麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年03月08日(金)
戸川昌子「嬬恋木乃伊」読了。考古学者の滝山は浅間山の大噴火の時のミイラを見せてくれるのを条件に「俺の女房の相手をしてほしい」という男の頼みを引き受ける。しかし彼が連れていかれた先で待っていたのは男の女房の死体だった……。ミイラ見たさに背徳的な行為すら厭わない表題作含む五編収録。
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posted at 18:21:49
怪奇ミステリ短編集。まず表題作の粗筋からして大分怪奇……というより変態じみているが、それに輪をかけてアレなのがチンパンジーと人間の女をセックスさせて(!)新たな種を作り出そうとする「擬態子宮」だろう。
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posted at 18:22:04
その内容からしても充分頭がおかしい(誉め言葉)が、更にチンパンジーにやる気を出させるため、主人公が毛皮を身につけライバルの猿を演じ始めた時には読んでいて腹筋が吊りそうになった(笑)。これはいい変態小説である。
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posted at 18:22:15
ただ作品によってはミステリ部分が余計に感じられてしまうのもあり、これだったら普通にシチュエーションでみせる怪奇小説ないし官能小説に徹してしまった方が良かったように思う。
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posted at 18:22:42
山田彩人「少女は黄昏に住む」読了。童顔でスイーツ好きの刑事・マコちゃんとコスプレ好きのオタク美少女探偵・琴乃。二人が遭遇した五つの事件――密室、毒殺、人間消失、クローズド・サークル状況下での犯人探し、そして再び密室――を収録した連作ミステリ。
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posted at 22:21:11
鮎川賞作家による三作目はオタク美少女が探偵役を務める初の短編集。これまでの長編二作品で感じた冗長さが短編だと解消されているのはいいが、その一方で本作ではまた違った形で作者の不得意な部分が浮き彫りになってしまっている。
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posted at 22:21:44
収録作は一編を除きトリックメインで固めているものの、そのどれもが小粒だったりバレバレだったりとイマイチな印象が否めない。逆にロジックに徹した犯人探し「吹雪のバスの夜に」の出来が際立っており、もし次回作があるなら全てロジック物の連作ミステリを読んでみたいと思う。
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posted at 22:22:17
2013年03月09日(土)
碇卯人「杉下右京の密室」読了。ドラマ「相棒」のオリジナル小説第三弾。孤島に建つ大富豪の館で行われる推理ゲームに招待された右京が密室殺人に遭遇する「大富豪の挑戦状」、アメリカ出張に行っている筈の社長が本社屋上にある密室状態のクライミングジムから腐乱死体で発見される「壁」の二編収録。
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posted at 17:34:01
タイトルにもあるように密室をテーマにした中編集。「大富豪の挑戦状」は何といっても海中展望室を有した特殊な館という舞台設定を活かしたトリックが秀逸で、特に外からは容易に入れても中からは出られないという密室の罠が同時に読者を推理の袋小路に嵌める罠にもなっている点が素晴らしい。
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posted at 17:35:08
このトリックは小説でも充分可能なものだが、映像化した方が伏線も含め、より映えるのではないだろうか。一方「壁」もまたかなり特殊な密室ではあるが、逆に特殊なのが災いして伏線から真相が見えやすくなってしまっているのが難。とはいえ、発想自体はいいと思う。
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2013年03月10日(日)
日下圭介「花の復讐」読了。動植物の習性をテーマにしたミステリ短編集。仕掛け自体は見抜けるものが多いものの、それ以上に透明な文体とテーマが綺麗に溶け込んだプロットが素晴らしい。
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posted at 17:07:39
収録作のうち最もミステリ度が高いのはトップ屋の男がかつて付き合っていた恋人の弟にかけられた殺人の嫌疑を晴らそうとする「朝に散る」で、テーマとなっているあるものの習性を使った謎解き以外にも、限定した条件を巧くアリバイトリックとして活かしている点が○。
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posted at 17:08:26
またプロットの妙で選ぶなら表題作で、習性による謎解きを一つの作品内で回想の殺人と倒叙ミステリ、二つのパターンで使い分けているのが実に巧い。その他「黒い葬列」はタイトルの付け方と不幸なヒロイン描写が秀逸な一編である。
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posted at 17:08:42
2013年03月11日(月)
折原一「摸倣密室」読了。「ウヒョッ。密室だ、万歳」――三度の飯より密室が大好きな黒星警部が遭遇した七つの密室を収録した連作ミステリ。「七つの棺」もそうだが、くだらないパロディギャグとしょーもないトリックで読者を脱力させるのがコンセプトという点では「六とん」にも通じるものがある。
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posted at 21:19:53
そんな中でミステリとしてもはっとさせるものがあったのは、消防隊が消火した物置の中からバラバラ死体が発見される「北斗星の密室」で、某古典ミステリのパロディとはいえ堂々とある行為をやってのけたところがいい。その一方で黒星のあんまり過ぎる推理には思わず吹いてしまった(笑)。
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posted at 21:20:40
あんまり過ぎると言えば、横溝正史を読みすぎた男(!)が「本陣殺人事件」のトリックを使って憎い叔父を亡き者にしようとする「本陣殺人計画」もなかなかのもので、二転三転した末、待ち受けるバカすぎるオチ(誉め言葉)は一読の価値あり。
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posted at 21:21:02
2013年03月13日(水)
