麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年08月17日(月)
月原渉「火祭りの巫女」読了。父が亡くなったのを機に母の死の真相を探るため山深きヒマツリの村を訪れた緋佐子。そこで彼女は十五年前、巫女だった母が炎に囲まれた密室状態の社の中で首を切られて殺されていた事実を知る。そして三つ子の巫女が揃い秘祭が復活する時、再び火炎密室の悲劇が――。
タグ:
posted at 23:25:10
ここ最近は現代的な舞台の本格ミステリを書いていた作者が一転、刀城シリーズばりの伝奇本格ミステリを書いたことにまず驚かされるが、読んでみるとこの舞台あっての仕掛けという点が何とも「月光蝶」以降の作者らしい。
タグ:
posted at 23:25:21
本作でまず目を惹くのは火炎密室と首切りという二つの謎だが真相が明らかになるとこれらが実は切っても切れない関係で成立していたことに唸らされる。ダミーの解決もよくできているが、それを首切りの論理によって覆す点がとにかく圧巻。本作は現時点の作者の最高作と言っていい伝奇本格の秀作である。
タグ:
posted at 23:25:52
2015年08月18日(火)
天祢涼「ハルカな花」読了。夢破れながら、夢にこだわる青年。恋していることに気付いた時には失恋していた女子高生。娘とうまくコミュニケーションがとれず一人悩む父親。離婚した母と父のどちらも大好きな小学生の男の子……これは、悩んでいるあなたの心に花を咲かせてくれる、不思議な少女の物語。
タグ:
posted at 22:58:44
季節の花に纏わる悩みを抱えた人々の心をハルカという名前の不思議な少女が救う連作短編集。一応ミステリ要素もなくはないものの、ミステリと思って読むと後半のファンタジー展開でポカンとなるに違いない。
タグ:
posted at 22:59:03
ミステリとしてはハルカの一言で今まで隠されていたある企みが明らかになる一話目が秀逸だが、それ以降は伏線があからさまだったり、脱力ネタだったり、専門知識に依存し過ぎだったりでイマイチ楽しめなかった。
タグ:
posted at 22:59:32
2015年08月24日(月)
アガサ・クリスティー「蜘蛛の巣」読了。外交官の夫を持つクラリサはある日、引っ越したばかりの自宅で夫の前妻と結婚した男・オリバーの他殺体を発見する。その直後、義理の娘・ピパから殺人の告白を聞かされたクラリサは彼女を守るべく、親しい三人の男を呼び寄せ、偽装工作の協力を仰ぐが――。
タグ:
posted at 22:18:22
殺人の偽装工作から二転三転する展開が楽しい作品。但しその展開自体にミステリ的計算が働いているタイプではないので、それを期待すると肩透かしを覚えるかもしれない。
タグ:
posted at 22:18:36
しかしながらさりげなく張られた伏線から隠れていた事実が次々と明らかになっていく点が秀逸であり、それらが最終的にヒロインの空想を遥かに上回っている図が面白い快作である。
タグ:
posted at 22:19:03
2015年08月26日(水)
二階堂黎人「アイアン・レディ」読了。2030年、大地震とテロで治安の悪化した日本。連州捜査官の永明は死んだ恋人と同じ顔を持つパートナーのアンドロイド・レオナと共に拐われたロボット工学の権威・薬丸博士の行方を追うが、何故かこちらの動きは敵に読まれてしまう。誰かが裏切っているのか?
タグ:
posted at 00:26:01
「聖域の殺戮」以来のSFミステリ。「聖域の殺戮」がスタートレック風だったのに対し本作は手塚漫画風であり、そのためか全体的によくも悪くも古めかしさが感じられる。作者曰く今回はわりと活劇重視とのことだが、何気にフーダニット物としての出来は悪くない。
タグ:
posted at 00:26:25
犯人の意外性はそれほどでもないものの、アクション展開を隠れ蓑にしつつ設定を巧く活かしている点が好印象。もっとも扱い的にはあくまでオマケなのが少々残念だが、あとがきによるとシリーズ二作目では一転、密室殺人を扱った本格ミステリになるそうなので、ミステリとしてはそちらに期待したい。
タグ:
posted at 00:27:05
アガサ・クリスティー「海浜の午後」読了。一幕ものの戯曲集。高価なエメラルドの首飾りを巡り浜辺で繰り広げられる騒動を描いた表題作、何者かに襲われ意識不明となった患者の証言を聞き出す実験「患者」、アパートの一室に誘い出された男女を待つ恐るべき罠「ねずみたち」の三編を収録。
タグ:
posted at 22:27:58
本作に収録された三編はいずれも軽い読み口の作品ながら、その切れ味の鋭さにまず驚かされる。表題作及び「患者」はミスディレクションの巧さが引き立てる犯人の意外性が秀逸で、特に表題作は犯人だけではなく様々な面でぬけぬけと読者を騙してくれるのが心憎い。
タグ:
posted at 22:28:16
それに対し「ねずみたち」はサスペンス性の高いホワットダニット物で、何が起こっているのか次第に状況が明らかになってくるにつれ、タイトルの残酷さがじわじわと沁みてくるのがいい。三編とも甲乙つけがたいが、ベストを選ぶなら「ねずみたち」。
タグ:
posted at 22:28:35
2015年08月30日(日)
アガサ・クリスティー「ブラック・コーヒー」読了。金庫から盗まれた極秘書類を巡り発生した毒殺事件を名探偵ポアロが解き明かす表題作、難病に冒された妻を看病する学者に惚れた富豪の娘が彼を愛するあまり取り返しのつかない選択をしてしまう「評決」の戯曲二編を収録。
タグ:
posted at 21:34:46
毒殺テーマのフーダニット物である表題作は何気ない手掛かりから毒物の入手法を導き出す点が秀逸な反面、戯曲だからなのか犯人の決定的シーンが堂々と書かれてしまっているのが残念。しかしながら、それさえ目を瞑ればポワロの名探偵ぶりに惚れ惚れする作品に仕上がっている。
タグ:
posted at 21:35:15
一方「評決」はトリックもなければどんでん返しもない作品ながら、作者自らが最高の作品というだけあって人間ドラマが非常に面白い。何といっても現実の理不尽さを象徴するような展開のずらし方が素晴らしく、それに翻弄された男女が最終的に辿り着く結末に思わず胸を打たれる傑作である。
タグ:
posted at 21:41:42