麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年05月02日(月)
大西赤人「鎖された夏」読了。金属業、造船業、不動産業と、あらゆる方面で財を成した浜村グループ。その一族が軽井沢にある別荘に集まった時、恐ろしい連続殺人の幕が上がる。浜村グループの御曹司である車椅子の少年、新司のゲームの相手として別荘にやって来た隆も否応なく事件に巻き込まれていく。
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posted at 10:07:24
あらすじからも分かる通り、本作はどこを切っても王道な本格ミステリである。ただ若干これだけの舞台設定を用意しておきながら不可能犯罪らしい不可能犯罪が出てこないことに物足りなさを覚えなくはないが、伏線の張り方、ミスリードに関しては申し分ない出来と言えるだろう。
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posted at 10:08:20
個人的には作者の境遇と被る新司というキャラについて作者がどういった意図のもとで出したのか、また犯人の動機についても何か思うところがあったのか等、ミステリ部分以外でも色々と興味深い作品である。
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posted at 10:10:32
2011年05月06日(金)
谺健二「赫い月照」読了。これまで数々の難事件を解決に導いてきた振り子占い師の雪御所圭子には凄惨な過去があった。彼女が中学生の時、一歳年上の兄が三人の女子中学生を殺害し、うち一人の首を切断したのだ。それから十数年の時を経て再び彼女は悪夢のような連続猟奇殺人に巻き込まれることになる。
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posted at 18:12:52
かつて中井英夫は綾辻行人に「世界の悪意を一身に背負ったような探偵小説を書くんだよ」と言ったそうだが、本作は正にその言葉を体現したような作品である。と同時に本作はそんな悪意に翻弄され、運命の操りの糸から逃れようと必死にあがいた探偵の物語でもある。
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posted at 18:15:42
終章で明らかになる真相には驚かされたものの、正直本作で用意されたトリックの幾つかは凄まじい悪意の前に妙に浮いてしまっている感が否めない。ミステリの出来から言えばお世辞にも傑作とは言い難いが、悪意を描き切ると言う点ではかなり高い次元で成功していると思う。
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posted at 18:16:48
竹本健治「闇のなかの赤い馬」読了。ミッション系の学園で、一人の神父が落雷事故に遭って死んだ。それから間もなくして、今度は別の神父がサンルームから黒焦げ死体となって発見される。しかも現場の状況が密室だったことから、俄かに不可能犯罪の様相を示し始める。
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posted at 20:57:29
読了後、真っ先に思ったのは「本作をダリオ・アルジェントに映画化してもらいたいなあ」だった。目次にある本作の英語タイトルの字体にしても、いかにもそれっぽい。真相の後味の悪さからイヤミスという声も聞かれるが、むしろこれは美しい悪夢と言うべきだろう。
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posted at 20:58:33
個人的には描写が薄いのが若干物足りないが、想像力が豊かな子供に読ませるにはこれくらいが丁度いいのかもしれない。本作は竹本健治らしさがよく出た、良質のジュブナイル・ミステリーである。
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2011年05月07日(土)
谺健二「星の牢獄」読了。地球の文明調査にやって来た異星人のイレム・ロウは、ある奇妙な殺人事件に遭遇する。イレムの目の前で証明写真のブースに入った少女が一瞬のうちに消え失せ、代わりに別人の刺殺体が転がっていたのだ。自分にかけられた容疑を晴らすため、イレムは事件の捜査に乗り出す。
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posted at 21:03:42
異星人が主役という異色な設定の本作は序盤から中盤にかけて二件の不可解な殺人事件が発生するが、作中でも言及されているようにそれは前哨戦に過ぎない。むしろ本番は舞台が私設天文台に移って以降に起こる、クローズド・サークル状況下での連続殺人からである。
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posted at 21:04:32
とはいえ連続殺人の真相自体は特に見るべきところはない。ではどこが本作の見所なのか? ……それは、何故このような設定を使う必要があったのかという部分に外ならない。そして、それが明らかになると同時に、手掛かりがあまりにもあからさまな形で示されていたことに気付き、いたく感心した。
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posted at 21:05:43
2011年05月08日(日)
谺健二「未明の悪夢」読了。谺健二の作品を読んでいると、しばしば本格ミステリという虚構の物語で残酷な現実を打ち負かそうとしているかのような印象に囚われる。「赫い月照」は酒鬼薔薇事件に代表される劇場型猟奇殺人を、そして本作「未明の悪夢」では阪神大震災という未曾有の悲劇を扱っている。
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posted at 18:42:35
大地震のさなかに起こった奇怪な事件の数々。絞首刑と磔刑を同時に行われた男。密室状態から消えた犯人。現場から消失し、その後、蘇生したバラバラ死体の女……それらの謎を成立させるために震災を描く必要があったのは確かだが、作者が震災を題材にした理由は決してそれだけではないだろう。
