麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2017年02月05日(日)
風見潤「博多夜祭幽霊事件」読了。博多祇園山笠見物に出かけた麻衣子たちはそこで懐かしい人物と再会したのも束の間、新たに発見された古墳を巡る連続殺人事件に巻き込まれてしまう。しかも容疑者全員には完璧なアリバイが……。死体の顔に被せられていた佐用姫の面は一体何を意味するのか?
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posted at 19:30:37
京都探偵局シリーズの一作。今回の目玉はアリバイ崩しだが、そのアリバイをフーダニットの課程のロジックで見事に崩してみせる点が面白い。一部過去作から流用されているネタもあるが犯人を絞り込む条件や古墳ならではのトリックなど見所は多く、それらをバランスよく纏めた佳作と言っていいだろう。
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posted at 19:31:08
佐野洋「ひとり、そしてそれだけ」読了。カメラマンらしき一人の男と、彼と関係のある三人の女がいた。彼女たちはそれぞれ何らかの事情で北海道や沖縄へと向かうことになる。そして数ヶ月後、雪解けの北海道札幌市の郊外でキタキツネに食い荒らされた身元不明の女の死体が見付かった。
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posted at 19:31:30
新聞記事や雑誌記事などを引用したり、語り手によって物語の見方がガラリと変わったりする、かなり構成に凝った作品。ただその割りには真相の意外性があまりないのが残念だが、その代わり別の部分に意外性が用意されているのが面白い。
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posted at 19:31:45
特に面白かったのがある人物の過去に纏わる気付きと真相が明らかになるきっかけとなる出来事で、前者は「え、そんな所から持ってくるの!?」というエロミス的見所(?)が、後者は何が幸いするか分からない皮肉が○。真相そのものよりもそこに至るまでの課程に捻りをきかせた作品である。
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posted at 19:32:30
2017年02月07日(火)
小島正樹「浜中刑事の迷走と幸運」読了。鉄柵で囲まれたフリースクールで一人の男性教師が殺された。窓には鉄格子が嵌まり、扉には鍵がかかった個室に閉じ込められていた生徒たちには犯行は不可能。更に凶器の刈込鋏は、何故か学園の遥か外にある街路樹の上方に刺さっていた――。
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posted at 00:14:29
強運の持ち主・浜中刑事が活躍するシリーズの二作目にして初長編。前作同様、倒叙形式を採用している本作には、一応作者らしい不可能犯罪も盛り込まれてはいるものの、正直独創性という点ではあまりないと言わざるを得ない。
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posted at 00:14:56
どちらかというと本作の見所は作者らしからぬ水面下に仕掛けられたあるトリックであり、それが倒叙形式と巧く結び付いてサプライズを実に効果的に生み出している。いや、むしろ不可能犯罪すらもそこから目をそらさせるための煙幕と考えた方がいいかもしれない。
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posted at 00:15:26
2017年02月12日(日)
風見潤「横浜三重幽霊事件」読了。東京湾に浮かぶガチョウ島。そこに建つプチホテル「マザーグース」へ呼び集められた接点のない七人の男女の間で三重密室殺人が起き、その直後に島はクローズド・サークルと化する。犯人は誰? そして、その目的は? 最大級のなぞなぞに名探偵・麻衣子が挑む。
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posted at 21:32:15
京都探偵局シリーズの一作。なぞなぞの書かれた手紙によって島に集められた七人の間で三重密室殺人が起きるという設定は魅力的だが、その反面なぞなぞによってわざわざ島に集める必然性がそれほどないのが難。
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posted at 21:32:34
また密室トリックに関する決定的な手掛かりの提示がやや遅いものの、それが却って犯人のミスディレクションになっているのが面白い。ミステリとしてみると欠点はあるが、物語的には盛り上がりそうなガジェットがふんだんに盛り込まれた快作である。
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posted at 21:33:03
風見潤「広島地図にない村幽霊事件」読了。地図から消えた村でかつて行われていた細菌兵器実験。その過程で生まれた恐ろしいウイルスに感染した美奈子を助けるため麻衣子たちは問題の村を訪れる。だが、そこで待っていたのは高齢の老人とウイルスに感染した病人が殺されるという奇妙な殺人事件だった。
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posted at 21:33:15
京都探偵局シリーズの一作。今回はいつもの不可能犯罪こそないものの、その代わりにパニック物とタイムリミットサスペンスの要素を盛り込み、いつもとはまた違った面白さを生み出している。
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posted at 21:33:50
しかもこの設定をミステリ部分――ホワイダニットと犯人当てにも巧く活かしており、特に後者における防護服の使い方にはセンスが感じられる。シリーズとしては異色作だが、面白さでいえばシリーズ上位に入るであろう佳作である。
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posted at 21:34:13
2017年02月13日(月)
風見潤「みちのく夏祭り幽霊事件」読了。七年前、監視されていた家から忽然と消えてしまった母親を探してほしいという女子高生・佐伯孝子からの依頼に応えて東北へとやって来た麻衣子たち。だがそれから間もなく孝子と無理やり結婚しようとしていた男が殺され、容疑者には鉄壁のアリバイが……。
