にょんギツネ
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- 自己紹介 日々読書や執筆、お絵描、文字の観察などを愉しんでおる寶曆6年生まれの仙人見習いな267歳幼狐なのじゃ!18禁要素注意じゃよ? ヘッダーは @une_back に依頼したのじゃ。褒めて質問お題箱を兼ねた投書箱 → http://marshmallow-qa.com/nyol2novel
2022年07月07日(木)
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非公開
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撮影場所は水が張られていないプール。スク水着女装させられたkrnくん♂に水をかけて遊んでいたらなにやら体のあちこちがぴちぴちくっきりに。違和感を覚えるも続けるy-y♂。
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posted at 13:24:09
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そこに機材を持って帰ってきたf-u先輩が。
「ああっそれ撮影用のだから水着と生地が違うの! 水に濡れちゃうとその、なんて言うかその、そうなっちゃうの……」
「へ?」と自分の体を見下ろすと顔を真っ赤にして腕で隠してしゃがみ込むkrnくん。
「仕草が板についてるね」「うるさーい!!」
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posted at 13:24:36
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元々片鱗があったものの自分が転生トラックに撥ねられた時に上げた悲鳴で完全に覚醒してしまったサイコサディスティック異世界TS転生者「違うんです…親の仇とか関係なくて…その、すごくいい声の男性だったので…」
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posted at 16:18:28
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風水師/薬剤師銀白(シロガネ ハク)♀ @sirogane_haku
風水の配信で真っ直ぐにしか進めない悪霊を男塾名物直進行軍に例えたのは今でも私の自慢です(マテ。 pic.twitter.com/X6PDsfLV03
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posted at 20:06:37
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ヒロインは勤務先から求められた資格試験のため休日に会場へ向かう途中、いきなり光に包まれ気づけば石の祭壇の上の魔法陣に。
周囲を見回し、恐怖。そしてスマートフォンの時刻を確認。開場まで45分。余裕をもった参加のはずが。
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posted at 21:02:43
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正面。魔法陣のすぐ外には、いかにも魔法使いらしき長衣をまとい杖を携えた人物が、王冠を被った人物と何やら会話している。
さらにぐるりと四方には鎖帷子をまとった騎士らしき人物が等間隔で並んでいる。
それっぽい。だが手元のスマートフォンの時刻を確認すると開場まで44分。
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posted at 21:05:13
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急いでいるので帰らせて下さいを自力で言ってみて、次に翻訳アプリを使って英語に。
通じた気配なし。やがて魔法使いが杖を宙で振り回し呪文らしきものを唱えると金色の光の粉がぱっと散る。
「よくぞ降臨された聖女よ」
向こうが呼び掛けてくる内容が解る。
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posted at 21:08:16
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好機だ。
「こんにちわ。とても急いでいるので帰らせて下さい」
「聖女よ。世界に闇が迫っております。御力をお貸し下さい」
「ご連絡先をいただけますか。後ほどあらためて折り返しますので…」
「戸惑われているようだ。しかしあなたは女神の化身。胸に帯びた聖なる印が何よりの証」
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posted at 21:11:37
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「聖女のお話。大変興味深く拝聴しておりますが、恐縮ながら立て込んでおりまして、後ほど折り返して」
「目覚めよ!聖なる印よ」
魔法使いが杖をヒロインの胸に差し伸べると、おお、見よ地味なダークブラウンのスーツごしに、光り輝く紋章が
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posted at 21:14:25
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特にあらわれない。
間がある。
魔法使いは何やら呪文を唱えて何度か同じように杖を振り上げ、振り下ろし、ひねりを加えて突き出し、長衣をはためかせながら宙に浮かび、杖の先端からまばゆい焔の軌跡を描きながら、見ばえのする妖術を放ったが、
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posted at 21:16:13
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特に何も起きない。
周囲で不動の姿勢を保つ騎士の一人がかすかに咳払いする。
ヒロインは手元のスマートフォンに視線を落とし、開場まで34分であることを認識する。試験開始まではさらに1時間の余裕がある。多少の復習をするつもりだったが、仕方ない。
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posted at 21:20:38
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「申し遅れました。日戸千賀子(ひとちがこ)と申します」
行ってから頭を下げ、ゆっくり歩いて魔法陣の端まで達すると、素早くケースから名刺を出す。
「恐縮ですが、こちらに私の連絡先がございます。何かありましたらご連絡いただければ」
