麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年12月01日(木)
由良三郎「裏切りの第二楽章」読了。密室で殺人が行われるが死体ははるか離れた場所で発見される……それは甥の鉄平が語った推理小説の構想だったが、間もなくそれを再現したような事件が発生。何とバイオリン奏者が演奏中に舞台で毒殺され、鍵のかかった楽屋から毒の入ったコップから発見されたのだ。
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posted at 22:31:49
手の込んだ殺人トリックの解明からどんでん返しに繋げる構成は基本的に前作から変わっていないが、どんでん返しの印象がイマイチ薄かった前作に対し、本作のどんでん返しは殺人トリックのインパクトにも決してひけをとらないものになっている。
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posted at 22:32:21
様々な人間の思惑が絡むことにより、見えたと思った真相が二転三転するので、最後まで油断できない。あっと驚く毒殺トリックと併せて、色々と見所の多い作品である。
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2011年12月02日(金)
由良三郎「円周率πの殺人」読了。高松病院の昼食会の席上、病院長の高松良一が突然、腹部に激痛を訴えた。事態を重くみた病院関係者たちはすぐに院長の手術を行うが、そこで目の当たりにしたのは胃と腸が体の中で切断されているという奇怪な症状だった。果たして院長の死は奇病か、それとも殺人か?
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posted at 19:03:52
本作のあらすじを見ると、奇想天外な殺人の謎にばかり目がいきがちだが、個人的にはむしろ何故そんな方法を犯人が使ったのかというホワイダニットの方に注目してもらいたい。意外性こそないが、丁寧に描いている点は好感が持てる。
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posted at 19:04:17
一方、殺人トリックに関して言えば、これまで読んだ「殺人協奏曲ホ短調」や「裏切りの第二楽章」のような奇抜さはなく、定番のネタを医学ミステリに置き換えただけに過ぎないが、それでも新機軸の工夫を凝らそうとする作者の姿勢は評価できるだろう。
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posted at 19:04:44
飛鳥部勝則「番人」読了。遊園地の古いメリーゴーラウンドに纏わる怪談話。達磨落としと回転木馬という意外な和洋折衷ぶりはどこか「黒と愛」の「奇傾城」にも通じる異形の美しさを感じさせる。また本作は何気に無駄な要素が一切なく、例えるなら端正な本格ならぬ端正なホラーとも言うべき作品である。
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2011年12月03日(土)
久住四季「重田さんと彼女の来世」読了。来世の生まれ変わり先の選択をしなければならない交通事故で亡くなった重田さんに来世相談員のソラスミが参考までに自分の生い立ちを語って聞かせる話……というと田代裕彦「キリサキ」を思い浮かべる人もいるかもしれないが残念ながら本作はミステリではない。
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posted at 21:02:15
一言でいえば、ファンタジー設定を使ったちょっといい話であり、期待したものとは違ったけれど、これはこれで嫌いではない。ただ、この内容だったら別に久住四季じゃなくてもいいのではと感じてしまったのも事実。いつの日か、これぞ久住四季という作品を引っ提げて戻ってきてほしいと思う。
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posted at 21:02:33
2011年12月05日(月)
「オールスイリ2012」読了。ベストは麻耶雄嵩「バレンタイン昔語り」。犯人が最初から分かっているという捻くれた趣向を今回はどう料理するのかと思ってたら……成る程、そうきましたか。次点はクローズド・サークルでの犯人当てにさりげなく盛り込まれた仕掛けが光る貫井徳郎「籠の中の鳥たち」。
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2011年12月06日(火)
佐竹彬「飾られた記号」読了。聞くところによると本作は新人ミステリー特集の一環として久住四季「トリックスターズ」と一緒に出版されたらしい。「トリックスターズ」が魔術を扱ったミステリであるのに対し、本作は科学を扱ったミステリ――分かりやすく言えば森博嗣の影響をかなり受けた作品である。
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posted at 16:13:07
