麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年01月13日(日)
長井彬「函館五稜郭の闇」読了。函館立待岬で転落した男が翌日、函館山で服毒死しているのが発見された。しかも男が死んだのは転落するのが目撃されたのとほぼ同時刻だった――。この不可解な謎を追うカメラマン・栗栖の前に土方歳三の研究者だった父を殺した犯人を探しているという女が現れて……。
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posted at 16:57:53
なんというか地味に良くできた作品。転落死したはずの男が同時刻に別の場所で死んでいたという魅力的な謎は中盤であっさりと明かされてしまうが、そこから更に一捻りさせて終盤のアリバイトリックの解明に繋げている点が実に秀逸。
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posted at 16:58:23
動機に関してはこの時代ならではというものだが、こちらも一捻りすることにより意外性を齎すことに成功している。加えて真相を知った上で読み返してみると、受ける印象がガラリと変わるプロローグも巧い。派手さはないが、地味に構図の反転が決まった良作である。
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posted at 16:59:06
2013年01月16日(水)
長井彬「連続殺人マグニチュード8」読了。東海大地震襲来のXデーを水野東工大教授が予測し世間が騒然とする中、水野教授と対立する東大地震研の木村教授が何者かから脅迫を受ける。そして、それを皮切りに木村教授の周辺で起きる奇怪な事件の数々。殺人、放火、人間消失……果たして事件の真相は?
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posted at 21:24:03
まず本作は社会派推理と銘打たれているが、読み終わってみるとそのレッテルが見事なまでに的はずれであることがよく分かる。全てはある大胆な仕掛けを成立させるために書かれており、それは紛れもない本格ミステリの構成である。
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posted at 21:24:26
個人的に最も感心したのは密室の扱いで、魅力的な謎と手掛かりを両立させてしまった手腕が素晴らしい。タイトルが内容と合ってなかったり、些か丁寧に書きすぎて途中で読めてしまう可能性はあるものの、この一発ネタに全てを賭けた作者の心意気は大いに買いたいと思う。
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posted at 21:24:54
2013年01月17日(木)
司城志朗「存在の果てしなき幻」読了。九歳になる娘が事故に遭ったという知らせを受けて会社社長の麻宮が病院に駆けつけると娘は入院しておらず、首を傾げながら家に戻ると妻はいない、犬もいない、預金通帳も判子も権利書もない。挙げ句の果てには会社すらもなくなり、代わりに妻殺しの容疑が……。
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posted at 14:18:48
何もかも失い、長らく夢と幻の世界を彷徨っていた男が、消えた妻の行方を追って一人奔走する物語。その展開は驚きの連続であり、いい意味で先の読めない物語になっている点もさることながら、それをミステリとしても巧く活用しているのは○。
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posted at 14:19:12
そして終盤に明らかになる、ある事件の犯人を特定するロジックはシンプルながらも説得力がある。派手な仕掛けこそないが、所々に作者の技巧が窺える、プロット型本格の隠れた良作である。
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posted at 14:19:22
池田雄一「不帰水道」読了。昭和41年暮れ、九州南端に近い指宿の海岸で代議士秘書の他殺体が発見された。程なくして捜査線上に一人の容疑者が浮かぶが彼には鉄壁のアリバイがあった。やがて事件は迷宮入りとなり捜査本部は解散。だが一人の老刑事だけは時効の壁と戦いながら執拗に犯人を追い続ける。
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posted at 18:55:41
本作は最初から犯人が分かっている倒叙形式を採用しており、ミステリとしてはアリバイトリックがメインになる。なおトリックに関しては「本件ミステリ・フラッシュバック」で市川尚吾氏が「ロマンがある」と称しており、実際自分も読んでみて同様の感想を抱いた。
