麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年12月13日(木)
竹内義和「夢なら醒めて……」読了。思い詰めたアイドルおたくが気付いたら憧れのアイドルに変身していた「どうして、こんなに悲しいんだろう」、ストーカーに脅かされるアイドルの恐怖「涙、あふれて……」、清純派アイドルに付きまとう不気味な着ぐるみ「君をこんなに抱きしめても……」の三編収録。
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posted at 16:58:37
美少女アイドルホラーオムニバス。基本的にはどれもアイドルとその狂信的なファンの間で起こる話を扱っているが、個人的には「どうして、こんなに~」が最も楽しめた。何と言っても、もし憧れのアイドルに変身できたら何をするか? というキモオタの願望を包み隠さずありのままに描いている点がいい。
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posted at 16:59:02
それでいて妙に哀愁のある幕切れが、独特の余韻を残す。対して残りの二編はというと人間か人外かの違いはあるものの、ほぼやっていることが変わらない上、ありがちな話に留まってしまい、いまいちインパクトに欠けるのが残念。とはいえ、全編から漂うB級ホラー感は嫌いではない。
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2012年12月14日(金)
辻真先「白雪姫の殺人」読了。元アニメーターの七人の老人が入居している「ダイヤライフ多摩」で血も凍るような事件が発生した。入居者の一人・アッコちゃんが首を切り取られた上、白雪姫の衣装と面を着けた状態で発見されたのだ。それを皮切りに次々と起こる不可解な事件にスナック蟻巣の面々が挑む。
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「アリスの国の殺人」から始まる「おとぎ話ものミステリ」三部作の完結編。文庫本で337ページという決して長くはない分量にこれだけのネタを詰め込んだのもさることながら、それを破綻することなくまとめあげた作者の手腕には脱帽と言わざるを得ない。
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posted at 23:09:58
しかも謎の一つ一つが有機的に結び付いており、名探偵の登場をきっかけにまるでドミノ倒しのように次々と謎解きの連鎖が起こっていく様は実に圧巻。特に劇画家の事故での、ある伏線から導き出される真相には思わず唸らされた。
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また作者が得意とするアニメネタは本作も健在で、それと老人問題がどう繋がるのかと思ったら、まさかこうくるとは……。本作は作者の徹底したサービス精神と本格ミステリの技巧が両立した傑作である。
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2012年12月15日(土)
法月綸太郎「犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題」読了。殺人現場に残されたタロットカード、殺人を依頼した疑いのある元アイドル、獣医に付きまとうストーカーの死、音楽評論家の遺したダイイング・メッセージ、存在しない息子の誘拐、生まれ変わりの息子探しに隠された秘密など全六編収録。
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posted at 11:26:05
「星座シリーズ」と銘打った「犯罪ホロスコープ」の第二巻。一巻から約五年ぶりとだいぶ出るまでに時間がかかったが、その分一巻よりもクオリティの高い作品集に仕上がっている。全体的にプロットがよく練られているが、後半になればなるほど「ロジック<プロット」化が顕著になっていくのが面白い。
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収録作の中からベストを挙げるならば「宿命の交わる城で」で、犯人をロジックで引きずり出す過程とフェアプレイ精神が行き届いた構成が実に秀逸。あとがきで作者はこれが某作品のパイロット版であると語っているが、どちらかといえば某作品よりもこちらの方が好みかもしれない。
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次点は表題作で、作者のアイドル趣味にニヤリとさせられつつも、構図の反転からのフーダニットが鮮やかに決まっている。一時はこのまま完結しないのでは、と危ぶんだこともあったが(!)、いざ出てみれば待たされた甲斐のある秀作傑作揃いで、個人的には満足度高し。
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歌野晶午「コモリと子守り」読了。引きこもりの由宇はパチンコ屋の駐車場に停められた車の中に前から虐待疑惑のある幼児が放置されているのを見て咄嗟に自宅へ連れ帰ってしまう。グズる幼児に困り果てた由宇は元同級生の舞田ひとみに助けを求めるが、ひとみを連れて家へ戻ると幼児はいなくなっていた。
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誘拐ミステリの傑作。歌野晶午が誘拐物を手掛けるのは同じ舞田ひとみ物の短編「誘拐ポリリズム」以来、長編だと92年の「さらわれたい女」以来となる。「さらわれたい女」で当時流行ったポケベルなどを活かした誘拐劇を見せてくれたように、本作でも現在ならではの最新の誘拐劇を見せてくれる。
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尤もその現在とは何も技術だけに限った話ではない。事件の構図もまた例外ではなく、そうしたものを駆使して本格ミステリの新たな可能性を切り開いてしまうところにこの作者の凄さがある。加えて事件解決後に用意された「かなり長めのエピローグ」によって本作は一つの小説としても傑作たらしめている。
