麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2014年07月01日(火)
友成純一「内臓幻想」読了。スプラッター小説の第一人者である筆者によるホラー映画評論集。ホラー映画史から始まり、ガジェット視点からの評論、ゲテモノホラー話、「血の錬金術師たち」と題した監督論、作品レビューなど様々な方向からホラー映画を語っていく。
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posted at 23:53:40
まず本作は前書きがふるっている。「わが名はスプラッタ」と題し、スプラッターとはかくあるべしと自身の思い出変態話(!)と共に熱く語っていくのだ。この時点で友成ファンはもとよりB級ホラー映画ファンの心をがっちり掴んで離さない。
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posted at 23:54:06
監督論では個人的に偏愛しているアルジェントもさることながら、ホラー映画からキャメロンを論じている点が面白かった。中でも取り分け氏のトビー・フーパー愛が印象深く、読んでいて何となく殊能センセーに通じるものを感じてしみじみとしてしまった。
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posted at 23:54:28
2014年07月02日(水)
辻真先「未来S高校航時部レポート TERA小屋探偵団」読了。二十二世紀から江戸時代を訪れた五人の高校生――未来S高校航時部。様々な才能に秀でた彼らが江戸での生活に馴染み始めた矢先、長屋で連続密室殺人が発生。やがて事件は彼らの生い立ちの秘密と密接に絡んで思わぬ展開を見せる。
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posted at 22:27:26
時代劇、ミステリ、SF、伝奇バトル、メタなど、作者のこれまでの経歴を全て詰め込んだような怪作。作者が本作で目指したのは恐らくラノベ的ジャンルのごった煮なのだろうが、本作の場合、些かやり過ぎて超展開のアニメみたいなことになってしまっている。
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posted at 22:27:53
正直作者の旺盛なサービス精神が悪い方に出てしまった感が否めず、もう少し書きたいものを整理した方が良かったのではないかと思わずにはいられない。ちなみにミステリ的には第一の密室が出色の出来であるのに対し、第二の密室は手抜きもいいところなのが残念。
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posted at 22:28:42
2014年07月04日(金)
碇卯人「杉下右京のアリバイ」読了。殺人現場の防犯カメラに映っていた奇術師の姿。だが彼は犯行時刻、遠く離れた舞台で公演中だった――「奇術師の罠」他、殺人鬼が射殺された直後にその被害者と思しき死体が見付かったことから死者のアリバイ崩しというべき様相を示す「シリアルキラーY」収録。
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posted at 23:10:47
人気TVドラマ「相棒」でお馴染みの杉下右京が探偵役を務めるオリジナル小説第四弾はタイトルにもある通り、アリバイをテーマにした中編が二編収録されているが、どちらも一見ド直球な本格ながら、なかなかどうして一筋縄ではいかない内容に仕上がっている。
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posted at 23:11:00
「奇術師の罠」は奇術師が容疑者で、犯行時刻に150キロ離れた場所で公演中という鉄壁のアリバイがあり、しかもその公演中には殺人予告&テレポートマジックまで行っていた――と粗筋だけ聞くと愚直なまでにベタベタな内容だが、その実態はミスディレクションまみれとも言うべき凄まじい作品である。
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posted at 23:11:20
具体的にどこがミスディレクションなのかは伏せるが、出てくるもの全てを疑ってかからないと間違いなく足下を掬われることになるだろう。そして何よりもラストのアリバイ崩しの決め手があんな場所にぬけぬけと示されていたのには脱帽と言わざるを得ない。
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posted at 23:12:27
一方「シリアルキラーY」もトリックそのものはオーソドックスながらこちらも構成を活かしたミスディレクションが光っている。ただその反面ヒントが示されるのが少々遅いのが気になるが、人物描写からの伏線でそれをカバーしているのは○。とまれ、どちらも捻ったアリバイ崩しが堪能できる秀作である。
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posted at 23:12:42
2014年07月06日(日)
笹沢左保「海の晩鐘」読了。西ドイツのボンに留学中の美少女ヴァイオリニスト・神尾八千代の許に母・貴子が知人の男と共に九州の天草で心中したとの一報が入る。やがて事件は新たな殺人を引き起こし、父・夕起夫が疑われるが夕起夫には貴子が心中したとされる時間、東京にいたというアリバイがあった。
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posted at 16:18:04
父を慕い、不貞を働いていた母を憎む美少女ヴァイオリニストのヒロインが、単身で事件を追う中年刑事とコンビを組み、真相を探り始める――本作の設定だけ聞くとまるで赤川次郎のようだが、アリバイトリックや人物設定まで細かく計算した犯行計画を始め、その料理の仕方は紛れもなく笹沢作品である。
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posted at 16:18:31
アリバイトリックのヒントがあからさま過ぎるのが難だが、別の始点から見ることで意味合いがガラリと変わる遺書や心中自体がある犯行の絶妙な隠蔽になっている点など、細かいところでよく練られている。またラストに明かされる意外な事実が物語の悲劇性をより高めているのも○。
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2014年07月08日(火)
霞流一「牙王城の殺劇」読了。奥多摩の山奥にあるワニの楽園『牙王城』で次々と不可解な現象が起こる。籠を担ぐ甲冑騎士の亡霊、夜空を飛ぶUFO、足跡なき殺人、空飛ぶワニ、切断された死体、消える天守閣、ゾンビの群れ……これらの謎に超常現象専門の高校生探偵団『フォート探偵団』が挑む。
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posted at 21:30:56
トリックも手掛かりも悪い意味で強引。一応これだけのネタを少ない頁数の中に詰め込んだ点は評価できなくはないが、それらが有機的に繋がっているとはお世辞にも言いかねる。そして何より一番致命的なのはワニ尽くしの割に、別にワニじゃなくても良かったのでは?と思ってしまうところか。
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posted at 21:31:06
2014年07月10日(木)
似鳥鶏「迷いアルパカ拾いました」読了。迷子のアルパカを保護した直後に楓ヶ丘動物園のアイドル飼育員・七森さんの友人が失踪した。その行方を追うにつれ、動物園には侵入者が現れ、次々と関係者が何者かに襲われる。事件の鍵を握るアルパカは何を知っているのか?
