麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年03月02日(水)
梶龍雄「蝶々、死体にとまれ」読了。大学の学園祭のさなか、女子大生の死体が昆虫同好会の展示室で発見され、密室と化した部屋からは高価な蝶の標本が消えていた。更にこの蝶を巡って次々と起こる怪事件。果たしてこの事件の真相とは。そして作者が語る「動機のトリック」とは何なのか?
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posted at 14:13:06
まず本作について作者はこう語っている。「推理小説では、犯行や罪の隠匿がトリックを作ることが多いが、犯行の動機がトリックを作ることもある……と、こう書いたら、中身を読む前にここを読んだ方には、ヒントの与え過ぎだろうか? それでも読者は見破れまいという自信があるのだが……(後略)」
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posted at 14:14:24
この言葉からも分かる通り、本作のメインは動機にある。それさえ分かってしまえば謎のほぼ九割は解けたも同然と言っていいだろう。しかしながら作者が自信を持つだけあって、この問題を解くことはなかなか容易ではない。我こそはと思う人には是非とも挑戦して頂きたい、ホワイダニット物の秀作である。
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posted at 14:15:56
小林泰三「忌憶」読了。タイトルにある通り「記憶」をテーマにした三編が収録されたホラー連作集。何をやってもうまくいかないダメ男が幼い頃よく見たという奇妙な夢「奇憶」、腹話術の人形に自分の体を乗っ取られた男の奮闘「器憶」、記憶障害になった男がメモしているノートに隠された秘密「危憶」。
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posted at 18:24:09
このうち個人的なベストは「器憶」だが「危憶」のある矛盾点に関して推理する流れがミステリっぽいのも○。「奇憶」はとにかく「ダメだこいつ、早く何とかしないと」と思わせるキャラ描写が秀逸だった。「セピア色の凄惨」を読んだ時も思ったが小林泰三はこの手のキャラを描くのが抜群に上手いと思う。
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posted at 18:25:07
尾崎諒馬「思案せり我が暗号」読了。一言でいえば、暗号に始まり暗号に終わる小説。ここまで暗号にこだわった作家は近年では倉阪鬼一郎くらいだろう。個人的に最も面白かったのは作中作である「ワルツ 思案せり我が暗号」で、これに関しての感想は作者自身が本文P229で的確に言い表している。
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posted at 22:14:48
「//小説の中の私『鹿野信吾』と一緒になって暗号の解読を楽しんでしまうんだ。そうすると最後の『尾崎凌駕』の遺書にハッとさせられるんだよ。//正直言って参ったよ。これが『本格推理小説』かどうかという疑問もあるが、それこそ、新しい『本格推理小説』に対する模索は感じられる//」
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posted at 22:15:42
だが、その一方で本作は欠点も多く、例えば暗号講義から始まる蘊蓄にあそこまでページを割く必要があったのか甚だ疑問ではあるし、最後の試みもお世辞にも成功しているとは言い難い。(ちなみに最後の試みに関しては何となく大谷羊太郎の「殺意の演奏」を思い出した)
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posted at 22:16:33