麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年06月01日(月)
射逆裕二「みんな誰かを殺したい」読了。峠で発生した殺人事件。二人の目撃者のうち、一人は木陰から犯行の一部始終を目撃し、もう一人は逃走する犯人の車と曲がり角ですれ違っていた。間もなく犯人の似顔絵が完成し、事件はすぐに解決するように思えたが――。
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posted at 22:03:20
第24回横溝正史ミステリ大賞優秀賞及びテレビ東京賞受賞作。単純と思われた事件に端を発する、複雑極まりない犯罪パズルにまず圧倒される。それでいて最大のサプライズは実にシンプルであり、これを成立させるためにここまで錯綜したプロットを用意してみせたところが何とも素晴らしい。
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posted at 22:03:48
惜しむらくは第三部に入ってからやや失速しまう点と、真相を見破ることがほぼ不可能である点だが、それを差し引いてもテーマを活かした強烈な仕掛けが忘れ難い佳作である。
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2015年06月08日(月)
藤谷治「茅原家の兄妹」読了。新潟市一家溶解事件の重要参考人から託された手記。そこには大学時代の友人・茅原恭仁からの招待で山間の洋館を訪れた「私」が遭遇した不可思議な出来事の数々が記されていた。夜な夜な謎の研究に没頭する友人と変わり果てたその妹。一体ここでは何が起きているのか?
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posted at 01:12:25
王道ゴシックホラーにフェイクドキュメンタリーミステリ要素を取り入れた良作。これにより最後に明かされる真相が一層生々しいものになっているのは○だが、だからといってミステリとして本作を読むのは正直お勧めしかねる。
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下村明「風花島殺人事件」読了。失踪した内縁の夫・花紋鶴吉探しを依頼された私立探偵・葉山は捜査を進めていくうちに大分県の離島・風花島で起きた鶴吉の正妻殺しに遭遇する。葉山の推理で正妻殺しの真相が分かりかけたのも束の間、台風が直撃した風花島で次々と殺人事件が……。
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本作は推理小説研究家の山前譲氏が「必読本格推理三十編」に挙げたことで知られる作品だが結論から言えば別に傑作というわけではない。しかしながら曰く付きの島、複雑な家系の網元一族、嵐の島で起きる連続殺人といった要素は魅力的だし、話の展開に工夫が凝らされているので読んでいて普通に楽しい。
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個人的にはトリックや伏線に設定が活かされている点が好感触で、特に嵐の島を舞台にした理由が○。解決編が些か唐突なのが残念だが、捻りのないベタな本格を読みたい人にはちょうどいい作品かもしれない。
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2015年06月10日(水)
下村明「殺戮者」読了。終戦間もない中国を舞台に日本軍の捕虜たちの間で起きた殺人事件、村祭りの最中に発見された砂に顔を埋めた女の死体、偶然再会した戦友の謎の死……三つの事件の謎を元日本軍軍曹・五瓶高彦が解き明かす。
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連作ミステリ風の長編。手掛かりはあからさまだし使われるトリックも決して目新しくはないが、話の展開はよく練られている。そして何よりも容疑者が絞られていく過程が丁寧なのが好印象で、さりげなく連作らしい意外性が凝らされているのも○。
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御影瑛路「空ろの箱と零のマリア7」読了。「さあ、最後の対決だ。星野一輝くん」遂に迎えた“O”との対決。“O”が使うのはあの時と同じ、3月2日という中途半端な時期に来た転校生から始まった“繰り返し”を司る箱。――マリア。僕は、箱に囚われた君を必ず取り戻す。
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シリーズ完結。本作では再び1巻の時のようなループ現象を扱っているが、これまでにあったミステリ要素は一切なく、徹頭徹尾ラブストーリーとして描かれているのが特徴。
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2015年06月12日(金)
西澤保彦「回想のぬいぐるみ警部」読了。ぬいぐるみ好きのイケメン警部・音無と同じくぬいぐるみ好きのお嬢様女子高生・美月が探偵役を務める連作シリーズ二作目。自宅に帰ってきたら見知らぬ男が殺されている「自棄との遭遇」、嵐の日に起きた事件に端を発する「あの日、嵐でなければ」など五編収録。
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黒西澤炸裂の短編集。前作もそこはかとない黒さはあったものの、本作にいたってはその比ではない。正直これを「ユーモア本格推理」で売るなんて版元は正気か? と思わないではないが、そのおかげで(?)前作以上に作者の持ち味がよく出た作品に仕上がっているのは好印象。
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posted at 00:03:34
