麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年12月24日(木)
織守きょうや「黒野葉月は鳥籠で眠らない」読了。自分に淫行した疑いで逮捕された家庭教師を救おうとする少女、不仲の父親が住む家に不法侵入した友人、不貞を働いた妻との離婚を望む男、不思議な関係の女性と同居する芸術家……新人弁護士・木村が関わった一筋縄ではいかない四つの事件の顛末を描く。
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posted at 21:59:53
弁護士でもある作者の経験が活かされたリーガルミステリ連作。収録作は基本的に法律の盲点を突くことによりそれまでの流れをひっくり返す構成になっているが、ある程度ミステリ慣れしていると作者がどういう風にひっくり返すつもりなのか法律に詳しくなくてもだいたい分かってしまうのが難。
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posted at 22:00:03
とはいえオチまでの過程が実に丁寧に描かれているので、単純に物語として割り切ればかなり楽しめる快作である。ベストを挙げるなら、その手の込みように分かっていても唸らされる「三橋春人は花束を捨てない」。
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posted at 22:00:41
2015年12月25日(金)
北山猛邦「ダンガンロンパ霧切4」読了。二つの棺桶が置かれた密室から煙のように消えた黒マントの犯人、双子を使った実験中の研究所で起きた究極の密室殺人、密室状態の体育館に横たわる蝋燭に囲まれた死体……霧切響子と五月雨結は新たに三人の探偵の協力を得て「密室十二宮」残り六つの密室に挑む。
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posted at 21:59:39
十二の密室事件で構成されている「密室十二宮」のうち本作では三つの密室が出てくるが、謎解きまでいくのは二つだけとなっている。その二つのうちトリックとして面白いのは体育館の事件で、アレを小道具に使ったトリックは数あれど、これはなかなか画期的。物理の北山の名に恥じない出来だと思う。
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posted at 21:59:57
一方、研究所の事件はトリック自体は肩透かしだが(とはいえ、ある意味この手の見せ方をする事件のお約束とも言える)それとは別のところに仕掛けられた意図に面白みがある。欲を言えばもう一つの密室も解決してほしかったが、前作よりも詰め込まれた内容になっているので良しとしたい。
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posted at 22:00:29
2015年12月26日(土)
小杉健治「二重裁判」読了。東京高輪で起きた社長殺しの容疑で逮捕された古沢克彦は無実を叫びながら獄中で自殺した。マスコミらによって殺人者に仕立て上げられた兄の無実を晴らすため、妹・秀美は事件を調べ始める。やがて西池袋である殺人事件が起こるが逮捕されたのはあろうことか秀美自身だった。
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posted at 19:15:40
被告人の自殺という形で収束した過去の殺人事件が、被告人の妹が起こした新たな殺人事件により再びクローズアップされる本作は、一見するとマスコミや裁判制度に対する妹の復讐劇のように思われるが、勿論それだけでは終わらず意外な仕掛けが用意されている。
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posted at 19:16:00
ミステリとしては妹の真の狙いがどこにあるかが焦点になるが、それを解き明かすにあたり過去の事件におけるある謎が関わってくる展開は巧いし、最終的にその鍵を握る人物の証言によって鮮やかにひっくり返される構図には見事と言うしかない。
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posted at 19:16:18
何より兄の無実を晴らそうとする妹の行動が絶妙な煙幕となっており、妹の事件を担当する弁護士の設定にしても単なるキャラ立てに留まらず、きちんと終盤に活かされているのが素晴らしい。
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posted at 19:16:29
2015年12月31日(木)
ポール・アルテ「虎の首」読了。旅行から帰ってきたツイスト博士のスーツケースの中から、巷を騒がせている連続バラバラ事件の被害者と思しき女性の手足が発見された。一方、事件の発端となった村では不可解な連続盗難事件とインドから持ち帰った曰く付きの杖に纏わる奇怪な密室殺人が起きて……。
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posted at 13:47:27
犯罪学者ツイスト博士が探偵役を務めるシリーズの一作。奇しくも前に読んだ「死が招く」と同じく、本作もまた謎を煙幕に使ってプロットで騙すタイプの作品だが、本作は「死が招く」以上に事件を錯綜させて「(メインの)事件は事件の中に隠せ」と言うべき内容に仕上げている。
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posted at 13:49:36
一部メリットよりデメリットの方が大きいのではないかと思わなくはないが、それが犯人の異常性を際立てているのも事実で、だからこそラストのツイスト博士の行動にも説得力がある。個人的にはアルテがトリックよりもプロットが巧い作家であることを再認識させてくれた秀作である。
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posted at 13:50:00