麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年10月23日(日)
小林泰三「大きな森の小さな密室」読了。犯人当て、倒叙ミステリ、日常の謎、バカミス、SFミステリ等々バリエーション豊かな七編が収録された本作は、後半になればなるほど怪作ばかりになっていく構成がまず面白い。
タグ:
posted at 15:45:02
とはいえその前半にしても一見オーソドックスなミステリのように思えてその実、密室の扱いがぞんざいだったりどこか歪さが窺えはしたが後半の弾けぶりはその比ではない。特に弾けていたのは「更新世の殺人」と「正直者の逆説」だが、伏線フェチの自分としては「自らの伝言」をベストに推したいと思う。
タグ:
posted at 15:48:25
2011年10月25日(火)
石持浅海「彼女が追ってくる」読了。碓氷優佳を探偵役とする倒叙ミステリシリーズの第三弾。初めて本作のタイトルを見た時、自分はてっきり「彼女」とは優佳のことかとばかり思っていたのだが、さにあらず。実際は被害者のことを意味している。つまり本作の趣向は、犯人と被害者の対決なのである。
タグ:
posted at 21:07:44
故に本作における優佳の役回りは探偵役というより、この対決の審判役といった方が正しい。とはいえ推理マシーンとしての恐ろしさ(?)は健在なので、そちらを楽しみにしている人たちはご安心を。果たして犯人と被害者のどちらに軍配が上がるのか、最後の一行まで油断ならない作品である。
タグ:
posted at 21:08:22
2011年10月27日(木)
田代裕彦「修羅場な俺と乙女禁猟区」読了。ある日、節は大財閥の長にして父の十慈郎から婚約者候補として五人の美少女を紹介される。急な話に面食らう節だったがこの話には続きがあった。十慈郎は言う。「この娘たちはお前のことを殺したいほど憎んでいる。だがこの中にお前を愛する娘も一人いる」と。
タグ:
posted at 21:54:18
久住四季と並ぶラノベミステリ界の雄(?)田代裕彦の新作は五人の美少女の中からたった一人だけ自分のことを愛する娘を選ばなければ待つのは破滅という新機軸・デッド・エンド・ハーレム物。これでその一人を見付け出すフーダニット展開になれば良かったのだが、残念ながらそうは問屋が卸さなかった。
タグ:
posted at 21:56:05
いや、正確に言えば五人のうち一人だけをある方法で除外して以下次号(実際続くかどうかはともかく)で終わるので正直本作だけでは何とも判断がつかないのだ。まあこの設定を一作限りで終わらせるのは惜しいと思うのは分からないでもないが、お陰でミステリとしてはかなり消化不良と言わざるを得ない。
タグ:
posted at 21:56:44
2011年10月28日(金)
島田荘司「ゴーグル男の怪」読了。「そいつ、両面の皮膚が溶けたように真っ赤なんですよ……」煙草屋の老婆が殺された濃霧の夜に目撃された、ゴーグルで顔を隠した奇妙な男。警察は男の行方を追うが、杳として足取りは掴めない。そんな中、遂に白昼堂々、ゴーグル男が姿を現す――。
タグ:
posted at 15:33:44
これまでにも挿話に力を入れすぎて盛り上げるはずの謎を食ってしまっている例は何度かあったが、本作もまたその例の一つと言えるだろう。今回作者は謎を効果的に演出するために原発事故を挿話に持ってきているのだが、作者が原発事故について熱く語れば語る程、真相の小粒さが際立ってしまっている。
タグ:
posted at 15:34:34
本作を読んで自分が真っ先に思い出したのは国内作家Tの某短編だったが、その某短編に比べると本作は演出のバランスが上手くいっていない印象を受ける。個人的には長編化せず、短編のままで終わらせておいた方が良かったような気がする。
タグ:
posted at 15:36:16
道尾秀介「水の柩」読了。五十数年前、湖の底に消えた村。少年が知らない少女の決意と家族の秘密――道尾秀介の新作は嘘をテーマにした物語……というと個人的に思い出すのは北國浩二「嘘」だがあちらがミステリという形式を利用した作品だったのに対し本作は徹頭徹尾、非ミステリな内容となっている。
タグ:
posted at 20:48:50
とはいえ本作には一時期の非ミステリ道尾作品に見られた物足りなさはない。以前の自分は「トリックのない道尾作品は炭酸の抜けたコーラのようなもの」と思っていたけれど、本作に関してはトリックがなくてもきちんと人間ドラマが成立しており、明らかに作者の成長が感じられる。
タグ:
posted at 20:49:36
ただミステリ読みの自分としては、あえてそこにトリックを盛り込んだらどうなるのか、その先が見てみたいと思う。今、それをやってみたら結構凄いものができるのではないかと思うのだけど……「龍神の雨」以降そっち系はご無沙汰なだけに、色々期待せずにはいられない。
タグ:
posted at 20:51:13
2011年10月31日(月)
飛鳥部勝則「呼ばれる」読了。指を入れる。女の口に指を入れる。彼はそれが好きだった。……そんな官能的な書き出しで始まる本作は仮面をテーマにしたホラー短編である。かつて山口雅也は「生ける屍の死」の作中で「性愛(エロス)と死(デス)は兄弟」と語っていたが本作は正にそれを対比させている。
タグ:
posted at 19:54:28
本作のラストシーンは本来なら凄惨なはずなのに、冒頭の描写が尾を引いて、どこか甘美な雰囲気が漂う。その不思議な余韻こそが飛鳥部勝則という作家の持ち味なのだと思う。
タグ:
posted at 19:56:02