麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2019年08月04日(日)
エラリー・クイーン「帝王死す」読了。第二次大戦当時の機密島を買い取り、私設の陸海空軍を持つペンディゴ帝国に君臨する軍需工業界の怪物キング・ベンディゴ。彼の許に舞い込んだ脅迫状の調査を求められ、ニューヨークから島へと拉致されたクイーン父子は、やがて不可解な密室事件に遭遇する。
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posted at 18:43:55
クイーンにしては珍しい、完璧な密室での不可能犯罪を扱った作品。これでもかとばかりに演出された密室の謎は非常に魅力的だが、そこに期待しすぎると些か肩透かしを覚えることになるかもしれない。
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posted at 18:44:18
むしろ本作の最大の見所は犯人が殺害を決意するに至った動機であり、その手掛かりが意外なところから齎される点もさることながら、それに気付かせまいとする巧みなキャラ設定と伏線が実に秀逸。
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posted at 18:44:29
とはいえメインの事件が起こるのが全体の三分の二を過ぎてからという構成には難があるし、脅迫状を巡る展開も「ハートの4」と比べるとイマイチ緊迫感に欠けるものの、特殊な舞台設定だからこそ際立つ人間ドラマがなかなか味わい深い佳作である。ちなみに訳者あとがきにややネタバレがあるので要注意。
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posted at 18:45:07
2019年08月08日(木)
石持浅海「Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス」読了。双子が一日ずれるワケ、二年の未婚期間の秘密、受験の本当の成功とは何か、悪口上手なママの離婚……大学時代からの飲み仲間たちが宅飲みしながら日常の謎を解き明かす七編収録。
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posted at 20:04:33
旨い酒と時短レシピの絶品グルメに纏わる日常の謎連作の二作目。前作からかなり間があいているのもあって、どうなることかと思いきや、蓋を開けてみれば全編思わずお腹が減るグルメ描写もさることながら、何よりさりげない論理のアクロバットと伏線の結び付きがいい。
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posted at 20:04:42
また前作にもあった連作としての仕掛けも健在で、個人的には前作より巧さを感じると共に、この手の作品にありがちな続編の可能性を一切匂わせない潔さが○。時に登場する料理と日常の謎のこじつけが強引に感じるきらいもあるが、そこはご愛敬。全編手堅い出来の良作である。
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2019年08月09日(金)
東川篤哉「伊勢佐木町探偵ブルース」読了。伊勢佐木町の私立探偵・桂木圭一。 ある日彼の母親が再婚したが相手はなんと神奈川県警本部長で、しかもその息子は伊勢佐木署のイケ好かないエリート刑事だった。成り行きで義兄弟となった私立探偵探偵とエリート刑事のコンビが四つの事件の謎を解き明かす。
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posted at 19:25:33
これまで数多くの私立探偵を主人公にしてきた作者の新シリーズ一作目。探偵のキャラ造形こそ東川作品ではよくあるものだが、その一方で相棒となるエリート刑事のキャラとその関係性はこれまでの東川作品ではあまり見られなかったタイプなのが興味深い。
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posted at 19:25:48
ミステリとしてみると相変わらずネタは小粒ながら前半二編よりも後半二編の方が作者が得意とするギャグの中に伏線を隠す技巧が冴えていたように思う。ただ欲を言えばそこから先の展開――推理による犯人特定まできっちり決めてほしかった。
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2019年08月10日(土)
エラリー・クイーン「悪の起源」読了。玄関先に送られてきた犬の死体と脅迫状が宝石商のヒルを怯えさせ、弱った心臓にトドメを刺した。更に共同経営者のプライアムもまた意味不明の脅迫と災厄に見舞われる。姿なき脅迫者の狙いは? そしてプライアムが頑として語ろうとしない彼らの秘密とは?
