麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2014年12月05日(金)
石持浅海「身代わり島」読了。かつてヒットしたアニメ映画「鹿子の夏」のイベント開催を実現させるため、舞台となった島を訪れた圭子たちはそこで映画のヒロイン・鹿子そっくりの少女に出会う。その矢先に首がもがれた鹿子のフィギュアが見付かり、続いて鹿子と同じ格好をした仲間の死体が……。
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posted at 22:24:17
この作者には珍しい、いかにもなガジェットを扱った作品。しかし、そこはやはり石持浅海だった。彼はどんな世界であろうと、現実的であろうとする。それは時に空恐ろしさすら感じさせるほどだ。
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posted at 22:25:42
本作でいえば動機が正にそれで、犯人特定のロジック以上に忘れられないインパクトがある。そして、何よりもそのインパクトが犯行手段やミスディレクションに設定を巧く活かしているからこそ齎されるものである点が素晴らしい。
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posted at 22:25:59
2014年12月06日(土)
麻見和史「女神の骨格 警視庁捜査一課十一係」読了。国分寺の古い洋館で火災が発生し、鎮火した現場の隠し部屋から男性の頭部と女性の胴体を組み合わせた白骨死体が見付かった。誰が一体何のために? そうこうしているうちに今度は江戸川区で死体が仮面をつけた奇妙な殺人事件が起きて……。
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posted at 17:48:04
警視庁捜査一課十一係の面々が猟奇殺人に挑むシリーズの六作目。事件自体は魅力的だが、その反面ミステリとしての長所と短所が極端に目立つのが難。長所でいえば構成を活かしたある騙しの技巧であり、人物設定に至るまで細かい配慮が見られるのがいい。
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posted at 17:48:28
逆に短所は「推理せよ、謎には必ず理由がある」と帯で煽っておきながら推理だけでは絶対に解けない要素があることで、特に白骨死体の謎に纏わるある事実には怒り出す読者もいるのではないだろうか。長所だけ見れば良作だが、短所も含めると必ずしも褒められない、何とも複雑な作品である。
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posted at 17:48:43
辻真先「究極の鉄道殺人事件」読了。推理作家・牧薩次の許に持ち込まれた、余命いくばくもない作者が書いた原稿。陸蒸気、リニア新幹線、廃線となったローカル線……三編の鉄道ミステリーを読み進めていくうちに薩次と恋人のキリコは原稿に隠された恐るべきメッセージに気付く。
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posted at 17:48:56
微妙。まず作中作の三編に関していえば現在・過去・未来の鉄道を舞台にした点は面白いが肝心のミステリとして出来が伴っていない(唯一「廃線廃駅殺人事件」のみ評価できる部分がなくはないが特殊知識に依存し過ぎなのが難)。そしてメインのネタにしても後付け、駆け足展開が目立ち、かなりモニョる。
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posted at 17:49:05
加えて最後に明かされる趣向も完全に滑っていると言わざるを得ない。作者がやりたいことも分からなくはないが、ただ詰め込むだけではなくもっときっちり作り込んでほしかった。
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posted at 17:49:27
2014年12月07日(日)
中町信「奥只見温泉郷殺人事件」読了。奥只見・大湯ホテルのスキーバスが川に転落し五人の死者が出た。その中には牛久保を脅迫していた多美子もいたが驚いたことに彼女は何者かに絞殺されていた。更に事件を目撃したと思しき画家が殺されるに至り牛久保は自身の潔白を証明するため単独捜査を開始する。
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posted at 18:19:58
読者を騙すことのみに特化した作品。確かに真相には驚かされたものの、犯人の動機が分かるのがかなり終盤になってからな上に、なまじダミーの真相の方が説得力があるため、読者によっては納得がいかない人もいるかもしれない。
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posted at 18:20:12
とはいえ犯人を示す伏線は少ないながらもきちんと張られているし、何より日記を効果的に活かした技巧が素晴らしい。好みは分かれるが、個人的にはぎりぎりフェアに踏みとどまった良作として評価したい。
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posted at 18:20:35
2014年12月10日(水)
多宇部貞人「ラグナロク・トライアル―新・封神裁判―」読了。神界にあるTV局「ヒミンビョルグ・テレビ」のオーナー・ヘイムダルが胸に大穴を開けた他殺体で見付かった。被疑者は二柱――槍のオーディンと弓矢のアルテミス。主神二柱を同時に裁く前代未聞の裁判が開廷されるが、これには裏があった。
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posted at 22:04:41
神々の法廷を扱った「封神裁判」の続編。本作は前作に比べて物語性に力が入れられているが、その反面ミステリとしては明らかに前作よりも落ちると言わざるを得ない。一応、最低限の伏線は張られているものの、真相に意外性はないし犯行手段にしても一部、ぴんとこないところがある。
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posted at 22:05:35
更に打ち切りエンドっぽいラストも個人的にはかなり微妙。前作同様の逆転裁判っぽいノリと前半の裁判パートにおける、あるギミックを活かした仕掛けは嫌いではないだけに、もっとしっかり作り込んでほしかった。
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posted at 22:06:12
2014年12月14日(日)
