麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年10月01日(木)
初野晴「PCP-完全犯罪党- 孤島の子供たち」読了。秘密裏に完全犯罪を遂行することを目的とした小学生三人組の闇組織「PCP」。但し人に迷惑をかける行為は厳禁。そんな彼らが遭遇した不可解な学校ジャック事件と真夏の孤島での驚愕の頭脳・体力トライアルとは?
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posted at 23:42:28
「バクマン。」の作中作である「PCP」をハルチカシリーズで知られる初野晴が小説化したもの。ジュブナイルミステリとも言うべき内容の本作には二編の中編が収録されているが、学校ジャック事件の一編目は作中でも言われている通り犯人消失トリックよりもむしろ動機の方に面白みがある。
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posted at 23:43:00
続く二編目はコンゲーム物で、最終的に示される大胆かつ人を食った策自体は悪くないものの、キャラを小学生にしてしまった弊害なのか、終始緊迫感に欠けていたのが残念。ゆるい雰囲気でのミステリが好みであれば、それなりに楽しめる作品である。
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2015年10月02日(金)
島田荘司「新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険」読了。ワトソン博士の許に「赤毛組合」の犯人一味が脱獄したとの知らせが舞い込んだ。だが肝心のホームズは重度のコカイン中毒で病院送りになっていた。犯人たちが口にしていた「新しい十五匹のネズミのフライ」の意味とは?
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posted at 21:58:09
「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」以来のホームズパスティーシュ作品。タイトルからも分かるように本作はワトソン博士の冒険とラブロマンスがメインとなっているため快刀乱麻を断つ名推理を期待するとやや期待外れだが、その代わり本家ではあまり見られないワトソン博士のアグレッシブな一面が堪能できる。
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posted at 21:58:55
一応ミステリとしての見所を挙げるなら犯人一味の脱獄方法と謎の言葉「新しい十五匹のネズミのフライ」の意味ということになるが、個人的にはその解答よりもむしろ、そこに至るまでのホームズの奇行の方がさながら御手洗っぽくて面白かった。
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posted at 21:59:25
また作者のファンであれば本作のホームズとワトソンの姿に、在りし日の御手洗と石岡君を思い出さずにはいられないだろう。そういう意味でも本作は、近年の作者の作品には見られなかった懐かしい要素がふんだんに盛り込まれた良作と言えるかもしれない。
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2015年10月03日(土)
岡嶋二人「眠れぬ夜の殺人」読了。酒に酔って喧嘩をした挙げ句の過失致死。そんなよくある殺人事件が続発し、逮捕されなかった加害者の許には死者からの脅迫状が届く。捜査に乗り出した警視庁刑事部のマル秘部外組織――通称・捜査第0課の面々はこの不可解な事件を解決することができるのだろうか?
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posted at 13:24:26
ありがちな事件が奇妙な方向に転がっていくのが見所の作品。但し事件の構図自体は分かりやすいため、どちらかといえば第0課がどうやって犯人を追い詰めていくのか、その過程の方に見るべき点がある。第0課の面々が魅力的に描かれているのも○で、彼らの何でもありの捜査がとにかく楽しい作品である。
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2015年10月04日(日)
綾辻行人/牧野千穂「くうきにんげん」読了。くうきにんげんを しってるかい? だれも きづいていないけれど、このよには くうきにんげんが いるのさ。このほんを よんでいる いまも きみの そばに いるかもしれない。――綾辻行人と牧野千穂が、見えない魔物を描き出す。
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posted at 19:12:17
東雅夫編「怪談えほん」シリーズの一作。くうきにんげんという不気味な話に対しイラストは随分と可愛らしいが、それは多分読者層に対する配慮なのかもしれない。内容としては絵本というジャンルにおいてもミステリ的遊び心を忘れないのはさすがで、最後に示されるイラストの何ともいえない虚無感が○。
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2015年10月05日(月)
碇卯人「杉下右京の多忙な休日」読了。アラスカの田舎町で野生の熊が人を襲う事件が続発。その裏に隠された犯罪を休職中の右京が暴く「哀しきグリズリー」、脱獄犯が逃げ込んだ北海道の知床連山でトレイルランニング大会の優勝候補が謎の死を遂げる「天空の殺意」の二編収録。
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posted at 22:44:31
ドラマ「相棒」のオリジナル小説第五弾は休日もとい休職中の杉下右京が大自然の中で繰り広げられる二つの事件を鮮やかに解き明かす。一編目「哀しきグリズリー」は特定の知識がないと真相を完全に見抜くのは難しい反面、是非とも映像化してほしい(?)バカトリックが印象的。
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posted at 22:46:39
続く二編目「天空の殺意」は長井彬ばりの山岳ミステリで、一種のクローズド・サークルと化した山頂を舞台に次々と暴かれていく関係者たちの秘密がやがて張り巡らされた伏線と結び付いて事件の皮肉な構図を浮かび上がらせていく様が実に秀逸。終始スリリングな展開で読ませる良作である。
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2015年10月08日(木)
有栖川有栖「鍵の掛かった男」読了。大阪・中之島にある小さなホテルで一人の男が死に警察は自殺と断定した。だが男の死に疑念を抱く女流作家がミステリ作家・有栖川とその友人の犯罪社会学者・火村に事件の解明を依頼。手掛かりがほとんどなく被害者の素性も全く分からない難事件に二人はどう挑む?