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posted at 19:41:18
ハリウッドを舞台にした長編ミステリ。基本的に本作は序盤に宝石商のヒルが謎めいた死を遂げたという話が出て以降は全く人が死ぬことはなく、興味の中心はもっぱら脅迫者が次々と送ってくる品々に関するミッシング・リンクになるので人によっては少々肩透かしを覚えるかもしれない。
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posted at 19:41:32
しかしながらこのミッシング・リンクを巡る展開こそがなかなかの曲者であり、そこに込められた意図を見破ったと思いきや、思わぬところに仕掛けられていた伏線とシンプルかつ強烈なロジックが浮き彫りにする事件の構図に打ちのめされることになるだろう。
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posted at 19:42:08
加えてラストで明かされるある事実と趣向は実にクイーンらしさを感じさせるし、きちんとそれまでに描かれた人物像が活かされているので不自然さがほとんどないのは好印象。読み終わった時に隅々まで計算されたプロットに唸らされること請け合いの傑作である。
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2019年08月11日(日)
「ゴーストランドの惨劇」観了。タイトルやラヴクラフトの扱いにやや違和感があったものの基本的には後味の悪い内容をゴシック的に美しく残酷に演出した秀作だった。ちなみに今年観た某映画に似た部分があるがメインの仕掛けだったあちらと違ってあくまで演出の一環として使っている点に巧さを感じた。
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2019年08月12日(月)
「サマー・オブ・84」観了。少年四人が連続殺人犯に迫るジュブナイル・スラッシャー映画。タイトルに象徴される80年代の雰囲気作りや物語後半のホラー的演出に関しては○だが、肝心のオチが胸糞というにはあまりにも普通すぎて拍子抜け。トラウマ作品を謳うならもっと突き抜けてほしかった。
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2019年08月16日(金)
工藤哲孝/笹古みとも「シチハゴジュウロク」4巻(完結)読了。粗はあれどそれなりに読み応えはあった焼殺編から一転、雑&突拍子もない銃殺編を経て見事なまでに投げっぱなしの打ち切りエンドへ……。加えて今回の最終巻はミステリのミの字もなく、正直やっちゃったとしか思えなかった。
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posted at 14:41:40
七月鏡一/杉山鉄兵「探偵ゼノと7つの殺人密室」7巻読了。遂に明かされるゼノの過去は正直既視感が強いものの、最終巻に向けての詰めに詰め込んだ内容はかなり読み応えがあって○。個人的にはAIが管理する町で殺人事件が起きる「顔のない悪魔」の姿なき殺人者と姿なき依頼人という趣向が面白かった。
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エラリー・クイーン「靴に棲む老婆」読了。靴作りで巨億の財をなして《靴の家》に住む、老婆と六人の子供たち。この一家に時代錯誤な決闘騒ぎが勃発、エラリーらの策も虚しく、不可解な殺人劇へと発展する。マザー・グースの童謡そのままに展開する異様な物語。狡猾な犯人の正体は?
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posted at 15:54:09
「生者と死者と」という別タイトルでも知られる童謡殺人を扱ったクイーン中期の長編ミステリ。マザー・グースの童謡を活かした舞台や人物設定と事件の展開は実に魅力的だが、見立て殺人物として期待すると些か肩透かし感は否めないだろう。
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posted at 15:54:22
むしろ本作の見所は二重の犯人探しであり特にある偽の手掛かりから犯人を絞り込むロジックは正にクイーンの本領発揮と言うべき切れ味で圧巻の一言。本作はロジックは勿論のことプロット面でもよく練られた秀作である。なお本作には井上勇訳と宇野利泰訳が存在するが個人的には後者を強くお勧めしたい。
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posted at 15:54:35
ちなみに「靴に棲む老婆」ラストのある趣向に関して、珠に堂々と明かしている感想を目にすることがあるが、それを書くことはメタ的に真相の意外性を奪う形になるので個人的にはいかがなものかと思う。
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2019年08月18日(日)
エラリー・クイーン「孤独の島」読了。製紙会社の帳簿係を射殺し大金を奪って逃げてきた三人の強盗たちはある夜、警察官のマローンの家に押し入り、娘を人質にして一旦金を預け、後日娘と交換に金を取り返そうと企む。絶対の危機に瀕した家族を救うためにマローンがとった行動とは?
