にょんギツネ
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- 自己紹介 日々読書や執筆、お絵描、文字の観察などを愉しんでおる寶曆6年生まれの仙人見習いな267歳幼狐なのじゃ!18禁要素注意じゃよ? ヘッダーは @une_back に依頼したのじゃ。褒めて質問お題箱を兼ねた投書箱 → http://marshmallow-qa.com/nyol2novel
2021年05月26日(水)
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椅子に収まって、背だけはしゃんと伸ばし、姉はぼそぼそと教わった内容を放す。弟はまたちょっと行儀悪くカートの下で足をぶらぶらさせて、黙って聞き入る。
「…あの…お、おも、面白い?」
「いいえ」
「…ぅ…」
「よくわかりませんでした」
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posted at 23:55:36
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女装の少年はちゃんと手袋をつけて待っていた。
「姉さん。こっちです」
丈高い婦人が近づいて、ぎくしゃくと腕をのばすとすぐ指と指を握り合わせてくる。
「帰ります」
指示通りに二人は並んで歩く。
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posted at 23:50:49
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非常勤の先生のやる気のなさそうな解説を、たらたらとノートにとりながら、だんだんと冷静になっていく。
不審者も警備員も男なので、とにかくどちらにも近づきたくなかった。しかし玻璃のいる初等部、中等部の敷地に出没するなら、下校の出迎えの時にどうしても危険を冒さざるを得ない。
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posted at 23:45:25
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「そういえばまた出たんだって初等部に」
「えーまたー?警察なにしてんの」
ぎくっとしてランちゃんはトイレに座ったまま身構える。ハリ君に関係がある場所の話だったから。
「ぜんぜん捕まえてくれないんだって」
「えー…やだなー」
「そんで五年生が見たって…小太りのおっさん…」
「うわー…」
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posted at 23:38:58
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このまま全身が薄緑色のライム人間になる妄想に溺れて死んでいくのだろうか。ちょっと面白くてふふっと笑ってから掌で顔をおおう。
「あ、なんか…あれの匂いしない…レモンじゃなくて…」
幻聴まで聞こえて来た。
「え?しない」
しないよ。するのは男性恐怖症ゴミクズ人間の脳の中だけでだよ。
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posted at 23:35:39
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おかげでライムが相当つらいのだが、弟は好きなのでフレーバーウォーターやめてとか言い出せない。
すべて姉の頭がおかしくなったせいなのだから。かかりつけの心療内科に定例のオンライン診察で話してみようかと思ったが絶対に精神疾患と見なされるしそれは妥当なのでやめておいた。
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posted at 23:32:56
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そうなのだ。
幻覚、幻嗅は収まっていない。それどころか悪化している。すごく汚い話だが、トイレに行くとライムゼリーとライムジュースが出てくるし、月のものもおかしい。不順とかではなく、始まってすぐ痛みが消え、かわりに薄緑の透き通った水玉が出て終わる。
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posted at 23:30:54
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ランちゃんははっとした。気づくと力一杯ハリ君の指を握りしめていたらしい。
「あぅあぅあぅ」
「どうぞ」
そうだ。言わなければ。
「いってらっしゃい」
「またあとで」
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posted at 23:20:02
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初等部や中等部の敷地と別れるところまで来ると、ほかの生徒の呼ばう声がする。
「加田さーん!」
「おはよー!」
元気な子はぴょんぴょんはね手を振っている。
「姉さん。ここでいいです」
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posted at 23:18:47
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コルセットのせいでしゃんと伸びた背で、冷たい目で見られつつ矯正された歩き方で、ライム汁を吐きそうになりながら、ランちゃんもそこそこの優雅さを強いられて付添役をつとめる。
「死…死……死……」
公開処刑。毎日の。
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posted at 23:17:12
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がたがた震える姉の指を、レースの手袋をはめた弟の指がぎゅっと握って導く。
身長差のせいでなんかちぐはぐだが、それでも仲の良い姉妹に見えなくはない。と思う。
ランちゃんは口からライムの匂いの泡を吹きかけていたし、ハリ君は平静にふるまっていたが時折うとましげに目を細めはしたが。
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posted at 23:09:37
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「玻璃はまだ大きい服が着られないので」
だからでかさしか能のない姉にも利用価値がある。色んな姿勢がとれるマネキンとして。
よかった。ゴミクズだけどマネキンの形しててよかった。
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posted at 23:03:04
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しかも驚くべきことに神童の弟が縫い上げる服はちゃんとネットオークションで売れるらしい。
金額を教えてもらったら一着で栗クリームあんパンの末端価格の二千倍以上だった。
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posted at 23:00:31