石沢英太郎「視線」読了。強盗にピストルを突きつけられた時に銀行員が向けた視線が原因で、非常ベルに手をかけていた同僚が射殺された。何故、彼は同僚に視線を向けたのか? 推理作家協会賞を受賞した表題作含む七編収録。
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posted at 02:06:48
些細な出来事から事件の裏側に迫る短編集。全体的に真相の意外性や謎解きに至る論理性はほとんどなく、どちらかと言えばサスペンス寄りの内容ではあるが、収録作の中には女性レポーターに降りかかったある災難を描く「ガラスの家」のように意外な伏線の繋がりでみせるものもある。
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posted at 02:07:26
また捻ったオチとしては、一人の男が正当防衛を利用した殺人計画を立てる倒叙物「ある完全犯罪」も悪くない。謎解きよりもサスペンス性や事件が浮き彫りにする心の機微が見所の作品である。
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posted at 02:08:25
石持浅海「カード・ウォッチャー」読了。ある事故がきっかけで研究所に労働基準監督所の臨検が入ることになった。突如決まった立入検査に所内が騒然とする中、研究総務の小野は倉庫で職員の死体を発見する。しかも死体には外傷がないことから咄嗟に過労死を疑った小野らは一時的な隠蔽を図るが……。
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posted at 22:49:11
石持浅海の十八番(?)である特殊な理由により警察を介入させないミステリの秀作。本作の探偵役はタイトルにもなっているカード・ウォッチャーこと労働基準監督官の北川という男なのだが、物語の前半はこの北川と死体を隠蔽したい小野らによる、倒叙ミステリを思わせる頭脳戦がメインとなる。
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posted at 22:50:09
しかしながらこの北川というキャラ、碓氷優佳に負けず劣らずのロジカル・ターミネーター(!)であり、どんな些細な矛盾も見逃さない徹底した追及は読んでいてかなり怖いものがある。
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posted at 22:50:30
そして後半からは一転して北川が事件の解明に本格的に乗り出すことになるが、恐らくある事実が判明した瞬間、大抵の読者が真相は読めたと思うことだろう。だがそれは錯覚に過ぎず、そこから作者は更に一捻り入れて、この状況下ならではのロジックで読者をあっと言わせてみせる。
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posted at 22:50:58
正直、警察を介入させない前提からして好みが激しく分かれるだろうが、それを受け入れることができれば、かなり密度の濃い推理劇が楽しめる。そして何よりも碓氷優佳、座間味くんに続く新たなシリーズ(を予感させる)探偵の登場を喜びたい。
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posted at 22:51:18
2013年03月14日(木)
岡嶋二人「開けっぱなしの密室」読了。留守の間にアパートの大家が部屋に入り込んでいるらしいことに気付いた夏美は留守を装って大家を驚かせる計画を立てる。友人の悦子も一役買う筈だったが、悦子が目を離した隙に夏美は何者かに殺されてしまう。何故、犯人は密室だった部屋の鍵を開けていったのか?
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posted at 22:07:05
表題作含む六編収録の短編集。ベストは密室に対する逆転したアプローチが面白い表題作で、これで解決かと思わせといてからの意外な展開と唖然とする真相が素晴らしい。次点はレモンパイを頭から被った墜落死体を巡る「危険がレモンパイ」で、途中の捻った展開もさることなから設定ありきの真相が巧い。
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posted at 22:07:35
また轢き逃げを苦に自殺した同僚の事件に端を発する「サイドシートに赤いリボン」もある事実が明らかになった途端に、それまでイマイチ掴み所がなかった事件の構図が見えてくる構成が秀逸。全体的に作者の技巧が際立った良質な短編揃いと言っていいだろう。
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posted at 22:08:16
2013年03月15日(金)
東川篤哉「私の嫌いな探偵」読了。ビルの壁に向かって全力疾走で激突した男。足跡なき殺人と浮気調査の意外な関係。神社の祠で起きた奇妙な死体の消失と出現。口からエクトプラズムを吐き出して死んだ男。衆人環視の火災現場から消えた赤いドレスの女――五つの謎に名(物)探偵・鵜飼はどう挑む?
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posted at 22:35:26
「はやく名探偵になりたい」に続く烏賊川市シリーズの短編集第二弾。売れっ子作家になって刊行ペースが上がったにも拘わらず、このシリーズに関しては相変わらず高いクオリティを保ち続けているのはさすが。それどころ前作よりもギャグ、ミステリ共にキレが増しているような気さえする。
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posted at 22:35:56
以下は収録作に対する感想を。「死に至る全力疾走の謎」島田荘司顔負けの真相と逆転した構図が面白い。「探偵が撮ってしまった画」しょぼいトリックでも見せ方を変えただけで秀作になるという好例。予想外のところからくる犯人特定のロジックが素晴らしい。
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posted at 22:36:46
「烏賊神家の一族の殺人」ここにきて、まさかの着ぐるみ探偵登場に絶句(笑)。些細な気付きからのロジックが秀逸だが、最後の捻りはなくても良かった気がする。「死者は溜め息を漏らさない」ミステリとしては一発ネタだが、それを示す伏線の張り方が巧い。
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posted at 22:37:23
手掛かりはギャグの中に隠せというこの作者の手腕が最も発揮されている短編だと思う。「二〇四号室は燃えているか?」想像するとかなりおバカなトリックもさることながら、何故やったのか?という点まできちんとフォローされているのが好印象。ベストは「探偵が撮ってしまった画」。
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posted at 22:37:49