加えてミステリとしての切れ味もぐっと良くなっており、例えば「自棄との遭遇」は泡坂の某短編を更に悪乗りさせたような真相が、「あの日、嵐でなければ」はある台詞が絶妙なミスディレクションになっている点が秀逸。
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posted at 00:04:16
そしてトリを飾る「離背という名の家畜」では読了後、思わず「うわあ……」と声に出してしまうくらいの強烈な黒さを見せ付けてくれる。ユーモアミステリを読みたい人には全くお勧めできないが、黒西澤が読みたい人には(一編目以外は)胸を張ってお勧めしたい佳作である。
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2015年06月17日(水)
加藤元浩「Q.E.D.iff」1巻読了。密室で彫刻家が殺され、四人の容疑者から犯人を推理する「iff」、百年前に起きた新興宗教絡みの乱射事件とミイラ死体の謎が量子力学とリンクする「量子力学の年に」の二編収録。
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posted at 10:04:40
リニューアルしたシリーズの1巻。「iff」は新規読者を意識したのがミステリとしてはかなりストレートな作品。とはいえ容疑者を全て論理的に候補から外した後で炸裂するバカトリックが秀逸で、しかも漫画という形式と舞台設定を使って巧みにミスディレクションしているのが実に心憎い。
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posted at 10:05:35
一方「量子力学の年に」は、新興宗教で起きた迷宮入りの乱射事件、教祖の用いる不思議な鏡、百年後に発見されたミイラ化した教祖の死体といった魅力的な謎の数々もさることながら、何より量子力学を活かした唯一無二の解答とそれが浮き彫りにする犯人の絶望感が素晴らしい。
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posted at 10:05:48
深木章子「交換殺人はいかが?」読了。元刑事の君原が過去に関わった難事件、怪事件の数々を推理作家志望のかわいい孫・樹来が解き明かす短編集。密室、幽霊、ダイイング・メッセージ、交換殺人、双子、童謡殺人――ミステリではお馴染みのテーマを扱った六編を収録。
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posted at 22:31:18
作者初の短編集は安楽椅子探偵物の連作ミステリ。技巧的なプロットに定評がある作者にしては珍しくストレートな本格という印象だが、実際読んでみると最初の一編「天空のらせん階段」を除き、全て捻りに捻ったプロット本格であることがよく分かる。
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posted at 22:31:45
特に表題作は法月綸太郎「キングを探せ」の引用が全てを顕していると言っても過言ではない。凝りに凝った交換殺人を巡り展開が二転三転、気持ちいいくらい読者を翻弄してくれる。やはり交換殺人テーマはプロット本格と相性がいいと再認識すると共に短編とは思えない密度の高さに唸らされる傑作である。
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posted at 22:32:17
なお唯一の例外である「天空のらせん階段」は作者の新境地とも言えるバカトリック物で、三津田信三が作者に「深木さんもバカミスを書くんですね」と語ったというエピソードにも納得の(?)一編である。
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2015年06月18日(木)
円居挽「キングレオの冒険」読了。赤毛連盟、踊る人形、まだらの紐、白面の兵士……京都の街で次々と起こるホームズ譚になぞらえたような難事件の数々。それらを超人探偵キングレオが全て解き明かした時、ある殺人事件を巡り伝説の老探偵との対決の火蓋が切って落とされることになる。
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posted at 23:03:32
名探偵キングレオとその助手・大河の活躍を描きつつルヴォワールシリーズのキャラも登場する連作ミステリ。さりげない伏線から導き出される推理にはおっと思わせられるところはあるものの、基本的にはどれもネタが小粒で物足りなさを覚える――それが四編目まで読んだ時点の正直な感想だった。
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posted at 23:03:48
だがその感想も最終作「悩虚堂の偏屈家」で一変することになる。全体の三分の一を占めるこの作品はルヴォワールシリーズのロジックと駆け引きの面白さを凝縮したような内容であり、「一番有り得ない解答を真相にする(大意)」という作者のミステリ手法を最も体現しているように思う。
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posted at 23:04:07
勿論その「一番有り得ない解答」を真相として成立させるための作り込みは抜かりなく、ミステリ読者にはお馴染みのあの手この手を駆使してあっと驚かせてくれるのが実に心地いい。本作は「悩虚堂の偏屈家」を読むことで真価が発揮される作品である。
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posted at 23:04:36