人間語の本、まれにはエルフ語の本も。
「七里靴の作り方は分かりそうか」
「ううん」
「無理をしてぶっ倒れるなよ。お前が死んだら、またいちから弟子を育て直すのは大変だ」
「うん」
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posted at 01:54:07
浮浪児達は代わりに、トム爺にあれこれとうわさ話をもたらした。縄張りの外の話もちょっとずつ。
「お偉いさんたちが騒いでる」
「死んだの死なないのって」
「俺達が死んでもさわぎゃしないのにさ」
「くだらねえ」
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posted at 01:52:51
トム爺が店を立て直してから、変わったことがもう一つ。それは周辺の浮浪児が皆大きいのもよちよち歩きのも靴を履くようになったことだ。見た目はみすぼらしく、おんぼろの靴だが、とても頑丈で壊れにくい。塀をよじ登るのも、役人から逃げ回るのにもぴったり。
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posted at 01:50:51
だが小人達はトムに従った。ただ人間のためにただ働きする呪いのせいばかりではなかった。
「お前はまだちびだがトム」
「あのじじいに似てる」
「それにお前は…なんだかエルフの血を引く貴公子みたいだな」
「妖精の匂いはちっともしないのにな」
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posted at 01:48:58
「どうだ。こいつが都で最新流行の意匠だぞ」
小人達がどこからかちょろまかしてきた婦人靴を並べるが、トムは貧乏ゆすりをしてから首を振る。
「どうしてだめなんだ」
「歩きにくい」
「歩くための靴じゃない見せるための靴だ」
「歩きやすい方がいい」
「生意気になってきたなトム!」
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posted at 01:47:06
絶賛には、目を輝かせて礼を言う。
「ありがとうございます…ですじゃ!」
「ところで…私の知り合いに、さる子爵がいるのだが、いたくおたくの靴を気に入ってな…ちと難しい注文をする方だが、できるかね」
「はいですじゃ」
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posted at 01:43:47
靴屋のトム爺は先代と異なり工房を清潔に保ち、自分で炊事洗濯もこなし、同じくらい働きものだった。老いぼれてはいたが身だしなみもきちんとしていて、何より偏屈なところがなかった。幼いと言っていいぐらい素直だった。
「おたくに靴をしつらえてもらってから、足が軽い。次は乗馬靴も頼もう」
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posted at 01:41:59
せむしのちびの新たな靴屋は、しかし、老齢のわりにはずいぶん元気であちこちに足を運び、死んだ弟の取引を皆引き継いだ。商売はへたで、値段の駆け引きはあまりできなかったが、仕事は早く、達者で、まるで十人もの熟練の職人を抱えた工房のように注文をこなすのは、先代と変わらなかった。
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posted at 01:38:48
「この通りちびでせむしで、弟には苦労のかけましたじゃ。ようやく、じゅ、巡礼の旅にでたら、弟がひどいことになって、もどってきましたじゃ…弟からいろいろ話を聞いてますじゃ。よろしくですじゃ」
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posted at 01:36:52
小人達は焼けこげた梁や崩れた壁を取り除き、みるみるうちに修理していった。周辺の住民はぽかんとして一日のうちに元へ戻った工房を見物した。そして髭をあんだせむしがあらわれたのを目の当たりにして度肝を抜かれた。
しわがれ声で老職人は言った。
「わしは死んだここの主の兄ですじゃ」
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posted at 01:35:22
「エルフの魔法は俺達の手に負えない。エルフは俺達に手を貸してくれない」
「だから俺達は永遠に呪いの奴隷だ」
「そう思ってたが、お前はエルフの言葉が分かる」
「ちょびっとだけな」
「エルフの言葉に通じて、小人の技を学んだ靴屋なら、もしかしたら」
「七里靴を作れるかもしれない!」
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posted at 01:32:29
トムは先回りした。
「七里靴を作る」
「そうだ!」
「よくわかったな」
小人は嬉しそうだ。
「ちゃんと、まともな七里靴を作って、東風になった妖精をもとに戻してやれれば、俺達は呪いから解き放たれる!ただ働きともおさらばだ」