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posted at 21:23:07
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日戸氏は顔をしかめないようにしながら、名刺を両手で持って差し出した。
魔法使いは整った縹緻をしかめ、不意にげっぷをする。
背後から冠をかぶった人物の声がかかる。まだ少年の域を出たばかりのような幼さの感じる響き。
「宮廷魔導士よ…そなた…まさか昨夜も…」
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posted at 21:26:16
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「めっそうもございません陛下。昨夜は聖女降臨の儀式のため万全の準備をしておりました」
日戸氏は名刺を差し出したままじっと姿勢を保つ。多分あと30分で開城だ。試験開始まではさらに1時間ある。大丈夫。
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posted at 21:28:28
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魔法使いはもう一度げっぷをしてから、長衣の袖から巻物をふわふわと飛び出させ、触れもせず絲帯を解いて宙に広げると、じっと睨み、片眼鏡を取り上げる。
「ふむ…隠された印を…ここに…お任せ下さい陛下…すべては順調です!」
そうして杖に稲光をまとわせ、勢いよく突き上げ、くるりと回転させて
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posted at 21:30:41
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石の祭壇を撃つ。おお見よ。霹靂は幾筋にも別れると魔法陣に沿って蛇のごとくのたうち回りながら疾走し、最後には日戸氏の足元に集まると、上方に向かってほとばしった。
一瞬にしてジャケット、パンツ、ブラウス、下着、ストッキング、靴、バッグとその中身もろもろすべてがちぎれ破れ飛び、
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posted at 21:33:37
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不意に祭壇の間全体に響き渡るほどのやかましい音が響く。何か重いものが石敷を叩いたような。
魔法使いがついそちらを振り返る。日戸氏は蒼白になりながらも、つられて視線を追う。
ひときわ大躯の騎士が斧槍の石突を足元に落としたものらしい。
「粗忽ものめが」
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posted at 21:44:26
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魔法使いが叱ると、大躯の騎士は兜をかすかに鳴らした。
「宮廷魔導士よ…これは確かに正しき儀式なのだな。聖女への非礼は決して許されぬぞ」
ややあって若き王が微かに震える声で尋ねる。
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posted at 21:47:02
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「…ご安心を…この黄色い亜人の雌は…降臨の儀式の予行として呼び寄せたに過ぎませぬ」
「何?」
「魔法陣の働きに間違いがなく、我が呪文の完璧なることも検められました。もとより過ちなど起こり得ぬのですが…しかし念には念を入れたまで…」
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posted at 21:49:23
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「そなた…聖なる印があると…」
「あれは聖女の来臨に際して述べる言葉をあらかじめなぞったまで…むろん…ないことは初めから解っておりました…さてと黄色い亜人の雌よ。元来た暗黒の異郷へと戻るがよい。さらばだ」
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posted at 21:52:47
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日戸氏は光に包まれながら、恐慌気味に凶器のなげうたれた方角を振り返り、例の大躯の騎士が、兜の面頬ごしに冷たく鋭い眼差しをこちらに注いでいるのに気付いて身震いした。仕留めそこなったのが残念とでもいうような。
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posted at 21:58:33
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気付くと裸で路上におり、目の前には斧槍と外套がある。休日とはいえ街中であり、それなりに人出があり、送還直後の数秒間が社会生命を分ける危急の状況にあった。
だが日戸氏は判断を過たなかった。外套の中に飛び込み、くるまって被害を最小限に抑えた。
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posted at 22:01:38
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それから、もちろん試験会場には行かなかった。
行けるはずもない。受験票もなくしてしまったのだ。
所持金も所持品もなく、身分証は個人番号カードも運転免許証も社会保険証もなくしていた。スマートフォンすらもだ。
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posted at 22:03:17
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最寄りの公衆電話で110番である。
パトカーに迎えに来てもらい、警察署で事情を説明した。
魔法使いとか王とか騎士といった主観は捨てて、気づいたら何十人もの外国の男のいる見知らぬ場所に連れていかれており、所持品や所持金などを奪われた事実のみを述べた。人相風体もできるかぎり詳しく説明。
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posted at 22:05:55
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それから病院で治療を受け、精密検査を受け、ショック状態だがあとは異常なしという結果をもらった。被害届は受理された。
