麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2023年01月03日(火)
「デッドライン」観了。正式なタイトルは長すぎるので割愛。人気ホラー脚本家の身に降りかかる悲劇を描いた本作はホラー映画というよりホラー映画を使った人間ドラマという印象で周囲のホラー映画に対する心ない反応とオチがただただやるせない。とはいえ作中のホラー映画の拘りあるカットバックは○。
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2023年01月05日(木)
倉阪鬼一郎「復讐劇の館」読了。昭和三十五年、戦時中に無念の死を遂げた父の仇を討つため、鳥澤渡は薔薇が咲き誇る館へやって来た。ここの主人は戦時中は海軍大佐で妄想に近い人体兵器を発案し渡の父をはじめ多くの兵士を死に至らしめたのだ。美しいピアノの調べに乗って復讐劇の幕は今開いた。
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電子書籍オリジナルの長編ミステリ。倉阪作品ではお馴染みのゴシック色が強い館を舞台に繰り広げられる復讐劇という内容はそれだけでワクワクするものがあるが、残念ながらそこにミステリ的な仕掛けを期待すると些か肩透かしを覚えるかもしれない。
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一応謎としては渡が館の主人に対しどのような復讐を企んでいるのか? というのがあるがそれに関しては中盤で明かされる前に大半の読者が気付くだろうし、中盤以降の展開にしても予測の範囲内で意外性は皆無に等しい。むしろ王道の復讐物語を作者がどう盛り上げてくれるかを楽しむのが吉な作品である。
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2023年01月06日(金)
小西マサテル「名探偵のままでいて」読了。小学校の元校長で切れ者の祖父は現在レビー小体型認知症を患い介護を受けていた。だが孫娘の楓が遭遇した密室殺人や人間消失などの話をすると忽ち祖父は名探偵となり鮮やかに謎を解き明かしてみせる。そんなある日、楓の人生に関わる重大な事件が起きて……。
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第21回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作。本作は幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患った老人を安楽椅子探偵に据えた連作ミステリである一方で元々鮎川哲也賞の最終候補に残った作品だけあって本格ミステリファンが惹かれる要素が作中に多々見受けられる。
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例えば本作で扱われる事件は密室や人間消失、幻の女探しなど割りとミステリ度が高いものが揃っているし、瀬戸川猛資やカー、古畑任三郎などの名前が次々と挙がる登場人物たちのミステリ談義からは作者のミステリ愛が伝わってきて何とも微笑ましい気持ちになることだろう。
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だがその反面、肝心の謎解きがショボかったり定番の域を出ていなかったりと、作者のミステリ愛が伝われば伝わるほど本作のミステリとしての弱さが際立ってしまうのが残念。とはいえ最後の事件の謎解きはそれなりに見応えがあり、特に探偵役の設定をも巧く取り込んでいるのは○。
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そして何よりも本作の祖父と孫娘の関係は勿論、それを取り巻く善人たちが織り成す物語は読んでいて実に心地よく、前述したミステリとしての弱さに目を瞑れば連作らしい着地の決まった快作である。
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2023年01月09日(月)
「ルチオ・フルチのホラー・ハウス」観了。フルチ作品では珍しい幽霊屋敷物。フルチらしい残虐描写は健在ながら一方でコミカルさを感じさせるシーンも多々あり、そのミスマッチぶりが人によって好みが分かれるところだろう。個人的には嫌いではないが唐突過ぎるラストにはさすがに戸惑ってしまった。
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「ほの蒼き瞳」観了。士官学校で起きた猟奇殺人事件の謎にランドー刑事と生徒の一人である若きE・A・ポーが挑む話。ベタな話を丁寧に描いただけかと思いきや、ちゃんと最後にもう一捻りあったのでひと安心。とはいえ気付く人は気付くかもしれない。あと個人的にはポー役の人がそこそこ似ていたのが○。
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2023年01月10日(火)
田村由美「ミステリと言う勿れ」12巻読了。今回は一巻分まるまる使った捜査一課の紅一点、風呂光刑事にスポットを当てた連続殺人の序章という感じでミステリパートよりご当地飯や観光名所が印象に残るのは作者が好きと語る二時間サスペンスの影響ゆえか。引き続き事件が本格化する次巻に期待したい。
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2023年01月11日(水)
「オペラ座の怪人(アルジェント版)」観了。原作とは大きく異なる金髪ロン毛のイケメンで鼠に育てられた超能力者という怪人設定にまず驚かされる。一応アルジェントらしいグロは健在だが面白かったかと言われると……。あと舞台美術は凝っているのにCGがへっぽこな点は「ドラキュラ」と共通している。
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2023年01月12日(木)
遠坂八重「ドールハウスの惨劇」読了。名門・冬汪高校で学内便利屋として活動している二年の滝蓮司と卯月麗一は学内一の美少女・藤宮美耶からある依頼を引き受けるがそれこそが惨劇の始まりだった。 舞台は鎌倉に佇む白亜の豪邸。二人は特異な家族に纏わるおぞましい殺人事件の真相をひもといていく。
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posted at 21:29:18
第25回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。本作は男子高校生コンビがある女生徒の家族に纏わる事件の謎を解くという内容となっているが肝心の事件が起こるまでが結構長くそれまで異常な家族関係を丹念に描くことで徐々に事件がいつ起こってもおかしくない状況を作り上げてサスペンス性を高めているのは○。