「だけど七里靴はエルフの魔法が半分、小人の細工が半分」
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posted at 01:30:58
小人達は蚤のように跳び回り、またやかましく議論をした。
「いいだろう」
「どうしてあんな業つくじじいの仇なんか討ちたいのか知らんが」
「血讐なんぞ靴屋の小人のがらじゃないが」
「やってやろうじゃないか」
「ただし!」
「そうただし!」
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posted at 01:29:24
「俺達小人にやれってのか?」
「よってたかって人間を刺し殺せって?針や鋏で?」
「頭がおかしいぜ」
「妖精の匂いがする刺客だぞ」
「お前が囮になって?」
トムはまっすぐ助人の群を見つめ返した。
「うん」
「こいつ!」
「臆病者の!」
「根性なしの!」
「めそめそ小僧が!」
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posted at 01:27:18
「エルフの血を引く貴公子のつもりか?」
「靴屋のじじいに化けて?」
「復讐だって?できるはずがない」
少年はつむいてから答えた。
「できるよ」
「どうやってだ」
「どうするんだ」
きいきい声の問いかけにまた声変わり前の喉が応じる。
「小人は…人間を刺したり切ったりしてもいいんでしょ」
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posted at 01:25:30
「そうだ…客は戻ってきてこの餓鬼を突け狙うかもしれんぞ!」
「…盗賊どもを殺したようなやつだ。とてもちびにゃ叶わんな」
小人達はそこではっとしてトムを見直した。
「それが狙いか?」
「じじいを殺した犯人を」
「ひっぱり出そうってのか」
「仇討ちか」
「まるで貴族の若様だ」
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posted at 01:24:00
小人の頭領がしかし警戒するように叫ぶ。
「だめだめだ」
「どうしてだめだ」
「靴屋を続けてりゃ、七里靴も…」
「そういう話じゃない。もし靴屋が元通りになったら、じじいを殺したやつはどう思う」
「そりゃびっくりするさ」
「どういうことかと思う」
「探りを入れる」
「口封じを狙う!」
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posted at 01:22:34
「靴屋をか?」
「工房をか?」
「うん…」
返事をした少年の回りを小人の群が飛び回る。
「馬鹿なやつだ!」
「どうやって仕事をとってくる」
「待てよ…変装術があるぞ!」
「そうだ!じじいに化けて仕事を受けるか?」
「背丈が足りない」
「せむしのふりをすりゃいい」
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posted at 01:21:11
トムは小人達を見渡した。
「元気に…してくれようとして」
「生意気なことを言うようになったぞ」
「かしこぶりやがって」
靴屋の弟子はにこっとした。
「ねえ…お願いがあるんだけど」
「なんだ」
「言ってみろ。人間のためにただ働きするのが俺達の呪いだ」
「これ…直したい」
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posted at 01:19:53
「ちび。こんなめにはさんざんあってきたんだろ」
「よく涙がつきないな」
「あんな業つくじじいなんぞが気の毒か」
「お前を蹴飛ばして殴ったやつだぞ」
「怒鳴りまくってただろう」
少年は深呼吸した。
「ありがとう…」
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posted at 01:18:07
一度もあったことのない教区の司祭があらわれ、親方の葬儀をし、埋葬をした。二人の盗賊の屍は辻に埋められた。
見習いはぽつんと半焼した工房に立ち尽くした。
「…妖精は禍を呼ぶといったろ」
「馬鹿なじじいだ。欲の皮がつっぱりすぎだ」
「おいちび。泣いてるのか」
「震えて泣いてるぞ」
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posted at 01:16:42
◆◆◆◆
その夜、靴屋は燃え上がり、親方は死んだ。二人の盗賊も。
焼けただれた屍ははっきりと判別はつかなかったが、刀傷があり、争ったあともあったという。有り金は持ち去られていた。
盗賊二人と親方が互いに殺し合ったと役人は簡単に考えて終わらせた。
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posted at 01:14:43
トムは親方をじっと見てからおとなしく酒場の方へ走って行った。斑の入った灰色の瞳だけに見える小人の群があとへついていく。
