麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2022年10月01日(土)
有栖川有栖「濱地健三郎の呪える事件簿」読了。リモート飲み会で現れた「小さな手」の正体。廃屋で手招きする「頭と手首のない霊」に隠された真実。歴史家志望の美男子を襲った心霊は古い邸宅のどこに巣食っていたのか……年齢不詳の探偵・濱地健三郎が助手のユリエと共に六つの謎と怪異に挑む。
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心霊探偵・濱地健三郎が探偵役を務める連作ホラーミステリシリーズの三作目。怪談のようでもありミステリのようでもあり……というのが作者の目指すこのシリーズのコンセプトだが、一作目はミステリ寄り、二作目は怪談寄りときて今回の三作目ではそのバランス配分が最も巧くいっているように思う。
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その一方で本作ならではの特徴として全編コロナ禍という状況を何らかの形で物語に活かしている点が挙げられる。中でも頭と手首のない霊に端を発する殺人事件の謎を描いた「戸口で招くもの」は、前述したコロナ禍ならではのロジックの飛躍が楽しい一編である。
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他にも「呪わしい波」が怪異をミステリ的手法で描いた点も興味深いが、それ以上に火村物の連作短編集「怪しい店」を彷彿とさせる古物商の日常描写がいい。また「囚われて」はオカルトをまるで信じていないからこそ成立する物語とタイトルが実にユニーク。
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2022年10月07日(金)
依空まつり「サイレント・ウィッチIV -after- 沈黙の魔女の事件簿」読了。学園祭を終え冬休みが迫るセレンディア学園。しかしモニカは盗み食い事件や迷子騒動、正体不明の火の玉、怪しいおまじないなど次々と難事件(?)に遭遇。モニカと探偵小説にハマり中の黒猫が事件の謎を解き明かす。
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最強の引きこもり天才魔女が正体を隠し王子に迫る悪を密かに裁く学園ファンタジーシリーズの番外編。四巻と五巻の間の日常エピソードを描いた本作は事件簿と銘打たれてはいるものの、その殆どはミステリと言うには他愛もない愉快なハプニングであり、それに巻き込まれるモニカたちの姿が普通に楽しい。
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しかしながらそれらの愉快なハプニングの中で描かれたさりげない出来事が後に意外な伏線となって思いがけない展開を引き起こしていく点はある種のミステリ的面白さと言ってもいいかもしれない。その一方で本編の内容をより深く掘り下げるサイドストーリー集としても良くできた作品である。
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2022年10月09日(日)
倉知淳「世界の望む静謐」読了。看板漫画家を殺してしまった週刊漫画誌編集者、悪徳芸能プロモーターを手にかけた歌謡界の元スター、部下の裏切りに報復する人気タレント文化人、過去を掘り返そうとする同僚の口を封じた美大予備校講師...…罪を犯した者達の前に死神めいた風貌の警部が立ちはだかる。
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死神めいた風貌の警部が犯人を追い詰める連作倒叙ミステリシリーズの二作目。今回収録された四編に共通しているのはいずれも犯人を追い詰める決め手の意外性を重視している点であり、それもオーソドックスなものから「そんなやり方ありか?」と読者の度肝を抜くものまで幅広く用意されているのがいい。
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ベストを挙げるなら歌謡界の元スターの犯罪を描いた「一等星かく輝けり」で犯人はもとより読者をもペテンにかける、被害者の人物像を絶妙に活かしたある事実が秀逸。また「そんなやり方ありか?」という点では反則スレスレの手段でこれ以上ない〝瞬間〟の決め手を犯人に突き付けてみせる表題作も○。
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2022年10月12日(水)
るーすぼーい/古屋庵「無能なナナ」10巻読了。管理キャンプ編開幕。前巻から三年の時を経たことによりこれまで積み重ねてきた物語が活きてくるのがいい。またタイムリープの能力者との対決に関しては予測の範囲内での決着ではあるもののより強くなった主人公を見せる展開としては申し分ないと思う。
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2022年10月13日(木)
森博嗣「オメガ城の惨劇」読了。「マガタ・シキ」の名前によって孤島に聳えるオメガ城へ集められた六人の天才と一人の雑誌記者。そこにはサイカワ・ソウヘイも含まれていた。執事すら主催者の顔を知らず招待の意図は誰にも分からない。そして深夜。高い叫び声のような音が響き、城は惨劇の場と化した。
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森作品ではお馴染みの探偵役の一人・犀川創平最後の事件と銘打たれた長編ミステリ。〈「F」の衝撃、再び〉と帯に書かれている通り本作は作者のデビュー作にして代表作である「すべてがFになる」を彷彿とさせる粗筋となっているが、正直それを期待すると良くも悪くも裏切られることになるだろう。
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言うなれば本作は「F」の展開を逆手にとって描いているところがあり、それが真相のミスディレクションになっている点は否定できないものの、その反面〈「F」の衝撃、再び〉という謳い文句を素直に信じてしまった読者からするとあまりにも俗っぽいこの真相はかなりガッカリするのではないだろうか。
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どちらかというと事件が終わった後のエピローグの方がそういったファンの期待に応えている感があり、そこで明かされるある意外な事実こそ最大の読みどころと言ってもいい作品である。
