麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2020年03月20日(金)
森谷祐二「約束の小説」読了。医師の辰史のもとに父が死んだという知らせが届いた。名家出身の父の後継者として雪深い山に建つ館を訪れた辰史。彼を待ち受けていたのは頑固な祖母、掟で定められた許婚、帰りを快く思わない者からの脅迫状だった。そして遂に殺人事件が起こり、館は孤立状態に陥る――。
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posted at 18:36:33
第12回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。本作は粗筋からするとコテコテの館ミステリ風だが実はもう一つ、謎に包まれたヒロインによる殺人事件とは別の物語が平行して展開する構成となっている。言うなればこの全く異なる二つの物語がどう繋がるかというのが本作の見所というわけである。
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posted at 18:36:46
尤もそう言うと人によってはよくある趣向じゃないかと思うかもしれない。しかしながら本作の真骨頂はその二つの物語を繋げるにあたり早坂吝ばりのエロジック(!)を炸裂させている点であり、これにより古式ゆかしい物語が島田荘司の提唱する二十一世紀型本格へと鮮やかに変貌を遂げるのが素晴らしい。
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posted at 18:37:06
更にトドメとばかりにラストに明かされる、なぜ作者があえて「約束の小説」というミステリっぽくないタイトルをつけたのか、その理由も心憎いほど決まっている。ただその一方で殺人事件パートで明かされる真相との温度差がやや気になるところだが、そこはご愛嬌と見るべきだろう。
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posted at 18:37:23
ちなみに温度差と言えば突如展開されるミステリ論(荒唐無稽なトリックこそミステリの華、キャラクター小説じゃなくてミステリ小説が読みたい云々)やメタル談義(!)も人によっては面食らうかもしれないが個人的には嫌いではない。とまれ、本作は古さと新しさが両方楽しめる実に意欲的な作品である。
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posted at 18:37:41