あらゆる物質が持つ『情報』を制御し、物質の強度変化すら可能にする驚異の能力『情報学』。その唯一の教育機関『パスカル』で起こった殺人事件。一種の異世界本格であり、真相もこの世界観だからこそ可能なものではあるが、残念ながらルールの盲点を突いたという印象はあまりない。
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posted at 16:13:35
悪く言えば、ただルールに忠実に事件を起こしただけであり、ミステリとして腕の見せどころである捻りがほとんど感じられなかった。またあまりに森博嗣の影響が強すぎて没個性気味になっているのもいただけない。とはいえ光るところもなくはないので、次回作に期待したい。
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posted at 16:19:29
北山猛邦「猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数」読了。知名度ゼロの女探偵・猫柳十一玄が指導教官を務める猫柳ゼミは私と月々の二人しか所属していない弱小ゼミだ。そんな猫柳ゼミがひょんなことから名門ゼミと共に孤島の館で研修をすることになった。だが、その合宿中、奇怪な殺人事件が発生する。
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posted at 21:49:35
表紙を見ると東川篤哉の鯉ヶ窪学園探偵部シリーズを意識しているようで嫌な予感がするが(爆)、中身の方はとぼけた味わいのユーモアミステリ風味ではあるものの、北山猛邦らしい異世界設定を上手く使ったクローズド・サークル物に仕上がっている。
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posted at 21:50:15
例えるならば「少年検閲官」の要素を盛り込んだ、長編の「音野順」という感じだろうか。探偵の卵とも言うべき学生たちを出している割に展開が普通のクローズド・サークル物とあまり変わらない、これといった大ネタがないなどの不満はあるものの、個々のトリックはよく考えられている。
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posted at 21:50:45
決して突き抜けたものはないが、手堅くまとまった良作であり、北山作品が好きな読者であれば問題なく楽しめると思う。あと個人的に本作のラストで石持浅海の某探偵役を思い出して、思わずニヤニヤしてしまったw
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posted at 21:53:09
佐竹彬「三辺は祝祭的色彩」読了。科学が発展した世界を舞台にしたミステリ「飾られた記号」に続く第二作で扱っているのは、仮想現実空間で起こった殺人事件。相変わらず森博嗣色は強いものの、前作よりは幾分作者の個性らしきものは感じられる。
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posted at 22:28:02
またミステリ的にも前作よりこなれており、そういったところは好感が持てるのだがその反面、前作同様動機が曖昧なので非常にモヤモヤする。とりあえずシリーズは残すところあと一作だけなので、それを読むことにより、このモヤモヤが解消してくれればいいのだけど、はてさて……。
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posted at 22:28:36
2011年12月07日(水)
法月綸太郎「キングを探せ」読了。奇妙なニックネームで呼び合う四人の男たちが計画した四重交換殺人の謎に挑む、名探偵・法月綸太郎。これまでにも何度か交換殺人をテーマにした短編を書いてきた作者だが、長編で真っ向から取り組むのは恐らく今回が初ではないだろうか。
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posted at 22:14:48
倒叙形式で幕を開けた物語は、徐々にコン・ゲームの様相を示し始める。探偵が完全に犯人たちを追い詰めたと思ったその時こそが本作の本当の始まりであり、それまでは長い前座に過ぎない。
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posted at 22:15:39
2011年12月08日(木)
黒田研二「さよならファントム」読了。事故で大ケガを負った若きピアニスト・新庄篤はようやく歩けるようにまで回復したある日、妻の裏切りを知り発作的に彼女を殺してしまう。命を絶つために家を出た篤だったが、ひょんなことから助けたココロと名乗る美少女と行動を共にすることになる。
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posted at 01:16:35
公式ではサスペンスということになっているが、作者が言うように本作は紛うことなき本格ミステリである。但し、読んでいる間はサスペンスというよりも、むしろホラー・ファンタジーとしか思えず、どこに着地するか分からない、曖昧模糊とした感覚を終盤まで引きずることになる。
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posted at 01:17:12
