麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2023年06月23日(金)
紙城境介「シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する」読了。日本で唯一国家探偵資格を取得できる真理峰探偵学園に今年入学したのはかつて犯罪王と称された男の孫と探偵王の養女。そして二人が入学したその日に早速模擬事件が発生し――。これは真実を競い合う新たな学園黙示録。
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傑作ラノベミステリ「僕が答える君の謎解き」二部作の作者による、犯罪王の孫と探偵王の娘が探偵学園で真実を競い合う学園ミステリシリーズの一作目。本作を一言で言えばライトノベル版「探偵学園Q」であり、その舞台設定もさることながら事件の手掛かりが全て太字で示される趣向も正にそれ。
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だがそれは裏を返せばミステリとしての自信の表れでもあり序盤の模擬事件からしてかなり人を食った内容に仕上がっている点がいい。そして実はそこから作者の仕込みが既に始まっており、それがやがて後半の事件において舞台設定を逆手に取った大胆な仕掛けとして炸裂するに至ってはもはや笑うしかない。
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その一方でロジックを時に弄びつつもここぞというところできっちり決めてくるのが実に心憎いし、それと連動して二人の名探偵が真実を競い合うという売り文句に恥じない熱い展開で盛り上げてくれるのも○。本作は徹頭徹尾ライトノベルだからこそできた本格ミステリで魅せてくれる秀作である。
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紺野天龍「幽世の薬剤師4」読了。冬を迎えた幽世にて「死神」に魂を刈り取られた者は目を覚まさなくなる事件が発生。昏睡に陥った患者を救うため破鬼の巫女・御巫綺翠と共に診療に赴いた薬剤師・空洞淵霧瑚は深夜、ある衝撃的な出会いをすることに――。死神とは誰か。病の原因は、何か。
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現役薬剤師でもある作者による異世界召還×医療ミステリシリーズの四作目。前作が中編集だったのに対し本作は再び長編に戻ったものの、ミステリとして見た場合、ネタが小粒すぎて短めの長編とはいえ、これ一本で支えるにはやや物足りなさを覚えるかもしれない。
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むしろ本作は次巻への布石であると同時にメインの二人――御巫綺翠と空洞淵霧瑚のなかなか進展しない関係にやきもきしていた読者にとっては打ってつけの内容と言っていいだろう。とりあえずミステリとしては次巻に期待したい。
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2023年06月24日(土)
月原渉「すべてはエマのために」読了。リサとエマの姉妹が地下水道で出会ったルーマニア負傷兵から指輪を託されてから二年後、看護婦になったリサは雪に閉ざされた邸を訪れる。そこで彼女を待っていたのは自分と同じ顔を持つ黒衣の令嬢とシズカと名乗る美しき女医、そして仮面に纏わる連続殺人だった。
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近年の作者の看板探偵である栗花落静(ツユリシズカ)が「炎舞館の殺人」以来、活躍する長編ミステリ。雪に閉ざされた屋敷で起きる連続殺人、しかも被害者はなぜかいずれも仮面を付けているという謎は異国情緒と相俟って実に魅力的。但し仮面の真相に関してはそれほど意外には感じないかもしれない。
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むしろ時代背景と結び付いたホワイダニットの方が見所と言えるが、それ以上にその背後に隠された、作者がかなり早い段階から仕込んでいたある真相が秀逸。とはいえやや強引な部分も否めないもののそれが明かされることにより前述したホワイダニットが更に際立つようになっているのは○。
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ポール・アルテ「星を盗む者」読了。夜空に輝いていたはずの星々が瞬時に消失した謎と殺人事件の関係は? ……正直、星々が消失した真相には全く期待していなかったけど(爆)それが事件とお世辞にも巧く絡んでいるとは言い難いのはさすがにどうかと思う。謎が派手であればあるほど滑ってしまう典型。
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2023年06月26日(月)
「シャドー」再観了。人気推理作家の新作を模倣した連続殺人の謎。あざといミスディレクションを盛り込みつつもお馴染みの記憶に絡めた手掛かりで真相を示唆しているのは○。また口に押し込まれるハイヒールや少女を執拗に追いかける犬などアルジェントらしい変態描写も多く因果応報な結末も含め偏愛。
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2023年06月28日(水)
「ジャーロ」再観了。原点回帰的タイトルとは裏腹に演出、音楽、物語、どれ一つとってもアルジェントらしさ皆無のスリラー映画。上映時間92分でも長く感じてしまう中身のなさがアレだが、その一方で所々盛り込まれたアルジェント映画のセルフパロディーと観る者を突き放した苦い結末は嫌いではない。
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ポール・アルテ「吸血鬼の仮面」読了。森深い田舎の小さな村で続発する怪事件。夜ごと目撃される謎の怪人、幽霊騒動、そして一年半前に死んだ筈なのに瑞々しい棺の中の死体……。一方ロンドンで名探偵オーウェン・バーンズが関わったのは降霊術に熱中していた資産家の老女が密室で殺された事件だった。
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名探偵オーウェン・バーンズシリーズの邦訳第五弾は吸血鬼と不可能犯罪を絡めた長編ミステリ。結論から言えば良くも悪くも古めかしい本格ミステリではあるものの次々と繰り出される不可解な謎と雰囲気が魅力的なので、端からそういうものだと割り切って読めばそれなりに楽しめるだろう。
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posted at 11:13:09
どちらかというとトリックよりも人間関係のミスディレクションとそれが明かされた後に見えてくる事件の構図の方が見所で、個人的には不可能犯罪よりもそちらに注目して読むことをお勧めしたい作品である。
