麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2022年08月31日(水)
クトゥルフ神話が実話怪談風に語られる点はなかなか新鮮ではある反面、ミステリとしてみると仕掛けはかなり肩透かしで、クトゥルフと絡めた意味があったかという点に関しても些か疑問が残る。また長編としてみても展開がやや単調なきらいがあり個人的には前作が良かっただけに残念と言わざるを得ない。
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posted at 22:46:15
「影踏亭の怪談」に続く作者初の長編ミステリ。本作は前作同様、実話怪談風ホラー+本格ミステリという作風にクトゥルフ神話を絡めた内容で舞台の村に現れる妖怪に付けられた「蓮太(はすた)」「九頭火(くとうか)」「無有(ないある)」といったストレート過ぎる名前にはむしろ清々しささえ覚える。
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大島清昭「赤虫村の怪談」読了。愛媛県の山間部にある赤虫村には特異な妖怪譚が存在する。かねてから赤虫村について調査していた怪談作家・呻木叫子は村の名家・中須磨家を襲う不可能犯罪の解明に関わることに。神木の枝上に遺棄された全裸屍体、石蔵の密室で発見された焼屍体……一連の事件の真相は?
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posted at 22:45:19
2022年08月30日(火)
とはいえ前述したロジックや動機は面白いし何より三人の関係を丁寧に描いてきたからこそ活きてくるエピローグの後味が素晴らしい。本作は舞台に必然性がある事件と物語が好印象の佳作である(あと個人的にはそろそろ新潮文庫nexから出ている作者の館ミステリには建物の見取り図を入れてほしい)。
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posted at 14:47:52
そしてその甲斐あって九龍城で起こる殺人事件に関しては犯人を血手形を巡るロジックや殺人の動機にこの舞台でしか起こり得ない独自性があり、あっと驚かせてくれる。ただそれでも終盤に明かされる真相についてはやや詰め込みすぎかつ描写不足なきらいがあり、スマートさに欠ける部分も否めない。
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posted at 14:47:19
物語の中心となるのは主人公風(ふう)と現地でできた女友達シャクティとホンファの三人であり、まずは土台としてその三人の関係をきちんと描く必要がある。加えて当時の香港の事情や主人公を取り巻く状況も描かないことには事件自体が成り立たない為ある程度のスロー展開は致し方ないところだろう。
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作者久々のノンシリーズ物長編ミステリ。タイトルにある通り九龍城が事件の舞台ではあるものの、そこへ辿り着くまで120頁以上もかかる点はやや賛否が分かれるところだろう。しかしながら辿り着いてから事件が起こるまでは早いし何よりそれだけ頁数を要したのには勿論理由があってのことだ。
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posted at 14:44:33
月原渉「九龍城の殺人」読了。裏社会の長である祖母に母の遺骨を渡すべく訪れた香港で私は同世代の二人の女性と友達になるが――。徐々に知らされる光と闇。更に私は女だけが入れる城「九龍城」で異様な連続殺人に巻き込まれることになる。残された麻雀牌。切り取られた指。謎の血手形が意味するものは?
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posted at 14:44:10
2022年08月28日(日)
それでいて本作は京極夏彦の某作を彷彿とさせるあるミステリ的テーマをこれでもかとばかりに駆使しており、最後に爆弾のように炸裂するその事件の構図だけでもミステリファンは一読の価値があるだろう。本作は社会派ミステリとしても本格ミステリとしても見逃せない傑作である。
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事件の内容もさることながら今の社会に対する人々の鬱憤という比喩的表現、そしてそれを読者にも体験させるべくわざとストレスを覚えさせるような展開を積極的に導入するだけでなく犯人の計画や構成そのものにも時限爆弾のような仕掛けを用いている点が実に秀逸。
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posted at 16:40:13
無差別爆破事件を巡る容疑者と思しき男と警察の対決を描いた長編ミステリ。個人的にまず思ったのが犯人や探偵役の刑事がやたらと饒舌な点であり、それと「爆弾」というシンプルなタイトルのギャップがなかなか興味深いが実はその短いタイトルに様々な意味が込められているのが本作を読むとよく分かる。
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posted at 16:39:40
呉勝浩「爆弾」読了。些細な傷害事件で野方署に連行された中年男が取り調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。更に男はあっけらかんと告げる。「ここから三度、次は一時間後に爆発します」――果たして警察は爆発を止めることができるのか?
