麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年01月03日(木)
荒木一郎「さよならがいいたくて」読了。いいかげんな私設管理人を職業としている昇ちゃんこと五段昇が活躍する二編他、カフェテラスで見知らぬ男に拾われ赤坂にあるブティック経営を任された女の顛末を描いた「ブティック」、将棋盤作りとカヤの木を巡る百年前の殺人事件の謎を解く「榧の木」を収録。
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posted at 00:04:57
一編一編作風から語り口までガラリと変えた、バリエーション豊かな作品集。この作者の作品はハードボイルド調の「シャワールームの女」しか読んだことがなかったが、本作を読んで予想以上に引き出しが多い作家だったことが分かり、認識を改めた次第である。
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posted at 00:05:41
ただ個人的には五段昇が活躍する二編に関しては語り口が全く合わず辟易させられたものの、残りの二編の方は問題なく楽しませてもらった。特に「榧の木」は泡坂妻夫の職人物にも通じる味わい深さがあり、その前の都会派サスペンス「ブティック」と比べると、その落差がなかなか面白かったw
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2013年01月04日(金)
辻真先「怪盗フラクタル 最初の挨拶」読了。失踪した映画監督が最後に手掛けたオープンセットが今も残る瀬戸内の孤島に届いた怪盗フラクタルからの犯行予告。名探偵・安西英作は怪盗の犯行を阻止すべく娘の日香里と共に島に渡るがそれから間もなく娘が誘拐されたのを皮切りに不可解な事件が続発する。
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posted at 18:49:11
作者曰く本作は名犯人ものに挑戦したとのことだが、それにしては事件はパッとしないし、怪盗もイマイチ魅力に欠ける……と思いながら読み進めていたのだが、ラストに至りようやく「そういうことか」と納得がいった。
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2013年01月05日(土)
辻真先「宇宙戦艦富嶽殺人事件」読了。「読者が犯人で探偵で被害者」という推理小説の書き下ろしを依頼された新進作家の牧薩次は、六甲大学アニメ研究会が製作したアニメ「宇宙戦艦富嶽」の試写会を取材するため、神戸を訪れる。だが会場となった学生ホールで研究会メンバーの一人が変死を遂げて――。
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posted at 17:29:59
本作はまずプロローグで「読者が犯人で探偵で被害者」という趣向が明かされるが、それに関してはあくまでオマケと割り切ってほしい。しかし、だからといって本作が微妙ということは決してなく、むしろミステリとしてはかなり練り込まれた秀作と言っていいだろう。
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posted at 17:30:19
第三の事件における犯人特定のロジックも秀逸だが、何より本作で優れているのは事件背景の作り込みだろう。尤も第一の事件のトリックについては丁寧に伏線を張りすぎて途中で気付いてしまいがちだが、個人的には三百頁に満たない分量でこれだけの伏線を張った作者のフェアプレイ精神に敬意を表したい。
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posted at 17:31:07
2013年01月06日(日)
夏寿司「マ・オー ―魔王、日本が舞台のオンラインゲームを始める―」読了。ひょんなことから高校生の孝助は魔王を名乗る異世界の少女と共に日本が舞台のオンラインゲームをやる羽目になる。ゲームの名は『ガクエン』――孝助は少女の執事として女子高に通うがそこで幼馴染みの比奈と偶然再会し……。
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posted at 17:26:30
「トリック・ソルヴァーズ」や「アリシアの三姉妹」でラノベミステリの書き手として知られる作者の新作はツンデレ魔王と始める学園MMOラブコメ……と書くと「何だ、ミステリじゃないのか」と思う人もいるかもしれないが、その点はご安心を。ちゃんとミステリ要素も用意されている。
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posted at 17:27:26
具体的には終盤の野球対決がそれであり、そこで作者は今まで描いてきた異世界設定を使ったコンゲームを見せてくれる。その中でさりげなく消えたボールの謎を巧く活かしている点も実に好印象。本作はツンデレ魔王とヤンデレ幼馴染み(巨乳でボクっ娘)とのラブコメとミステリで二度美味しい作品である。
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2013年01月07日(月)
北山猛邦「猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条」読了。成人するまでに嫁がねば一族を追放する――山奥にある村の名家・後鑑家の娘に届いた脅迫状に対し探偵助手学部の君橋と月々はある意外な方法で解決してみせる。だがまだ事件が終わってないことに気付いた探偵・猫柳十一弦は君橋と共に村へと向かう。
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posted at 22:07:34
目次を見てピンときた人もいるかもしれないが、本作は「大団円」に始まり「魅力的な謎」に終わるという、本来のミステリとは逆の構成になっている。つまり序盤に犯人とその動機が明かされた上で、探偵が事件を未然に防ぐべく犯人によって仕掛けられた殺人トリックを推理していくのだ。