盗賊達は工房の陰に溶け込み、親方は靴を前に腕組みして立ち尽くした。
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posted at 01:12:28
親方はまた舌打ちした。
「おとなになって王様の靴を作りゃけちなぬすっとなんざ目じゃねえさ」
「ほっほっほう」
「このお嬢ちゃんみたいな坊やがか。なるほど。お前さんが言うならそうだろうさ」
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posted at 01:11:04
靴屋はうなった。
「俺だけでも十分だが、お前がきゃんきゃんうるさいんでな」
泥棒達は狼のように笑った。
「鼻の効く子犬だ」
「靴屋にしとくにはもったいねえな。おじさんのとこに来いよ。もっと稼げるぜ」
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posted at 01:09:31
老職人が扉を開けて見習いを追い出すと、入れ替わりに二人の男が入ってきた。どちらも髪の毛は白く、片方は剥げているが、目つきは鋭く、腰に短剣を吊っている。
「あの…」
「俺の古い客だ…話しただろうが」
「あっ」
盗賊。忍び歩く靴を欲しがった。
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posted at 01:08:06
靴は仕上がった。客の受け取りは夜更けという約束だった。
「いい仕事をした」
靴屋は呟いてから、弟子を見下ろした。
「トム。お前はよそへ行ってろ」
「どこへ?」
「酒場でもどこでもいい」
「でも」
「さっさとしろ…おい小人ども聞こえるか。このちびにくっついてろ」
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posted at 01:06:28
小人達は不安そうだったが、手伝いはやめなかった。
「お前は眠っていいぞトム」
「昼のあいだに俺達のしてほしい仕事をしてくれたからな」
「お前はまだ小さいが、腕はもうあのじいさんをしのぎそうだ」
「小人に教わりゃそうなる」
「十かそこらで倍は年上の年季明け職人よりうまいぞ」
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posted at 01:01:50
「後ろ暗い仕事をするのはこれが初めてじゃない。俺が独り立ちしたてのころは、盗賊のために靴を作ってやったもんだ。今度の客が欲しがるようなやつをな…もうちょっとちゃちだが」
「…でも」
「今度の客がうさんくさいのは承知だ。いいさ。乗ってやる」
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posted at 01:00:02
だが老職人は手を上げようとはせず、きれいに結ったひげをひっぱった。
「俺も年を食った。そろそろ引退するつもりだ。その前に稼ぎたい。わかったか」
「…は、はい」
「金貨が三百枚あれば一生遊んで暮らせる。手付の五十でも聖地に巡礼に行っておつりが出る額だ」
「でも」
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posted at 00:57:33
トムはおずおずと切り出した。
「親方…あのう…」
「なんだ」
「この仕事、あのう」
「はっきり言え」
「なんだか、こわい…です」
「小人どもがそう言ったのか」
「妖精の匂いがする。気を付けろって」
「エルフか。ふん。お前はエルフが嫌いか」
「こわい…」
「臆病ものめ」
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posted at 00:55:36
親方が新たに始めた仕事は、そうとう難しいようだった。
数年前なら追い払っていた弟子を工房に入れ、あれこれと手伝わせた。
「どうだ…ここの素材は忍山猫でいくが…合わせる革は何が良い」
「わからないです」
「小人ならどうする」
「…えっと心材に薄くて丈夫な木を入れて」
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posted at 00:52:59
「壁を鼠のように駆け上り、早馬のように駆けられる」
「難しい靴だな」
親方はうなった。
「もう一つ。しかけをして欲しい」
「しかけ?」
「親指に力を入れると、爪先から刃が飛び出す」
「くだらん」
「踵を打ち合わせると刃が出る」
「ばかばかしい」
「護身用だ」
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posted at 00:48:46
トムはしばらくとまどったが、妖精の匂いのもとはすぐに分かった。
新しい客だ。どこかの貴族の使いだとかで、ほっそりして背が高く、襟を高く上げ、帽子を目深にかぶり、押し殺した声で喋って正体が知れない。
足しげく工房に通い、細かく注文をつける。
「足音を立てず、足跡を残さず」
