麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年03月01日(日)
山村正夫「ボウリング殺人事件」読了。城南ボウリング・パレスに侵入した強盗が社員の庄司と三谷を殴り倒し現金を奪って逃走、重傷を負った三谷はその後、病院で息を引き取った。生き残った庄司は警察からかけられた強盗の共犯の疑いを晴らすため、執念の犯人追跡を開始する。
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posted at 18:08:00
強盗犯探しに賭ける主人公・庄司の執念が印象的な作品。といっても強盗犯の正体やその手口は早々と明かされてしまうため、ストーリー展開はミステリというよりサスペンスに近く、それは強奪した現金を巡る犯人たちの殺し合いが始まる中盤以降で更に加速することになる。
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posted at 18:08:27
勿論、作者がそういう展開にしたのにはちゃんとした理由があり、最後にはそれを活かした意外な結末が待っているのだけど、その反面、どうやって読者を驚かせるつもりなのか? という視点で読んでしまうと展開からそれに気付いてしまうのが難。故に本作は余計なことは考えずに読むのが吉な作品である。
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2015年03月02日(月)
海渡英祐「地獄への直行便」読了。警視庁外事課の警部補・石塚利彦が世界各地で犯罪組織と対決する連作ミステリ。花が散らばる廃屋で見付かった顔のない画家の死体「殺意の花束」、暗闇の中で起きた動機なき犯行「ゼロの幻」、要人の影武者を殺害した犯人探し「暗殺二重奏」など六編収録。
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posted at 23:20:00
スパイ小説の書き手としても知られる作者の持ち味が活かされた、007風味の作品。特筆すべきはやはり手に汗握るアクションや美女とのロマンスの中にさりげなく盛り込まれたミステリ的仕掛けだろう。
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posted at 23:20:19
個人的には作者ならではのアクロバティックな論理の飛躍が光る「ゼロの幻」「暗殺二重奏」あたりが好みだが、「赤い黄金」のしょーもないエロミス的気付きも嫌いではない(爆)。作者は本作についてアクション小説として楽しんでほしいと語っていたが、ミステリ読みが読んでも楽しめる作品である。
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2015年03月04日(水)
鳥飼否宇「生け贄」読了。撮影中の不慮の怪我のため白崇教と呼ばれる宗教施設に滞在することになった植物写真家の夏海はそこで連続殺人事件に遭遇する。密室の本殿で刺殺された教祖、海を漂う下半身のない死体……〈観察者〉にして生物探偵の鳶山は夏海と共に事件の真相に迫る。
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posted at 22:52:52
〈観察者〉シリーズ久々の長編はミステリでは定番の一つである、宗教施設を舞台にした連続殺人物。本作が秀逸なのは一見古典的とも言える設定と真相のギャップ感で、これはある意味島田荘司の某作に通じるものがある。
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posted at 22:55:54
また真相の一部に関しては、作者が好きだという三津田信三の某作を思わせるのもいい。言うなれば本作は島荘と三津田を取り込みつつ、このシリーズならではの生物蘊蓄を巧く謎解きに活かした佳作である。
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2015年03月12日(木)
二上剛「黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子」読了。大阪府警の新米刑事・神木恭子は担当した会社社長殺しを一人の老人の供述から解決へと導く。だがその老人の自宅の床下から嬰児を含む七体の死体が発見されたのを機に、彼女はかつて刑事だった父の秘密と府警上層部が抱える闇を知ることになる。
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第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト受賞作。しかしながら本作に本格ミステリ要素は微塵もなく、事件の謎は伏線もろくにないまま勝手に関係者が自白していく。かといって内容紹介にあるような元刑事が書くリアリティ溢れる警察小説かと言うと、それも違うような気がする。
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posted at 23:45:42
いや、前半はまだそれでもいいかもしれない。望まないのに暴力をふるってしまう男とそれを健気に耐える女を軸にした前半の物語は定番ではあるものの、それなりに読ませてくれる。
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だが次第に物語が警察に巣食う巨悪を巡る暗黒小説にシフトしていくにつれ、リアリティそっちのけで簡単に人が消されるようになる。前半にあった良さもどこかへいってしまい、正直どうしてこうなった感が否めないが、人によってはどこに着地するか分からないところが楽しめる作品と言えるかもしれない。
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2015年03月13日(金)
都筑道夫「くらやみ砂絵」読了。砂絵かきのセンセーを始めとするなめくじ長屋の住人が金のためによってたかって解き明かす奇妙な事件の数々。密室状況下で起きた死者の殺人に挑む「天狗起し」、死人が盗みに入ったような不可解な状況とダイイング・メッセージの謎を扱った「地口行灯」など七編収録。
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アウトローばかりが住む『なめくじ長屋』の面々が活躍するシリーズの二作目。このシリーズが面白いのは何といっても探偵役が儲かるどうかで善悪どちらにも転ぶところであり、それによって展開のマンネリを回避すると共に結末の意外性にも繋がってくる点が秀逸。
