麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年03月20日(水)
深水黎一郎「美人薄命」読了。独り暮らしの老人へ給食を配送するボランティアを始めた大学生の総司はその過程で片目の視力を失った老婆・内海カエと親しくなる。ある日、カエは総司に将来を約束していた人と死に別れる前日のことを語って聞かせるが、その話には総司の運命を変える秘密が隠されていた。
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posted at 13:24:19
作者久々の長編は「ジークフリートの剣」同様、一般小説に擬態化した本格ミステリであると同時に「ジークフリート」に登場した老婆のスピンオフ作品でもある。「ジークフリート」では謎めいた老婆だったが本作では打って代わってお茶目な印象で、つくづく人は見かけに寄らないことを痛感させられる。
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posted at 13:24:55
そして、この「人は見かけに寄らない」ということこそが本作の重要なテーマであり、それを作者はある対比を使って読者に痛烈に訴えかける。「ジークフリート」に比べると仕掛け自体はシンプルだが、その代わり今回擬態化したジャンルは戦争小説、恋愛小説、社会派小説、成長小説と実に多岐に及ぶ。
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posted at 13:25:10
尤もその擬態も本物と既に区別がつかない時点で融合と見なしてもいいかもしれない。そういう意味では本作は「ジークフリート」以上に作者の新たな可能性を見出だすことができる作品と言えるだろう。
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posted at 13:25:44
笹沢左保「不倫」読了。タイトルにあるように不倫を題材にした短編五編を収録したミステリ短編集。唯一「喪失の女」だけは非ミステリ作品だが、海辺の町を舞台に人妻とバイク青年の出会いと別れを描いただけの話であるにも拘わらず、じっくり読ませてしまうあたりに作者の小説家としての力量が分かる。
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posted at 17:28:39
全体的にサスペンスタッチの話が多いが、そんな中にもミステリ的テーマが随所に盛り込まれているのが面白い。例えば懸賞小説の発表が悲劇に繋がる「死の痣」はある意味「見えない人」物と言えなくはないだろう。
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posted at 17:29:04
また寝たきりの老社長に隠れて不倫する若い後妻とその先妻の弟が行き着く破局を描いた「炎の命乞い」は○○の構図(伏せる意味がない気もするが)でぞっとさせてくれる。その一方で不倫という題材はイヤミスとの親和性も高く、前述した「死の痣」と「冷えた孤独」はその典型と言っていいだろう。
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posted at 17:29:24
特に「冷えた孤独」のオチは完全に予想外でびっくりした。本格ミステリとしては「透明な雪」が秀逸で、盲目の人妻を殺害した間男探しという趣向がそのまま真相のミスディレクションになっている点が○。本作は不倫作家(?)笹沢左保の本領が遺憾なく発揮された作品集である。
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posted at 17:29:59