麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2020年09月05日(土)
宇佐美まこと「夜の声を聴く」読了。突然目の前で手首を切った百合子と知り合ったことで引きこもりだった隆太は彼女の通う定時制高校に通い始める。彼はそこで知り合った大吾と共にひょんなことから受けた「よろず相談」を解決していくうち数年前に起きた未解決の一家殺人事件の謎に巻き込まれていく。
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posted at 20:14:02
定時制高校に通う主人公が過去に起きた一家殺人の謎を解き明かす青春ミステリ。といっても一家殺人の話が出てくるのは相当後のことであり、それまで主人公の親友・大吾が働くリサイクルショップ「月世界」に持ち込まれる「よろず相談」が中心の展開は長編というより連作ミステリの趣が強い。
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posted at 20:14:59
そしてその持ち込まれる「よろず相談」がまた謎としてなかなかに魅力的であり、特にカブトムシの幼虫が全滅した謎とその近くで起きた飛び降り自殺の関係、タヌキが子供の頃の息子に化けて出てくる理由(!)などは解決の仕方まで実によく練られている。
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posted at 20:15:24
だが本作が最も秀逸なのは「よろず相談」を解決する過程で生まれる登場人物たちとの縁と主人公の成長が絶妙に絡み合って、クライマックスの一家殺人と主人公の心の問題を解決する糸口となっていく点であり、そこにこの作者が得意とする群像劇を纏めあげる技巧を見出だすことができるだろう。
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posted at 20:15:45
尤もミステリとしてみると一家殺人の最終的な真相にはやや不満を覚えるかもしれない。しかしながら「展望塔のラプンツェル」とも共通する社会性を取り入れつつ主人公の成長と葛藤を描いた青春小説としてみれば間違いなく傑作と断言できる作品である。
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posted at 20:16:01