麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年04月30日(土)
それに対し鮎川哲也は「折角掘り当てた鉱脈なのに見限るなんてとんでもない」と叱りつけたそうだが、それが果たして良かったのかというと甚だ疑問ではある。故に「叫ぶ夜行怪人」以外に良かったものを挙げるなら「夏の最終列車」になるだろう。ある意味、本作は作者の苦悩ぶりが窺える短編集である。
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posted at 18:27:38
というのも「叫ぶ夜行怪人」以降のA先生物の短編はどれもいまいちキレが感じられないのである。何というか作者が無理をして書いているような気がしてならない。ちなみに巻末の鮎川哲也の解説によれば、作者自身はどうやら「A先生」シリーズを打ち切りにしたいと思っていたようだ。
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posted at 18:26:37
本作にはベレー帽がトレードマークで甘い物に目がない謎の老人、A先生を探偵役とする五つの短編の他に作者のデビュー作にあたる短編「夏の最終列車」が収録されている。今回、本作を久々に再読して思ったのはやはりシリーズ第一作の「叫ぶ夜行怪人」は奇跡的作品だったのだなということだった。
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津島誠司「A先生の名推理」読了。深夜の大通りに現れた咆哮する怪人。消えたり現れたりひっくり返ったりと変幻自在の山小屋。オフィス街での不条理な出来事。海で救いを求める女と屋敷で度々目撃される巨人の幻。隕石が巻き起こすSFホラーさながらの怪事件。五つの奇怪な謎にA先生の推理が冴える。
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2011年04月29日(金)
また本作のラストで「真珠湾攻撃」を取り上げたことに関しても個人的には違和感を覚える。ユーモア作品の題材とするにはあまりにも重過ぎると思うのだが……。好きなシリーズの作品だけに、色々な部分が気になってしまった。
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ちなみに解説の波多野健氏は『「邪馬台国はどこですか?」の歴史推理は誰もホントと思わない』という笠井潔の発言を引き合いに出した上で、本作はいよいよ作者が本気で歴史の異説を立ち上げかけた印象があると語っているが、その結果、従来の破天荒さが薄まったのだとしたら非常に残念でならない。
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まあ、それに関してはマンネリを防ぐために仕方ないと思うが、何より釈然としないのは新解釈にこれまでの作品に見られた破天荒さがあまり感じられないことだ。個人的にこのシリーズの面白さはまず無茶苦茶な新解釈ありきで、それをいかにして本当っぽくでっちあげるかだと思っている。
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鯨統一郎「新・日本の七不思議」読了。「邪馬台国はどこですか?」「新・世界の七不思議」に続くユーモラスな歴史の新解釈シリーズ第三弾……なのだが前二作に比べてどうもスッキリしない。舞台一つとっても終始同じバーで展開していたこれまでと違い現地調査に赴いたりと完全に外へとシフトしている。
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2011年04月27日(水)
とはいえ全くミステリ要素がないかと言えばさにあらず。収録作の一つ「戻り橋と悲願花」では消えた曼珠沙華の球根という謎が出てくるが、それが終盤、作者らしい奇想と結び付いて解き明かされる様は紛れも無く本格ミステリのそれである。個人的にはこの話を読めただけでも本作を買って良かったと思う。
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島田荘司「進々堂世界一周 追憶のカシュガル」読了。京都を舞台に若き日の御手洗が世界各地で体験した出来事を予備校生のサトルに話して聞かせるという形式の作品集である本作は厳密に言うとミステリではない。例えるならば島田荘司作品ではお馴染みの挿話だけを抜き出した感じと言えばいいだろうか。
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2011年04月26日(火)
だが、それでも本作は面白いのだからタチが悪い。気が付くと、主人公たちが繰り広げる猛獣との死闘やアフリカの風景描写を楽しんでいる自分がいることだろう。個人的にはマサイ族の戦士の勇姿が見れる(!)だけでも本作を読む価値はあると思う。
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事件そっちのけで猛獣のハンティングに勤しむ登場人物たち。そして全体のページ数の半分が過ぎたあたりでようやく探偵役が登場しやっと事件の話に移るのかと思えばその探偵役も一緒になってハンティングを楽しみ出す始末。加えてやたらと食事シーンが多いのも事件のないがしろ感(?)に拍車をかける。
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本作のあらすじを聞いて「これのどこがミステリなのか」と疑問に思う人もいることだろう。一応「殺人事件」とタイトルに付くだけあってそれらしい事件も起こることは起こるのだが、本作が凄いのは、それが文字通り「一応」に過ぎないことである。
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嵯峨島昭「猛獣狩殺人事件」読了。アフリカの広大なサバンナで黒鬣の人喰いライオンに二人の男が襲われ、一人は背中に裂傷を負い、一人は命を落とした。助かった男は死んだ男の仇を討つべく、ハンターやマサイ族の戦士と共に黒鬣の人喰いライオンの行方を追う。
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2011年04月23日(土)
それ以外にも張り巡らされた膨大な伏線の数には目を見張るばかりである。本作は真梨幸子「殺人鬼フジコの衝動」を思わせるドロドロのイヤミスと本格ミステリを高い次元で融合させた秀作である。
