麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則／梶龍雄／殊能将之／早坂吝／麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2014年01月14日(火)
深沢美潮「女優のたまごは寝坊する。」読了。女優を目指す新倉帆乃歌には演じる役を想像して具現化する特技があった。そんな彼女に友人から「殺人犯にされるかも」と緊急連絡が。友人を救うため帆乃歌は最近オーディションを受けた映画「過去からきた人形」のヒロイン・衣佐子と共に事件に挑むが……。
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posted at 22:36:24
本作の主人公が持つ演じる役を想像して具現化する特技は天祢涼「空想探偵と密室メイカー」を彷彿させるが「空想探偵」同様本作もまたそれを活かしきれていないのが残念。また合間合間に「過去からきた人形」の台本が思わせ振りに挿入されるが、そこに意味が全くないのも大きなマイナス。
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posted at 22:36:39
メインの事件にしても、しょーもないの一言で片付いてしまうものであり、正直ミステリとしては全くお勧めできない。せめて女優のたまごであるヒロインの成長物語的な側面があればまだ良かったのだけど、残念ながら本作にはそれすらなく、個人的には悪い意味でただのキャラ小説としか思えなかった。
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posted at 22:36:55
2014年01月17日(金)
風見潤「火の国殺人事件」読了。トラベルライターの朝倉麻里子は大西サチという女性から二十年前に娘の命を救ってくれた男の行方を知りたいとの相談を受けた。今は廃線となっている鹿児島交通鉄道で去ったその男を探すため地元の新聞がこの話を美談として掲載するが、その矢先にサチが謎の死を遂げる。
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posted at 22:12:11
トラベルライターの朝倉麻里子とその恋人の羽塚たかしが活躍するシリーズの三作目にして、麻里子をフィーチャーした番外編。二十年前の美談が殺人を引き起こしてしまうという展開そのものは面白いが、その理由に関してはだいたい予想通りなのが少々残念。
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posted at 22:12:38
とはいえ構図の反転にアリバイトリック、そして第三の殺人における死体を風呂場に捨てたロジックが地味に決まっており、特にロジック部分は鹿児島という舞台が絶妙なミスディレクションになっている点が秀逸。派手さはないが、手堅く纏まった良作である。
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posted at 22:12:55
2014年01月18日(土)
藤本泉「針の島」読了。山形県酒田沖に浮かぶ羽里島にある神社の高く険しい石段から男が墜死した。偶然この惨事を目撃した新米刑事・五十嵐が調べてみると、同じ場所で同じ会社の社員が三年連続で墜死していたことが分かる。そんな中、能面のような盲目の巫女・堺小祝が五十嵐の死を予告して――。
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posted at 20:43:15
本作のミステリとしての見所は相次ぐ墜死の謎と被害者が言い遺した「ぎゃくの……、くすりだ」というダイイング・メッセージの二つに分けられるが、前者の真相が明らかになるにつれ、後者が生々しい結末と共にホラーにも似た衝撃をもって迫ってくる点が素晴らしい。
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posted at 20:44:00
そういう意味では「犯人が善という立場で、ミステリーが書けないものかと思った。この作品のラストシーンは、その意味で、意識して、反転の形をとった」と語る作者の判断は正しい。また事件の構図の、社会的要素と伝奇要素のバランスも秀逸。伝奇本格ミステリの傑作といっても過言ではない作品である。
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posted at 20:44:12
2014年01月20日(月)
霞流一「首断ち六地蔵」読了。寺社捜査局の魚間は豪凡寺の六地蔵の首が持ち去られた事件を追っていた。ところが首が発見される度に奇怪な殺人事件が起こる。魚間は豪凡寺の住職・風峰らと共に真相を推理し一連の事件の背後に新興宗教「浄夢の和院」教祖・日羅薙月貘がいることを突き止めるが……。
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posted at 23:38:11
全七編からなる連作ミステリである本作は、まずその半端でない詰め込みぶりに驚かされる。あとがきで「毒入りチョコレート事件」を意識したと作者が語る通り本作では多重推理が展開されるが、その数およそ三十（！）というのはさすがにやり過ぎと言わざるを得ない。
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posted at 23:38:46
しかもその推理の一つ一つがバカトリックの博覧会的な様相を示しており、正直よくぞここまで考えたと呆れるやら感心するやらで、作者にお疲れ様と言いたくなる。だがその反面バカバカしくはあるもののいまひとつ突き抜けた感に乏しく、最終的な真相に関してもひどく予定調和っぽさを感じてしまった。
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posted at 23:39:00
勿論ネタを成立させるための伏線は抜かりなく張っており、技巧面としては申し分ない。ただ個人的には第二首「餓鬼の使いは帰らない」のある推理で一瞬垣間見せた頭のおかしさで統一してほしかった。とはいえこれだけのものを纏めあげた点は充分評価に値する労作かつ秀作だと思う。
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posted at 23:39:15
2014年01月21日(火)
滝田務雄「ワースト・インプレッション」読了。キテレツ女刑事・理恩と、理恩をバカ扱いする強面部下・拾得のコンビが難事件に立ち向かう。奇妙な放火殺人を扱った表題作の他、タレント歌人の失踪「歌人薄命」、大学教授の怪死「偶像は落ちた偶像に落ちた」、山荘の白骨死体「遺産と誤算」の三編収録。
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posted at 22:54:49