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posted at 22:56:55
作家アリス久々の長編は約千枚級のシリーズ最長作品。タイトルにもなっている被害者の過去よりもむしろ完全犯罪をどう崩すかが見所であり、些か長すぎるきらいもあるが、終盤の犯人を突き止めるシンプルなロジックと長い物語の中に隠された動機が○。地味ながら、読み応えのある良作である。
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2015年10月10日(土)
乙野四方字「ミニッツ5 ~鬼火が消えるとき~」読了。一分間だけ相手の心を読める能力『ミニッツ』の持ち主、相上櫻の前に『他人に言うことを聞かせる』という最強の能力に目覚めた宿敵、守垣内明芳が現れる。大切な人を守るため、『ミニッツ』を使わずして櫻が仕掛けた最後のトリックとは?
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posted at 22:22:25
シリーズ完結。最終作ということでこれまで謎とされた能力の秘密や登場人物が抱えるそれぞれの問題に決着をつけているのはいいのだけど、その決着のつけ方があまりにも予想通り過ぎるのはかなりいただけない。
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posted at 22:24:59
話としてもイマイチ盛り上がりに欠けており、悪い意味で本当にただ纏めただけなのが残念。できれば最後くらい「トリックとロジックが交差する学園騙し合いストーリー」というキャッチコピーに見合うものを読ませてほしかった。
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posted at 22:25:46
2015年10月11日(日)
島田一男「捜査線ナンバー・ゼロ」読了。派出所勤務の巡査が服務中に姿を消した後、他殺体となって発見された。発見時、携帯していた拳銃を含む所持品は全て持ち去られていた。警視庁捜査一課の星子警部はこの事件に六つの仮想動機を設定、それらの線を徹底的に洗うよう捜査員たちに指示するが……。
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posted at 19:19:03
本作は一見するとリアリティー溢れる警察小説だが、捜査で掴んだ様々な事実が徐々に繋がりを見せ、犯人を炙り出していく終盤の展開とあさってのところからくる動機にミステリとしての見所がある。驚天動地の真相こそないものの現実的な事件でどう捻ってみせるかという点に巧さが感じられる作品である。
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2015年10月12日(月)
中町信「浅草殺人案内」読了。鮨屋「鮨芳」の常連客・花房潤一とその兄弟に莫大な遺産相続の話が降ってわいたのも束の間、潤一が地震で崩れ落ちた建物の下敷きになって死んだとの訃報が届く。だが解剖の結果、地震が起こる前に服毒死していたことが判明。「鮨芳」を営む山内鬼一が事件解決に乗り出す。
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posted at 19:37:01
鮨職人山内鬼一とその母タツが活躍するシリーズの一作目。遺産相続を巡る連続殺人という定番の内容を頑張って捻ろうとしている努力は買うが、その捻り方にしても既存のパターンに留まってしまっているため、イマイチ驚きが少ないのが難。プロローグの見せ方も含め、もう少しあっと言わせてほしかった。
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2015年10月13日(火)
芦辺拓「降矢木すぴかと魔の洋館事件」読了。帰宅部エースのぼくの前に突如あらわれた凄腕美少女探偵・降矢木すぴか。彼女との出会いは瞬く間にぼくの日常を変えてゆく。オンボロ屋敷の不審な人影、デッドストックを買い漁る女、街中で見かける謎の白い線――ぼくが巻き込まれた三つの事件の真相は?
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posted at 23:04:59
ハルヒ顔負けの傍若無人な美少女探偵が活躍するジュブナイルミステリ。本作の表紙にはいかにも可愛らしい美少女探偵が描かれているが、いざ読んでみると作中にデレのシーンがほとんどないため、イマイチ美少女探偵に萌えることができないのが少々残念。
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posted at 23:05:17
ミステリとしてみると最初の事件の真相がこの探偵のキャラに相応しくかなりはっちゃけているのはいいが、肝心の伏線が不足気味で推理がどうにも一足飛びに感じてしまうのが気になる。また二つ目の事件は逆に伏線は足りているが、真相に既視感があるのが難。
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posted at 23:05:53
そして最後の事件にいたっては、主人公と美少女探偵の活躍を優先し過ぎたせいか事件の背景があまり描けておらず、真相が明かされても釈然としないものが残る。とはいえ面白くなりそうな要素はあるので、もし次回作があるなら、もう少し萌えとミステリを強化したものを読ませてほしいと思う。
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2015年10月16日(金)
加藤元浩「Q.E.D.iff」2巻読了。売れない若手芸人が書いた渾身の脚本が盗まれた。だが一番の容疑者は事件当時、全裸で隠す所はどこにもなかった「素っ裸の王様」、数学者の妻が密室で殺された。犯人の正体と犯人が拘った“かたち”に燈馬が迫る「殺人のかたち」の二編収録。
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posted at 09:48:54
「素っ裸の王様」は不可能状況下での盗難事件こそ脱力ネタだが、そこから始まるコンゲームが現代的ギミックを巧く活かしていて実に面白い。加えてこの作者らしい、夢の跡に新たな希望を滲ませるラストも○。
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posted at 09:49:26
一方「殺人のかたち」は密室殺人の謎もさることながら、それ以上に「何故夫は散々苦しめられた悪妻を殺した犯人探しに奔走するのか?」というホワイダニットが読者の興味を惹く一編。本作が凄いのは何といっても真相の九割を読者に予想させておいて、最後の一割でそれを見事に裏切るところだろう。
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posted at 09:49:43
この予想外のところからくる真相の衝撃と共に描き出される犯人の業が何とも言えない余韻を残す。1巻収録の「量子力学の年に」も傑作だったが、本作もそれに引けを取らない傑作である。
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posted at 09:54:35