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posted at 18:43:47
果たして本格ミステリは現実に打ち勝つことができたのか……その判断は読者それぞれに委ねるとして、個人的には本作が事件の構図に重点をおいたその後の作品(「肺魚楼の夜」「赫い月照」「星の牢獄」)と違い、島田荘司ばりのトリック重視の作品であることがなかなか興味深かった。
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posted at 18:44:42
2011年05月09日(月)
麻耶雄嵩「メルカトルかく語りき」読了。前作「隻眼の少女」のスッキリとした読後感に「こんなの麻耶雄嵩じゃない!」とお嘆きの麻耶ファンの皆様、お待たせしました。待望のモヤモヤタイムの到来です(爆)――本作は本格界きっての捻くれ者、麻耶雄嵩らしさが最大限に発揮された短編集である。
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posted at 22:16:56
収録された五つの短編は、どれ一つとってもまともな本格が存在しない。一読、頭を抱えるだろう読者を見て、高笑いをするのはメルカトルか、はたまた麻耶雄嵩か。ここまで歪んだ作品を書ける(書いてしまう)のは後にも先にも麻耶雄嵩だけだろう。
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posted at 22:17:47
2011年05月10日(火)
城平京「虚構推理 綱人七瀬」読了。人々の噂が生んだ現実の怪異を無効化させるため、合理的な虚構の真相をでっち上げるという設定は面白いと思うが、田代裕彦「セカイのスキマ」という前例がある以上、必然的にそれと比較してしまうのは仕方ないことだろう。
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posted at 23:19:39
そして結論から言えばミステリとしては残念ながらそれを上回ることはできなかった。一応多重解決を展開させている所は良かったがよりによって一番つまらない解決を最後に持ってきたのはかなりマイナス。探偵役のいう「最後の一撃」にしても勿体振った割には充分予想の範疇なのはちょっとどうかと思う。
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posted at 23:20:40
2011年05月12日(木)
麻見和史「石の繭」読了。新橋で発見された、モルタルで固められた異様な死体――それが恐ろしい連続殺人事件の始まりだった。翌朝、特捜本部に電話をかけてきた犯人が話し相手に選んだのは新人刑事の搭子だった。トレミーと名乗った犯人は搭子に対し、自分の犯行が復讐であることをはっきりと告げる。
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posted at 21:47:32
この作者の本を読むのはデビュー作の「ヴェサリウスの柩」以来だが一読してまず思ったのは「この人ってこんな安っぽい話を書く人だっけ?」ということだった。内容紹介には「本格ミステリの緻密さと警察小説の迫力が融合!」とあるが、結論から言うと残念ながらそれとは程遠い出来と言わざるを得ない。
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posted at 21:48:48
ただただ悪い意味でドラマで見たことのある展開が続いたあげく、ミステリ読みには充分予測可能なオチがつく。読了後「白熱する頭脳戦と予想外の結末は必読!」という帯の推薦文を見て、思わず「そんなのあったっけ?」と首を傾げてしまった程だ。
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posted at 21:50:14
とはいえ、ミステリ読み以外の人が読むにはこのくらいのぬるさがちょうどいいのかもしれない。少なくとも本作がコアなミステリファン向けの作品でないのは間違いない。
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posted at 21:51:12
2011年05月13日(金)
中山七里「魔女は甦る」読了。僕は魔女の末裔なのです――そんな謎めいた言葉を遺して、男はバラバラ死体になった。それから間もなくして、今度は嬰児誘拐事件が発生する。二つの事件に関連するのは、黒い噂の絶えないあるドイツの製薬会社。そして、ヒートと呼ばれる新種の麻薬だった。
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posted at 17:46:01
ミステリを読んでいた筈なのに、気付いたら某有名ホラーゲームのような話になっていた。何を言っているのか分からないと思うが(以下略)。本作をミステリとして読んだ人の中には、もしかしたら終盤の展開に関して激怒した人がいるかもしれない。
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posted at 17:46:59
しかしながら真相を知った上で読み返してみると本作の様々な設定が全て真相から逆算されたものであることに気付くだろう。アイディアとしては残念ながら前例があるものだが、既視感しかなかった前作「連続殺人鬼カエル男」に比べるとまだ作者のオリジナリティが感じられる作品に仕上がっていると思う。
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posted at 17:49:18
歌野晶午「マルムシ」(「増補版 放浪探偵と七つの殺人」収録)読了。教授という渾名で呼ばれていた研究生が遺したダイイングメッセージ「マルムシ」とは? トリックに前例があるのが残念ではあるものの、発想としてはなかなか面白いと思う。また語り口が巧みで、回想を上手く活かしたオチが○。
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posted at 20:51:23