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posted at 21:23:15
また収録作のほとんどがこの時代ならではの設定を活かしているところも○で、中にはそのせいで真相が見えやすくなっているものもあるが、巧く決まれば異世界本格に近い驚きを味わうことができる。
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posted at 21:23:33
ベストは「地口行灯」で、怪談めいた状況から導き出される盲点をついたロジックと、二転三転するダイイング・メッセージの解釈が素晴らしい。次点はどんでん返しに次ぐどんでん返しと、策士策に溺れる感が面白い「南蛮大魔術」。
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2015年03月16日(月)
中町信「榛名湖殺人事件」読了。駅の階段から転落し入院中の私は深夜に侵入してきた男に殺されかけた。そんな時、かつての職場の同僚・広子から電話がかかってくる。広子は二年前、伊香保温泉のホテルで起きた火災に巻き込まれ焼死した女上司と転落死した私の姉・朋子は実は殺されたのだというが……。
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posted at 22:35:10
作者らしいどんでん返しが楽しめる作品。しかしながら最終的に示される真相はお世辞にも上手くいっているとは言い難く、作者得意の記述トリックにしても些か強引な印象が否めない。途中の医学知識や人物設定を活かしたミスディレクションが良かっただけに残念な作品である。
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2015年03月17日(火)
平山夢明「デブを捨てに」読了。借金まみれの男が返済を待ってもらう代わりにデブを捨ててくることになる表題作を始め、ダメな大人たちとしっかり者の少年の交流を描く「いんちき小僧」、異常な大家族物語「マミーボコボコ」、不細工なヘルス嬢との出会いと別れ「顔が不自由で素敵な売女」の四編収録。
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最悪な状況をユーモラスかつテンポよく描きつつも、随所に作者のフリークス趣味が感じられる短編集。ベストは「マミーボコボコ」で、感動的なヒューマンドラマとして描かれることの大家族をとことん悪趣味なフリークス物に仕立てあげてみせた点が実に秀逸。
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その一方で表題作や「顔が不自由で素敵な売女」では一転してフリークスとの心温まる交流を描いており、そういう意味では感動は落差という言葉がしっくりくる作品である。
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西澤保彦「さよならは明日の約束」読了。本に挟まっていた告発の手紙。倒れた女教師が口走った謎めいた言葉。未完の推理小説の結末当て。色紙から消えた寄せ書き……本好き美少女・エミールとジャンク映画フリークの少年・ユキサキが置き去りに去れた四つの謎に挑む連作ミステリ。
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古本に喫茶店、青春ミステリといった流行りの題材を西澤保彦が料理したらこうなりましたという感じの作品。収録作四編のうち、ベストは「男は関係なさすぎる」で九マイル的謎から、この作者ならではの気持ち悪い解決(誉め言葉)に着地させてみせる手際が素晴らしい。
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次点は「解体諸因」のセルフパロディと言うべき内容の「パズル韜晦」で、首すげ替えリレーの理由よりもむしろミッシング・リンクからの犯人特定と作中作ならではの仕掛けが秀逸な一編である。
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2015年03月19日(木)
久住四季「星読島に星は流れた」読了。隕石が時折降ってくることで知られる孤島で毎年開かれる天体観測の集い。そこに凄まじい倍率をくぐり抜け、六人の男女が招待されるが、その中の一人が滞在三日目に他殺体となって海に浮かんでいるのが発見される。奇跡の島で、いったい何が起きたのか?
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ラノベミステリの書き手として知られる作者の久々の新作は、隕石が降ってくると言われる孤島を舞台にした直球の本格ミステリ。ラノベから一般にきても、ツンデレ天才美少女を始めとしたキャラ造形に作者らしさが感じられるのが嬉しい。
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posted at 22:10:26
ミステリとしてみるとまずフーダニット部分にシンプルながら設定を活かした発想の転換が見られるのが○。但し事件の構図に関してはフーダニットが解かれた時点で芋蔓式に分かってしまうのが難だがそれでも丁寧に作り込まれているのは好印象。ある意味ラノベミステリの書き手らしい軽やかな良作である。
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2015年03月20日(金)
法条遥「リライブ」読了。千年以上転生し続ける盲目の女・国枝小霧。そんな彼女を救いたくて失踪した小霧の兄・保彦。そして2013年春、小霧の結婚式に届いた一通の祝辞が、長かった物語の真実を語り出す――。「リライト」から始まった四部作完結編。
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何というか面白かったとかつまらなかったとかを通り越して、ここまで書き切った作者にお疲れ様でしたと言いたくなる作品。巧くいっているかどうかはさておき、四部作全てに整合性をつけるのは並大抵の苦労ではなかったに違いない。
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posted at 21:59:58
とはいえ、ただの辻褄合わせに終始しているわけではなく、ちゃんと「リライト」に見られたようなカタルシスも用意されているのは好印象。少なくともここまで付き合ってきた読者であれば、それなりに満足感(それが解説にある「強い感動」かどうかは微妙だが)が得られる作品である。
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posted at 22:00:25