麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2022年05月18日(水)
飴村行「空を切り裂いた」読了。戦後、文壇の寵児としてもてはやされた孤高の作家・堀永彩雲。しかしその後の半生は絶望と狂気に彩られていた。享年五〇で自害した作家の作品は世間からは忘れ去られたが一部で狂乱の読者を生み育んだ。そして今、彩雲の子らは真の目覚めを迎え、世紀末日本で覚醒する!
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posted at 14:32:55
読む者を狂気の淵に叩き落とす、呪われし伝説の作家を巡る全五話構成の連作ホラー。本作の帯には「令和のドグラ・マグラ」と書かれているが、個人的な印象ではそこまでの狂気は感じられない。しかしながら話によってはドグラ・マグラ要素が全くないとも言えないだろう。
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posted at 14:33:10
全話に共通して言えるのは終盤の登場人物たちの豹変ぶりであり、話によってそこにギャグっぽさやミステリっぽさが窺えるのが面白い。正直いえば飴村作品としては狂気度は抑えめだし「令和のドグラ・マグラ」も過大広告だとは思うものの、作家テーマの連作ホラーとしてはそれなりに楽しい作品である。
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posted at 14:33:33
浅倉秋成「俺ではない炎上」読了。ある日突然Twitterで「女子大生殺害犯」に仕立てられた男・山縣泰介。既に実名・写真付きでネットに素性が曝され大炎上しているらしい。全くの事実無根だが誰一人として信じてくれない。日本中が敵になり必死の逃亡を続ける泰介がやがて辿り着いた驚くべき真相とは?
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posted at 21:56:39
Twitterで身に覚えのない殺人事件の容疑者にされた男が逃亡しながら真犯人を探す現代版「逃亡者」とも言うべき長編ミステリ。Twitterの情報拡散を演出として取り入れることによるサスペンス性がいかにも現代的ながら、特筆すべきは演出だけでなくミステリの仕掛けとしても巧みに活かしている点だろう。
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posted at 21:57:00
思うにこの仕掛けに関しては実際にTwitterをよく利用している人ほど騙されるのではないだろうか。こういった現代の技術を積極的にミステリに活かそうとする姿勢は歌野晶午を彷彿とさせるが、それに加えて情報拡散することの危うさという社会的問題も取り入れているところが何ともこの作者らしい。
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posted at 21:57:42
もう一つこの作者らしいと言えば「伏線の狙撃手」ぶりも健在で、二転三転する展開の中にピンポイントで伏線を回収する巧さを見せつけることで、真犯人の意外性を際立たせる手腕が実に秀逸。本作は炎上という現代的テーマで一気に読ませる、プロット型本格の傑作である。
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posted at 21:57:55