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とはいえ、本作は核となるネタだけ取り出したら別段たいしたことはない。では何が優れているのか。それは事件背景の作り込みと真相隠蔽のテクニックである。特にインタビュー形式という構成にさりげなく仕掛けられたある企みには見事にしてやられた。
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読了後、本作の完成度の高さに舌を巻いた。驚くべきことに、本作には新人のデビュー作であれば必ずと言っていいほど目に付く無駄な要素が何一つ見られない。構成、文章共に念入りに磨き上げられており、月並みだが「欠点らしい欠点が見当たらないことが欠点である」としか言いようがない。
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深木章子「鬼畜の家」読了。物心がついた時、あたしの家はすでに壊れかけていました――保険金目当てで家族を次々と手にかけていく母親。その母親も自動車もろとも夜の海に沈んだ今、ただ一人生き残った娘の口から恐ろしい「鬼畜の家」の全貌が明らかにされていく。
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posted at 20:09:52
しかしながら、本作の本質はそこではない。そういったサイバーな展開の先に待ち受けるのは、ミステリ読者にはお馴染みのある趣向である。そしてエピローグで明らかになる本作のタイトル由来、事件の背景は、むしろ前時代的とすら思えるかもしれない。本作はそういったギャップ感が面白い作品である。
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posted at 16:02:09
まず本作を読んで驚いたのは1958年生まれの作者とは思えない、その軽快な文体である。IT関連の用語や蘊蓄が飛び交うこの手の作品は得てして人によっては即拒絶反応が出てもおかしくはないものだが、本作の場合はその文体のおかげでだいぶ読みやすくなっていると思う。
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一田和樹「檻の中の少女」読了。自殺支援サイト「ミトラス」に息子を殺されたと主張する老夫婦。その「ミトラス」に登録したばかりにストーキングに怯える女子高生。同時期に舞い込んだ二つの依頼にサイバートラブル解決屋の君島はどう挑む?
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2011年04月19日(火)
怪獣図鑑のダイイング・メッセージと怪獣の着ぐるみを着て堂々と殺人をやってのける犯人。二転三転する展開は面白いが、真相が些かスマートさに欠けるのが残念。そういう意味ではミステリのお約束を裏切りつつも(?)すっきりとまとめた「下痢をした死体」がベストかもしれない。
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posted at 20:33:33
まず本作を読んで印象に残るのは吉田警部補の強烈な存在感だろうが、事件の方もなかなかに魅力的だ。一つの死体が次々と違う現場に現れては消える「動きまわる死体」もさることながら、一番気合いが入っているのは何と言っても特撮映画会社周辺で起こる連続殺人を扱った「怪獣の好きな死体」だろう。
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海渡英祐「おかしな死体ども」読了。警視庁捜査一課主任・吉田茂警部補。名前だけではなく頑固で無愛想で皮肉屋という特徴までかつての日本の首相と瓜二つと言われる彼の許に廻ってくる事件は何故かひねくれたものばかり。本作はそんな彼が遭遇した八つのひねくれた事件を収録した連作短編集である。
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2011年04月16日(土)
謎と真相のとんでもない結び付きこそ自分の求める日常の謎であると固く信じて疑わない人にとって、本作は打ってつけなミステリ短編集と言えると思う。また、のんびりとした語り口とは裏腹に真相が黒いのも個人的にはポイント高し。
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posted at 18:38:34
それが最もよく表れているのは第二話「ゆく水にかずかくよりもはかなきは」だろう。人気のない切符売り場でひたすら子供用の切符を買い続ける男の謎を扱ったこの短編の着地点を予想できる人はそうそういないに違いない。
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澤木喬「いざ言問はむ都鳥」読了。沢木敬、分類学者。趣味はバイオリン。植物学科の助手を務め、学生の指導や論文執筆、フィールドワークに明け暮れる。そんな彼が遭遇した四つの日常の謎を収録した連作短編集である本作は、昨今のヌルイ日常の謎とは一線を画するような論理と飛躍に満ちている。
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posted at 18:36:10
また作者が言う「ささやかな(ミステリ的な)仕掛け」にしても「ささやか」どころか取って付けた感が否めない。正直、前作が良かっただけに、この出来には残念と言わざるを得ない。
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あとがきで作者は王道の学園(異能)バトルものを目指したと語っているが、お世辞にもそれが成功しているとは言い難い。というのも本作には編集側の意向なのか前作にはなかったラッキースケベがふんだんに盛り込まれているが、それに頁を割きすぎて本来説明すべきものがおざなりになってしまっている。
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一柳凪「リバース・ブラッド1」読了。とある研究所で起きた爆発事故に巻き込まれた巽は、記憶をなくした代わりに人や物の記憶を読み取る能力を手に入れていた。その一方で巷では内蔵が抜き取られたかのような奇妙な死体が相次いで見付かっていた。そんなある日、巽は一人の謎めいた少女と出会う。
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posted at 18:00:08