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寮でよぼよぼ生きてた姉と違い、弟は金持ちパッパのもとで育ったとはいえ何だろうこの違いは。
「どうぞ」
「お、お金…やっぱり実家にわわ悪い…」
「………だったら姉さんも手伝ってください」
「??」
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posted at 22:45:24
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すでに服も下着も完全に幻想かわいい系に入れ替えずみで、組み合わせも問答無用でハリ君が指定していた。
おまけに姿勢が悪いという理由でよくコルセットとかをつけさせられた。これまたどういう構造かノンワイヤーで息苦しくはないが、窮屈ではある。
「みっともないですから」
「ぅう…ぅっ…」
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posted at 22:38:52
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resn@『DUO』コミカライズ決定しま @ko13689719
コメントでボロクソ言われてるカイル王子、情報不足でめちゃめちゃ裏目ってるだけでほんとアイラちゃんのことすごく考えてると思うよ……
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posted at 22:38:36
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だが弟は別に姉の葛藤に配慮するつもりはさらさらなく、生活にふさわしく環境を整えるだけだった。
それにはもちろん目障りな存在をどうにかすることも含まれていた。
「姉さん。髪は玻璃が洗います」
「!!?…ぁっ…ぅっ…」
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posted at 22:33:48
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女装の少年が子供でもなければ人間でもなく、何か外世界から来た知らない神様のような気がしてきたが、住居がどんどん幻想じみたかわいらしさに彩られれば彩られるほど、同居人は「ここにいてはいけない」心持ちにさせられるだけだった。
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posted at 22:31:00
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目を丸くして魅入るランちゃんに、ハリ君は速くどいてほしいという態度を隠しもせず声をかける。
「どうぞ」
「こここれどこで」
メーカーの名前が返ってくる。理解できないでいると、大人びた溜息が聴こえる。
「どうぞ」
「でも、この絵」
「カスタムオーダーです」
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posted at 22:25:07
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かくしてランちゃんは毎晩恐怖と緊張とともに天蓋つきの寝台の端にしがみつき、ハリ君の子守歌で寝かしつけられ、朝には手首のリボンを引かれて起されるようになった。
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posted at 22:18:27
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長い睫の奥で、双眸はぎらつく輝きを放っていた。
ちょうど夢の国の空にかかる時、常に不吉と結び付けられるかの病み爛れた衛星が、厭わしい蕃神の妖術によって二重映しになり、並んだまま大地に住む定命のものを二倍の敵意と侮蔑をもってねめつけるように。
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posted at 22:16:07
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姉は徐々にこわばりをとき、眠りに滑り込んでいった。まるで弟と年頃の変わらぬ少女のようながんぜない顔つきで。
しばらくすると、ペチコートをまとった少年がゆっくり身を起こし、ベッドの縁ぎりぎりで微睡む婦人を眺めやった。
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posted at 22:11:16
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月のやわらかな生きものを食べ、森のすばしっこい生きものを食べ、北の二本角を食べたら、おなかいっぱい炉辺で丸くなって眠りましょう。
そんな他愛のない詞だった。
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posted at 22:08:53
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リボンで弟と手首同士がつながっていると姉の胃は倍増しにきりきりと痛んだ。
一方の玻璃は平然として、天蓋つきのベッドの真ん中にちょこんと大人しく入ってしまうと、寝相はほぼなかった。蘭もなるたけ息を殺していたが、まんじりともしなかった。
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posted at 22:03:35
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柵はいらないと言ったが、同じベッドにいる少年から本能によって逃げようとするため、なんだかんだ婦人はすぐはしっこから転落しそうになったため、床に入る際はリボンで手首を結わえられた。
「あわわわわ」
「しずかにしてください」
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posted at 22:00:02
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今度は、どうぞ、後につかなかったので辞退はできなかった。
かくして弟は姉の寝室をミシン室にするために私物をほぼ全部捨てた。無事なのは大学で使ってる記号論やら形態論やら意味論やらの教科書と参考書だったが、ノートは全部写真にとったあと処分させられた。場所をとるので。
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posted at 21:57:24
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「柵、いりますか。どうぞ」
「ささ柵?」
動作に不自由がある高齢者用や乳幼児がのために寝台に取り付けるやつ。
「わわわ私!?むむむむりだよハリ君だって」
まず男と同じ部屋にいるだけで神経がおかしくなるので眠れるはずがないしそもそも。
「ハリ君がかかかかわいそうだよ!!」
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posted at 21:52:22
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ミシン室。ミシン室?
