麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2021年05月29日(土)
道尾秀介「雷神」読了。埼玉で小料理屋を営む藤原幸人の許にかかってきた一本の脅迫電話が全ての始まりだった。昭和の終わり、藤原家に降りかかった母の不審死と毒殺事件の真相を解き明かすべく幸人は姉の亜沙実らと共に三十年の時を経て因習残る故郷へと潜入調査を試みるがその直後に新たな悲劇が――。
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posted at 16:59:33
回想の殺人テーマの長編ミステリ。因習残る村を舞台に起きる殺人事件というと横溝正史を思い出す人もいるかもしれないが、どちらかというと回想の殺人ということもあってかクリスティーっぽさを強く感じさせる。本作はタイトル通り雷が度々印象的に使われており、それが事件にも巧く反映されている。
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posted at 16:59:54
本作の真相に関して内容紹介には「どんでん返しの先に待つ衝撃のラスト」「最強の破壊力」とあるがむしろ本作は真相のサプライズよりも作者のミスディレクションの巧さが際立っているタイプの作品であり、しかもそれが物語が始まった時から既に仕掛けられているのだから何とも恐れ入る。
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posted at 17:00:16
加えて登場人物設定に関してもよく練られており、それによって終盤の展開と共にこれしかないという真相に読者を誘導させてみせる手腕には見事に騙された。だがそれ以上に秀逸なのは前述した雷に纏わるある事実であり、これについては充分衝撃的と言っていいだろう。
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posted at 17:00:39
そして同時にそれがどうしようもない残酷な人間ドラマを浮き彫りにしておりだからこそ最後の一行が実に心に刺さる。正直言うとあるトリックを使わなくなって以降の道尾作品はいまいちパッとしない印象が否めなかったが本作に限って言えばそれがなくてもここまで書けることを証明してみせた傑作である。
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posted at 17:00:55