麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年09月11日(水)
梓崎優他「放課後探偵団」読了。不可能状況下ですり替えられたビデオテープ、どうしても見付からない野球ボール、何故か教室の一ヶ所に集められたチョコレート、映画の上映中にワインを引っ掛けた犯人探し、同窓会で明かされる放送室ジャック犯……新人作家五人による学園ミステリ・アンソロジー。
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posted at 21:34:46
「学園を舞台にした若い読者にも楽しめる本格的なミステリ」というのが本作のコンセプトらしいが、個人的な印象としては収録作五編のうち四編がそれを自分なりの方法でやっていて好感が持てる。ベストは梓崎優「スプリング・ハズ・カム」で、一見よくある普通の同窓会ミステリかと思いきや、さに非ず。
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posted at 21:34:59
メインの謎とは別に用意された仕掛けにより、この作者ならではの幻想的な構図が浮かび上がるのが素晴らしい。また同窓会という設定を持ち出すことにより真相の一部を盲点にしただけではなく、過ぎ去った青春を効果的に際立たせているのも○。
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posted at 21:35:13
2013年09月12日(木)
森川智喜「踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE」読了。博士の実験で生み出された不死身の恐ろしい人形男と対決することになった少年探偵隊と悪名高き名探偵・三途川理。果たしてその勝負の行方は? 悪徳名探偵・三途川シリーズ第三弾。
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posted at 22:35:13
一言でいえば森川智喜版「少年探偵団」。本作もまたこれまで通りのファンタジックな設定を活かしたコンゲーム展開を踏襲し、前半は少年探偵隊が、後半は彼らのボスが怪人と渡り合うことになる。とはいえ、彼らのボスが明智小五郎ならぬ、あの悪徳名探偵・三途川なのだから、ただで済むわけがない。
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posted at 22:35:40
一見、王道展開に見せかけてからのずらしは面白いが、これまでの三途川の性格を知っていると、ある程度先が読めてしまうのが残念。しかしながら終盤で明かされるあるものの正体に関しては、三途川のゲスさが際立っていて○。
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2013年09月13日(金)
東野圭吾「祈りの幕が下りる時」読了。夢見た舞台を実現させた女性演出家。彼女を訪ねた幼なじみが数日後、葛飾にあるアパートで他殺体となって発見された。一方、新小岩の河川敷にあるホームレスの小屋で身元不明の男が殺され、焼かれる事件が起こる。二つの事件に隠されたパンドラの箱の正体とは?
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posted at 22:07:46
加賀刑事シリーズの十作目。シリーズ七作目の「赤い指」が加賀と父親の絆を描いた作品だったのに対し、本作では加賀と母親の絆を描いている。ミステリとしてみると本作で使われているネタは定番ではあるものの、それを簡単には悟らせまいと二重三重の煙幕を張っている点に相変わらずの巧さを感じる。
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posted at 22:08:05
またネタを成立させるための工夫が極めて現代的なのも興味深い。一部、舞台に関する描写が弱いために終盤で明かされるある事実がそれほど効果を上げられていないなどの不満はあるが、全体的にみれば手堅く纏め上げた良作と言っていいだろう。
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2013年09月14日(土)
北山猛邦「ダンガンロンパ霧切1」読了。謎の依頼を受け集まった五人の探偵を待ち受けていたのは「犯罪被害者救済委員会」が企む凄惨な殺人事件だった。雪に閉ざされた星型の天文台で体を細切れにされ、すげ替えられた三人の探偵。残された二人の探偵は、この窮地を脱出することができるだろうか?
