麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2023年06月08日(木)
大山誠一郎「仮面幻双曲(文庫版)」読了。整形手術を受けて顔を変えた双子の兄・武彦が現社長の文彦を殺そうとしている。先代社長夫人から依頼を受けた私立探偵の川宮兄妹は文彦の命を守るべく琵琶湖のほとりに建つ巨大な洋館で寝ずの番にあたるが翌朝その文彦が自室で殺されているのが発見されて――。
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posted at 11:40:02
双子を巡る殺人事件の謎に探偵兄妹が挑む、作者唯一の長編ミステリ。自身のことを「短編作家」と称する作者だけにメインのネタは短編を思わせるシンプルなものながらもその大胆な使い方がまず秀逸。尤もそこは単行本版の時からの長所ではあるが残念ながら単行本版はそれ以外の部分で粗が多かった。
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posted at 11:40:02
しかしながら今回の文庫版ではその粗がだいぶ改善されており(その辺の詳細は解説で言及されている)、特に第二の事件に至ってはほぼ新作と言ってもいいくらい手が入れられ、全てがひっくり返る驚きの構図にきちんと説得力が伴っているのがいい。
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2023年06月10日(土)
「赤の女王は7度殺す」観了。ゴシックホラー色濃厚な赤の女王の伝説が絡んだ連続殺人を描いたジャッロ物。とにかく殺人鬼・赤の女王のビジュアルインパクトが鮮烈で彼女が凶器を振りかざしながら駆けてくる場面は八つ墓村の田治見要蔵を彷彿とさせる。アルジェントがお気に入りという話も納得の作品。
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「ザ・ラスト・ウェーブ」観了。アボリジニの殺人事件を担当することになった弁護士が異常な体験に見舞われるオカルトミステリ。「ピクニックatハンギング・ロック」と同じ監督だけあって空気感は近いものがあり事件の真相よりもやがて訪れる結末を暗示させる不穏な天変地異の演出が見所の作品である。
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「M3GAN/ミーガン」観了。お友達AI人形の暴走を描いたホラー映画。チャイルド・プレイ+ターミネーターとは言い得て妙。前半のいい話パートがやや長いものの、これがあるからこそ後半の暴走パートが光っている。個人的にはミーガンのスタイリッシュな殺害シーンがもっと観たいので続編に期待したい。
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2023年06月13日(火)
中町信「密室の訪問者」読了。義弟の正巳が一柳と電話でやり取りしている最中に殺された。現場は目と鼻の先の離れ家で一柳たちが駆けつけた時、完璧な密室状態にも拘わらず犯人の姿はなかった。捜査が進むにつれ堂ケ島での交通事故が事件の鍵になることが分かるがその関係者が次々と殺され出して……。
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posted at 22:02:01
堂ケ島での交通事故に端を発する連続殺人を描いた長編ミステリ。タイトルに象徴される密室の謎もさることながらそれ以上にやたらと目につくのが美味しそうに焼き鳥を食べている描写であり、カバー裏の作者の言葉「うまい焼き鳥があるんだよ、ホントにうまいんだから」にも納得がいく(?)ことだろう。
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しかしながらただの焼き鳥ステマ小説というわけでは勿論なくいつもの中町マジックもとい騙しの技巧は健在で、お馴染みのプロローグだけでなく大胆にも○○すらでっち上げて読者をミスディレクションしてみせた点には脱帽と言わざるを得ない。
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些か偶然が過ぎる部分もあるが、それを支えるダイイング・メッセージの小技も効いているし、何より読者を騙すためにはここまでするという作者の心意気を買いたくなる佳作である。
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2023年06月15日(木)
中町信「女性編集者殺人事件」読了。ストライキ中の社内で女性編集者が何者かに殴られ写真にSの血文字を残して息を引き取った。所轄署の星村警部はSのイニシャルをもつ社内の人物を当面の容疑者として捜査を開始するも第二の殺人がまたも社内で発生してしまう。Sの血文字は一体何を意味するのか?
