麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2020年12月11日(金)
田中啓文「信長島の惨劇」読了。本能寺の変で織田信長が明智光秀に討たれてから十日後、羽柴秀吉、柴田勝家、高山右近、徳川家康の四人の武将が三河湾に浮かぶ孤島の館へと招かれる。そこで彼らを待っていたのは謎めいた童歌になぞらえるように一人また一人と殺害されていく連続殺人劇だった。
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posted at 16:28:21
本能寺の変と「そして誰もいなくなった」の融合というまさかの試みを成立させてしまった時代ミステリの怪作。といっても序盤は本能寺の変から明智光秀が討たれるまでをシリアスに描いているのでそんな印象は一切受けないかもしれないがそこから一転、謎の童歌と孤島へ行く急すぎる展開には唖然の一言。
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posted at 16:28:47
そして孤島に着いてからは四人の武将に加え、様々な歴史上の有名人が登場するのである意味戦国時代オールスターズの趣があり、更にそこで起こる連続殺人劇は不可能犯罪の様相を示しているのだから堪らない。もっとも個々のトリックに関しては、それほど意外性はないかもしれない。
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posted at 16:29:21
だが本作の一番の見所はドラマや映画にもなった某作を彷彿とさせるある趣向であり、見方によっては本作が時代ミステリレーベルから出たことが最大のトリックと言えるだろう。しかも一見無茶な趣向にも拘わらず、その後の史実と何故か(?)符合してしまうのが面白い。
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posted at 16:29:29
原浩「火喰鳥を、喰う」読了。信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。一つは久喜家代々の墓石が何者かによって破壊されたこと。もう一つは太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父・貞市の日記が届いたことだった。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では不可解な出来事が起こり始める。
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posted at 16:30:29
第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞≪大賞≫受賞作。本作はジャンルとしてはホラーに属する作品ながら主人公の身の回りで起きた二つの謎――何者かによる墓石の破壊と日記に突如出現した「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」という奇妙な一文を巧く絡めミステリとホラーの両輪で物語を引っ張ってみせる。
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しかしながら、やがて明かされる真相は見方によってはSF的でもあり、徐々に錯綜していく展開は幻想小説のような趣がある。個人的にはこの真相でいくのであればもう少しある人物の背景を描いてほしかったところだが、それを差し引いても本作は読ませる作品であり、充分秀作と言っていいだろう。
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posted at 16:31:14
靖子靖史「そよかぜキャットナップ」読了。長谷川弘忠の友人・小野啓太の家で飼っている愛猫マコトが行方不明になった。弘忠、啓太に玉井香織を加えた三人は「里山田園愛好会そよかぜ」を結成し事件を追うが、ただの猫探しは次第に開かずの社堂やジェイソン(?)に纏わる噂など謎を増やしていく。
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posted at 21:29:02
第10回講談社BOX新人賞Talents受賞作。「ゆるミス」と銘打たれた本作はいわゆる日常の謎を扱った作品であり、とぼけたキャラたちが繰り広げるただの猫探しのはずが、開かずの社堂やジェイソン(?)に纏わる噂など不可解な謎を幾つも絡ませることで事件に深みを持たせているのがいい。
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posted at 21:29:31
尤も事件の真相だけ取り出せば他愛のないものながら本作が秀逸なのはあくまで猫探しという小さい事件の特徴を徹頭徹尾活かした点であり、そこを起点に様々な謎を用意しただけでなく、それらを伏線として回収することである人間ドラマを浮き彫りにしてみせたところに作者のミステリセンスが感じられる。
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posted at 21:29:46
時折挿入される謎めいたモノローグの意味も物語のいいアクセントになっており、「ゆるミス」という売り文句とは裏腹にしっかりと作り込まれた青春ミステリの快作である。
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posted at 21:30:11