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posted at 20:29:02
楓ヶ丘動物園シリーズの三作目。軽妙なキャラの掛け合いもさることながら、テンポよく事件が起きるので読んでいる間は一切退屈しない。ミステリ的にはネタは小粒ながらも伏線と犯人隠蔽のテクニックに光るものがあり、特に後者は立て続けに事件が起きる展開をも利用している感がある。
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posted at 20:29:15
また怪しげな人物を複数配し、その素性を様々な形で暴いていくことで謎解きの演出に工夫が凝らされている。動機となる動物ネタも前作より動物園という舞台に則したものになっているのは○。ただ伏線に関しては些か御都合主義な部分もあるが、個人的には許容できる範囲だと思う。
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posted at 20:29:44
2014年07月11日(金)
笹沢左保「盗作の風景」読了。麻知子の父・庄吉郎のせいで家族が崩壊したとして脅迫状を送り付けてきた青年・能坂魚男。父を守ろうとした麻知子が彼と接触してから数日後、今度は食品会社社長が殺され庄吉郎に疑いがかかる。そして庄吉郎のアリバイの証人となったのは、あろうことかその能坂だった。
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posted at 02:02:24
作者当ての懸賞小説として書かれた作品。本作の魅力は何と言っても作者が真の狙いを最後まで隠し通すために構築した先の読めないプロットにある。加えて人間を描くことが更に真相を見えなくしている点が実に秀逸。
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posted at 02:02:43
ちなみにタイトルに関して途中まではピンとこないかもしれないが、終盤に至りその意味するものが分かった途端、この作者らしいロマンが浮かび上がってくるところも巧い。本作はプロット次第で意外性をここまで引き上げられることを証明した佳作である。
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posted at 02:03:12
高橋由太「紅き虚空の下で」読了。オカルトマニアの少女が絞殺され、両手首が切り落とされた事件を未確認飛行生物(!)が解決する表題作の他、孤島の密室で秘密結社の支配者が変死した謎に生贄として囚われていた男女が挑む「蛙男島の蜥蜴女」など四編収録。
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posted at 19:48:58
時代小説の書き手によるミステリ三篇に角川ホラー大賞の最終候補作一編を収録した短編集。このうち表題作と「蛙男島の蜥蜴女」は「新・本格推理」に採用されただけあってミステリ度が高いのは勿論のこと、飴村行の粘膜シリーズで本格ミステリをやったような、何とも濃い作品になっている。
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posted at 19:49:15
表題作はネタだけ見ると差ほど優れているとは言い難いが、異世界要素を取り込むことで非常に個性的な本格ミステリに仕上げている点が秀逸。それに対し「蛙男島の蜥蜴女」はネタ自体が一読忘れることができないとんでもないバカミスであり、それを成立させるために異世界を作り上げているのが興味深い。
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posted at 19:49:30
あとの二編「兵隊カラス」は山奥に捨てられた少年が戦争の生き残りだという「兵隊さん」と出会ったことから始まる物語で、前の二編とは異なり、二転三転する展開で魅せるサスペンスという印象。
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posted at 19:49:52
「落頭民」は自分の首を切って飛ばすことのできる一族を巡るホラーだが、異様な内容とは裏腹に描写はあっさりめなので怖さは殆ど感じない。加えてテンポのいい展開は最近読んだ「ロマネスク」と通じるものがあるかもしれない。ベストは「蛙男島の蜥蜴女」。
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posted at 19:50:03