麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年06月12日(火)
風見潤「死を歌う天狗」読了。山形県庄内地方にある天狗村では最近一つの異変が起きていた。村の宝泉寺にある五百羅漢像に灯がともり力士像が泣き声を上げるのだ。そのことと十五年前の変死事件が村に伝わる数え唄の再現であることに気付いた時、数え唄に見立てた連続殺人の幕が切って落とされた――。
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posted at 20:20:43
「喪服を着た悪魔」に続くシリーズ二作目の本作のテーマは、見立て殺人。不気味な数え唄通りに次々と人が殺されていく展開は定番ながらもぐいぐいと惹き付けられるが、肝心の犯人が見立てに拘る理由までもが定番で終わってしまっているのはかなり残念。
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posted at 20:21:38
だが、フーダニットという点では素直すぎた前作に比べると、ミスディレクションを幾つか用意し一筋縄ではいかないよう工夫が凝らされているのは○。また詰め込みすぎて後半駆け足になってしまった前作を反省してか、本作では事件の背景まできっちり作り込みつつもそうなることをぎりぎり回避している。
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2012年06月14日(木)
夏寿司「トリック・ソルヴァーズ 哀しみの校歌」読了。自遊高校演劇部のエースこと桜咲の前に名助手と名乗る少年が現れ、近々この学校で殺人事件が起こると予言する。俄には信じられない咲だったが、それから間もなく教師の首吊り事件が発生。そして、それこそが校歌の連続見立て殺人の幕開けだった。
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第三回トクマ・ノベルズEdge新人賞受賞作品。次々と起こる不可能犯罪を、人によっては怒りそうな一発技で解き明かす豪腕ぶりは嫌いではないものの、それ以外の部分で粗が目立つのが気になる。
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それが顕著なのは見立て殺人の理由であり、正直これは本格ミステリで一番やってはいけない部類だと思う。また殺人の動機にしても伏線が足りないと言わざるを得ない。そういった肝心なところがぐだぐだなせいでラストに明かされるある趣向も興醒めになってしまっている。
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2012年06月15日(金)
「Q.E.D.」42巻読了。騙し絵が多数展示されたホテルで起こった不可解な殺人事件を描いた「エッシャーホテル」と、論理パズルをヒントに間もなく爆破予定のビルに隠された演算装置の設計図を探す「論理の塔」の二本収録。
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前者は設定だけでも堪らないものがあるが、それを雰囲気作りだけでは終わらせずミステリとしてもきちんと活かしているのは○。ぬけぬけと示されていた手掛かりもさることながら、犯人を追い詰める決め手に巧さが光る。一方、後者はこの漫画らしいコンゲーム物で「嘘つき」が残した結末が実に心地いい。
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「C.M.B.」20巻読了。今回収録された四編のうち、印象に残ったのは「木片」と「犀の図」。「木片」は「Q.E.D.」でもあったタイムスリップ物で、ネタ自体は何てことのないものだが、創作活動をしている人なら共感を覚える話だと思う。
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夏寿司「トリック・ソルヴァーズ 籠の中の飛べない鳥」読了。桜咲が所属する自遊高校演劇部はある日、村おこしの一環として汐塚村から公園依頼を受ける。だが、村にやって来た咲たちを待ち構えていたのは「鳥籠館」という奇妙な館で起こる恐怖の殺人劇だった――。
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見立て物だった前作から一転、館物に挑んだ本作。といっても前作は「なんちゃって見立て物」で終わってしまったこともあり、正直あまり期待していなかったのだけど、結論から言うと、本作はいい意味で裏切られた。
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例えば前作ではメインの仕掛け以外の作り込みに難ありと言わざるを得なかったが本作はきちんと仕掛けから逆算して作られているのがいい。また謎解きにフックをかませることにより更に意外な構図を引き出している点も素晴らしい。本作は本格ミステリのガジェットを巧く活かしたラノベ本格の良作である。
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2012年06月18日(月)
夏寿司「トリック・ソルヴァーズ 三人の道化師」読了。遠足で遊園地「サンシャインワールド」にやってきた自遊高校の生徒たち。貸切となった遊園地で目一杯楽しもうと思ったのも束の間、咲の親友・亜美が「人喰いピエロ」と名乗る怪人に誘拐されてしまう。果たして咲は親友を助けることができるのか?