一応、謎としては連続爆破事件や主人公が巻き込まれた事故に隠された秘密などがあるが、本作の最も優れている点はそれらを絶妙な目眩ましにすることにより、メインのネタを最後まで隠しきったことだろう。本作はクロケンらしい、本格ミステリ特有の世界の反転が味わえる快作である。
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posted at 01:18:12
飛鳥部勝則「幽霊に関する一考察」読了。ゴースト・ストーリーを語ろう――かつて作者はそんな書き出しと共に本格推理の幽霊という一風変わった物語を書いたことがあるが、本作では「三匹のグレー猫消失事件」という日常の謎を通して幽霊というものの正体を描いている。
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posted at 09:52:02
収録アンソロジーのコンセプトのためか、オチは何てことのない所謂いい話なのだが、そこにタイトルにもある「幽霊に関する一考察」を絡めることによりただのいい話で終わらせていないところが実にこの作家らしい。また一ファンとしては、飛鳥部作品の中では珍しいタイプの作品が読めたのは収穫だった。
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posted at 09:54:42
梶龍雄「女名刺殺人事件」読了。優雅に落ち着いた長女の静江。さっぱりとした性格の次女の輝代。そしてお色気たっぷりの三女の艶美。それぞれタイプは違うが美人揃いの狭山家三姉妹が、ふとしたことから関わった四つの事件を解き明かす本作は一見、二時間サスペンスチックな作品に思えるが然にあらず。
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posted at 22:18:31
確かに設定や展開だけ見ればそう捉えられてもおかしくはないがそんな内容でもミステリとしては全く手を抜いてないのだから恐れ入る。特に秀逸なのは後半の二編「母なる殺人」「ちぐはぐな情事」で前者だけでもこの作者らしい伏線の妙が味わえるが後者に至っては更にそこに意外な構図まで加わってくる。
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2011年12月09日(金)
高柳芳夫「奈良―紀州殺人周遊ルート」読了。アイドル歌手の岡村有香が謎の墜落死を遂げてから一年後、推理作家のわたしは自作の映画撮影に立ち会っていた。だがその最中に小道具の短剣が本物にすり替えられ女優が殺されかける。そしてそれを皮切りに次々と自作そのままに不可解な事件が起こり始める。
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posted at 17:55:16
タイトルだけ見るとよくあるトラベルミステリ。だが、その中身は意外にも本格ド直球だから驚く。主人公の書いた推理小説に見立てた連続殺人。密室状態の部屋からの墜落死。走行中の列車から消え、その後別の場所から発見された死体――それらが現場見取り図と共に物語を盛り上げていく。
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posted at 17:55:31
事件の性質上、犯人がすぐに分かってしまう、トリックに今一つ新鮮味がない等の不満はあるが丁寧に張られた伏線やどんでん返し、更には作者の推理小説論まで盛り込まれており、なかなか読み応えのある作品に仕上がっている。推理小説の根幹は謎解きという作者らしいオーソドックスな本格の良作である。
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posted at 17:55:55
似鳥鶏「いわゆる天使の文化祭」読了。文化祭を目前に控えたある日のこと。登校した葉山君の目に飛び込んできたのは、そこかしこに貼られた、ピンクのペンギンにも似た〈天使〉が描かれた異様な貼り紙だった。最初はただの悪戯かと思われたが、事態は徐々に深刻さを増してきて――。
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posted at 22:57:54
まさかこの作者の作品でここまでやられることになるとは思ってもみなかった。まず断っておくと、本作は単なる〈日常の謎〉物ではない。今までずっと勘違いしていたが、この作者の本領は〈日常の謎〉を巡るトリックやロジックではなく、むしろ〈日常の謎〉を疑似餌に使った、伏線と構図の妙だと思う。
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posted at 22:58:28
そして本作はその本領を最大限に活かした緻密な騙し絵である。途中、密室からの人間消失の謎が出てくるが、そんなのは些細な問題に過ぎない。作者が仕掛けた本当の罠を見破れる人は果たしてどれくらいいるだろうか。本作は「さよならの次にくる」でその兆しを見せた似鳥鶏が完全に化けた傑作である。
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posted at 22:59:04