にょんギツネ
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- 自己紹介 日々読書や執筆、お絵描、文字の観察などを愉しんでおる寶曆6年生まれの仙人見習いな267歳幼狐なのじゃ!18禁要素注意じゃよ? ヘッダーは @une_back に依頼したのじゃ。褒めて質問お題箱を兼ねた投書箱 → http://marshmallow-qa.com/nyol2novel
2021年05月24日(月)
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ランドルファは、とっさにクレネレオンを投げだすと、まっすぐに両腕を掲げた。
そうして落ちてくる月を受け止めた。
夢の国の大気を引き裂き、外なる宇宙の霊気を帯びて飛来した、天体は冥々と輝き暗みながら、脈打つ黒い竜巻となって収束し、ついに襞飾だらけの裳裾を帯びた女装の青年となる。
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posted at 23:35:16
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視線を感じる。周囲。森の中か。違う。大地の底で巨人が飢えているのか。そうじゃない。
少女は若者を抱えたまま頭上を仰ぎ、そうして息を呑んだ。
三日月がある。中天に。
笑いながら見下ろしている。黒紫の唇をゆがめて。
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posted at 23:33:04
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そのままそうっと運び出そうとしたところで、はしっと足に毛むくじゃらの指が食い込んだ。
"来たな。夢見"
"長様…ひさしぶり"
"俺の…妻に…ぐう…"
寝ぼけている。
”…ま、まぎらわしいなあ”
そっと振りほどこうとしたところで、急に寒けがした。
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posted at 23:31:33
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「はなせ!僕はセレファイスの夢見る王の世継!このような扱いは耐えられない!お前達のおかしな鳴き声は何も解らない」
”青白のっぽどもは汚らしい声で叫ぶ”
”かわいい鳴き方を教えてあげなきゃ”
”袋を片方ちぎっちゃおうか”
”それより鼻をとっちゃうのは”
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posted at 22:54:28
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"さあ飲め!うすらでかく青白く醜い婿よ。月樹の酒をズーグのほかにふるまうのは、あの娘を除けばお前が初めてだ"
盗品らしき石椀に入った何か尋常ならざる液体を押し付けられているのは、明らかに喜びの都セレファイスの貴人。木の蔓を裂いて編んだ縄で後ろ手に縛られているが、目だったけがはない。
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posted at 22:49:05
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そこではズーグの長が、酒盛りの真っ最中だった。すでに相当にきこしめているのか、例の震えるような言葉は相当に甲高くまた上ずっている。
それでも地の底で狩りをするガグより密やかに森を歩ける夢見人でなければ、十間以内に近いただけで危険を察し、ねじくれた幹と根と枝の隠れてしまっただろう。
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posted at 22:46:33
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ズーグの長の隠れ処を、妻達は客にこっそり耳打ちした。
内心は夫の新たな同盟者を好んでおらず、昔から付き合いがあり信の置ける夢見の娘との絆を結び直したいと願っていたからかもしれない。
それから妻達は、木の下の方で退屈そうにしている若い戦士に褒美の吊るし腐肉を投げ与えた。
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posted at 22:32:08
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褐色で毛むくじゃらの少女、のように見える森の奥方の群は、かわるがわる古馴染の客と話をする。
"あなたと長が追いかけっこをしたら、どちらが勝つにしても百年はかかりますよ"
"こっそり近づいて、隙を見て捕まえる"
"長が…月樹の酒に酔い始めたらそういう機会もあるでしょう…ただし"
”うん?”
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posted at 22:26:23
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"長はもう別のものと手を結んだのです"
"わかってるよ!でも話をさせて!"
"長はまだあなたを許してはいないかもしれません。まさか害をなそうとはしないでしょうが…"
"私ならへいき。お願い!"
"あなたが無理に会おうとすれば長は森のどこかへ逃げてしまいます"
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posted at 22:23:23
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少女が一番高い二本の木の梢にかけた小屋まで達すると、長の妻数人が出迎える。
"長は会われません"
”ひさしぶり!”
ランドルファは途中で摘んで来た光る茸を贈りものにする。毛むくじゃらの女児、に見える生きもの達は嬉しがりながらも困ったようすだ。
"夢見よ夢見。すぐここを立ち去りなさい"
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posted at 22:20:58
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”長に客を連れて来た。月から苗を持ってきた夢見だ”
"ランドルファ…ランドルファだ"
"長とよりを戻す気になったのか?"
”猫畜生どもの密偵になって来たのかもしれんぞ”
"あの夢見はズーグに悪さはしない"
”だけど長は…”
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posted at 22:17:40
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"ウルタールの千匹の猫畜生が邪魔しても、月帰りのランドルファを長に会わせる!"
"ありがとう!でも、あんまり大事にならないように、こっそり会いたいんだ"
毛むくじゃらの童児、のように見える戦士の案内で、小さな英雄は森の奥にあるズーグの集落に辿り着いた。
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posted at 22:13:33
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それからズーグ語を思い出しながら目をまん丸にしている褐色の民に話しかける。
"森の兄弟さん。私は夢見のランドルファ。あなた達の長に会いたいの"
"ランドルファ!枯れちまった月の樹のかわりに、夜空から苗を持って帰って来たランドルファ!?"
"わあ覚えててくれたんだ!"
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posted at 22:10:51
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少女がそうっと後ろから近づいて、いきなり大声を出す。
「わっ!」
「ピブリブビピボォエ!!!?」
毛むくじゃらの童児のような体が枝から跳び上がり、まっさかさまに落ちそうになるのを、小さな英雄が慌てて掴んで引き留める。
「ごめんごめん…」
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posted at 22:07:59
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「ふんぬぬぬぬ…」
するとみよ万斤の重さを持つはずの巌がゆっくりと動き始める。
「よいしょおおおお!!!!」
岩戸が跳ねるように開くと、少女はびゅんっと木々の薫る外気のもとへ飛び出した。
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posted at 21:56:12
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神官達がかく語ると、幼げな娘は小さな拳で力強く平らで狭い胸を打ち叩いた。
「任せて!私が王子様を助けてくる!」
銀の輝きが鎖骨の間あたりで煌めき、祭壇の焔はひときわ高く燃え上がった。
「いつも助けてくれてありがとう。神官様達!」
「ゆけ。英雄よ」
「深き眠りの七百段を降れ」
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posted at 21:43:46
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浅き眠りの七十のきざはしを降りると炎の神殿に辿り着く。
二人の神官が夢見人の少女を待っている。
火影から読み取った大地の神々の託宣を告げるため。
「ランドルファ。永遠の英雄よ。喜びの都セレファイスの王子クレネレオンは父の諫めも聞かず、ムナールの諸都市との会盟を目指し旅立った」
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posted at 21:26:37
![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1667313120610775040/FbigT-Y1_normal.jpg)
あの子への愛が溢れてる…!!!
素敵なあの子イラストをいっぱい拾ってきて下さりTLがとても華やかになります(つω`*)
一緒にゲームしてから久しいですが、またやりたいです!
あと、あの子botを作られた貴方の力をそのうちちょっとお借りしたかったり……
これからもよろしくお願いします!
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posted at 18:50:56
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兎ノ花成海@マルチクリエイター@Thre @unohananarumi
小説書いて作詞作曲してピアノ弾いてLINEスタンプ宗教作って言語作ってwebサイト作ってちょっと絵描いてる私はマルチクリエイター。
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posted at 00:42:13