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そしていざ事件が起こってからはアリバイや密室の謎を用意して物語を盛り上げてはくれるものの作者的には読者に謎を解かせる気がないのか推理に必要な伏線が所々抜けているのが気になる。また最終的に明かされる構図自体の面白さはあるが掘り下げが甘く消化不良になってしまっている要素も少なくない。
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2023年01月15日(日)
「ダークネス」観了。アメリカからスペインに越してきた家族を待ち受ける悪夢。失われた記憶を巡る幽霊屋敷物でちょっとシャイニングっぽさもある。演出的には悪くないものの真相がはっきりと語られるわけではないので人によってはモヤッとするかもしれない。どちらかといえば雰囲気を楽しむのが吉か。
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2023年01月16日(月)
「ザ・ディープ・ハウス」観了。YouTuberカップルが湖に沈んだ屋敷で見たものは? やってることは正統派幽霊屋敷ホラーながらその舞台を水中にしただけで閉塞感や緊張感が格段に高まるのが面白い。惜しむらくは導入部がやや退屈な点だが水中パートになってからは目が離せなくなること請け合いである。
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2023年01月18日(水)
「機械じかけの小児病棟」観了。閉鎖が決まった小児病院で相次ぐ怪異の真相とは? 怪異の一つ一つが真相を示唆する手掛かりになっている点もさることながら何よりミステリ的どんでん返しと共になぜ今になって起きたのかというホワイダニットが解き明かされる構造が実に秀逸。結末も巧く決まった傑作。
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「DO YOU LIKE HITCHCOOK?」観了。ヒッチコックの「裏窓」と「見知らぬ乗客」をベースにアルジェントが大胆にアレンジ。サスペリアPART2を想起させる部分もあるが出来は雲泥の差で、どうでもいいシーンの水増しのせいでサスペンスなのに間延び感が否めないのが残念。あと主人公が割りとクズでアレ。
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2023年01月20日(金)
竹町「スパイ教室09 《我楽多》のアネット」読了。フェンド連邦での激闘の後、14日間のバカンスを楽しむため離島を訪れた『灯』の面々。だがそこで待っていたのはクラウスの許嫁を名乗る少女との出会い、島に伝わる海賊伝説、そして奇怪な連続殺人事件だった。更に仲間のアネットが行方不明になり――。
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posted at 21:30:14
機関『灯』の活躍を描く長編シリーズの九作目。一応シリーズにおける3rdシーズンの開幕ではあるものの前巻までハードすぎる物語が続いたためか、今回は打って変わって短編集のノリに近い『灯』メンバーのバカンスを描いた肩の力が抜けた内容となっている。
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posted at 21:30:14
しかしながら面白いのはラブコメ要素を盛り込みつつも一方で連続殺人の謎を追ったり伝説の財宝を探したりとシリーズ中最もミステリらしい話になっている点だろう。しかもその展開は様々な謎や趣向が入り乱れ過ぎて極めてカオスな様相を示しており更には奇想的演出(!)まで出てくるのだから恐れ入る。
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そしてそれらをどう繋ぎ合わせてみせるのかが本作最大の見所でありラノベらしい良い意味で無茶苦茶な真相もあれば、コミカルな展開を隠れ蓑にしたミステリ的技巧に満ちた真相もあり、作者の芸達者ぶりを大いに感じさせてくれるだろう。
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posted at 21:30:15
中でも極め付きはタイトルにもなっているアネットが一連の騒動にどう関わっていたかであり、そこで明かされるバカンス回らしからぬ事実が何とも秀逸。加えてエピローグの後に用意された次巻への引き――もといあるキャラたちの成長した姿も実に心憎く、3rdシーズンの開幕としては申し分ない佳作である。
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2023年01月21日(土)
「キラーカブトガニ」観了。放射能事故で誕生した人喰いカブトガニが次々と人間を襲う話。冒頭から良い意味でB級臭さ全開で、古今東西のモンスターホラー映画から戦隊ヒーロー物の巨大バトルまで好きなものを片っ端から入れたような愛あるパロディーが実に微笑ましい。遊び心溢れるエンドロールも○。
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2023年01月22日(日)
西澤保彦「異分子の彼女 腕貫探偵オンライン」読了。34年前の挙式当日に新郎が殺された謎、奇妙な死体の入れ替わりと息子が大叔父を殺害し自首した理由、曰く付きのマンションの一室に隠された忌まわしい記憶……コロナ禍の櫃洗市で発生する奇怪な事件の謎を公務員探偵がオンラインで解き明かす。
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タイトル通り腕貫探偵が「リモート相談窓口」という形でオンラインで謎を解く連作ミステリ。今回は珍しく作者のあとがき(コロナ禍について思うことや趣向について語っている)が付いている他、三つの事件が収録されているが、収録作のページ数に比例して事件の人間関係も複雑になっていくのが面白い。
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ベストは最もページ数が多い書き下ろし中編「そこは彼女が潜む部屋」で、恋人の何気ない発言に纏わる謎が複雑な人間模様を経て辿り着く有り得ない符合とそこから導き出される黒い真相も見所だが、それ以上にどこに着地するか分からない、読者を翻弄させるようなプロットがいい。
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posted at 15:58:55
また黒い真相という点では表題作「異分子の彼女」のシンプルながらも身勝手な動機も捨てがたい。その他、奇妙な死体の入れ替わりと息子が大叔父を殺害し自首した理由に迫る「焼けたトタン屋根の上」の事件を通して見えてくる、タイトルが象徴する人間の悲しい性も○。
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