麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年06月01日(金)
迫光「シルヴィウス・サークル」読了。一九三×年、自ら作り上げた巨大なパノラマの中で射殺死体となって発見された女性芸術家。現場から消えた凶器の拳銃はその後、蜃気楼の中で第二の射殺事件を引き起こす。全ての鍵を握るのは謎の集い「シルヴィウス・サークル」――。
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posted at 19:03:27
第11回鮎川哲也賞最終候補作。魅力的な謎とガジェットに彩られたゴシック・ミステリ、加えて推薦者が皆川博子とくれば本作が対象とする読者は一目瞭然だろう。個人的には謎以上に「シルヴィウス・サークル」の設定が面白く、それに起因したオリジナリティある動機も○。
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posted at 19:03:47
但し本格ミステリとしてみた場合、事件の仕掛けが凡庸すぎるのはマイナス。また与えられた条件だけで真相の全てを見抜くことができないのもいただけない。あくまで「開かせていただき光栄です」のような、本格ミステリのガジェットを活かした物語としてお勧めしたい作品である。
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posted at 19:04:09
駕籠真太郎「ハーレムエンド」読了。やれやれまったく何だってこんな状況になっちまったんだか……ある日突然平凡な大学生のオレの許に幼なじみ、ツンデレ、婚約者、義理の妹、宇宙人を名乗る五人の女の子が押し掛けてきてさあ大変。一体オレの生活はどうなっちゃうの!?(※この作品は表紙詐欺です)
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posted at 21:33:19
「フラクション」「アナモルフォシスの冥獣」に続く書き下ろし長編第三弾は何を語ってもネタバレになる、ハーレム物もどき作品。声優、アニメネタを知っていると黒い笑いしか出てこないが(爆)中にはさりげなく「サスペリアpart2」などの小ネタが混じっていて思わずニヤリとさせられる。
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posted at 21:33:44
今回は本格ミステリではないものの、「フラクション」「アナモルフォシスの冥獣」で見られた技巧が本作にも遺憾なく発揮されており、個人的には満足度高し。むしろ本格ファン(バカミスファン?)にお勧めなのは同時収録の「美少女探偵 天外沙霧」三本立ての方だろう。
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posted at 21:34:04
どれもあんまりすぎるバカネタ(誉め言葉)が炸裂しているが、ベストを挙げるなら麻耶ファン必見の「恐怖の殺人列車」。これで今年のバカミスアワードはもらったも同然!←
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2012年06月04日(月)
草野唯雄「交叉する線」読了。愛媛県伊予の鉱山で変死事件が起こった数日後、瀬戸内海に面した今治の町でトラックによる当て逃げ殺人が発生する。全く別の場所で起きた二つの事件が思わぬ繋がりを見せる表題作含む六編収録。
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posted at 19:54:23
作者の初期短編を集めた本作で最も力作なのはやはり表題作だろう。発表当時はすこぶる斬新だったという「無関係と思われる二つの事件が平行して描かれ最終的に一つに繋がる」構成は、さすがに今となっては歴史的価値しか見出だせないが、それでも作者の綿密な取材に基づく緻密な描写は一読の価値あり。
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posted at 19:54:43
また作者の持ち味である構成の巧みさとサスペンスがこの頃から確立していたという点はなかなか興味深い。これに意外性が加われば完璧だったのだが、残念ながらそこを満足させてくれる作品は本作には見当たらなかった。
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posted at 19:55:10
とはいえ収録作はほとんどが鉱山を舞台にしつつも、本格ミステリだけではなく冒険サスペンス、風俗小説とバリエーションに富んでいるので、幅広く楽しめるのではないだろうか。
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posted at 19:55:33
2012年06月05日(火)
司城志朗「誰もが一度は殺人者」読了。発端はレストランの電話ボックスから、鞄と靴を残して煙のように消えてしまった教授夫人の捜索願いだった。それから間もなく今度は走行中の寝台列車の個室から、同じように靴とバッグを残して男が忽然と姿を消す事件が発生。連続する不可解な消失事件の真相は?
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posted at 18:58:38
何というか、非常に惜しい作品。本作について市川尚吾氏は「本格読者をその気にさせるが解決には強引なところがある」と評していたが、成る程、確かに消失事件の構図など目を惹く要素は多々あるものの、一方で手掛かりを出すのが遅すぎたりと、雑な部分も目立つ。
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posted at 18:59:28
もしかしたら書きようによっては、本作は本格ミステリの傑作になった可能性も充分あり、それを考えると残念でならない。とはいえ、本格とは関係なく、ユーモア・ミステリとして読む分には非常に楽しい作品である。
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posted at 19:00:12
2012年06月06日(水)
水田美意子「着ぐるみデパート・ジャック」読了。大阪駅前の『大阪デパート』が武装した犯人グループに乗っ取られた。犯人たちはいずれもパンダやフランケンシュタインの着ぐるみを着ており、デパートの店員や客を人質に「文部省を廃止しろ」とのふざけた要求を突き付ける。犯人たちの狙いは何なのか?
