麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年12月03日(月)
鷹見緋沙子「不倫夫人殺人事件」読了。二千万円を出さなければ、製品のチョコレートに毒を入れてバラまくぞ。そんな内容の脅迫状が厚木屋製菓に届けられた。犯人グループはまんまと二千万円を手に入れたかに見えたが……。一方、千鶴子は友人の雪子が男と不倫をしている現場を目撃してしまい――。
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posted at 15:58:26
当時話題だった不倫を題材にしたドラマ「金曜日の妻たちへ」と「グリコ・森永事件」を融合させた、サスペンスミステリー。とはいえ、単なる流行りものを盛り込んだだけの安直な展開にはせず、きちんとプロットに工夫を凝らし、いい意味で先の読めない物語に仕上げているのは好印象。
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posted at 15:58:54
だが、そうした作者の苦労もネタバレ満載のあらすじが見事に台無しにしてしまっている。謎解きの醍醐味こそないが(殺人事件の犯人が○○○○○○なのはさすがにどうかと思う)意外な展開を楽しみたいという人はくれぐれもあらすじだけは絶対に見ないようにご注意を。
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posted at 15:59:23
2012年12月04日(火)
廣真希「量子館殺人事件」読了。時は昭和九年。私立探偵・日色秀太郎が乗り合わせた列車が轢いた男の他殺体。それこそが、やがて「量子館」で起こる凄惨な連続殺人の始まりだった。撲殺、毒殺、刺殺、銃殺……と、様々な手口で捜査陣を嘲笑うかのように殺人を繰り返す犯人の動機とその正体とは?
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posted at 18:48:41
「スチームパンク探偵小説」と銘打たれた自費出版小説。いかにも探偵小説らしいガジェットをふんだんに詰め込んだのはいいが、いかんせんそれを盛り上げるための文章力が追い付いていない。しかも事件が起これば起こるほど、描写が適当になっていくのは興醒めの一言に尽きる。
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posted at 18:49:10
故にラストに明かされる奇想自体は決して悪くないのに、それを効果的に活かせていないため、人によっては間違いなく壁本認定することだろう。ただ伏線は一応張ってあるので、書き方次第ではもしかしたらメフィスト賞あたりは狙えたかもしれない。個人的には非常に惜しい作品。
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posted at 18:49:54
2012年12月05日(水)
玩具堂「子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき」読了。生徒からの悩みに答える「迷わない子ひつじの会」に今回持ち込まれたのは、恋の行方に関わる奇妙な国語のテスト、オムライスが殺しを呼ぶ怪事件、一人の部員の対処に悩むソフトボール部顧問と、いずれも厄介な案件ばかりで――。
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posted at 18:01:36
「子ひつじは迷わない」シリーズの二作目。一作目同様、三話構成となっているが、そのうち最もミステリ度が高いのは、喫茶店でオムライスを出すと翌朝、必ず店の裏手に小動物や虫の死体が置かれているという謎の死体遺棄(?)事件を扱った二編目だろう。
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posted at 18:02:17
真相はなんてことのないものだがエピローグまで含めた思わぬ人の繋がりがなかなか面白い。その他、奇妙な国語のテストを扱った一編目も解き方や動機の意外性は悪くないものの、ミステリというには少々ゆるめ。ただ三編目になると完全にミステリではなくなるが、よく練られたいい話で楽しませてくれる。
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posted at 18:03:05
石崎幸二「皇帝の新しい服」読了。瀬戸内海に代々伝わる名門・美蔵家婿取りの儀式。その花婿候補に仕立てあげられた石崎と共に島を訪れた櫻藍女子学院ミステリィ研究会のミリア、ユリ、仁美。だが儀式では過去数回にわたり殺人事件が発生し未だに犯人は捕まっていない。そして今また新たな事件が――。
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posted at 21:03:53
本作読了後の感想を一言でいえば「またかよ!」……そろそろこのネタを用いた作品には折原マジックならぬ石崎マジックという言葉を提唱した方がいいかもしれない(爆)。しかし一方でこのネタに拘るあまり、段々盲点をつくというよりただのトリビアミステリになっているのは正直どうかと思う。
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posted at 21:04:22
そして本作で驚くべきは、ただのトリビアからこれだけの長編をでっちあげてしまったことだろう。これはある意味有栖川有栖にも通じる手法だが、個人的にはいい加減このネタから離れて普通の本格ミステリを書いてくれることを切に望みたい。
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posted at 21:04:57
2012年12月06日(木)
森晶麿「黒猫の薔薇あるいは時間飛行」読了。作家・綿谷埜枝の短編小説「星から花」に端を発する一晩で消えた薔薇の謎と、ある音楽家の音色の変化の理由。日本とパリで遭遇した二つの謎が解かれた時、浮かび上がるものとは……?