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posted at 16:59:48
本作はゲーム「ダンガンロンパ」のスピンオフ作品だが、クローズドサークルと化した舞台で集められた探偵たちが殺されるという設定は、どこか本作を手掛けた北山猛邦の「『アリス・ミラー城』殺人事件」を彷彿とさせる。
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posted at 17:00:02
ミステリとしてみると、犯人が死体を細切れにし、すげ替えた理由が秀逸である一方で、一部のヒントの出し方がかなりあからさまだったり、館の形に意味がなかったりと幾つか粗があるのが気になる。とはいえガジェットを活かした物語作りは非常に巧く、ラストの引きも申し分ない。
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posted at 17:00:19
2013年09月17日(火)
辻真先「旅は道づれ死体づれ」読了。東北の斜陽温泉が町全体を時代劇調にしてしまう一大イベントを企画。ところが旅館で幕を開けた田舎芝居の舞台で立て続けに二人の人間が毒矢で殺されてしまい警察は大騒ぎ。折よく町に滞在中のおばあさん探偵ユーカリは旅館の主人の依頼で事件解決に乗り出すが……。
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posted at 22:17:01
名探偵ユーカリさんシリーズの長編一作目。おばあさん探偵とその孫娘であるオテンバ女子大生が織り成す物語は赤川次郎を思わせるドタバタ調だが、そんな見た目に反して意外にも(?)フーダニットとしてよく出来ている。
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posted at 22:17:23
特筆すべきは手掛かりの出し方で、これ以上ない程あからさまなのにそれと気付かせない絶妙な描写が心憎い。その一方で事件が起これば起こるほど動機が苦しくなっていくのが残念だが、それを差し引いても芝居や温泉といった自分が好きなもので楽しんでもらおうという作者の心遣いが好印象の作品である。
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posted at 22:17:49
2013年09月19日(木)
小林泰三「アリス殺し」読了。不思議の国に迷い込んだアリスの夢ばかり見る大学院生の栗栖川亜理。ある日彼女がハンプティ・ダンプティの墜落死に遭遇する夢を見た後に大学へ行ってみるとキャンパスの屋上から玉子と綽名の博士研究員が墜落死を遂げていた。しかも夢の中ではアリスに殺人の疑いが……。
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posted at 22:15:11
〈不思議の国〉で次々起きる異様な殺人と現実世界で起きる不審死という本作の粗筋から最初に連想したのは辻真先「アリスの国の殺人」だったが、実際に読んでみて、これはどちらかというと黒田研二「幻影のペルセポネ」だなと思い直した。
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posted at 22:15:33
〈不思議の国〉と銘打ってはいるものの、複数の人間がその世界を共有し、かつその世界の住人を演じているという設定は「幻影のペルセポネ」の舞台であるオンラインRPGに近い(そして「幻影のペルセポネ」もまたゲームの世界での殺人と現実の死を扱っている)。
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posted at 22:16:17
故に一部のネタの方向性が完全に被ってしまっているのが残念だが、その一方で本作ならではの仕掛けもある。特に〈不思議の国〉ならではの要素を活かしたフーダニットが秀逸で、ミスリードを絡めた大胆な伏線の張り方には思わず唸らされる。
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posted at 22:16:44
また後半に炸裂するグロ&ブラックな展開はこの作者のファンであればニヤニヤせずにはいられないだろう。激しく人を選ぶ内容ではあるものの、飛鳥部勝則の涅槃ミステリが好きな人には是非ともお勧めしたい作品である。
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posted at 22:17:17
2013年09月20日(金)
辻真先「戯作・誕生殺人事件」読了。高齢出産を決意した薩次(ポテト)とキリコ(スーパー)夫婦は美少女中学生・美祢を住み込みのヘルパーとして雇うことにする。だがそれを機に四十六年前の人間消失、謎めいたミステリの原稿、浴室の密室殺人など幾つもの不可解な出来事に巻き込まれて……。
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posted at 19:28:12
ポテト&スーパーのコンビが活躍するシリーズの最終作……なのだけど、前半はどちらかというとポテトとスーパーに置き換えた辻真先の日常といった趣がある。その一方でキャラたちの老いが語られるのは、人によってはキツいものがあり、賛否が分かれるところだろう。
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posted at 19:28:54
ミステリとしては人間消失、密室、作中作など様々なガジェットを盛り込みサービス精神の健在ぶりを見せてくれるのはいいが、辻作品を読み慣れていると真相にイマイチ目新しさを感じないのが残念。とはいえ一部の真相は現代的な要素を取り込んでおり、今なお新しいものを見せようとしているのは好印象。
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posted at 19:29:26
北國浩二「ペルソナの鎖」読了。捜査一課のエース・氷室は取調室で出会ったかつて自分がいじめた同級生・土谷に嵌められ暴力刑事へと仕立てあげられてしまう。それから間もなく土谷が少女誘拐事件の容疑者であることが発覚。警察の必死の捜査も虚しく少女は舌を切り取られた全裸死体となって見付かる。
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posted at 23:06:44
サイコサスペンス色の強い警察小説。前半はテレビにも取り上げられた捜査一課のエースが暴力刑事のレッテルを貼られ落ちぶれていくイヤミス的見所があるが、少女の死体が発見されて以降は一転してどん底に叩き落とされた氷室による血と硝煙が立ち上るハードな捜査を描いたノワール物に変貌する。
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posted at 23:07:03
ミステリとしてみると少女の死体から舌を切り取った理由に迫る推理が秀逸で、その推理の気付きがノワール物ならではのものなのが面白い。尤も黒幕の正体に関しては途中で割れるような書き方をしてしまっているのが残念だが、その代わり動機で捻りを加えているのが○。
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posted at 23:07:42