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posted at 18:56:31
確かに本作のトリックは島田荘司作品にも似た趣がある。とはいえ、どちらかというとミステリよりも登場人物の悲哀に主軸が置かれており、トリックは驚きよりもドラマを盛り上げるための演出の一環という印象が強い。本作は事件を通して描かれる人間ドラマが読みたい人には打ってつけの作品である。
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posted at 18:56:50
2013年01月18日(金)
友成純一「宇宙船ヴァニスの歌」読了。銀河連邦の辺境をさまよい、女日照りの開拓移民に春をひさいでいる宇宙娼妓船ヴァニス。第一部では宇宙空間での娼妓たちの暮らしぶりを短編オムニバス風に、第二部では某開拓惑星を例に彼女らの春をひさぐ実態をドキュメント風に描く。
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posted at 19:18:55
……というのは作者の弁だが、まあ物は言いようである(爆)。確かに第一部に関してはいつもの友成節であるエロス&スプラッターを交えつつも、一応娼妓たちの暮らしぶりを描いてはいると思う。所々頭のおかしさを感じるものの(!)、まだ書きぶりは大人しい……が、問題は第二部以降である。
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posted at 19:19:20
ある夫婦がヴァニスの娼妓たちによって半殺し&去勢されたあたりから話はおかしくなり、夫を娼妓に奪われた女たちがビームサーベルやビームライフルで武装しヴァニスに攻め込んできて以降はもう完全に作者が読者を笑い殺しにきてるとしか思えないくらい、ひどい展開(誉め言葉)が待っている。
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posted at 19:19:45
「オ・ト・コ・なんてえ!」というどこかで聞いたセリフと共にビームやナイフ、弾丸が飛び交う女たちの激しいバトル、濃硫酸&電動ドリルファック、果ては巨大メカ登場(!)と、ツッコんだら負けと言わんばかりの怒濤のラインナップが素晴らしい。
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posted at 19:20:06
そして、そんなカオスな状況にも拘わらず「ひどいわ、ひどいわあ!」と叫びながら最後に美味しいところを全て持っていってしまったヴァニスのトップ、リリー様が素敵過ぎる。決して普通の本読みにはお勧めできないが、自分のようなキワモノ好きであればあえて傑作と言いたくなる作品である。
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posted at 19:20:31
2013年01月19日(土)
友成純一「恐怖の暗黒魔王」読了。銀河連邦の辺境をさまよい、女日照りの開拓移民に春をひさぐ宇宙娼妓船ヴァニス。そのヴァニスが属する銀河連邦に牙を剥く暗黒魔王プレッジ・スミスはヴァニスをハイ・ジャックするべく四天王の一人である竜神童子を送り込んでくる。果たしてヴァニスの運命は……?
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posted at 16:37:00
作者曰く、今回は前作に比べて大きくスケールを拡げているとのことだが、確かに始まりはシリアスな戦闘シーンだし、末弥純描く表紙の今回の敵キャラ三人(戦闘サイボーグにナイスガイ×2)は無駄にカッコイイし、まさか今回はガチのスペオペなのか……と思いきや、そこは安心の(?)友成クオリティ。
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posted at 16:37:25
敵キャラ三人のうち、見せ場があったのは戦闘サイボーグことマッド・マシンくらいであとの二人は……エロ要員とギャグ要員?(爆)特に竜神童子にいたってはカッコよかったのは初登場シーンくらいであとは最後までただのヘタレで終わった感が強い。
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posted at 16:38:00
とりあえず本作で分かったのはヒューマニストなんて糞くらえという作者の主張と結局美味しいところを持っていくのはサイボーグ女将ことリリー様なのね、ということだろうか。無駄にカッコよすぎる表紙と脱力感半端ない中身のギャップを楽しんで読むのが吉な作品である。
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posted at 16:38:20