ミシン?なんか地球上にはそういう装置もあると遠い昔に学校の授業で習った記憶もあるが。
「…どうぞ」
「あ、わ、わわわかった…じゃあ、わ、わたし…」
次の不燃の日に行くから。そう伝えようとしたところで、サイズ的に粗大だとようやく閃いた。
「そ、粗大…」
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posted at 21:41:56
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「玻璃の荷物が、部屋に入らないです」
どうしよう。確かに運び込まれた段ボールが多かった気はする。
「姉さんの部屋においてもいいですか」
「え、でも…」
とっさに返事をしかけてぴたっと唇を閉ざす。
「ミシン室にちょうどいいです」
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posted at 21:40:12
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うつむきかけて、慌てて背を伸ばす。でもそうするとつい正面を見てしまう。男の子の姿が視界に入ってしまう。
「ぁっ…ぁっ…」
呼吸がしづらくなる姉を、弟はライムウォーターを舐めながら見つめた。
「姉さん。相談があります」
なんだろう。死んでほしい以外に何が。
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posted at 21:38:16
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加田蘭は衝撃を受けて縮こまった。忘れていた。新ルールを。涙がこぼれそうになる。
「…っ…っ」
「どうぞ」
「ごめんなざ…」
「それ、ききたくないです」
「…っ」
「どうぞ」
「あ、ご…なんていえば」
「いうことがないときは、だまっていてください」
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posted at 21:36:07
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こくこくと飲もうとして、ほのかにライムの味がして噴き出しかける。
「あぶ…」
口を抑えてから、弟のホワイトピンクの兎のスリッパを見つめつつ、姉は震え声で尋ねる。
「ら、ライム…す、すきなの?」
「姉さん」
加田玻璃は溜息をついた。
「玻璃が、どうぞと言ってからしゃべってください」
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posted at 21:34:28
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ハリ君は上から下までランちゃんを観察してから、忍耐強い口調で述べた。
「背は、まるくしないでください」
「はひっ」
「顎、ひいてください」
「ふえっ…」
「左肩、ちょっとあげてください」
「ひむ」
「あげすぎです」
記念写真撮影かな?
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posted at 21:29:39
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あらゆる衣類を放り込んでいた。
「あわあわわわわわあああ!!」
「ごみすては、玻璃がやります」
「わわわだじがああああ…」
「あっちにいっててください」
あっちとは。
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posted at 21:22:43
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だがゴミクズが、小さいとはいえまともな人間様の好意を拒んでよいはずもない。
すべてを装備したランちゃんはなるたけすばやく寝室へ逃げ込もうとし、先客がいるのに気付いた。ハリ君が入っている。というかレースのマスクをつけ、厳しいもののふのの目つきで生物汚染のマークの入ったごみ袋に
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posted at 21:20:47
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絶望に満ちたことにナプキンと、同じようにはかなげな布からできたショーツとノンワイヤーのブラジャーもあって、サイズはぴったり。つけてみるとまったく体を締め付けない。
五つ以上歳の離れた弟に介護される姉。
人生の。
終わり。
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posted at 21:17:13
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がたがたと震えながら、眠る猫のかたちをした籠の背中の穴から着替えをとる。
ガウンだ。生地は薄く向こうが透けるようだが、LEDライトを跳ね返してわずかに五彩の光沢を放つ。
「これ…ハテグの虹織…」
呟いてから、何を訳の解らない妄言を口走っているのかとかぶりを振る。
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posted at 21:12:41
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着替えを置く籠も何やら新しくさわやかな蔓を編んで丸まった猫のかたちの工芸になっている。
すべて加田玻璃が実家から持ってきた私物なのだろう。許されるのか加田蘭という一族の汚点が使うのは。
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posted at 21:07:57
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がたがた震えながら浴室を出るとバスタオルもブラシもドライヤーもすべてが入れ替わっている。
かわいい。とにかくかわいいのだ。乳液とかようわからん各種の液体が雪花石膏やら磁器やらの小瓶に収まり、いずれも可憐な花や鳥や魚の絵が挿れられている。
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posted at 21:04:18