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2012年12月17日(月)
「金田一少年の事件簿」3巻読了。「香港九龍財宝殺人事件」完結。個人的には海外を舞台にした話は微妙という印象があったが、今回に関しては良い意味で裏切られた。映像映えする大掛かりなトリックもさることながら、シリーズの特徴を逆手にとった仕掛けも○。近年の中では良作の部類だと思う。
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「探偵犬シャードック」6巻読了。警察官になった尊が遭遇した最初の事件だが、前回の事件以上に隠し場所がバレバレ過ぎるのが残念。そろそろアッと驚かせてくれるような内容のものを期待したいが、次の話は犯人も被害者も顔が完全にホラー過ぎてアレ……。
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posted at 15:11:33
草川隆「無縁坂殺人事件」読了。「週刊クール」の編集者・浩介が偶然受けた「無縁坂で起きた人妻の自殺を洗い直せ」という密告電話が全ての始まりだった。早速、調べてみると自殺した人妻の夫は数年前にも前妻を事故で亡くしていた。それから間もなく、今度は彼の愛人らしき女が何者かに殺されて――。
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posted at 19:18:15
SF作家だった作者が最初に手掛けた長編ミステリである本作は、途中に密室の謎を盛り込んではいるものの、全体的には地味な印象が否めない。とはいえ小さな手掛かりの積み重ねで真相に迫っていく過程は非常に丁寧であり、犯人の計画もよく練られている。
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posted at 19:18:49
意外性を求めるとハズレかもしれないが、刻々と変化していく素人探偵コンビによる推理ゲームが楽しい作品である。なお本作を読む際は、あらすじ(廣済堂文庫版)がかなり後半の展開までバラしているため、ご注意を。
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2012年12月20日(木)
有栖川有栖「論理爆弾」読了。南北に分断され、探偵行為を禁じられた日本。探偵を目指す少女・空閑純は失踪した母を探して九州の山奥にある深影村を訪れる。だが、その矢先に村に通じる唯一のトンネルがテロリストにより破壊され、次いで連続殺人が……。
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posted at 00:41:31
少女探偵「ソラ」シリーズの三作目。本作で初めて探偵としての仕事を依頼されるソラこと純を待ち受けていたのは、本格ミステリの王道とも言えるクローズドサークルで起こる連続殺人。一見それは作者が少女探偵の初陣に相応しい、とびっきりの事件を用意したかに見えるが、さにあらず。
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posted at 00:42:08
むしろ作者が用意したのは千尋の谷であり、事件の謎に挑もうとする探偵と読者を作者は谷底へと突き落としてみせる。……但し、その狙いが成功しているかと言われると微妙なところで、ネタにするには真面目過ぎて、どうにも反応に困ってしまう。
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2012年12月21日(金)
海渡英祐「俥に乗った幽霊」読了。時は明治29年、『東洋日報』の記者・有沢敬介は、ある男への恨みを綴った投書を自分に手渡した女が神田川で遺体となって発見されたことを知る。しかも、その直前に女を運んだという人力車の座席は水でしっとり濡れていて……。表題作含む八編収録。
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posted at 17:49:56
日清戦争に勝利し賑わう明治の街を舞台に探偵記者が活躍する連作短編集。ダイイングメッセージに密室、奇妙な死体といった謎を明治ならではの小道具を使って盛り上げてみせるその手腕はさすがだが肝心の真相はというと謎が出た瞬間に分かるものや肩透かしを覚えるものが多く些か残念な印象が否めない。
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posted at 17:50:10
とはいえ、トリックと怪談の重ね合わせが秀逸な表題作や、設定を巧く活かした構図が面白い「吐き出した餌」など見るべき作品があるのも事実。明治、探偵記者といった単語に惹かれる人は読んでみてもいいかもしれない。
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2012年12月22日(土)
赤月黎「魔女狩り探偵春夏秋冬セツナ」読了。この学院では人がよく死ぬ。魔女予備軍が本物の魔女となり、魔法の対価に人を殺す――魔女と魔女候補生が通う聖アラディア学院で被害者の顔を潰す連続殺人が発生。一度は魔女に殺され魂に奪われたクオンは、彼を助けた魔女狩り探偵セツナと共に事件に挑む。
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これは思わぬ掘り出し物だった。作者は本作について「犯人は魔法トリックを使う魔女で、推理をするのは魔女狩り探偵という異色のミステリー」と語っているがその言葉に偽りなし。顔のない死体に密室、アリバイ崩しといった本格ミステリで定番のガジェットと魔法を組み合わせ新鮮な驚きを与えてくれる。
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posted at 16:38:58
仕掛けは一発ネタだが、それをベースにここまで話を膨らませる手腕は林泰広「見えない精霊」に通じるものがある。加えてどんでん返しを成立させるための伏線も抜かりなく、更にトドメとばかりにラノベならではの仕掛けまで用意しているのには思わず唸らされた。
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posted at 16:39:28