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2022年10月16日(日)
「ルチオ・フルチのクロック」観了。三人組の強盗が押し入った屋敷で遭遇する悪夢。フルチ晩年のテレビ映画で時間が巻き戻ることでなぜ死者だけが蘇るのかが謎だが割とやりたいことが明確なストーリーは嫌いではない。また殺害シーンの無駄に残虐な描写や死者の甦りシーンはいかにもフルチらしくて○。
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2022年10月19日(水)
朝倉亮介「四季崎姉妹はあばかれたい」3巻読了。ミステリとハーレムラブコメの見せ方に関しては今回が最も秀逸で主人公の鋭い推理に感心した後のエロハプニングもといどうしてこうなった感が実に面白い。そして終盤のオッパイ攻勢にもめげずいよいよ核心に迫った主人公に対する三姉妹の反応に要注目。
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江坂純/凸ノ高秀「she is beautiful」1巻読了。メメント系の記憶障害ネタに百合要素とSF風特殊設定を絡ませたミステリ。「この世界は一体何なのか?」「自分の身に何が起こったのか?」という二つの謎を軸にサスペンスフルに展開する物語もさることながらヒロインが可愛いのも好印象で続きが楽しみ。
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2022年10月20日(木)
竹町「スパイ教室 短編集03 ハネムーン・レイカー」読了。『飛禽』のヴィンドはフェンド連邦の地で窮地に立たされていた。『べリアス』による襲撃、世界最高峰の力を誇る『黒蟷螂』との対峙。次々と仲間が倒れゆく中、彼の脳裏にあったのは『灯』と過ごした日々だった……。
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「スパイ教室」シリーズの短編集第三弾。今回収録された短編はいずれもは本編では描かれなかった『灯』と『鳳』の交流の日々に焦点を当てており、それが忘れ難いものであればあるほど『鳳』が迎える結末の物悲しさが際立つ構成が実に心憎い。
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posted at 21:09:32
個人的に良かったエピソードを挙げるとするならアネットと猫のほのぼのした触れ合いと苦すぎる結末のギャップが印象的な3章、犯罪組織『堕落論』を巻き込んだドタバタ劇からのバカミス的切り札が痛快な5章あたりだが、基本的には全体を通して読んでこそ意味のある作品と言えるだろう。
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2022年10月22日(土)
矢樹純「不知火判事の比類なき被告人質問」読了。殺人事件の裁判を傍聴することになったフリーライターの和花は衝撃的な場面を目撃する。不知火判事が被告に「勇気を持って真実を答えて下さい」と前置きした後、投げかけた最後の質問をきっかけに今まで見えていた事件の構図が一変してしまったのだ――。
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異端の裁判官が結審直前に発した「比類なき被告人質問」によって起きる五つの逆転劇を収録した連作法廷ミステリ。「真・逆転裁判」という帯の文句に偽りはなく、極めて現実的な事件を扱ったリアルな法廷の中でゲームの逆転裁判さながらの豪快な構図の反転が起こる様は実に痛快の一言に尽きる。
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posted at 15:57:10
しかも本作が秀逸なのは「比類なき被告人質問」によって真相が齎される前に弁護人や被告人、時には語り手による珍推理(?)によって事件に幾つかの波乱を起こしている点であり、それを踏まえて読者にある程度真相を予想させてから、更にその上をいく真相を提示してみせる手腕が抜群に巧い。
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posted at 15:57:35
加えてその真相も決して突飛ではなくきちんと事件の設定から逆算して作られているのがいい。本作は法廷ミステリ好きは勿論のこと見方によっては裁判という形を借りた安楽椅子探偵物と捉えることもできるのでその手の話が好きな人にもお勧めできる傑作である(個人的なベストは第四章「沈黙と欺瞞」)。
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2022年10月23日(日)
「劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ-冥き夕闇のスケルツォ」観了。アルゴが口調と中の人のせいでナナチにしか聞こえなかった(爆)。個人的にはアスナの成長が分かるミト戦も良かったがそれ以上に5層のボス戦が圧巻の出来(ただこれ、ミトがいなかったらアウトだったような気が)。
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2022年10月25日(火)
てにをは「また殺されてしまったのですね、探偵様4」読了。一万人を超える受刑者とロボットの看守により構成された屈斜路刑務所でロボットと人間の心中事件が起きた。ロボット三原則により人間を殺せないロボットはいかにして心中を実現できたのか?その謎を探るため朔也は刑務所に潜入することに――。
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殺されても生き返る高校生探偵・追月朔也が事件の謎を解くシリーズの四作目。本作はこれまで出たシリーズの中では最上の出来で、ロボット三原則という定番の題材を巧く物語に組み込んでいる点もさることながら「殺されても生き返る」探偵の特性を四作目にしてようやく捜査に活かしているのも○。
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posted at 21:32:26
密室のハウダニットや犯人を追い詰める決め手の部分はそれなりに練られている反面ミステリとしてみるとロボット三原則に纏わる一番肝心な所が後出しなのがやや気になるものの、そこさえ目を瞑れば謎解きをきっかけに始まる終盤の怒涛の展開は見応えがあるしラストに登場する某キャラも気が利いている。
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posted at 21:32:46