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posted at 22:22:23
シリーズ三作目の本作はこれまで同様「アッシャー家の崩壊」の新解釈を盛り込みつつも、主題は日本とパリでの謎に彩られた二つの恋物語であり、それが離れ離れになった黒猫とその付き人の恋愛模様を見事に引き立てている。
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posted at 22:22:58
本作で行われる謎解きは完全に特殊知識に依存したものであり、個人的にはあまり好きなタイプではないのだが、本作に関してはそれでも構わないのかもしれない。謎はあくまで恋愛劇を美しく際立たせる装飾に過ぎず、事実、本作を読み終わった時に抱いた感覚はミステリというより、恋愛小説のそれに近い。
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posted at 22:23:27
2012年12月07日(金)
折原一「潜伏者」読了。ノンフィクション作家の笹尾はある推理小説新人賞に送られた未完の小説『堀田守男氏の手』に興味を抱く。その作品は八年前に埼玉県の久喜市で起きた少女連続失踪事件の容疑者・堀田守男の視点で書かれていた。それから間もなく堀田が出所したのを機に事件は大きく動き出す――。
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posted at 21:35:41
大胆な真相をこの作者お馴染みの設定を駆使して最後まで隠し通した秀作。冷静に考えればベタな手ではあるが、それを悟らせまいとミスディレクションの限りを尽くしたような構成が実に秀逸。
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posted at 21:36:06
終盤で明かされる真相以外にも要所要所に意外な事実を用意し、読者を飽きさせないよう工夫を凝らしているのは○。この作品ならではの斬新な見せ方こそないものの、職人芸のような騙しの巧さが堪能できる作品である。ちなみに作中に出てくる評論家・新山博久のモデルはやはり新保博久なのだろうか……?
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posted at 21:37:12
2012年12月10日(月)
藤本大三郎「バイオ探偵の事件簿」読了。バイオケミストリー(生化学)専攻の藤本教授の身の回りで起こる珍事件、怪事件の数々。何でも最新のバイオテクノロジーと結び付けたがる教授に対し「カミさん」こと教授夫人の方は至って現実的な推理で事件を解き明かしていく。
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posted at 18:12:28
全六編からなる本作は、基本的に教授がバイオテクノロジーに基づく推理を披露した後に「カミさん」がそれを否定する合理的解決を示すという体裁をとっているが、その解決が必ずしも優れているとは言い難く、どちらかと言うとバイオテクノロジーの紹介と軽妙なやり取りを楽しむのが正解だろう。
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posted at 18:12:42
安萬純一「ポケットに地球儀 探偵作家アマンと謎の密室魔」読了。実際にあった謎を探偵作家アマンに解明させる企画「あなたの『謎』募集」を雑誌ナゾーンに掲載したところ四つの謎がアマンの許へ持ち込まれる。だが謎を解こうとすると必ず何者かに脱出不可能と思える空間に閉じ込められてしまい――。
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posted at 22:20:30
作者がモデルと思われるミステリ作家が登場するユーモア連作ミステリ……なのだけど正直作者が何をやりたかったのかさっぱり分からない。アマンに持ち込まれる四つの謎は読者に解かせる気が全くないとしか思えないくらい伏線が殆どないし、毎回密室に閉じ込められるのも意味不明としか言いようがない。
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posted at 22:21:17
それが例えば連作の仕掛けとして最後に繋がればまだ良かったのだが、そんなことは一切ないままジエンド。密室魔の正体、動機も酷いの一言で、作中のアマンと編集者のやり取り(自作の宣伝やしょーもないトリック談義)も脱力感に拍車をかけている。
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posted at 22:21:40
褒めるところといえば前二作より読みやすくなったことくらいで(とはいえ二編目のバカトリックの発想自体は嫌いではない)巻末の「端正な謎解きに定評がある」という著者紹介はもはやツッコミどころとしか思えない。
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posted at 22:22:10
あとがきで作者は登場人物の口を借りて「次回作もお願いします」と書いているが、仮に次回作が出たとしても今回と同じような内容なら申し訳ないが自分は遠慮したいと思う。
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posted at 22:22:46
2012年12月12日(水)
東川篤哉「謎解きはディナーのあとで3」読了。お嬢様刑事が頭を悩ませる謎を毒舌執事が解き明かすシリーズの三作目。ペットボトルと飼い猫が鍵を握る老人の死、陸で発見された溺死体、密室から消えた秘宝、元競輪選手の鉄壁のアリバイ、体中から装飾品を奪われた死体、不可解な強盗殺人など六編収録。
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posted at 22:04:35
2010年から始まったこのシリーズも早いもので本作で三作目。初出一覧からも分かるようにかなりのハイペースで書かれているわけだが、それにも拘わらず本作の収録作はどれも一定のクオリティを保っているのだから驚きだ。
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posted at 22:04:55
収録作の中では謎の怪盗に秘宝『金の豚』を狙われる「怪盗からの挑戦状でございます」が最も派手だが、個人的にはさりげない描写からの気付きが秀逸な「この川で溺れないでください」と、不可解な死体の状況が意外な繋がりを見せる「殺人には自転車をご利用ください」を推したい。
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posted at 22:05:29