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posted at 17:53:09
シリーズ三作目は誘拐物――といってもそれだけではなく、殺人未遂事件に密室状況での死体出現など不可解な事件が次々と発生する。誘拐事件などの一部のトリックは分かりやすいものの、本作が最も秀逸なのは何といってもこのシリーズにしかできない仕掛けと構図を持ってきたことだろう。
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posted at 17:53:42
それはある意味、歌野晶午の「密室殺人ゲーム」シリーズにも通じるものがあり、個人的には本格ミステリとしてのこのシリーズの可能性を初めて示した意欲作として大いに評価したい。残念ながら本作以降シリーズの刊行は途絶えているが、願わくは一日も早いシリーズの再開を望む。
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2012年06月19日(火)
青柳友子「歌舞伎町殺人事件」読了。新宿・歌舞伎町にあるポルノ総合館「ラブ・マシーン」。「オトコの夢の城」を目指したその建物の従業員たちが次々と不審な死を遂げ、ルポライターの麻沙美は事件の真相に迫るべくバニーガールとして潜入取材を開始する。だがそんな麻沙美にも殺人鬼の魔の手が……。
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posted at 21:23:18
本作は、あの切り裂きジャックを現代日本に蘇らせようとした意欲作である。それにあたり作者はまず、かつての切り裂きジャックの犠牲者である娼婦たちが生きた世界を、歌舞伎町という街に現代風のアレンジを施して作り上げた。それが本作に登場するポルノの殿堂「ラブ・マシーン」だ。
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posted at 21:23:42
その「ラブ・マシーン」を中心に展開する物語はオーソドックスな構成ではあるものの各登場人物に纏わるドラマが実に魅力的に描かれており、ぐいぐいと引き込まれる。サスペンス性が高いのは勿論だが、それに加えて意外な犯人というサプライズまで用意されており、個人的にはかなり楽しめた作品だった。
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2012年06月20日(水)
青柳友子「石膏の家」読了。謎めいた年上の女に誘われてやってきた古びた邸宅で若いギター弾きの男が見たものは……。表題作を含む全八編が収録された本作は一応ミステリー短編集と銘打ってあるものの、ミステリらしいミステリはそのうち二編しかない。
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posted at 18:16:07
収録作のほとんどが愛欲の背景に気の利いたオチを付けたような印象で、ミステリとして読むと少々物足りないかもしれない。個人的なベストを挙げるなら表題作で、オチこそ途中で読めてしまったものの、物語全体に漂う妖しい雰囲気は非常に好み。
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posted at 18:16:38
保険金殺人を巡り、一対一の男女が騙し合いを演じる「サバイバル・ゲーム」も悪くはなかったが、些か消化不良の感あり。解説によるとこれを更に発展させた長編があるとのことなので、近いうちにそちらも読んでみたいと思う。
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posted at 18:27:48
2012年06月21日(木)
両角長彦「大尾行」読了。高精密システムによる探偵術をウリにした大手探偵社に勤める村川はある日、社長から某製薬会社の元社長宅に通う女の尾行を命じられる。その女は不思議なことに何度尾行しても必ず途中で見失ってしまうという。彼女の正体は? そして背後に隠されていた恐るべき策略とは?
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posted at 17:26:48
リーダビリティの高い面白いダメミス(!)「ラガド」でデビューした作者の第二作は、追跡不可能な女を巡るコンゲーム小説。大筋の展開こそありがちだが、尾行に焦点を当てた駆け引きと仕掛けが絶妙で、特に終盤は散りばめられたパズルのピースがバシバシはまっていくような快感が味わえる。
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posted at 17:27:12
また前作で読者を脱力の彼方(?)に連れ去ったあの要素は本作でも健在だが、設定のせいか今回はそれほどやってしまったという印象はない。いい意味ではったりの利いた、コンゲーム物の良作である。
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2012年06月22日(金)
栗本薫「エーリアン殺人事件」読了。遥かなる宇宙の涯てで巨大宇宙船シーラカンス号が救助した船の中には黒光りするち○この形をした最強最悪の宇宙生物が潜んでいた!人間を餌にし鉄でも貫通する酸を振り撒くこの宇宙生物を捕獲するよう命じられたアル中宙航士ルーク・ジョニーウォーカーの運命は?
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posted at 17:32:36
粗筋でだいたい察しがつくと思うが本作は○ターウォーズや○イリアンなどのSF映画を始めとした膨大なパロディとダジャレ、下ネタをごった煮にしたような作品である。従って「殺人事件」とは名ばかりで……と思いきや話が三分の二を過ぎたあたりでミステリへと急展開したのにはさすがにびっくりした。
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posted at 17:32:51
いつだったか東川作品について誰かが「ミステリの伏線を隠すのにギャグは非常に有効」(大意)と言っていたが、それは本作にも当て嵌めることができる。個人的には終盤の一部の謎解きには見るべきところがあると思っているが、多分たいていの読者にとってはそんなことはどうでもいい話だろう(爆)。
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posted at 17:34:07
栗本薫「伊集院大介の冒険」読了。オープンしたばかりのペンションに出没する幽霊退治のため、名探偵・伊集院大介は霊能者に化けて問題のペンションを訪れる。だが翌日、今度は謎の殺人事件が……。「殺された幽霊」を始め、伊集院大介の推理が冴える七編が収録されたミステリ短編集。
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posted at 17:34:50
本作の収録作のうち最も凝っているのは「殺された幽霊」だが、個人的に気に入った作品だと「獅子は死んだ」になるだろう。この短編に限らず収録作の幾つかには、どこか殊能将之作品にも似た本格ミステリのお約束に対するパロディ的側面が感じられる。
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posted at 17:35:26
それが最も顕著なのが「獅子は死んだ」で大介は事件についてこう語ってみせる。「(前略)遺言状、遺産をめぐる欲ぼけのトラブル、遺言状の署名をまえにしておこった事件。――いまどき、こんなプロットを出したらその作家には、二度とミステリーの依頼はまわって来ないでしょうよ」
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posted at 17:35:52