麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2022年08月30日(火)
月原渉「九龍城の殺人」読了。裏社会の長である祖母に母の遺骨を渡すべく訪れた香港で私は同世代の二人の女性と友達になるが――。徐々に知らされる光と闇。更に私は女だけが入れる城「九龍城」で異様な連続殺人に巻き込まれることになる。残された麻雀牌。切り取られた指。謎の血手形が意味するものは?
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posted at 14:44:10
作者久々のノンシリーズ物長編ミステリ。タイトルにある通り九龍城が事件の舞台ではあるものの、そこへ辿り着くまで120頁以上もかかる点はやや賛否が分かれるところだろう。しかしながら辿り着いてから事件が起こるまでは早いし何よりそれだけ頁数を要したのには勿論理由があってのことだ。
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posted at 14:44:33
物語の中心となるのは主人公風(ふう)と現地でできた女友達シャクティとホンファの三人であり、まずは土台としてその三人の関係をきちんと描く必要がある。加えて当時の香港の事情や主人公を取り巻く状況も描かないことには事件自体が成り立たない為ある程度のスロー展開は致し方ないところだろう。
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posted at 14:47:01
そしてその甲斐あって九龍城で起こる殺人事件に関しては犯人を血手形を巡るロジックや殺人の動機にこの舞台でしか起こり得ない独自性があり、あっと驚かせてくれる。ただそれでも終盤に明かされる真相についてはやや詰め込みすぎかつ描写不足なきらいがあり、スマートさに欠ける部分も否めない。
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posted at 14:47:19
とはいえ前述したロジックや動機は面白いし何より三人の関係を丁寧に描いてきたからこそ活きてくるエピローグの後味が素晴らしい。本作は舞台に必然性がある事件と物語が好印象の佳作である(あと個人的にはそろそろ新潮文庫nexから出ている作者の館ミステリには建物の見取り図を入れてほしい)。
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posted at 14:47:52
2022年08月31日(水)
大島清昭「赤虫村の怪談」読了。愛媛県の山間部にある赤虫村には特異な妖怪譚が存在する。かねてから赤虫村について調査していた怪談作家・呻木叫子は村の名家・中須磨家を襲う不可能犯罪の解明に関わることに。神木の枝上に遺棄された全裸屍体、石蔵の密室で発見された焼屍体……一連の事件の真相は?
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posted at 22:45:19
「影踏亭の怪談」に続く作者初の長編ミステリ。本作は前作同様、実話怪談風ホラー+本格ミステリという作風にクトゥルフ神話を絡めた内容で舞台の村に現れる妖怪に付けられた「蓮太(はすた)」「九頭火(くとうか)」「無有(ないある)」といったストレート過ぎる名前にはむしろ清々しささえ覚える。
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posted at 22:45:56
クトゥルフ神話が実話怪談風に語られる点はなかなか新鮮ではある反面、ミステリとしてみると仕掛けはかなり肩透かしで、クトゥルフと絡めた意味があったかという点に関しても些か疑問が残る。また長編としてみても展開がやや単調なきらいがあり個人的には前作が良かっただけに残念と言わざるを得ない。
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posted at 22:46:15