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posted at 22:09:16
この構成は石持浅海「君の望む死に方」に通じるものがあるが、「君の望む死に方」の探偵役と比べると悪戦苦闘ぶりが目立つ本作の探偵役は少々グレードが落ちる(?)かもしれない。とはいえ、その真摯な姿勢こそ猫柳十一弦という探偵の良さとも言える。
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posted at 22:09:57
その他、第一の殺人トリックの豪快さや終盤の捻りからこの作者らしさが窺えるのは○。本作は、本格ミステリのお約束を知っている読者であればニヤリとできる快作である。
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posted at 22:14:48
2013年01月08日(火)
小森健太朗「コミケ殺人事件」読了。美少女戦士が活躍するSFミステリ「ルナティック・ドリーム」。その結末を予想したサークル「大きなお茶屋さん」の同人誌「月に願いを」の中に殺人予告状が挿入されているのが発覚した矢先に、コミックマーケットの会場でサークルメンバーが次々と殺されていく。
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posted at 14:47:05
何から何までコミケ尽くしという作者のデビュー作。本作を読んでまず実感したのはコミケという舞台が意外とミステリと相性がいいという事実であり、その新発見とも言える感覚はプロレスという同じようにミステリとは縁がなさそう題材を扱った伯方雪日「誰もわたしを倒せない」にも通じるものがある。
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posted at 14:47:26
そして一見奇抜に思える同人誌をまるごと一冊挿入するという本作の構成も、読み終わってみるとコミケという舞台に適した作者のある仕掛けによるものだということが分かる。これに関しては怒る人もいるかと思うが、個人的にはこの設定だからこそできた仕掛けとして大いに評価したい。
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posted at 14:47:47
2013年01月09日(水)
道尾秀介「笑うハーレキン」読了。家具職人・東口は経営していた会社も家族も失い、川辺の空き地で仲間と肩を寄せ合い日銭を稼ぐ日々を送っていた。そこへ東口の弟子になりたいという奈々恵が現れたのを機に東口の生活が徐々に変わり始めていく。だがある時、仲間の一人に異変が……。
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posted at 22:22:06
うーん……。本作は昨今の道尾作品の中ではまだミステリしている方ではあるものの、以前のミステリ作品と比べると、非常に中途半端な印象を受ける。伏線はそれなりに張っているのだけど、正直このミステリ要素が物語的にいるのかと言われるとかなり疑問。
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posted at 22:22:34
かといってこれを抜くと、いつも通りとしか言いようのない話になってしまうし……。それなりには読ませるが、いい加減このパターンの話は食傷気味なので、そろそろ違うタイプの作品を切に望む。
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posted at 22:23:12
中山七里「いつまでもショパン」読了。ポーランドのショパン・コンクール会場で発見された他殺体は手の指を全て切り取られていた。更に会場周辺で多発する世界的テロリスト・通称「ピアニスト」による爆破事件。果たしてコンクールと事件の行方は……?
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posted at 22:23:36
前作「スタート!」を読んだ時も思ったが本作はぶっちゃけミステリ部分がどうでもよくなるくらい小説として面白い(爆)。何と言っても演奏描写が素晴らしく、さながら文字の一つ一つから音が伝わってくるかのような錯覚すら覚える(特に圧巻なのが盲目のピアニスト・榊場の演奏シーン!)。
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posted at 22:24:09
その一方で本作は若きピアニスト、ヤン・ステファンスの成長物語の側面もあり、音楽小説としては間違いなく傑作と言ってもいいだろう。但しミステリとしてみると、真っ先に読者が疑うであろう可能性をそのまま真相として持ってきているのは正直いただけない。
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2013年01月10日(木)
御影瑛路「空ろの箱と零のマリア6」読了。箱〈罪と罰と罪の影〉を使って人々を傀儡化し世界を支配しようとする醍哉と、箱〈願い潰しの銀幕〉を展開し醍哉の心を折ろうとする一輝。“零のマリア”を巡って衝突する二人のうち、世界を救う/変えるのは果たして――。
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posted at 21:14:51
5巻から始まった“銀幕”編完結……というか、前回で決着がついたものとばかり思っていたので、まだ続いていることに普通にびっくりした(爆)。とはいえ読み終わってみれば今回はちゃんと相手の心理を巧く利用した奇策が用意されていたので、個人的には非常に満足。
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posted at 21:16:16