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2023年06月29日(木)
「マッキラー」再観了。フルチが手掛けたジャッロの中でも本作は特に鬼畜ぶりが遺憾なく発揮されており、特にメインである少年たちを狙った連続殺人よりも女呪術師に対する村人たちのリンチが強烈。他にも無駄にグロい犯人の最期には思わず笑ってしまうが、その一方でテーマ曲が彩る哀愁感も忘れ難い。
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2023年06月30日(金)
久青玩具堂「まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート」読了。偽探偵の目的、日記だけを手がかりに捜す失踪した大学生の行方、古書に記された江戸時代の秘剣密室殺人の真相……雑居ビルに店を構える店子が喫茶店に持ち込む奇妙な謎の数々を高校生コンビが解き明かす。
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日常の謎系ラノベミステリ「子ひつじは迷わない」シリーズの作者「玩具堂」が「久青玩具堂」名義で発表した全五話の連作ミステリ。「トリッキーな難問に挑む高校生コンビの推理と、店子たちのほろ苦い人生模様を描く」というのが本作のコンセプトだが正直それについては些か疑問が残る。
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探偵役自身の内面に迫る最終話に関しては「ほろ苦い人生模様を描く」必然性はあるものの、それ以外――各話の謎解き後に用意されたBパートはどれも最終話に合わせただけの取ってつけたような印象でいまいちピンとこないのが現状だ。
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その一方でミステリとしてみると最初の二編はロジックと意外性のバランスが良く、特に第二話「日記の読み方」はテキストを使った仕掛けに定評がある作者らしい目の付け所が○。但しそれ以降はやや精彩に欠ける印象が否めないが、この作者の持ち味自体は楽しむことができる短編集である。
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2023年07月06日(木)
「笑む窓のある家」観了。青年画家があるフレスコ画に纏わる恐ろしい秘密を知ってしまうジャッロ物。主人公の回りで起きる不気味な出来事の数々も見所だが、それ以上に終盤のある人物の一言で全てがひっくり返る新本格ミステリ的構成が素晴らしい。静かな展開だからこその結末の破壊力が強烈な佳品。
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2023年07月07日(金)
岬鷺宮「あした、裸足でこい。3」読了。少しずつ変わり始めた未来。二斗はアーティストとして更に大きな舞台に進むため文化祭ライブに向けた準備を始める。だが彼女は知っていた。『天才』の成功は『凡人』の未来を壊してしまうことを。そして、その苦悩こそが彼女を縛りつけるもので……。
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posted at 19:49:04
元恋人・二斗の失踪を止めるため高校時代へとタイムリープするシリーズの三作目。今回は作者が得意とする文化祭回であるのもさることながら、それにメインステージと有志ステージの対決という趣向とどんなに努力したところで越えられない壁を前にした葛藤を絡め、物語を大いに盛り上げてくれるのが○。
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posted at 19:49:04
そして極めつけは終盤、二斗に訪れるある変化であり、あとがきの作者の言葉「岬の作品でメインヒロインということは、こういうことになるんですよ……(ほくそ笑み)」と相俟って思わず笑ってしまったw 物語を盛り上げつつも自分の性癖に忠実な作者の姿勢に脱帽(?)と言わざるを得ない良作である。
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2023年07月08日(土)
「Pearl(パール)」観了。「X(エックス)」の前日譚にあたる殺人鬼ができるまでホラー。憧れた世界が華やかであればあるほど手に入らないと分かった時の闇は深く、スペイン風邪が流行っている時代背景も閉塞感に一役買っていて○。ミュージカル演出のギャップ感も秀逸で個人的には前作より好み。
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2023年07月09日(日)
「呪術召喚/カンディシャ」観了。男だけを殺す魔物を召喚してしまった少女達の悪夢。エンジンがかかるまでが遅く「屋敷女」の監督作品の割に前半の殺しのシーンがイマイチだなあと思っていると後半でようやくその片鱗を見せてくれるようになるのは○。但し展開やオチに関してはややありきたりな印象。
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「ネメシス」観了。人間とサイボーグの戦いを描いたSFアクション映画。設定はSFなのにやっていることは終始火薬の量に物を言わせたB級肉体派アクションで所々どんな作品の影響を受けているか窺えるのが微笑ましい。また床を次々と円形に撃ち抜くことで敵から逃れるなどのおバカアクションも○。
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2023年07月10日(月)
石持浅海「あなたには、殺せません」読了。そのNPO法人には、殺人を犯すべきか悩む人が相談にやってくる。相談員はそんな犯罪者予備軍たる人々から聞き出した犯行計画の穴を次々と指摘していく。不備を突かれた者たちの殺意は、果たして本懐を遂げるのか?
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この作者にしか書けない、全五編から成る異色の倒叙ミステリ短編集。石持作品の倒叙ミステリというと碓氷優佳シリーズを思い出す人もいるかもしれないが、あちらと比べると本作はそこまでカッチリとミステリとして作られていない印象を受ける。
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どちらかというとブラックジョークの要素が強く、端からそういうものと割り切って読めば本作の偶然が過ぎる部分やどっちとも取れる伏線は受け入れやすく、この作者ならではの「そうはならんだろう」という倫理観がズレた展開やオチを楽しめるだろう。
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