衣服を貸してもらい、家に帰って無駄とは思いつつパソコンからクレカと銀行カードを止めた。そこで力尽きた。
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posted at 22:09:13
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ぐったりして眠りに落ち、起きてからも各種身分証の再発行手続きや勤務先への連絡や警察の再聴取で時間が削られていく。
里親には警察の方から電話がいったらしく心配してメッセンジャーに連絡があった。とりえず無事なことを伝える。
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posted at 22:11:44
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会社にはぼかして窃盗にあったというような話にとどめた。
何度か泣いたが、しかし建て直した。それから色々考え、あまり条件はよくなかったが転居した。相談にのってくれた女性警察官もそれがよいと言っていた。
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posted at 22:14:19
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資格試験はまた次がある。予定した昇給の機会を逸して
落ち込んだが、命あっての物種だ。
よかったよかった。里親からは新しい御守りが届いた。新しい里子からのお見舞いカードも付いていた。
かくしてちょっとずつ元気になった。警察からの連絡もあまり来なくなった。
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posted at 22:16:33
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まあ警察といえども多分異世界召喚にたいしてどうこうできたりはしないだろう。話をきちんと聞いてくれて被害届を受理してくれたのだから立派だ。
犬に噛まれたと思って召喚の件は忘れよう。
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posted at 22:18:30
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「お帰りを待っておりましたぞ…異界の友よ」
「…っ!」
日戸氏はバッグの中のスマートフォンを探ろうとして、魔法使いの杖の先に稲光がまとわりつくのを視界に認めた。
長衣の男がやわらかく微笑み、ゆっくり首を横に振る。
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posted at 22:23:17
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「どうぞこちらへ」
日戸氏は頬をひきつらせなが、パンプスを履いたまま自宅に上がる。玄関の扉は開けたまま。
しかし魔法使いはかすかに杖の先端を回すと、戸は音もなく締まり、鍵がかかる。
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posted at 22:24:48
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「あれからしばらくやつがれも王の命を果たし、聖女様をお助けするのに忙しく、約束を果たせずにおりましたが」
「それは…ご丁寧に…聖女…?」
「おお。そうでした。聖女様には無事来臨いただきましてな。うるわしい乳脂色の肌に夜色の髪と瞳、まさしく異界の友たるあなたと同じ民の…」
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posted at 22:29:17
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聞いていて気の毒になったが、と思ったが、しかし本物の聖女であればむごい扱いをも受けないかもしれない、と日戸氏は気持ちをなだめた。
長衣の男は機嫌よく続ける。
「ジョシコウセイとか…」
さっとまた日戸氏のかんばせに険が出ると、魔法使いの背後で鎖帷子の騎士がかすかに身じろぎをする。
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posted at 22:32:40
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「聖女様はこちらの…ゲエムなるものが得意にあらせられ、その叡智と奇跡の力で、我が王を助け、闇の軍勢を次々打ち破っております。闇の将軍めが身の程知らずにも、聖女様を娶らんとけがらわしい企みを企てましたが、近衛騎士の筆頭が無事防ぎ…あのひねくれものの宮廷詩人もまた聖女様のため…」
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posted at 22:35:51
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「影に潜んで悪をなす闇の軍勢に気取られぬためにも、こちらもまた隠密に動かばなりません…まずはきゃつらの狙いを突き止めるのが肝要」
「…なるほど。どのようにでしょうか」
「やつがれが自らこちらで調べを進めたいところですが聖女様のそばを長く離れてはいられぬ故…代わりに近衛騎士を一人」
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posted at 22:59:23
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「こちらに滞在されるのでしたら正式な旅券や査証が必要になると思いますが」
「手形のことですかな?隠密にさようなものは無用…いかなる地にあっても女神の御心あらば友が助けを与えてくれましょう」
「…お力にはなれないと思います」
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posted at 23:01:52
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「しばらく…この騎士が闇の軍勢の狙いを突き止め、阻むまでの間でよいのです」
「申し訳ありませんが請けかねます。お求めのことは、私どもの国の法に反することです」
「法…蛮種どもの法だと…聖女様の故地でなければ…いえ…なるほど…」
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posted at 23:06:49
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「やめ…なさ…」
「聖女様と似た髪、目、似た肌とてしょせんは女神の恩寵なき蛮種…よく心得ておけ」