作者久々の新作はこれまでの作品同様キャラに特化したユーモアミステリという体裁をとっているが本格ミステリとしてもなかなかのものを見せてくれる。例えば倒叙物である「歌人薄命」は、証拠隠滅を図ったはずが逆に命取りになる皮肉な結果もさることながら、そこに至るまでの細かい論証が非常に巧い。
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posted at 22:55:03
そして、この「細かい論証」は全編通して活かされており、時にそれがキャラとのギャップを感じさせるものの、個人的には充分許容ライン。見た目に反して（？）きっちり本格をやっているので、本格好きにも積極的に読んでもらいたい作品である。ベストは強烈な悪意が一読忘れ難い表題作。
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posted at 22:57:40
2014年01月24日(金)
井沢元彦「義経幻殺録」読了。源義経が清朝の祖であることを証明する秘本を入手した芥川龍之介は対日中の支那の学者・陳宗炎に鑑定を依頼するがその陳老人は一同の目の前で毒殺されてしまう。一方、久木男爵邸ではロシア皇室に伝わるダイヤモンドが停電した僅かな隙に消失するという事件が起きて……。
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posted at 19:27:24
作家・芥川龍之介が探偵役を務めるシリーズの二作目。といっても今回は芥川の他に探偵役がもう一人起用されており、それがあの明智小五郎だと言うのだから驚かされる。しかも毒殺事件の謎解きを芥川が、宝石消失事件の謎解きを明智がそれぞれ担当するという豪華ぶりだ。
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posted at 19:28:54
個人的に感心したのは前者の謎解きで、さりげない伏線が光る毒殺方法もさることながら、それまでの流れを活かした殺害動機が面白い。そして二つの事件を史実に繋げた、この作者ならではの壮大なエピローグも素晴らしく、特にラスト一行が圧巻。本作はミステリと歴史ロマンの融合が美しい良作である。
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posted at 19:29:28
2014年01月25日(土)
小林泰三「百舌鳥魔先生のアトリエ」読了。妻が百舌鳥魔先生から教わった前列のない芸術。それを説明するため妻はまずペットの熱帯魚を刺身にしてしまう。だが魚は身を削がれたにも拘わらず水槽の中を泳いでいた。妻が崇める異様な芸術は更に過激さを増していき……表題作含むグロテスクな七編収録。
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posted at 17:18:51
ホラーをベースにＳＦ、ミステリ、スプラッター、ブラックユーモアといったこの作者ならではの要素を取り入れた作品集。収録作はどれも安定したクオリティで楽しめるが、個人的に気に入ったものを挙げるなら「首なし」「兆」「密やかな趣味」の三編になる。
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posted at 17:19:13
「首なし」は火災を機に首から上を失いながらも奇跡的に生き続ける男と、その男を慕う女の話でオチ自体は読めるもののフリークス趣味とエゴに満ちた物語が素晴らしい。「兆」はイジメによる自殺事件とそれに絡んだ人ならざるものを描いた話だが国内作家Ｙの某作品を彷彿させるミステリ的仕掛けが秀逸。
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posted at 17:19:40
「密やかな趣味」は「人間そっくりのロボットの使い道ってなんだろう？」という書き出しから始まるスプラッターとブラックユーモアが炸裂した一編で、ラスト一行から滲み出る黒さが実に堪らない。その他、この作者には珍しい郷愁を感じさせる「朱雀の池」も忘れ難い作品である。
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posted at 17:20:15
2014年01月27日(月)
てにをは「女学生探偵と偏屈作家」読了。推理小説好きの女学生探偵・花本ひばりと偏屈な推理作家・久堂蓮真の痛快事件録。屋上に墜落した女学生の謎「明尾高屋上投身事件」、原稿を賭けた女学生探偵と推理作家の対決「探偵暇潰遊戯」、幽霊屋敷で起こった射殺事件「両国幽霊屋敷殺人事件」の三編収録。
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posted at 22:39:55
人気ボカロ曲をノベライズした連作ミステリ。キャラ設定や作中のやり取りから作者の本格ミステリに対する思い入れは窺えるものの、肝心のミステリとしての出来に関しては不満が残る。まず「明尾高屋上投身事件」は手掛かりがバレバレ過ぎるのもさることながら、被害者の行動がかなり苦しい。
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posted at 22:40:11
また「両国幽霊屋敷殺人事件」は収録作の中では一番工夫が凝らされているものの、国内作家Ｏの某短編と同じ致命的な穴がある。唯一欠点が少ない「探偵暇潰遊戯」にしてもガチ本格を期待すると少々物足りなさを覚えてしまう。とはいえ基本は押さえていると思うので欠点をカバーした次回作に期待したい。
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2014年01月28日(火)
中町信「目撃者 死角と錯覚の谷間」読了。二人の幼い命を奪った轢き逃げ事故。小泉香織は犯人と子供の飛び出しを誘った男の姿を目撃するが犯人が捕まる前に旅行先で不審な死を遂げる。これは証言を封じようとした轢き逃げ犯の仕業なのか？ところが最も疑わしい人物までもが密室で殺されてしまい……。
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posted at 23:39:16
作者お馴染みのプロローグに凝らされた仕掛けに加え、密室とダイイング・メッセージが盛り込まれた意欲作。といっても密室の真相に関しては正直微妙だが、その代わりダイイング・メッセージの方でかなり力が入っており、その解釈を二転三転させることで読者を引きずり回す技巧はさすがの一言。
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posted at 23:39:27
特に秀逸なのはある現象が絶妙な盲点になっていることで、これには思わず唸らされた。そうして最後に犯人の正体が明らかになると共に反転する構図も巧く決まっており、密室の微妙さを差し引いても充分お釣りがくる良作と言っていいだろう。
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posted at 23:39:38
