麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2020年11月20日(金)
酒井田寛太郎「放課後の嘘つきたち」読了。日本史のテストのカンニング疑惑、陸上部の幽霊騒動、ドキュメンタリー映画の不可解な改竄……英印高校部活連絡会に所属する文武両道、容姿端麗で一見完璧な三人の高校生たちが校内で起きる事件の謎を解くうち、封印してきた己の過去と向き合うことに――。
タグ:
posted at 12:04:25
「ジャナ研の憂鬱な事件簿」シリーズの作者による四話構成の青春ミステリ連作。本作の探偵役はひょんなことから部活連絡会の仕事を引き受けることになった水と油というべき関係の二人の高校生・御堂慎司と蔵元修が務めているが、面白いのは二人の性格の違いが推理にもかなり反映されている点だろう。
タグ:
posted at 12:05:10
修は着想こそ鋭いがどこまでも純粋なのに対し御堂は徹底して人の裏側を見抜こうとする。そのため最初こそ修の推理はあと一歩というところで真相に及ばず御堂にフォローされる形で終わるが、話が進むにつれ修の成長と共に事件の真相は勿論、仲間たちの隠された一面をも見通せるようになる構成が秀逸。
タグ:
posted at 12:06:34
ミステリとしてみると第一話にあたる「不正と憂鬱」は登場人物の役割の説明回という趣が強いものの話の展開に見るべきところあり。どちらかというとミステリの本領発揮は続く「ゴースト イン ザ ロッカールーム」からで修の推理を御堂がどうひっくり返し、人間の隠れた裏側を暴いてみせるかは必見。
タグ:
posted at 12:07:15
しかしながらベストを挙げるならドキュメンタリー映画の不可解な改竄を扱った「ワンラウンド・カフェ」でさりげない伏線の巧さとタイトルに隠された意味から明らかになるホワイダニットのどす黒さとそれに付随したある気付きから明らかになる御堂の衝撃的な秘密が堪らない。
タグ:
posted at 12:07:32
そしてトリを飾る「穏やかで暖かい場所」は作品の方向性から何となく真相が透けて見えてしまうものの、現場の不可解な状況からのロジックの積み重ねは緻密であり、連作の纏めとしても申し分ない。何より最後まで読み終わるとタイトルはこれしかないと思うこと請け合いの傑作である。
タグ:
posted at 12:07:52