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posted at 01:56:25
京都探偵局シリーズの一作。人間消失にアリバイ崩しを絡めた本作は人間消失の真相も捻ってはいるが、どちらかというとアリバイ崩しにおけるトランクを使った誤認の方が光っている。ただその反面、最後に起きた事件や隠し財産の話はあまり巧く活かされてはおらずバランス的な意味で惜しい作品である 。
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posted at 01:57:20
2017年02月14日(火)
風見潤「四国一周殺人おにごっこ幽霊事件」読了。鉄道雑誌が企画した、汽車旅をしながら鬼をみんなで捕まえる「汽車旅おにごっこ」。その鬼役のトラベルライター・伊集院光也を最初に見つけた参加者の女性が死んだ。調査に乗り出す麻衣子と光也だったが、そんな彼らを嘲笑うように新たな被害者が……。
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posted at 20:53:28
京都探偵局シリーズの一作。まず作者はシリーズの探偵役・水谷麻衣子に作中でこう語らせている。「犯人が偶然にたすけられたっていい。でも名探偵が偶然から犯人を捕まえるっていうのは、ちょっといただけない。名探偵は、偶然と必然をよりわける必要がある。それが推理ってものじゃないだろうか」と。
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posted at 20:53:41
本作はそれを踏まえて読むと非常に面白い仕掛けが盛り込まれており、読了後、読者はやられたと思うと同時に名探偵とは何かを再認識するに違いない。ただ一点気になるとすれば汽車旅おにごっこに関するトリックの取って付けた感が否めないところだが、それを差し引いても充分秀作レベルの作品である。
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posted at 20:53:55
2017年02月17日(金)
風見潤「月食屋敷幽霊事件」読了。十八年ぶりの皆既月食の日、四つの館が渡り廊下で円形に結ばれている月食屋敷には天体観測をする者たちの他に謎の手紙を受け取った人々が集まっていた。そして遂に起こる殺人事件。吊り橋を落とされ、電話も不通となった月食の闇の中で息を潜める犯人の正体とは?
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posted at 00:59:38
京都探偵局シリーズの一作。本作はクローズド・サークル状況下での犯人探しに真っ向から挑んだ作品であり、特に第一の事件における、ある些細な事実から辿り着く犯人像が圧巻。まさか序盤の何気ないシーンが重要な伏線だったとは思いもしなかった。
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posted at 01:00:15
また第二の事件にしてもトリックこそよくあるものだが、館の構造を活かしつつもそれと悟らせない点が素晴らしい。ラストの唐突な○○との対決には思わず笑ってしまったけれど、内容としては学生アリスを思わせる王道フーダニットの佳作であるのは間違いない。
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posted at 01:01:08
加藤元浩「Q.E.D.iff」6巻読了。認知症の祖母の家に出入りする宇宙人を名乗る男。鍵のかかった扉すらすり抜ける彼の正体に迫る「地球に落ちてきたと言っている男」、人気ドラマのプロデューサーが転落死した。事件に仕掛けられたトリックと隠された動機を燈馬が暴く「急転」の二編収録。
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posted at 21:23:50
これまでも作者は謎を通して人間を描くという点に拘り、多くの傑作を生み出してきたが、本作に収録されている「地球に落ちてきたと言っている男」もまたその系統に属する新たな成果と言っていいだろう。
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posted at 21:24:08
作者が好んで使うSF理論によって演出された不可解な謎の数々は真相だけ取り出せば他愛ないものだが、それと人物像を組み合わせることで読む者の感情に強烈に訴えかけてくるところが素晴らしい。とりわけ最後に提示される動機に至っては一人の人間の人生を一気に見せられたような凄まじさすらある。
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posted at 21:25:30
同時収録の「急転」も動機という点において鮮やかな反転を見せてくれる佳作ではあるものの、やはり本作のメインは「地球に落ちてきたと言っている男」と断言しても決して過言ではないだろう。
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posted at 21:25:47
2017年02月18日(土)
連城三紀彦「戻り川心中」読了。大正歌壇の寵児・苑田岳葉の二度にわたる心中未遂事件に隠された真相を探る表題作の他、桔梗の花を握りしめて死んでいた男と遊廓の娘の関連性に迫る「桔梗の宿」、ヤクザの兄貴分が見せる不可解な行動の意味「桐の柩」など全五編収録。
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posted at 16:51:13
〈花葬〉シリーズと呼ばれる短編を集めた作品集。解説によると本作について作者は「書きたいのはあくまで探偵ものですから」と語っていたそうだが、事実、本作に収録されている短編の核となるものはいずれもその物語の見た目とは裏腹に探偵小説ではお馴染みのガジェットが用いられている。
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posted at 16:51:37
そしてその探偵小説独特の人工的なガジェットを徹底的に磨きあげて究極のロマンとして昇華させたのが本作であり同時に普通に考えたら絶対有り得ないネタを極めて自然に見せていることに驚きを禁じ得ない。その最たる例が表題作や「桐の柩」で、そこで作者が見せた技巧は今後も古びることはないだろう。
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posted at 16:52:15