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「きがえ、おいておきます」
「ふぇっ!?」
着替え。着替え。あ、ビニール袋のことか。出たら入ればいいのか。透明だと回収員の男性と目が合ってしまいつらいのでなるたけ何枚か重ねてまぶたをぎゅっと閉じて。
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posted at 21:01:41
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女装の少年は言葉少なく決然として年嵩の同居人を脱衣所に追い込み、全身を洗い直すよううながした。
「あらえますか」
「え」
「からだ、あたま、じぶんで洗ったことありますか?」
「あ、ああある…ある…」
「きれいにしてください」
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posted at 20:58:22
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ゴミクズが持っている服はゴミ。当たり前だった。そしてゴミクズが服を着ている必要などない。ビニール袋に包まれ、静かに早朝回収してもらえばよいのだ。
どうしてもっと早く気付かなかったのだろう。それはゴミ回収の人達が男性ばかりだから。
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posted at 20:55:58
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大地の神々はかような試練を幼子に課したまうか。しかし運命に選ばれた勇士の如く、女装の少年は不快をこらえた。
「すててください」
「はひっ」
「ぜんぶ」
「あう…あ…はひ」
「姉さんのもってる、ごみを、ぜんぶ」
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posted at 20:53:16
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「は、はひっ…へっ…あぐ…あり…がど…う」
「どういたしまして」
衛生について真剣な考えを抱いたようすでじっと手袋の掌を見つめながら、弟は姉からの感謝を鷹揚に受け入れる。
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posted at 20:46:15
![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1378386053124395010/u1wABD7__normal.jpg)
半ば白目を剥いてぐらっとよろめき壁に頭をぶつつけそうになった。
だがハリ君は素早く家族の様態の変化を見て取ると、勢いよく平手打ちをして目を覚ませる。
「フギッ」
「しっかり、して、ください」
往復びんた。子供の小さな腕はしかし鞭のようにしなり、腕力の不足を感じさせない鋭さがある。
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posted at 20:44:07
![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1378386053124395010/u1wABD7__normal.jpg)
きちんとレースの手袋をはめたあと、ハンカチを取り出し、涙にかきくれる害虫の目元と口元を拭ってやった。
聖者の如きの寛容と慈悲に、ランちゃんは歓喜に咽ぶべきところだったが、しかし間近に小さくとも男がいるという恐怖と、ほのかにやわらかな布地からただよう柑橘の香りに頬を引きつらせ、
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posted at 20:41:38
![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1378386053124395010/u1wABD7__normal.jpg)
ふわふわとフリルとレースでいっぱいの衣服をまとった女装の少年は、大学生にもなって高等部時代の体操着に身を包む婦人を見下ろすと、幼くも玲瓏の面に、太古の人類が初めて蜚(ゴキブリ)という環境害虫に遭遇した際に浮かべたような純粋な嫌悪を一瞬閃かせた後、
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posted at 20:39:19
![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1378386053124395010/u1wABD7__normal.jpg)
…中略…
(765238)通りすがりの凶暴で残忍な児童性愛強姦犯集団に付き添われ精神科へ
すべてのありうべき可能性の中で確実に精神疾患を診断されてしまう。
「ななななな、なん…なんでもないいいい」
「あけてもいいですか」
「ひぎいいいい!!!?」
把手に飛びつき惑乱しつつ施錠を試みる。
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posted at 20:25:11
![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1378386053124395010/u1wABD7__normal.jpg)
男性恐怖症ゴミクズ女のランちゃんがトイレで吐いたあと発した悲鳴は、すぐ同居人である弟のハリ君に伝わった。
すぐ扉を叩く音がして、戸板ごしに声変わり前の喉が静かに問いかけてくる。
「姉さん。何かありましたか」
「ひっ…」
口から悪夢に出てきたライムフレーバーのスライムがこぼれたと、
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posted at 20:19:29
![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1644241490779209729/XRrIVWoI_normal.jpg)
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