麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年07月03日(金)
中町信「夏油温泉殺人事件」読了。岩手県・夏油温泉に向かう山道でマイクロバスと乗用車が衝突、転落し多数の死傷者を出した事故は二週間後、入院していた被害者の一人が「乗用車の男性が殺されるのを見た」と証言したことから一転して殺人事件に。だが、その人物は肝心の部分の記憶を失っていた……。
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posted at 00:35:40
推理作家・氏家周一郎が探偵役を務めるシリーズの一作。記憶喪失は作者の得意とするテーマの一つだが、本作では記憶を部分的に欠落させることで時には重要な手がかりとして、時にはミスディレクションとして使い分けてみせる、その絶妙なさじ加減が素晴らしい。
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posted at 00:35:59
また何故、犯人は被害者が記憶を取り戻したことを知っていたのかという謎は面白いし、ある気付きからのどんでん返しも巧い。ただ惜しむらくは目次が先の展開のネタバレになってしまっていることであり、それさえ目を瞑ればコンパクトに纏まった良作と言っていいだろう。
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2015年07月05日(日)
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」観了。全編ほぼアクションながら息切れすることなく緊張感を持続させ、かつドラマを描くべきところはきっちり描いているのが素晴らしい。また登場キャラは全て個性的だが、中でも作品のメタル感の象徴とも言うべきギターマンのインパクトが強烈。//
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2015年07月06日(月)
三津田信三「誰かの家」読了。家出少年が空き巣のターゲットに選んだのは近所でも有名な幽霊屋敷。そこに侵入した彼が見たものは、白いシーツがかけられた大量の人形だった……。表題作の他、日常生活の裂け目にある怪異がチロリと顔を覗かせる五編を収録。
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「ついてくるもの」以来のホラー短編集。相変わらず小道具を使って得体の知れない恐怖を描く技巧が冴えているが、ベストを挙げるならやはり冒頭の四谷怪談の蘊蓄がその後の怪談とオチの不気味さを際立たせる構成が秀逸な「あとあとさん」になるだろう。
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次点はドールハウスと人間の悪意の絶妙な共演と言うべき「ドールハウスの怪」になるが、個人的にはバカミスっぽい合理的解釈と合法ロリ(?)なエロ描写が光る「湯治場の客」も捨て難い。
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2015年07月07日(火)
周木律「教会堂の殺人」読了。教会堂に辿り着いた人々は次々に消息を経ち、ある者は水死し、ある者は焼かれ、ある者は窒息した状態で発見される。警察庁キャリアの宮司司もまた失踪した部下を追って教会堂に辿り着くが、そこで待っていたのは『真理』を求める死のゲームだった。
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posted at 20:49:06
シリーズ五作目は一発トリックと教会のイメージを結び付けた作品。しかしながらその一発トリックはほぼ隠していないに等しく、仮に分からなかったとしてもこれで驚く読者がいるのかどうか甚だ疑問。
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加えて今回も動機部分に数学ネタを盛り込んでいるのだが、作者が教会と絡めて数学を神聖なものとして描こうとすればするほど醒めてしまい、それが結果的にこの作品から説得力を失わせてしまっているのも痛い。
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2015年07月08日(水)
法月綸太郎「怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関」読了。SF作家P・K・トロッターの未発表原稿『多世界の猫』を盗んでほしい――依頼を引き受けた怪盗グリフィンは原稿を持つマーズデン博士との接触に成功するが、そこを猫に扮装した動物愛護グループに襲撃される。謎多き原稿に秘められた真実とは?
