麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年08月26日(月)
柿原巽「鳥籠姫と三つの謎の物語」読了。実家の古民具屋のお使いで高級マンションを訪れた高校生の鉄之介はそこで空の鳥籠に囲まれて暮らす並外れた洞察力と深い知識を持つ九歳の美少女・白綾と出会う――消えたチョコレート、紅い唐傘の幽霊、雛人形に纏わる奇妙な火事の三つの謎を白綾が解き明かす。
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posted at 21:48:16
ミステリとしては完全に初心者向け。トリックはよく言えば定番、悪くいえば手垢のついたものばかりだし、犯人や動機も端から隠すことを放棄しているとしか思えないほどバレバレで、正直ミステリを読み慣れている人間であればあるほど、そこに面白みを見出だすのは厳しいと思われる。
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posted at 21:48:27
また物語としてもよく言えば定番、悪くいえば捻りが全くなく、先の展開が予想できない読者は多分ほとんどいないだろう。唯一の取り柄といえばフェアであることくらいだが、自分と違い、本作の「定番」を全て好意的に捉えることができる人であれば本作を楽しめるかもしれない。
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posted at 21:48:43
2013年08月27日(火)
小島正樹「永遠の殺人者 おんぶ探偵城沢薫の手日記」読了。ある月曜にアパートの浴室で両手首を切断された男の死体が発見される。その後列車のコンテナの中、空き家の壁の中と相次いで見付かった左手と右手は土曜のうちにそこへ置かれたとしか思えなかったが男は日曜に生きている姿を目撃されていた。
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posted at 22:33:50
本作は孫の木こり(!)におんぶされたおばあちゃんが探偵役を務めるというほのぼの設定と、読み進むにつれて血腥さが増していく凄惨な事件のギャップにまず驚かされるが、もしかしたらこれは少しでも展開を明るくしようという作者の配慮なのかもしれない。
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posted at 22:34:41
ミステリとしては相変わらずのトリックの詰め込みっぷりを見せてくれるが、それはただの前座に過ぎない。本作の一番の見所は前座が終わった後に明かされる大胆なミスディレクションを凝らした鮮やかな構図の反転であり、これだけで個人的には非常に満足度が高い。
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posted at 22:35:01
尤も前座だけだったらトリックに前例があったり、島田荘司作品のような幻想的な挿話がないためにスーパー偶然が気になったりと苦言を呈したい部分もなくはないが、むしろそれらの謎の中にさりげなく伏線を張り巡らせてフーダニットに繋げ、最終的に構図の反転へと昇華させた技巧が何よりも素晴らしい。
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posted at 22:35:25
2013年08月28日(水)
田代裕彦「魔王殺しと偽りの勇者1」読了。百年に一度復活すると言われた大魔王が倒され四名の人物が「自分こそが大魔王を倒した勇者だ」と名乗り出る異常事態が起こった。王宮戦士のエレインは王からの命を受け、地下牢に幽閉されていた魔族の青年・ユーサーと共に魔王殺しの真犯人を探すことになる。
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posted at 21:46:13
魔王を倒すために集まった勇者達の中から偽者を探す「六花の勇者」とは真逆の発想で設定された異世界フーダニット物。しかしながら四人の証言が出揃ってから犯人を明らかにするのではなく一人ずつ話を聞きその都度ふるい落としていくそのやり方は作者の前作「修羅場な俺と乙女禁猟区」を彷彿とさせる。
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posted at 21:48:34
残念ながら本作だけで物語は完結しておらず真相は次巻に持ち越しではあるものの、本作だけでも見るべきところは多い。相変わらず論理的に矛盾を指摘する手際はこなれているが、作者はそこから更に一歩踏み込んで、この世界ならではのロジックの片鱗を見せてくれる。
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posted at 21:48:53
恐らく次巻で魔王殺しの犯人の正体だけではなく、世界の真相まで明らかにしてくれそうな気配が濃厚で、早くも次巻が待ち遠しいと同時に、やはりこの作者はミステリを書いている時が一番イキイキしていると再確認した次第である。
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posted at 21:51:04
2013年08月30日(金)
菅原和也「CUT」読了。キャバクラのボーイ・透はキャバ嬢・エコの送迎中に路上に転がる女子高生の首なし死体を発見する。動揺する透に対しエコは淡々と「死体の首を切断する主な理由」を講義し始めたのだった――。続発する首切り殺人、そして『重力密室』で起こった不可解な殺人事件の真相とは?
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posted at 22:07:45
キャバクラ首切り本格ミステリという小川勝己あたりが書きそうな内容の作品。しかも首切りだけではなく『重力密室』ともいうべき特殊な状況下での不可能殺人まで出てくる。尤も本作の真相はすぐに気付く人もいそうだが、そうならないのは単に作者が持ち込んだあるミスディレクションによるものだろう。
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posted at 22:08:24
このミスディレクションに関してはネタバレになるのであまり多くは語れないが、あるものを使いテーマそのものを錯覚させたと言っても過言ではなく、この辺りに作者の本格ミステリセンスを感じた。所々に粗削りな部分も見受けられるものの、探偵役の使い方など含め、個人的には好感が持てる作品である。
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posted at 22:09:27