友成純一「血飛沫電脳世界」読了。地球統合政府のラオ大頭領が歳のせいで頭がプッツンしてしまった。これに慌てた側近たちはラオの記憶が無に帰す前にラオの大脳を機械化、地球全土にネットワークを持つマザーコンビューターに連結する。だが今度はマザーコンビューターまでプッツンして大惨事に……。
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posted at 23:40:06
……という粗筋だけでも本作のトンデモぶりは充分に伝わったかと思う(爆)。そんな地球に宇宙娼妓船ヴァニスが久々に帰ってきたらどうなるかは友成作品の読者であればだいたい察しがつくだろう。まあ早い話「血飛沫電脳世界」というタイトル通りのひどい展開(誉め言葉)が繰り広げられるわけである。
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posted at 23:40:26
しかもそんな阿鼻叫喚な地獄絵図にも拘わらず「エクソシスト!」やら「お前はもう、死んでいる」といった単語が飛び出してきて、もう何と言うか友成先生遊びすぎです(笑)。そしてそんな内容の作品を作者はサイバーパンクと予告していたのだから凄い(その後、あとがきの「嘘です」宣言を見て脱力)。
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posted at 23:40:47
また本作は黄泉の国に見立てた電脳世界の表現が斬新で、そこでのロリっ娘とのエロシーンはどことなくエロゲっぽくて友成作品においては非常に新鮮。そして何よりもラストの、愛は地球を救う(?)的なオチに愕然とした。まさか友成作品で愛なんて言葉を目にする日がこようとは……。
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posted at 23:41:45
2013年01月20日(日)
米澤穂信「リカーシブル」読了。父が失踪したのを機に母の故郷に引っ越してきた姉ハルカと弟サトル。だがそれから間もなく弟は予知能力を発揮し始め姉は「タマナヒメ」なる町の伝説とそれに纏わる奇怪な死の数々を知ることになる。この町はどこかおかしい――。
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posted at 16:36:29
本作は帯を見ると版元が同じためか「ボトルネックの感動ふたたび」とあるが、意外にも(?)真っ当な本格ミステリだったことに驚いた。これがボトルネック系なら超自然現象&突き放した結末で終わるところだが、謎にはきちんと合理的な解決が与えられ、結末も仄かな希望が存在する。
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posted at 16:36:48
個人的に感心したのは伏線をキャラ描写に巧く溶け込ませている点で、事件の構図も定番ではあるが、非常に効果的。ボトルネックとは全く違った物語ではあるが、この作者らしい苦味の混じった本格ミステリの秀作だと思う。
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posted at 16:37:12
友成純一「戦闘娼妓伝」読了。反世界主義分子を統率し銀河連邦に反旗を翻す、民主主義の魔王ことプレッジ・スミス。その魔王の所在を探るべく、銀河の辺境ヴラド星域へやってきた密偵娼妓船ヴァニス。宇宙の命運を賭けた魔王軍団と戦闘娼妓たちの戦いの火蓋が今、切って落とされようとしていた――。
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posted at 19:21:59
……と粗筋はえらく仰仰しいが読み終わってみれば花咲か爺さんしか覚えていない(爆)。というか何でスペオペに花咲か爺さんが出てくるのか意味不明だが、それこそが友成クオリティ。ぶっちゃけヴァニスで花咲か爺さんが終始大暴れして、その合間にバカ同士のバトルがちょこちょこあった印象しかない。
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posted at 19:22:14
「ブラック・ホールも平手で叩き落とす」が売り文句のプレッジ・スミスさんの活躍はお預け状態だし、シリーズ二作目「恐怖の暗黒魔王」に引き続き魔王の忠実なる側近であり四天王の一人・竜神童子が再び登場するも、残念ながら今回も見せ場一切なし(涙)。
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posted at 19:22:35
そして、いつもならサイボーグ女将・リリー様が最後に美味しい部分を全て持っていくところだが、今回に限っては珍しく最後まで花咲か爺さんが大活躍する。言うなれば本作は変態スペオペと日本昔ばなしの夢の共演(狂演?)ともいうべき怪作なのである(意味不明。けど読めば分かります)。
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posted at 19:23:01