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posted at 18:55:02
クイーン執筆活動四十周年を記念して書かれたノンシリーズ物の長編作品。ジャンル的にはクライムサスペンスと言うべき内容で本格要素は皆無だが、それでもちょっとした謎を盛り込んだ物語の緩急の付け方や、作中に登場した何気ない小道具を活かした策の数々にクイーンらしさが窺える。
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posted at 18:55:22
また人質となった娘を取り戻すためマローン側の人々が一致団結していく一方で決して一枚岩ではない三人の強盗のそれぞれの思惑を描き、やがてそれから突破口が開けていく展開は秀逸であると共に何とも言えない皮肉に満ちている。本作はいつもの本格作品とはまた違った読み応えが感じられる良作である。
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posted at 18:55:31
2019年08月21日(水)
手代木正太郎「むしめづる姫宮さん」読了。虫の魂が漂う不思議な町・浦上町。有吉羽汰はある日突然、身の丈にあわない「おせっかい」をするようになってしまう。祖母に相談すると「悪い虫さ憑かれたんだな」と言われ、山の上の姫宮さんの所へ行くよう勧められるが、そこで彼を待っていたのは……?
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posted at 21:06:17
本作の内容を一言で説明するならば妖怪ならぬ虫の魂を落とす憑き物落とし物ということになるのだが「何の虫に取り憑かれたのか?」ではなく「なぜ取り憑かれることになったのか?」を物語の主軸にしており、そこに思春期特有の理由を盛り込むことで青春小説として成立させているのが何とも面白い。
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posted at 21:06:34
本作について作者はあとがきで「おどろおどろしい、血なまぐさい、エログロ、トンデモといった従来の作風を一旦捨ててみようかと思いました」と語っているが、これまでの作品同様、特殊設定物で世界観は凝っているし考えようによっては虫に纏わる奇想(?)もあるので個人的にはそれほど違和感はない。
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posted at 21:07:01
とはいえ現代物は苦手と過去に語っていた作者があえて挑んだ現代物ということで作者の意気込みは勿論のこと、これまでにはない爽やかさを感じることはできるし何より前の「魔法医師の診療記録」シリーズと同じボーイミーツガール物という点で今回の二人の仲がどう着地するのかを楽しみにしていきたい。
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posted at 21:07:20
2019年08月22日(木)
柾木政宗「ネタバレ厳禁症候群~So signs can’t be missed!~」読了。女子高生探偵のアイと助手のユウは、ひょんなことから遺産相続でモメる一族の館へ。外界から閉ざされたその館で発見されたのは男の刺殺体だった。遺体に乗った巨大な鶴の銅像と被害者の異様な体勢、それらが意味するものとは?
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posted at 14:13:28
デビュー作「NO推理、NO探偵?」に続くシリーズ二作目。デビュー作がつまらなかったのはわざとミステリらしい展開をしなかったからと捉えることもできたが本作は真っ当なミステリをやっている筈なのに事件が本当に盛り上がらなくて違う意味でびっくりする(というようなことを前作の感想でも書いた)。
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posted at 14:13:41
悪ノリさせた増加博士とミリア&ユリシリーズを足して霧舎学園の寒いギャグを掛けたような本作の内容はそれだけで辟易させられるが、それに加えて登場人物がご親切にこれも伏線、あれも伏線と説明してくれる展開のせいで作者だけが盛り上がって読者が置き去りにされる感覚が終始付き纏うことになる。
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posted at 14:14:00
そしてそれは本作のトリックにも同じことが言える。正直新機軸感がなくはないが独自解釈が酷すぎて読者側からすると「知らんがな」で終わってしまうのがアレ。ちなみに本作の作中で作者はデビュー作「NO推理、NO探偵?」の帯の惹句を引用して登場人物たちにこんなことを言わせている。
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posted at 14:14:49
「(前略)『絶賛』か『激怒』しかいらないとか、もうそういう極端なのはいいってば! もっとちょうどいい、真ん中辺りでよくない? こう、ライトでわかりやすい感じのでさ」(中略)「『絶賛』か『激怒』のちょうど真ん中じゃゼロだよ。相殺されて何もなくなっちゃうよ」
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posted at 14:15:01