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posted at 22:32:34
怪盗グリフィンシリーズの二作目。といっても前作にあった冒険活劇やコン・ゲーム要素はほとんどなく、完全にSF方向に振り切ってしまっているため、前作のようなノリを求めると期待外れの感は否めないが、端からSFと割り切って読むのであればなかなか面白いことをやっていると思う。
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特に架空の作家をまるで実在したかのように丁寧に描写してきたことが存分に活かされる終盤のある展開が秀逸。些か小難しくはあるものの、読み終わってみると終始一人のSF作家を巡る物語であることが分かる佳作である。
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2015年07月13日(月)
アダチアタル「ジンクスゲーム3」読了。ある条件で発動し命を問答無用で奪い取る能力――ジンクス。そのジンクスを持つ蒼馬の前に再びマジカルランドで大量殺戮を行った魔女・かなめが現れる。彼女はクリスマスに更なる惨劇を起こすことを仄めかした上に、蒼馬にある驚くべきことを要求してくる。
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posted at 22:13:48
シリーズ最終作。なのに頁数が二百ちょいしかないため徹頭徹尾、駆け足展開になっているのがかなり残念。例えるならば打ち切りが決まった漫画が物凄い早さで伏線を回収していく感じとでも言おうか。故に描くべきところが全く描けておらず、終盤の駆け引きも盛り上がりに欠けると言わざるを得ない。
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2015年07月14日(火)
三沢陽一「不機嫌なスピッツの公式(マイルール)」読了。出された紅茶を飲まずに帰る客、想い人から映画のチケットを渡されたのに引き籠もってしまった高校生、図書室で行われる謎めいた文通……ラブソング嫌いで音楽マニアな女子高生・スピッツが不本意ながら恋愛絡みの事件に挑む連作ミステリ。
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posted at 22:08:42
微妙。本作は全三編から成る日常の謎物だが、ミステリとしてみると収録作はいずれも何かしらの問題を抱えている。まず一話目の「紅茶と恋愛」は可能性を一つずつ消去していく手際は悪くないのに、肝心の何故そんなことをするのかという点で理解に苦しむ。
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posted at 22:09:05
続いて二話目「涙の映画券」は状況を限定し過ぎて真相が丸わかりだし、最後の「ばいばい、ライブラリー」にいたっては別解潰しをまるでやっていないせいでモヤモヤする。とはいえ探偵役と語り手が天藤真やクリスチアナ・ブランド、大阪圭吉などの本を賭けてポーカーをしているシーンは面白かった。
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posted at 22:09:19
2015年07月17日(金)
井上雅彦「深川霊感三人娘」読了。特殊な体質で闇夜を歩き、霊と会話する娘・お満。予知能力を持つ美剣士・お倫。そして妖かしの力を自由自在に使いこなすお涼――この三人こそ深川で噂の霊感三人娘だった。それぞれ異なる〈ちから〉を合わせ、三人が許せぬ悪に立ち向かう痛快妖怪時代劇。
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posted at 00:25:39
全五話構成の連作時代小説。全編勧善懲悪の分かりやすい話ながら、毎回事件の見せ方に工夫がされており、決してワンパターンな作りになっていないのは好印象。それでいて所々に作者がミステリやショートショートで見せた手法が盛り込まれているのも心憎い。
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posted at 00:26:10
個人的にはさりげない伏線の妙と意外性が光る「櫻も嵐もあやかし稼業」も捨て難いが、やはりベストはそれまで積み重ねてきたキャラたちの物語に設定を活かしたコンゲームを絡め、連作として纏めあげた「化かし化かされ夏屋敷」だろう。異形コレクションとはまた違った作者の一面が楽しめる快作である。
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posted at 00:26:26
2015年07月18日(土)
中町信「津和野の殺人者」読了。津和野ツアーに参加したOLが入院中の病室で何者かに暴行され、墜死した。被害者の体内と現場に残された精液から同じツアー仲間の四人の男が疑われるが、そのうちの一人が「五一五五」の謎の伝言を残して殺されたのを皮切りに、後の三人も次々と謎の死を遂げていく。
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posted at 22:53:16
物の見事に騙された。仕掛けそのものは作者が何度か使っているパターンではあるが、そうとは気付かせない工夫がかなり念入りに施されており、ある事件を絶妙なカムフラージュとして使っている点もさることながら、さりげなく容疑から逃れるためのトリックまで盛り込まれているのは流石の一言。
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posted at 22:53:34
その一方で一部のダイイング・メッセージの意味が絶対に解けないものになってしまっているなど幾つか気になるところはあるが、それは著者のことばにある「アンフェアぎりぎりの(中略)作者と読者の対決ということを重視」した弊害としてある程度は仕方がないものと大目に見たいと思う。
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posted at 22:53:57
2015年07月20日(月)
「サンタ・サングレ/聖なる血」観了。どこまでもグロテスクで美しい、現代のお伽噺。それでいて終盤、思わぬ仕掛けにより秀逸なミステリ映画に変貌を遂げるのが心憎い。決して万人受けする作品ではないが、異形を愛する人であれば間違いなく心を捉えて離さないであろう傑作である。
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posted at 04:23:20
ちなみに本作の仕掛けを見て綾辻行人の某作品を思い出したのだけど、もしかしてこれが元ネタだったのかしら? それとまさかリアルガッツを見せられるとは思わなかった(爆)。
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posted at 04:23:53
中町信「錯誤のブレーキ」読了。雨の夜の衝突事故で運転手が死に、同乗していた三人が瀕死の重傷を負った。そしてこの事故こそが連続殺人事件の始まりだった。教習所の密室、不可解なメモ、麻雀のダイイング・メッセージ……謎が謎を呼ぶこの事件に素人探偵の和南城健・千絵夫婦が挑む。
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posted at 17:42:39
この作者ならではの騙しの技巧が冴え渡る犯人当て小説。終盤で探偵役が挙げる犯人像に該当する六項目に従い犯人が特定されていく過程は実にスリリングで、一部苦しい解釈もあるが、それで強引に押し通すことなく作品全体に張り巡らせた伏線できちんとフォローしているのは○。
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posted at 17:42:54
また本作には春日部の古畑任三郎(原文ママ)こと二本柳警部が登場、素人探偵夫婦との推理対決も見所の一つになっている。メインの犯人当ては勿論のこと、盛り込まれた様々な趣向が楽しい佳作である。
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posted at 17:43:06