泡立つ杖の先がゆっくりと日戸氏の臍の下あたりに近づいてゆく。
「恋薬の魔法は、夢魔の血より生じる…はじめ淡く…やがて気を狂わせ、ついには魔性に変えるとも」
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posted at 23:17:54
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「いや…」
「こちらとて蛮種にかく憑かれるなぞっとする…聖女様と同じ瞳であろうと…しょせん…何と黒い目よ…腹立たしい異界の雌め…」
宮廷魔導士が詠唱を始めたところで、日戸氏は文明の利器を働かせようと指を動かそうとし、しかし果たせない。金縛りにあったようだ。
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posted at 23:19:55
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長衣の男は鎖帷子の男の剛腕に軽く引かれただけで無様に転び、杖から離れた泡は天井に跳ね返り、しかしまるで狙ったようにスーツの女の臍の下あたりに命中した。
「ぐ…」
「あ…」
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posted at 23:28:39
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「馬鹿な…脅しだぞ…闇に根差す禁術をいかに蛮種とはいえ本当に使うはずがあるか!」
騎士は食卓をおしのけて、ひざまずき、崩れ落ちた会社員の顔を覗き込んだ。
「おい…死ぬな異界の女」
「よせ!目を合わせるな」
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posted at 23:30:53
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魔法使いが忠告したがすでに時遅し、日戸氏はもうろうとして、兜の面頬ごしに冷たい眼差しを凝視し、下腹に沁み込んだ恋薬の魔法は薄桃色に輝く紋様を完成させた。
聖なる印とは似ても似つかぬ、禍々しくも美しい曲線の絡まる図形だった。
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posted at 23:33:46
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日戸氏はがたがたと震え、汗をびっしょりかき、身だしなみ程度に薄く紅を引いた唇を開閉させ、ほつれた前髪の一筋を額に張り付かせ、拳を握りしめてうつむくと、やがて震え声で応じた。
「離れなさい」
「…魔法は?」
「すぐ離れなさい!!!」
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posted at 23:35:52
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ちっぽけな女の、決して強いとも言えない叫びに、しかし巨漢はぎくりとして身を引いた。
「…ふむ…まあ…異界の蛮種にかけてどうなるかと思ったが…我が術に仕損じはなし…闇の魔物に変じるはずもなかったな」
「何だと。いったい何をしたんだ」
「夢魔はしぶといが貴様の腕なら倒せぬ敵ではない」
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posted at 23:38:56
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「案ずるな…見よ。角も生えておらぬ…どのみち禁書の解釈によっては忠実従順な使い魔となるともとれるし…うむ…はは…さて、やつがれはそろそろ戻らねばならんな。王と聖女様が我が助言を必要としている。しゃっく…こちらの酒を試すいとまがなかったが…頼んだぞ」
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posted at 23:42:01
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「何をした。この異界の女を闇の魔物に変えたのか?」
「魔物だと?そう見えるか?いやいや黄色い亜人の雌だ。よいか。貴様は序列五十三位の粗忽ものだが、武芸だけは見どころがある。務めを果たせ。知りもせぬ魔法のことなどあれこれ気を回すでないぞ」
「おい!ふざけるな!」
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posted at 23:44:20
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魔法使いは光に包まれて消え、騎士だけが残った。
「…異界の女」
「…かえって…かえらないと…警察を…」
俯いてわななく会社員女性に、近衛騎士序列五十三位の男はどかりと腰をおろした。
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posted at 23:48:20
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「警察を…」
魔法使いと違って、騎士の方はいっこうにこの世界の官憲を恐れていないようだった。
「…ヒト・チガコ」
ぽつりと巨漢が名を口にすると、ぱっと乙女は首を上げた。
「はい」
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posted at 23:50:07
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![](https://pbs.twimg.com/profile_images/1378386053124395010/u1wABD7__normal.jpg)
心拍が狂ったように早まり、気づくと日戸氏はパンプスを履いたまま正座し三つ指をついて額を床にこすりつけていた。
「千賀子と申します…ふつつかものですが…んぎぎぎぎっぎっ」
途中で無理矢理に頭を引きはがし、また近衛騎士を睨みつける。
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posted at 23:55:21
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これが良くなかった。がくがくと瘧にも似た震えが全身を駆け抜ける。
騎士はひざまずいたまま、籠手をはめた拳を掌に打ち付ける。
「この土地に入った闇の魔物を仕留めたら、すぐ去る」
「何事もウォルドー様のお望みのまま、まままままままままま…ではない…困り…ます…帰って…」
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posted at 23:58:43