笹沢左保「薄氷の沼」読了。人妻である大花麻奈加は不倫相手の野球選手・三井田光司との情事にのめり込んでいた。だがある日、疑惑を抱いた夫の公二郎に激しい暴力を振るわれ、彼女は夫に対する殺意を抱く。やがて麻奈加が夫の殺害を決意した時、彼女の前に交換殺人を持ちかける謎の男が現れて……。
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posted at 15:34:35
交換殺人テーマに作者ならではの男女の情欲を絡めた良作。交換殺人が無事達成されるのか否かというサスペンス性もさることながらミステリではお馴染みのテーマを作者がどう料理したのかが一番の見所であり、一つの事実から明らかになるその真相は実にこの作者らしい人物描写による誤導が光っている。
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posted at 15:34:43
またタイトルにもある、薄氷が割れて沼に沈んでいくようなラストのビジュアルイメージが何とも鮮烈であり、単なる人妻不倫サスペンスでは終わっていないところが好感触な作品である。
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posted at 15:35:17
中町信「「心の旅路」連続殺人事件」読了。作家の真介を夫に持つ新城朝子は雑誌編集部長の赤間静世から旅行に誘われるが、その旅先のホテルで火災に巻き込まれたばかりか、避難の途中に殺人の光景を目撃してしまう。朝子はそのショックで全般健忘症に陥るが、そんな彼女の周りで新たに殺人事件が――。
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posted at 15:35:34
心の旅路=記憶喪失を巡る連続殺人劇。まず本作は記憶喪失という設定を効果的に使ったサスペンスもさることながら、同時に仕掛けとしてもきちんと活かしているのが素晴らしい。だが何よりも秀逸なのは犯人の緻密な奸計が一転して致命的なミスとなる表裏一体の構成だろう。
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posted at 15:35:57
そこに至るまでの推理の積み重ねもなかなか巧みだが、一方である大胆なミスディレクションに関しては評価の分かれるところかもしれない。とはいえそれがあるからこそサプライズが成功しているのも事実であり、見方を変えれば意外性のためならここまでやるという作者の執念に感心させられる秀作である。
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posted at 15:36:06
森雅裕「推理小説常習犯」読了。乱歩賞作家として華々しくデビューするも「トラブル・メーカー」「社会不適応者」と各方面から問題児扱いされてきた作者が、廃業覚悟で出版業界の内幕を暴露したエッセイ集。
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posted at 19:38:29
本作は一応作家志望者、業界志望者の参考になりそうなものを収録とあるが、K談社を始めとする出版社の内情を暴露したその内容は参考どころか、正直あまりにも洒落になってなさすぎてドン引きするレベルである。
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posted at 19:38:56
しかしながら某出版社の作者への対応「溺れる犬は死ぬまで叩け」(餓死しかけている作家に仕事をやると出版社の悪口を書くようになるからトドメをさせ)をみれば、こういった本が出てくるのも仕方のないことなのかもしれない。
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posted at 19:41:47
作者は作中で「どうだ、それでも、作家になりたいか」と問いかけているが、それは裏を返せば作家になる覚悟を問う愛の鞭のようなものなのだろう。ちなみに本作を読んで作者も相当な変わり者なのが伝わってくるが、その一方で作者がボンディ好きと知って妙な親しみを覚えてしまった。←
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posted at 19:42:55
2014年12月15日(月)
上総朋大「無免許魔女の推理ノート」読了。史上最年少で特級魔法学士の資格を取得し、最速でその免許を剥奪された変わり者の天才少女アイカと彼女の活躍を本に纏める記述者兼助手の青年ユート。そんな二人が鍵があるのに開かない箱の謎、高級ホテルでの議員殺害未遂、養護施設を狙った爆破事件に挑む。
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posted at 21:50:30
「マジカル・ロジカル・ミステリー」と銘打たれた本作は、一言でいえば魔法がある世界を舞台にしたガリレオ。そのためハウダニット物としてみるとある程度予測がつきやすい上に、些かサイエンス側に寄りすぎて魔法の必然性があまり感じられないのが難。
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posted at 21:50:54
しかしながら完全にハウダニットメインにはせず、その後に何故やったのかという動機の面でフォローしているのは○。また事件の見せ方から解決までの流れも悪くはないので、今後シリーズ化するのであればネタ次第で化けそうな作品である。
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posted at 21:51:19
2014年12月17日(水)
安萬純一「青銅ドラゴンの密室」読了。ホルツマイヤー家の敷地内にある青銅のドラゴンの塔を見に近代建築研究家と称する男・ラグボーンが訪ねてくる。彼が塔の調査を進めていたある日、密室状況の塔内部で人が殺される事件が起こる。それは奇しくも百年前に二人の旅芸人が殺された状況と瓜二つだった。
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posted at 22:42:56
今時珍しいハウダニット勝負の作品。確かにトリックはそれなりのインパクトがあるものの、図面もなしにこれを推理させるのは些か厳しいものがある。またハウダニットに力が入っている反面、構成がかなり難ありで、それにより犯人や構図が丸分かりなのが残念。
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posted at 22:43:18
そしてそれは作者も理解しているのか一応最後に捻りを入れてはいるものの、とても欠点をフォローするには至っていない。とはいえ、事件の見せ方や雰囲気は悪くないので、コテコテの本格っぽい作品が好きな人は読んでみてもいいかもしれない。
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posted at 22:44:26