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posted at 00:46:38
「ちがうな。こいつは妖精の匂いのもとじゃない」
「そうなんだ…」
「妖精…エルフは不吉なもんだ。あいつらは美しくて賢いが、いつも禍をもたらす」
「…そ、そうなの」
「小人にも人間にも…妖精自身にもな…エルフには気を付けろよ」
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posted at 00:44:28
「ちぇ。こんなんじゃいつまでたっても七里靴なんか作れやしないぞ」
「人間はすぐ大きくなる。辛抱だ」
目を回しているトムのそばで、小人達が訳の分からないことを愚痴る。
「妖精といえばな、ちび」
「うん」
「この家に妖精の匂いがするぞ」
「そう?」
少年は驚いて持って帰った道具を見せる。
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posted at 00:42:58
おかげでエルフ語の学問については依然として中途半端なままだったが、どうやら小人が教材にと持ってきた四つの巻物は同じ内容が書いてあるようだった。人間語で書かれたものと読み比べていると、子供の頭にはぐるぐるしてきてなんだか分からなくなった。
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posted at 00:39:52
めまぐるしい日々は唐突に終わりを告げた。
いかさま師はある日、あやしげな道具を残したまま橋の下から忽然と消え失せていた。浮浪児達から伝え聞いた話では、近所で貴族のお仕着せをまとった兵士が、誰かを探している姿が見えたという。
トムは仕方なく置き土産を集めて持ち帰った。
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posted at 00:38:19
「喋り方が下手だな。親方はもっと不機嫌そうだ」
「まったくこいつは大根役者だ」
「次は客にふっかけるときの芝居をやれよ」
ふざけ回りながら、しかし靴を作る手は片時も休めない。
トムは呆れながらも小人達の求める通りに芝居のまねをし、また仕事に戻り、明け方前には泥のように眠りについた。
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posted at 00:35:53
「面白い野郎だ。お前をエルフの血を引く貴公子にして、次は年寄りにしようってのか。頭のおかしいやつだ。ちょっとやってみせろ」
夜になると小人達はぐったり疲れ切った少年から話を引き出し、余興を演じるように要求する。仕方なく従うとうるさくけち
「おっと違うぞ。親方はもっとのろくさい」
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posted at 00:34:02
「つけ髭、服のつめもの。いいか、こういう小道具はしょせんはつけたりにすぎん。本当にたいせつなのはお前の身ごなしだ。お前は子供だから跳ねるように歩くが、老人だったら這うようによろめきながら歩く…そうだ。想像がつくみたいだな。そういう身ごなしの違いが一番大切なのだ」
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posted at 00:32:03
だがエルフ語や人間語の教授はそこそこに、いかさま師はどんどんと変装術の方にのめり込んでいった。
「この薬を沸かして蒸気を吸い込めば、半日のあいだしわがれ声が作れる…この世のどこかには蟾蜍(ヒキガエル)さえ麗しい喉で喋り出させるエルフの貴腐酒というのがあるらしいが、その逆だな」
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posted at 00:30:31
親方の方はおさまらなかったが、少年が靴のかかとに縫い込む文字の意匠に誤りがあるので、直してみては、とおずおずと申し出た際、烈火のごとく猛り狂ってから急に落ち着いていった。
「文字か。このみみずののたくったようなのは…役に立つ。だがなまけるのは許さんぞ」
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posted at 00:28:01
非公開
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親方や小人達はすぐに弟子が道を踏み外しているのに気付いてがなり立てたが、小人の方はエルフ語の巻物の中身をつっかつっかえ読み始めたのを見て許す気配になった。
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posted at 00:24:02
「俺は都に出て錬金術の師に学んだが、生来芸術家の肌でな。おまけに錬金術は食えんと来て、都の芝居小屋で働き始めて…くだらぬ大根役者どもを美姫や英雄に変えてやった…脚本書きもやったぞ…だが…演目に異端の疑いがかかってな…分かるか?」