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posted at 20:28:47
被害者の女性編集者が死に際に残したSの血文字を巡る長編ミステリ。二転三転するダイイング・メッセージの解釈は悪くないものの、最終的に明らかになる真犯人の正体に読者が自力で辿り着くことができないのが難。
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posted at 20:28:48
どちらかというとその後のアリバイ崩しの方が見所があるように思うがページ数の関係かかなり駆け足なのが勿体ないし、更に動機に関しても書きようによっては面白くできたはずなのに駆け足すぎて台無しになってしまっている。本作は改稿した割に色々と残念な作品である。
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posted at 20:28:48
2023年06月17日(土)
「怪奇な恋の物語」観了。かつて色情狂の令嬢が無残な死を遂げた屋敷に住むことになった画家が見る悪夢。どこまでが現実でどこまでが幻想なのか。その境界を危うくする映像と音楽が素晴らしく、幽霊譚であると同時にドグラ・マグラ的趣きがある。結末は衝撃的だが、この一連の物語には相応しいだろう。
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「忌怪島」観了。土俗ホラーとメタバースの融合。この世とあの世の新たな表現としては面白かったものの、ホラー演出面の目新しさは特になく、加えて語る部分が多すぎたせいか全体的に怖さが薄れてしまった気も。また終盤の復讐劇を中途半端に阻止してしまったせいでどうにも消化不良感が否めなかった。
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2023年06月18日(日)
霞流一「エフェクトラ 紅門福助最厄の事件」読了。数多くの「死に役」を演じた役者・忍神健一。彼の役者生活四十周年を記念するセレモニーを開催することになったがその準備中、足跡のない雪のバンガローで関係者の変死体が発見される。リハーサル現場に立ち会った私立探偵・紅門福助の推理が冴える。
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作者の抱えるシリーズ探偵の一人・紅門福助が死に役俳優のセレモニー準備中に起きた不可解な連続殺人の謎に挑む長編ミステリ。足跡のない殺人、密室、見立てに加え、女装おじさんなど濃すぎる登場人物しか出てこない本作はどこを切っても作者らしさ全開でファンであれば安心感を覚えることだろう。
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posted at 16:08:03
そして肝心のミステリとしてみるとトリック、ロジックに関しては目新しさこそないもののギリギリのバランスで成立させている点は○。だがそれ以上に目を惹くのが見立てに拘り続けた作者らしい事件の構図で、特にその異常さがよく表れた第三の殺人の動機が秀逸。
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posted at 16:08:04
もう一つ秀逸なのはタイトルにもなっている「紅門福助最厄の事件」たる所以で、陰惨すぎる事件の後だからこそ良い意味でそのギャップ感が際立っている。本作は相変わらずの詰め込みすぎな内容が好印象の力作である。
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2023年06月19日(月)
朝倉亮介「四季崎姉妹はあばかれたい」5巻(完結)読了。遂に犯人が明らかになり、どう収拾をつけるのかと思ったら転生理由の巧い絡ませ方に感心。またこれまで描いてきたおっぱいvs推理の対立構造をここにきて絶妙な気付きとして使ってきた点も秀逸&ますます性癖が壊れそうな結末に笑ってしまったw
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2023年06月20日(火)
岡田秀文「治験島」読了。西ヶ島――通称、治験島。世界が注目するこの新薬治験の現場で得体の知れない事件が相次ぐ。差出人不明の脅迫文、男性医師の転落死、島内で発見された白骨死体、被験者を襲う異物混入事件……狙われているのは被験者か病院か、それともこの島か?
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posted at 20:06:04
時代小説の書き手として知られる作者には珍しい現代を舞台にした長編ミステリ。タイトル通り新薬治験が行われている島で次々と起こる事件はサスペンスタッチで読ませるものの、肝心の解決にかなり問題あり。
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posted at 20:06:04
というのも事件に様々な思惑が絡むのはいいがそれらに一貫性が全くないため、ただバラバラな事件を見せられている印象が強く、しかも不発に終わっている仕掛けやろくに活かされていない要素が多いのも災いして謎が解かれてもすっきりしないのが難。正直悪い意味で読後感がモヤモヤする作品である。
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2023年06月21日(水)
「知りすぎた少女」観了。殺人事件を目撃したヒロインが事件に巻き込まれていくジャッロの原点と言われる作品。過去視をしたような展開やABC殺人事件を彷彿とさせる事件の概要が目を惹くがそれ以上に本作を観ると「サスペリアPART2」がアルジェント版「知りすぎた少女」だったことに驚かされるだろう。
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井上真偽「アリアドネの声」読了。事故で兄を亡くした青年・ハルオは地下にある障害者支援都市で巨大地震に遭遇。殆どの人間が避難する中「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障害を抱えた女性が一人地下に取り残されてしまう。生還不能まで六時間。ハルオのドローンによる救助が始まる。
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posted at 11:20:38
地震により地下に閉じ込められた全盲で聾唖者の女性をドローンで助けようとする長編ミステリ。救助者が全盲で聾唖者、更に崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。そんな光も音も届かない地下で頼りとなるのはドローンだけという状況をどのようにして打破していくかが本作のミステリとしての肝となる。
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posted at 11:20:39
状況に応じたハウダニットの数々をかつて救えるはずの事故で兄を亡くした主人公が兄の口癖だった「無理と思ったら、そこが限界」という言葉を励みに危うげながらも次々とクリアしていくその姿は正に本格ミステリのテクニックを駆使したエンタメという感じでじっくりと読ませてくれる。
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posted at 11:20:39
それでいて物語の緩急の付け方も絶妙で、特に終盤におけるある疑惑と共に主人公の前に立ちはだかるこれまで以上の絶体絶命の状況はエンタメでは定番とはいえ、作者に対して無慈悲さを感じずにはいられないだろう。
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しかしながら主人公がそれを乗り越えた時に生まれるドラマの熱さもさることながら、全ての伏線が収束する最後の一撃が実に秀逸で、ミステリ的仕掛けとエンタメとしての感動が極めて高い次元で融合した傑作と言っていいだろう。
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「歓びの毒牙」再観了。フレドリック・ブラウン「通り魔」を元にしたアルジェントのデビュー作。重大なものを見た筈なのに思い出せない目撃者、黒い革手袋の殺人鬼、不気味な絵、録音された奇妙な音とこの頃からアルジェントの作風が確立されているのがよく分かる。特に反転する真相は今観ても鮮烈。
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posted at 23:56:21