柑橘/跡地
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2012年12月25日(火)
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色々そりゃあたくさんいいたい事があったがすでに閉じられた扉の向こうにはなにを言っても意味がなさそうでもあったし、ナランチャが呻き、そろそろ起き上がってしまいそうだったので、アバッキオは考えるのをやめた。
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posted at 03:15:58
「……わかった」アバッキオの唇からタバコを奪い取り、ブチャラティは寝室のドアノブに手をかける。ナランチャが寝返りをうって、テーブルに頭をぶつけた。それを見たブチャラティはくすりと笑って「お前は頭を冷やしてろよ、アバッキオ」とタバコを吸いながら寝室に消えていった。起きていたのかとか
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posted at 03:13:34
つもりでいたに違いない。自分が起きていなければと、妙な責任感にかられながら。「あんた、水飲んでもう一回寝てろ」そうして肩から頭を退かすように押しやれば、あからさまに不機嫌な顔でアバッキオを見た。青い瞳がこちらを見るのが辛くて、攻めてもの抵抗として目を合わせてやらない事にした。
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posted at 03:10:02
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さらさらと黒髪が揺れて、きっと俺をどうにかさせるつもりでいるんだ。「…酒臭いぞ、あんた」「ん…お前はタバコくさいぜ」くすくすと笑う吐息もまた、昨日飲んでいたワインのアルコール臭がした。昨日の夜も遅かったのだ、ブチャラティの目はまだ微かに赤い。きっと他の奴らが酔い潰れるまで、寝ない
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き、と音がする。床がかすかに音を立てて、やがてそれが後ろに立つ。ミスタが寝返りを打って、フーゴがかすかにうめいた。「おはよう…アバッキオ…」そうして肩に顎を乗せてくるこいつの残酷さとは一体どれほどになる。デコをぐりぐりと肩口に押し付けやがて甘える猫のようにゆっくり頬を擦り寄せる。
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ブチャラティの代わりにと。「……バカか……」そうバカみたいだ。誰にも届く事のない口付けがただ自分の手の甲に落とされて消えて行く。同じようにこの恋心が消えてしまえば楽にでもなれるんじゃないかなんてそっと考えて、そんなの無理だと一人で笑う。消えない想いが胸の奥でぐるぐると周り続ける。
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める。この手に、無意識とは言えブチャラティが触れ続けたのだと。手を洗うまいかなど、どこかの街を歩く平凡な女が思うような事を思う日が来たのかとアバッキオは眉をしかめた。むず痒い、気恥ずかしい、でも悪くない感情だ。深く吸った紫煙をゆっくり長く吐き出すとそっと左手の甲に口付けた。せめて
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酒の匂いが強く漂う部屋の中に紫煙が一筋。ブチャラティが隣にいた事でどうにも落ち着かない心臓が、度々呼吸の邪魔をしてきて困る。近くに感じた寝息、いつもより高い体温、身体の感触。あの一瞬だけだったが、寝ている間触れ続けたその全てがまだ身体に残っている気さえする。左手を開閉してそれを確
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posted at 02:48:36
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リビングには見覚えのある奴らがごろごろと転がっていて、のんきに寝ている姿に何と無く腹が立ってソファに寝ていたミスタを蹴落とした。呻いたものの、その衝撃でも起きないものだからいつか寝込みでも襲われて死ぬんじゃないかとクリスマスの朝に無駄な心配をして、アバッキオはタバコに火を付ける。
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もなくブローノ・ブチャラティその人だ。昨日着ていた服もそのまま、いやいつもよりも酷いくらい派手にはだけている。スーツの間からさらされた素肌は薄桃色に色付いて、息をする度に少しだけ動く。昨日寝る時には確かに一人であったはずで、アバッキオは混乱する頭を落ち着けたくて大きく息を吐いた。
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posted at 02:40:43
起き上がって早々アバッキオは滑り落ちた。ベッドの端から滑り落ち、強かに頭を打ち付けた。おかげ目はバッチリと覚めたが、ベッドの上の光景はにわかに信じ難くてもう一度頭を打った方がいいとさえ感じる。そんなアバッキオの気など露知らず、布団を被って酒臭いﾈ行きをすうすうと立てているのは紛れ
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posted at 02:36:43
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2012年12月24日(月)
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2012年12月23日(日)
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先輩冬に暖炉の前でブランケットくるまってジェラートちまちま食べてたら幹部に｢そんなに寒いなら食べなきゃいい｣って言われるんだけど｢俺はこれが好きなんだよ｣とかぶっきらぼうに言ったら幹部がなんの前触れもなしに先輩の手元から一口食べてって｢これくらいなら寒くなくていい｣とか言っちゃう
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posted at 03:59:22
先輩｢じゃあ猫は？｣幹部｢にゃぁにゃぁ｣先輩｢変わってねぇ(笑)｣幹部｢？おまえ聴いてたのか？全然違うだろう｣先輩｢は？同じだろ｣幹部｢よく聴いておけ｣先輩｢…｣幹部｢うみねこが、にゃあにゃあ。猫がにゃぁにゃぁだ｣ ほぼ変わってないけど幹部の中には明確な違いがあるんだよきっと！
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最後に呼ばれた記憶など、いつだったか。父が死んだ時、医者に呼ばれたあの日以来か、とぼんやりと思う。父が掠れた声で呼んでくれたあの言葉を機械のような声が掻き消すようにしゃべっていて酷い気分になったことを思い出す。その気分を紛らわすように、ブチャラティはそっと寝返りを売った。
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そんな日は遠く遠く昔の事なのだ。今じゃ太陽の高い昼間ですらも、自分の事をブローノなんて呼ぶ人は少なくて、もしかするとほとんどのやつは知らないのではないかと思うほどだ。別段呼ばれたいと思う事ではないがやはりせっかく親につけてもらった素晴らしい名前なのだから、大事にしたいと思うのだ。
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遠い昔、こんな風な暗い部屋の中で父さんはそっと背中を叩いて子守唄を歌ってくれた。もう10歳を過ぎている上に、あまり上手ではないそれだったが不思議と安心して、よく眠れた。最後におやすみブローノと頬に口付けてくれて、その日が雨だろうが雷だろうが、嵐が来ていようとも怖くはなかった。
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