「ううん…」
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posted at 00:22:16
いかさま師の押し付けに逆らいきれず、トムは使い走りをずるけて本物の学問なるものを教わり始めた。あやふやなエルフ語の知識、人間の文字、古いものと新しいもの。初歩の算術。変装用の薬や道具の扱い。特にいかさま師が熱心だったのは変装術だ。
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posted at 00:19:58
いかさま師の顔がぱっと輝く。
「そうだ。俺がお前に本物の学問を授けてやる。個人教授だ。靴屋の下働きにはもったいない宝だぞ。食い物はその対価として持ってこい」
「いいよ…」
「本物の学問だぞ?」
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posted at 00:18:06
「待て。哀れむんじゃない。俺は本物の学問を修めたんだ。お前みたいな職人の見習いとは訳が違う。いいか。お前が貴族を演じられたのも俺が教え込んだ…」
いかさま師がエルフ語を口ずさむとトムはつられて後を続けた。
「よく覚えているな…そうだ。お前はそれだけは上手だった」
「うん…」
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posted at 00:16:58
ただでさえ息をつく間もなく忙しいのに、靴屋の見習いは時間を盗んでいかさま師のもとへ麺麭と肉団子を運んでやった。
「いいもの食ってるな。この街じゃ職人の暮らし向きはいい。なにせ河と街道が交わって…おまけに近頃戦もないし…畜生、俺だってつてさえあればこんな」
「もういくね」
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posted at 00:15:22
なんとかふりはらって逃げようとすると、いかさま師はうずくまって泣き出した。まるでかつてのトムのように。
「どうしてこうなったんだ…どうして…あの計画がうまくいってれば、今頃俺はカシナンザ男爵家の侍医として…上つ方の仲間入りをしてたのに…」
「…ねえ」
少年はおずおずと声をかけた。
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posted at 00:12:56
「どうだ。もう一度エルフの血を引く貴公子にならんか。俺の変装の腕はまだ鈍っちゃいない。俺とお前なら」
「はなして」
「くそ。じゃあいい。何か食い物をくれ。金は?お前の面倒を見てやった恩があるだろう」
「しらないったら」
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posted at 00:10:28
「エルウィンデルか?」
「しらない」
逃げようとする肩を掴まれる。
「そうだな。エルウィンデル…ちがうトムだ」
「しらないったら」
「相変わらず嘘がへただな。ふん。相変わらず髪も眼も肌も汚らしいが、顔かたちは悪くない。俺の見立ては間違ってなかった」
あのいかさま師だった。
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posted at 00:09:18
とうとう噂にある橋を渡らねばならなくなった。
なるたけ急いで走り抜けようとするのだが、まるで待ち構えていたように下から乞食があらわれ、すごい形相で何かよこせとわめいてきた。
「おい。天なる母の名において、憐れな同胞に…」
二人の目が合う。
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posted at 00:07:57
トムはぶるっと震えて、とうてい投石器で追い払える野良犬よりやっかいな輩がいる界隈には近づきたくないと思った。
だが仕事は靴屋の注文はしばしば大商人や工匠の親方、門閥からさえ入るので、そちらに一人で駆けて行かねばならない折もあった。
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posted at 00:06:11
街は大きく、縄張りから遠いところの話は浮浪児達もあやふやだった。
「金持ちどもの屋敷があるところじゃ、馬に気を付けないといけない」
「蹴り殺されるって」
「見たことある?馬」
「あるよ。でっかい糞する」
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posted at 00:04:06
野良犬にも浮浪児にも襲われなくなったので、おおむね路上は平穏だった。
大人の追いはぎやごろつき、凶暴な乞食は、浮浪児が教えてくれた。
「四つ通りを過ぎた向こうの橋の下にまた新しい乞食が住み着いたけど」
「今度火でもつけてやるさ」
「あそこはよその縄張りだぞ」
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posted at 00:02:24