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posted at 17:29:26
緊張感が皆無な展開、所々助詞が抜けた不自然な文章、悪い意味で頭のおかしな登場人物たち……と、アレなところが目につくものの、それでも商業作品の域に達していなかった前作「殺人ピエロの孤島同窓会」からは格段に進歩している。
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posted at 17:29:58
何より良かったのは本作が本格ミステリとしてちゃんと成立していることであり、何故犯人が着ぐるみを着て犯行を行ったのかという部分まで、しっかりと必然性が用意されているのは○。残念ながら事件の動機の方は途中で読めてしまったが、発想自体はなかなか面白いと思う。
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posted at 17:30:33
2012年06月07日(木)
道尾秀介「光」読了。真っ赤に染まった小川の水。人魚伝説と洞窟の中で遭遇した怪異。大切な人にもう一度螢を見せるようとしたこと。去っていく友人への贈り物。将来の夢と決死の大冒険――これは小学四年生のあの頃に経験した、わくわくするような謎と、逃げ出したくなる恐怖と、忘れ難い奇跡の物語。
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posted at 22:37:41
まず結論から言うと本作はミステリではない。謎はあるけれど、その真相は必ずしもミステリ読みを満足させるものではない。また物語としても道尾読者であれば既視感を抱かざるを得ない内容であり、それをワンパターンと捉えるか偉大なるマンネリズムと捉えるかで大きく評価が分かれることだろう。
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posted at 22:37:58
とはいえ緻密に張り巡らされた伏線を回収する際に、ある程度のカタルシスを感じさせてくれるのも事実。作者のミステリでの技法が一般小説ではどう活かされてるかという視点で読めば楽しめるかもしれない。
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posted at 22:38:28
2012年06月08日(金)
陳浩基「世界を売った男」読了。夫と妊娠中の妻が惨殺された事件の悪夢から香港西区警察署の許友一巡査部長が目覚めると世間は六年後の2009年になっていた。驚くべきことに彼は一夜にして六年間の記憶を失っていたのだ。更に彼はひょんなことから夢にも出てきた六年前の事件を捜査することになる。
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posted at 14:43:15
第二回島田荘司推理小説賞受賞作である本作は、ある朝、刑事が目覚めると六年間の記憶を失っていたという発端こそ奇抜だが、その後の展開は至って堅実。そして、それは真相にも当てはまり、目新しさはないものの、地味によく出来ている。
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posted at 14:43:41
特に、下手すればバラバラのまま終わりかねない二つの事象を、違和感なく繋ぎ合わせたプロットが秀逸。個人的には新本格を彷彿とさせる第一回受賞作「虚擬街頭漂流記」の方が好みだが、本作は本作で手堅い良作であるのは間違いない。
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posted at 14:44:21
間宮夏生「ペルソナ×探偵NAOTO」読了。稲羽市の連続誘拐殺人事件から一年。探偵王子こと白鐘直斗は旧知の刑事・蒼井瞳子から八意市を騒がせている奇怪な失踪事件の捜査協力を依頼される。直斗の活躍によりやがて捜査線上に「マヨナカサイト」と呼ばれる不気味なウェブサイトが浮かび上がり――。
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posted at 21:50:47
ゲーム「ペルソナ4」のスピンオフ作品ではあるものの、個人的には間宮夏生が初めて真正面から探偵物に取り組むとあって前々から注目していた本作。結論から言うとミステリ的な難易度はかなり低めで、設定の段階で真相はあらかた読めてしまったが、それでも物語としては面白かったので満足度は高い。
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posted at 21:51:29
とはいえ物語終盤、張り巡らされた伏線が綺麗に回収されていくのを見るとつい、これがミステリ方面でも活かされていればなあ……と思ってしまうのは悲しきミステリ読みの性(爆)。本作はゲームを知らなくても気軽に楽しむことのできる良質の探偵物語である。
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2012年06月11日(月)
小泉喜美子「殺人はちょっと面倒」読了。本作には歌舞伎の演目を題材にした現代ミステリ四編が収録されているが、このうちベストを挙げるなら「夜のジャスミン」だろう。山荘に住む、盲目の主人と家政婦。主人は過去に犯した罪に苦しみ、いつか誰かが自分に復讐しにくるだろうと家政婦に告白する。
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posted at 16:14:01
そんなある日、離れて暮らしていた主人の一人娘が何かひどく思い詰めたところのある男を連れて山荘にやってくる――。そこで展開する駆け引きは、この作者らしい企みに満ちており、短編ミステリのお手本とも言うべき作品に仕上がっている。
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posted at 16:14:35
とはいえ、どちらかといえば本作は仕掛け重視というより、各短編の冒頭に引用された歌舞伎の演目がどう現代ミステリとして生まれ変わるのかが見所だろう。本作は謎解きや意外性よりも、作者のセンスを楽しむ短編集である。
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posted at 16:15:32