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2022年08月25日(木)
錯誤のために盛り込まれた罠の大胆さにも驚かされるが、それをロジカルに解き明かすフェイの推理が実に秀逸。またメインの物語の方もようやくチーム名が決まり、いよいよ核心に迫りつつある展開で早くも次巻が待ち遠しい。
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「神樹の実バスケット」はルール説明の段階である程度作者の狙いが読めてしまうものの、それでも動きのあるシーンは読み応えがあるしその中に張られた細やかな伏線は好印象。一方「そしてみんないなくなった」は主人公視点にしたことで読者を翻弄させつつ、仕掛けに説得力を与えることに成功している。
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posted at 16:05:19
神々が考案した様々なゲームに挑むファンタジー頭脳戦シリーズの五作目。今回はあとがきで作者が語っている通り2巻以来久々の「一巻二ゲーム」構成となっており、「神樹の実バスケット」と「そしてみんないなくなった」の、タイプの違う二つのゲームで楽しませてくれる。
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posted at 16:04:56
細音啓「神は遊戯に飢えている。5」読了。不可能と思われた迷宮を完全攻略したことで正体不明の神から目をつけられてしまうフェイの前に新たに立ちはだかるのは世界樹が舞台の特殊ルールバスケ「神樹の実バスケット」と海神ポセイドン考案の迷宮脱出&偽者当て「そしてみんないなくなった」だった。
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2022年08月24日(水)
それでいて消失の謎が解かれた後にくるサプライズはなかなかのもので、伏線回収の巧さもさることながら、大人たちが気付かない子供たちの繊細な感情や心理をさりげなく解き明かしてみせる手腕には脱帽と言わざるを得ない。本作は子供たちの視点で丁寧に紡がれたジュブナイル本格ミステリの傑作である。
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posted at 20:18:43
これは良いジュブナイルミステリ。事件の真相こそ他愛ないものながら、本作の見所はそれを示唆する丁寧かつ細やかな伏線とミステリファンの心を擽る八つの仮説をベースにした推理、そして何より自閉スペクトラム症の少年がどうやって真相を突き止めるか、その過程が極めて自然に描かれている点だろう。
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posted at 20:17:34
シヴォーン・ダウド「ロンドン・アイの謎」読了。ロンドン・アイと呼ばれる巨大な観覧車に乗り込んだ従兄弟のサリムが12歳のテッドと姉のカットが見ていたにも拘わらず忽然と姿を消してしまった。不可解な人間消失の謎に「ほかの人とはちがう」優秀な頭脳を持つ少年テッドが挑む。
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posted at 20:17:16
加えてそのドラマ性に一役買っているのが事件を追う台北南署の刑事・李山海の設定であり、この探偵役だからこそ際立つ犯人との対決シーンが実に秀逸。あくまで野球はドラマを盛り上げる要素の一つにすぎず決して派手な作品ではないものの、静かな人間ドラマがじわじわと胸に沁みる滋味深い良作である。
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posted at 19:42:42
また本作は昭和本格らしく(?)時刻表を駆使したアリバイ崩しを扱っているが、そのトリック自体はそこまで目新しいものではない。むしろ本作最大の見所は動機の方であり、日本統治下の台湾という舞台ならではのそれはたとえ真相が途中で分かってしまったとしても一気に読ませるドラマ性がある。
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posted at 19:42:09
第6回金車・島田荘司推理小説賞受賞作。島田荘司賞の受賞作というと島田荘司が提唱する21世紀本格を彷彿とさせる作品が多いが本作はというと意外にもその対極とも言える昭和本格要素が強く、登場人物に日本人が多いせいもあって読んでいて全く翻訳ミステリらしさが感じられないのにも驚かされる。
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唐嘉邦「台北野球倶楽部の殺人」読了。昭和十三年、日本統治下の台湾・台北市。野球愛好家の集まり「球見会」の会員二人が別々の列車内で不審な死を遂げた。やがて容疑者が浮かび上がるも、鉄壁のアリバイが捜査陣の前に立ち塞がる。果たして二人の死にはエースのスカウト合戦が関係しているのか?
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posted at 19:41:27
2022年08月23日(火)
だがその一方でミステリとしてみると謎解きは良くも悪くもイージーで犯人の動機もありきたりなもので終わってしまっているのが残念。目新しさを求めると物足りなさは否めないが、この手の終末世界を舞台にした物語が好きな人であれば楽しめる作品である。
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posted at 16:34:46
第68回江戸川乱歩賞受賞作。終末世界で起きた殺人事件の謎を扱った本作は教習所の日常風景が静かに崩れていく冒頭から掴みはバッチリ、探偵役であるイサガワを始めとするキャラや終末世界ならではのドラマの見せ方は○で、終始テンポのいい展開でぐいぐいと読ませてくれる。
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posted at 16:34:01
荒木あかね「此の世の果ての殺人」読了。小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表された終末世界。一人太宰府で自動車の教習を受け続けている小春は年末のある日、教習車のトランクの中から滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワと共に彼女は地球最後の謎解きを始める。
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2022年08月22日(月)
だがその反面サプライズを重視しすぎたためかどうとでもとれる伏線ばかりで、真相そのものを示唆する決定的な伏線に欠けるのが難。また密室殺人の真相も何とかその後の大仕掛けと繋げてはいるものの、それでも定番のネタの域を出ていないし、どうしても状況の不自然さを感じてしまう。
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posted at 22:18:20
目の前に亡くなった大切な人と瓜二つの人物が現れる謎と密室殺人を扱った長編ミステリ。本作の帯には「《世界の色》が豹変する驚愕ミステリ」とあるが、確かにこの真相に関してはある小道具や昨今の社会事情を巧くミスディレクションに活かしたおかげで驚く人もいることだろう。
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posted at 22:17:55
市川憂人「灰かぶりの夕海」読了。波多野千真の前に現れた少女は二年前に死んだ恋人と同じ姿、同じ《夕海》という名前だった。更に仕事中に遭遇した殺人事件――密室の中で死んでいたのは恩師の亡き妻とそっくりな女性だった。彼女たちの正体は? そして、この世界では何が起きているのか?
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posted at 22:17:16